映画 賭ケグルイ55点
2019年5月3日 東宝シネマズ梅田にて鑑賞
出演:浜辺美波 高杉真宙 池田エライザ
監督:英勉
元は漫画、そしてテレビドラマ化された作品が満を持して銀幕に登場。これが意味するところは、よほど原作およびドラマが面白いということか。Jovianが南沙良と並んで最も買っている若手女優の浜辺美波が主演とあらば、観ないという選択肢は存在しない。
あらすじ
舞台はギャンブルの強さで学園内の序列が決まる百花王学園。そこに転校してきた蛇喰夢子(浜辺美波)は、学園の頂点に君臨する生徒会長、桃喰綺羅莉(池田エライザ)とのギャンブル勝負を渇望していた。しかし、学園にはギャンブルを拒絶する集団「ヴィレッジ」も台頭しつつあった。夢子とヴィレッジ、両方を一挙に叩き潰そうと画策する生徒会は、「生徒代表指名選挙」を開催する。夢子は鈴井涼太(高杉真宙)を相棒に参戦するが・・・
ポジティブ・サイド
前向きなヒロイン像から少女漫画の定型を外れるヒロイン像、それらの加えてギャンブルにエクスタシーを感じるヒロイン像を浜辺美波は開拓した。これはファンとして大いに歓迎したい。天然で、それでいてシニカルで、ユーモラスでもあり、賢しらさを隠さない狡猾さを、その口調や佇まいで悟らせない。そんな複雑なキャラをしっかりと演じた浜辺をまずは称えようではないか。
歩火樹絵里を演じた福原遥の演技力にも舌を巻いた。彼女はテレビや映画よりも、舞台上で演じる方が映えるのではないか。カリスマ性すら感じさせる演技で、今後も多方面での活躍を期待できるだろう。今作のような世界観の作品やキャラクターばかりを演じると、藤原竜也のように chew up the scene の役者になってしまう恐れがあるので、彼女のハンドラー達には注意をしてもらいたいものである。ちなみにJovianは藤原竜也を高く買っていることをを申し添えておく。
その他には小野寺晃良、中村ゆりか、秋田汐梨らも印象に残った。この世代の若手俳優は、一頃のサッカー日本代表とは異なり、人材難ではなさそうだと思えた。それが一番の収穫だったと言えるかもしれない。
ネガティブ・サイド
個人的な嗜好の問題も多分にあるのだろうが、先行作品の世界観の構築の点で『 カイジ 人生逆転ゲーム 』に劣り、勝負の駆け引きや頭脳性の描き方において『 ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ 』に劣る。ライアーゲームやカイジは原作を読んでいて、こちらに関しては原作漫画、テレビドラマ、いずれも鑑賞していないので、このあたりの評価に偏りが生じているのは承知している。
浜辺美波は良い仕事をしたが、クライマックスのシーンを販促物に載せる必要は一切ない。究極のドヤ顔を、上映前に見せまくってどうする。それをするのであれば、プロローグの夢子の紹介シーン全てで賭け狂っている時の必殺の顔として観る側に認知させておくべきだった。こういうのは出し惜しみしておくべきだと切に思う。
肝心のギャンブルについても突っ込みどころが満載である。票争奪じゃんけん勝負を先手必勝とあるキャラクターコンビは結論付けたが、これはおかしい。普通に考えれば、1/3の確率で敗北する勝負に先手必勝などあり得ない。まずは自分の手札を秘密にし、素早く勝負が発生する場に行き、誰がどの手を有しているかを観察しなければならない。1/3の確率であいこが発生するのだから、その勝負を見届けてから動く方が合理的だ。というか、自分から真っ先に手札をばらしに行くというのは、どうなのだろうか。誰か他の者に獲物をさらわれるのがオチだと思うのだが。
トランプの1~7+ジョーカーを使うデュアルクラッシュ・ポーカーにも突っ込みたい。これも普通に考えれば、チームで相談し、第1ターンは2人そろって最弱の1を出して、相手チームの手札を削りにかかるのではないだろうか。というか、チームで相談することなく、つまりバッティングをいつ起こすのか、もしくは起こさないようにするのかを相談しないなどということは、ゲームの性質上、ありえないし、考えられない。このあたりが本作がライアーゲームに及ばないと感じる一番の理由である。
森川葵の生脚は眼福であるが、池田エライザは何故、生脚ではないのか。そして、ああいう座り方をする以上は『 氷の微笑 』の審問シーン的なサービスショットを盛り込んでくれても良いではないか。オッサン映画ファン100人に訊けば100人が賛同してくれるだろう。
全体的には、賭けに狂っている高校生達というよりは、ゲームを楽しんでいる若者達という印象の方が強い。そこがディレクションの一番の問題点であろう。
総評
浜辺の新たな一面を切り拓いた作品と言えるが、その他のキャストに関してはどうだろうか。以前にも評したが、英勉監督は『 貞子3D 』および『 貞子3D2 』という超絶クソ作品を世に送り出した。一方で、『 あさひなぐ 』のような佳作を作る力もある。今作では若手俳優たちの演技力に救われた感があるが、監督としてはかなり伸び悩んでいるのかもしれない。劇場に行く際には、ドラマもしくは漫画である程度の予習が必要かもしれない。また、続編政策にかなり色気を見せたエンドクレジットを作っているが、その時には英監督以外を起用することも選択肢に入れるべきであろう。