Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: ライアン・レイノルズ

『 デッドプール&ウルヴァリン 』 -マルチバースを笑い飛ばす-

Posted on 2024年7月30日 by cool-jupiter

デッドプール&ウルヴァリン 80点
2024年7月27日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ライアン・レイノルズ ヒュー・ジャックマン
監督:ショーン・レビ

 

普通のヒーローに飽きてない?の惹句通りに、普通のヒーロー映画の文脈を逸脱しまくる快作に仕上がっている。

あらすじ

ヒーロー稼業を辞めて、ガールフレンドと別れてしまったウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)。友人たちに誕生日パーティーを開いてもらっているところに、時間変異取締局が現われて・・・

 

ポジティブ・サイド

デッドプール作品が他のヒーロー映画と明確に一線を画しているのは、

1)暴力描写
2)スラング使用

 

が主たる要因だが、本作でもそれは健在。冒頭から「それはやったらアカンやろ」というアクションを連発。アベンジャーズにもX-MENにも加入できないのもむべなるかな。特に暴力描写は、中盤のとあるスーパーヒーローの登場と見せかけて、「そっちかい」というキャラの死に様がすこぶる惨い。だが一番の見どころは、デッドプールとウルヴァリンのガチンコ対決。お互いに再生能力持ちなので、アホかというほどに斬り合う。これは確かにR指定である。そして終盤のマルチバースでは、某魔法使いをおちょくりつつ、彼の作品の同プロットをはるかに超えるスケールのバトルを繰り広げる。もちろん血みどろ。バイオレンスが好きな映画ファンも満足できる出来栄えだ。

 

もう一つ、アニメの『 サウスパーク 』かというほどに甲高い声とアップテンポでのスラング連発トークもデッドプールの特徴。中盤で悲惨すぎる死を迎える某キャラが最後の最後にプールのお株を奪う猛烈マシンガントークを見せつけてくれるので楽しみにしてほしい。Do you want to build a snowman? がとある隠語になっているのが個人的には驚きだった。

 

それにしても『 LOGAN/ローガン 』であれだけ従容として死んでいったウルヴァリンをあろうことか復活させて、そのうえでこれまでのX-MENシリーズの延長ではなく、一人のスーパーヒーローものとして成立させていることに度肝を抜かれた。ウルヴァリンはほとんど常になりゆきで戦いにその身を投じてきたが、今作では『 LOGAN/ローガン 』同様に自分からその身を戦いに投じていく。なぜ世捨て人同然の彼がデッドプールと共闘することになったのか知りたい人は、ぜひチケットを購入しよう。

 

それにしても、売れるヒーローあれば売れないヒーローあり。その売れないヒーローでチームを作って大暴れするデッドプール達は微笑ましくもあり、またアンチ・ヒーロー的でもある。ヒーローは世界を救うものだが、デッドプールが救いたいのは両手で数え切れるだけの友人たちだけ。世界の危機?マルチバースの危機?そんなものは知ったこっちゃねえという態度がいっそ清々しい。マルチバースの様々な自分と戦う終盤は、お互いに不死身同士で当然決着などつくはずもない。さて、どうオチをつけるのかと思ったら、そう来るとは。

 

本作のヴィランは、トレイラーにも出ていた謎のスキンヘッド女性。素性を知ってびっくり。なるほど、これもウルヴァリンが帰ってくる理由の一つになっていた。世界を救うにはどうすればいいか。ヴィランと戦うのは一つの手だが、異色のヒーローたるデッドプールは我々にも割と簡単に実現可能な方法を提示する。そう、一人ひとりがズッ友を持てれば、それでその人たちの世界は救われるのだ。

ネガティブ・サイド

アライオスという超存在を出す必要はあっただろうか?今後、アライオスがMCUにおける征服者カーンの代わりになる?そんな展開は要らない。

 

第四の壁の突破ネタが1つ、2つしかなかったのは寂しい。

 

字幕に「オズの魔法使い」とあったが、正しくは「オズの魔法使」ね。

総評

スパイダーマン同様に会社関係の権利が色々と整理されたことで、考えられなかったキャラ同士のクロスオーバーが楽しめる良作。普通のヒーロー映画やマルチバース展開に飽きた人にとっては新鮮に感じられる作品のはず。「世界を救う」ためではなく「愛する人/人々」を救うために戦うデッドプールは異色のヒーローではなく、実は我々が最も目標としやすいヒーローだ。チケットを購入して、劇場でこのヒーローを応援しようではないか。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Come again.

