(r)adius 40点
2018年7月28日 レンタルDVDにて観賞
出演:ディエゴ・クラテンホフ シャーロット・サリバン
監督:キャロライン・ラブレシュ スティーブ・レナード
リアム(ディエゴ・クラテンホフ)は交通事故に遭い、負傷していた。気がついた時には見知らぬ土地にいて、記憶を失っていた。そして、自分の半径15mに近づいてきた動物(植物や微生物は無事らしい)は、白目をむいて即死することに気づいた。そんな中、自分に近づいても死なない女性ジェーン(シャーロット・サリバン)と出会う。ジェーンもまた記憶を失っていたが、2人は元々一緒に行動していたらしいことが分かる。一緒にいれば、謎の即死現象が中和されることに気づいた2人は、警察その他から逃れるべく、逃亡を開始するが・・・
どこかジョニー・デップとシャーリーズ・セロンの『ノイズ』を思わせる雰囲気があったりと、予備知識ほぼゼロの状態で観ていたため、序盤の展開にはスッと入っていくことができた。記憶喪失物というのは、小説であっても映画であっても、始まりはたいてい面白いと決まっているのである。問題は、記憶を取り戻す方法とタイミングだ。もちろん、そこにも『ジェイソン・ボーン』式のきっかけとともに小出しで思い出していく方式、『メメント』式の終盤一気の思い出し方(というか説明の仕方か)、装置を使って思い出す『トータル・リコール』方式など、こちらも記憶喪失ジャンルと同様にある意味で確立されていると言える。残念なのは本作の記憶喪失とその記憶の取り戻し方が、あまりにもご都合主義過ぎるところ。良かったところは、失われた記憶が蘇ったことで分かるリアムとジェーンの本当の関係の意外性。しかし、この映画の最も残念な点は、テーマを絞り切れなかったところであろう。主題は分かりやすい。半径15m以内の生物を問答無用で即死させてしまう謎の現象だ。しかし、テーマが薄い。というか分散させすぎである。ジャンル分けするとすれば、SFであり、スリラーであり、記憶喪失物であり、ロードムービー的要素もあり、ロマンス要素もある。敢えて絞るとすると、良心への目覚めということになるのだろうか。しかし、タイトルにもある(r)adius=半径について、もっともっと深掘りするべきだし、観る側はそれを期待する。エレベーターのシーンはサスペンス感があったが、他にも例えば、リアム一人でボートで湖にこぎ出してたんまり魚をゲットしてくるなど、二人の逃避行にもっとほのぼのとした要素を入れてくれないと、オチとの落差があまり感じられず、結果的に着地で失敗したとの印象だけが強めに残った。誰も漫画の『B-SHOCK!』みたいなのは期待していないのだから。
もともと梅田のシネリーブルの未体験ゾーンの映画たちの一つとして公開されていた当時、都合がつけられず劇場鑑賞ができなかった。まあ、レンタルで観て、それなりに満足したということで、良しとしようではないか。ちなみに本作のジェーンは、ジェーン・ドウ=Jane Doeから来ている。身元不明の女性はジェーン・ドウなのだ。ちなみに男になるとジョン・ドウ=John Doeとなる。『マイノリティ・レポート』でトム・クルーズが一瞬言及するシーンがあるので、熱心なトム様ファンは見返してみてもいいかもしれない。直近では『ジェーン・ドウの解剖』、近年だと『ブラック・ダリア』がジェーン・ドウものの秀作かな。