白頭山大噴火 75点
2021年8月29日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ハ・ジョンウ イ・ビョンホン マ・ドンソク ペ・スジ
監督:イ・ヘジュン キム・ビョンソ
仕事が多忙を極めているため簡易レビューを。
あらすじ
白頭山の巨大噴火を阻止しようと奮闘する者たちの物語。
ポジティブ・サイド
邦画で火山がフィーチャーされた作品というと『 日本沈没 』ぐらいしか思いつかない。しかも火山がテーマではない。他には火山噴火が導入になっている『 ドラゴンヘッド 』か、あるいは火山噴火が味付けになっている『 火口のふたり 』ぐらいか。ハリウッドはこの分野で傑作から駄作まで一通り作ってきたが、火山大国である日本からではなく韓国から火山噴火映画が出てきた。喜ぶべきか、嘆くべきか。
白頭山の噴火というのは、それなりに現実的な設定。しかし、それを食い止める、あるいは噴火の規模を抑えるための策が、地下での核爆発、しかもその核を北朝鮮から奪おうというのだから、荒唐無稽もいいところである。まるで1970~1980年代にかけてブライアン・フリーマントルの謀略小説のようである。あるいは 『 鷲は舞い降りた 』のような不可能ミッションのようである。そんなプロットをとにもかくにも成立させてしまうのは、主演のハ・ジョンウとイ・ビョンホンの力によるところが大きい。
ハ・ジョンウの頼りなさげな指揮官と、イ・ビョンホンの不穏極まりないオーラを放つ工作員の対比が、物語に奇妙なユーモアとシリアスさを同居させ、それがいつの間にやら極上のバディ・ムービーへと変貌していく。特にイ・ビョンホンはその演技ボキャブラリーの多彩さを本作でも見せつけて、他を圧倒している。デビューの頃から自慰シーンを見せたり、『 王になった男 』では下品な腰使いに排便シーンも見せてくれたが、今作でも野糞と立小便を披露。同年代である竹野内豊や西島秀俊が同じことをやれるだろうか?まず無理だろう。
米中露の政治的な駆け引きと思惑あり、ファミリードラマあり、アクションありと、面白一本鎗志向の中にもリアルな要素と鉄板の感動要素を盛り込んでくるのが韓国映画で、本作もその点ではずれなし。核を本当にぶっ放す映画としては『 アメリカン・アサシン 』や『 PMC ザ・バンカー 』よりも面白い。今夏、劇場でカタルシスを求めるなら、本作で決まりだろう。
ネガティブ・サイド
序盤のカーアクションのシーンは不要。CGで注力すべきは、地震による建造物の倒壊であるべきだった。
マ・ドンソクのインテリ役には少々違和感があった。ハ・ジョンウの嫁を保護するシーンで、多少は腕力を披露してくれても良かったのではないだろうか。
ジェット機が飛べなくなるほど上空に火山灰が舞い散っているのに、北朝鮮国内の、しかも北方の白頭山に近いエリアにほとんど灰が降り積もっていなかったのは多大なる違和感。同日にNHKのサイエンスZEROで『 富士山 噴火の歴史を読み解け 』を観たので、なおさら不自然に感じた。
総評
韓国映画の勢いはまだまだ止まらない。北朝鮮が国家として存在している以上、ドラマは無限に生み出せる。羨ましいような羨ましくないような状況だが、それすらもエンタメのネタにしてしまうところは邦画も見習うべきなのだろう。火山の国としても、また核を持たない軍事的な小国という立場からも、日本の映画ファンに幅広く鑑賞してもらいたい佳作である。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
erupt
噴火する、噴出するの意。ex + rupt = 外に + 破れる というのが語源になったラテン語の意味である。rupt = 破れる だと理解すれば、interruptやbankrupt, disrupt, abruptなどの意味を把握するのは容易だろう。