もう一度来い、ではない。これは「もう一度言ってくれ」の意味。文脈次第では「もう一回言ってみろ、テメー!」という意味にもなる。よっぽど仲の良い相手以外には使わない方がいい。映画やドラマでは結構聞こえてくるので、英語の中級者は耳を澄ませてみるのも良いだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 大いなる不在 』
『 ツイスターズ 』
『 先生の白い嘘 』

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村    

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, アクション, アメリカ, ヒュー・ジャックマン, ライアン・レイノルズ, 監督:ショーン・レビ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 デッドプール&ウルヴァリン 』 -マルチバースを笑い飛ばす-

『 フリー・ガイ 』 -R・レイノルズの代表作になるか-

Posted on 2021年8月21日 by cool-jupiter

フリー・ガイ 75点
2021年8月16日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ライアン・レイノルズ ジョディ・カマー リル・レル・ハウリー タイカ・ワイティティ ジョー・キーリー
監督:ショーン・レヴィ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210821124400j:plain

ライアン・レイノルズ作品。ほとんどが箸にも棒にも掛からない作品なのだが、たまに傑作が混じっている。本作は個人的には傑作である。ただし、波長が合わない人にとっては間違いなく地雷である。

あらすじ

「フリー・シティ」というオンライン参加型のゲーム内のNPC(Non-Playable Character)であるガイ(ライアン・レイノルズ)は、謎の女性モロトフ(ジョディ・カマー)に一目惚れ。ある時、モロトフのかけている眼鏡をかけることで、ガイは自分の世界がゲームであると認識してしまい・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210821124418j:plain

ポジティブ・サイド

ゲームの世界を舞台にしている点で『 竜とそばかすの姫 』そっくりだが、視点をプレイヤーではなくモブキャラに持ってきたのは割と斬新なアイデアなのではないか。ドラクエやFFで村人に話しかけたら、いつもと違う答えが返ってきたらプレイヤーは腰を抜かすだろう。本作はそうした「NPCの自律」を実はテーマにしている。

ライアン・レイノルズの普通の男っぷりが魅せる。人生に疑問を持たずに生きてきた男が、運命の女性 = Ms. Right を見つけて奮闘する・・・というのはありきたりもいいところのプロット。だが、本作がユニークなのはNPCが色々な経験を積んでレベルアップしていくこと、さらには他のNPCをも巻き込んで、ゲーム全体にまで影響を及ぼしていくところだろう。『 マトリックス 』シリーズとは真逆の発想で、世の中には凄いことを考える人がいるのだなと感心させられる。

ゲーム世界と現実世界のつながりにしっかりと意味がある点も評価できる。『 レディ・プレイヤー1 』のように「ゲームが居場所である」と言いながらも「やっぱり現実サイコー!」になってしまう作品よりも、よっぽど物語の骨格がしっかりしている。モロトフとしてゲームをプレーしているミリーには、ゲームをしなければならない理由があり、そのことがガイというNPCの設定に実は深く結びついているという脚本の妙には痺れた。

単純にアクションとして鑑賞するのも楽しい。ガイがゲームのアイテムを使用してプレイヤーから逃げるシーンは、緊迫感とユーモアが両立する稀有な演出。NPCが大冒険で経験値を積み上げてレベルアップしていくのにも笑ってしまうと同時に、その発想の非凡さに唸らされた。ガイ以外のゲームキャラも楽しい。特にバディを演じたリル・レル・ハウリーは『 ゲット・アウト 』の超面白キャラのノリを保っていて、ガイとの掛け合いは愉快の一言。またゲーム会社のボスであるアントワンも味のある悪役。演じるタイカ・ワイティティは『 ジョジョ・ラビット 』のイマジナリーフレンドのヒトラー役でも怪演したが、今作でもその chew up the scenery な演技は全開であった。

クライマックスはハチャメチャの一語に尽きる。『 ゴジラvs.コング 』のMonsterVerseのように、異なる映画世界を一つにまとめ上げていくのは最早一つのトレンドだが、ここでそう来たか、と。『 レディ・プレイヤー1 』のガンダムとメカゴジラの激突に匹敵する壮絶なパロディが炸裂する。TPPの黒幕である某社の面目躍如である。さあ、大いに笑おう。そして、人生を誰かにコントロールされているかもしれない自分自身を少し顧みてみようではないか。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210821124435j:plain

ネガティブ・サイド

YouTuberたちや世界の色々なゲーマーたちがガイに注目していっているのに対して。フリー・シティの開発会社の面々が本気で対策に乗り出さない理由の描写が弱かったと思う。アントワンから「奴を消せ、しかし奴の中身のデータは見るな」的な指示によって社内に波紋が広がるようなサブプロットがあっても良かったように思う。

裏の主人公であるキーズの見せ場が少なかったか。アントワンと対峙するも、口論であっさり敗退・・・という強烈なシーンがあれば「男は黙ってコードを書く」的なキャラの印象がもっと強まったはずだ。

総評

ライアン・レイノルズがついに『 デッドプール 』以外の代表作を手に入れたか。同僚カナダ人に”Most of his movies are garbage.”と評されてしまうライアンだが、『 名探偵ピカチュウ 』と本作によって、コメディとシリアスの間を自在に行き来できる役者であることがあらためて証明された。デッドプールの第3作も期待できるかもしれない。ある程度、映画やゲームのバックグラウンドがある人であればかなり楽しめるかもしれないし、逆に「ふざけるな!」と憤慨してしまうかもしれない。いずれにせよ、現状に閉塞感を感じる人にこそ本作は鑑賞してほしい。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Don’t have a good day. Have a great day!

日本語にするのが難しいが、相手との別れ際の挨拶として”Have a ポジティブな形容詞 + 名詞”というのが定番である。時間帯によっては day = 昼だったり、evening や night も使うし、週末であれば weekend となる。旅行という文脈では Have a nice trip. や Have a nice stay. が定番である。great は good よりも「良い」の意味合いが強い。映画『 エアレース 』でも、”If he’s good, I’m great.” = 「あいつが good なら、俺は great だ」というセリフもあった。great > good なのである。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村

Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, アメリカ, ジョー・キーリー, ジョディ・カマー, タイカ・ワイティティ, ライアン・レイノルズ, リル・レル・ハウリー, 監督:ショーン・レヴィ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 フリー・ガイ 』 -R・レイノルズの代表作になるか-

『 名探偵ピカチュウ 』 -まさかの実写化成功!?-

Posted on 2019年5月7日 by cool-jupiter

名探偵ピカチュウ 70点
2019年5月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジャスティス・スミス ライアン・レイノルズ 渡辺謙 
監督:ロブ・レターマン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190507004330j:plain

日本が世界に誇るコンテンツといえば、ドラゴンボール、キャプテン翼、ONE PIECE、ゴジラだろう。それらに次ぐものとしてポケモンが来るだろうか。Jovianは、はっきり言ってポケモンは、大まかなあらすじや世界観ぐらいしか知らない。しかし、皮相な知識しか有していなくても本作を楽しむことはできた。

 

あらすじ

ティム(ジャスティス・スミス)は疎遠になっていた父ハリーが、職務中に死亡したとの報を受け、人間とポケモンが共存するライムシティに向かう。そして父の自宅で、人語を話す名探偵ピカチュウと出会う。だが、ティム以外の人間にはピカチュウの言葉は「ピカピカ」としか聞こえず・・・

 

ポジティブ・サイド

2018年の海外クソ映画オブ・ザ・イヤー次点だった『 ジュラシック・ワールド 炎の王国 』でピーピーキャーキャーと騒がしいだけだったジャスティス・スミスがまともな演技をしている。それだけで評価をしたくなるのだから、クソ映画に出演することも肥やしになるのだろう。

 

しかし何と言っても、ピカチュウの声を務めたライアン・レイノルズを称えたい。同国人のカナダ人からも“Most of his movies are garbage.”と言われてしまう不遇の役者だが、『 デッドプール 』に次ぐ代表作を手に入れたかもしれない。さらに、本作は彼の過去の出演作を意識した作りになっていると思われる。ネタばれを避けるために白字にするが、

 

『 セルフレス 覚醒した記憶 』

『 白い沈黙 』

 

この二つを事前に観ていれば、本作の味わいがさらに増すことだろう。日本では本職ではない俳優が声優をすることについて賛否両論があり、それはアメリカやカナダでも同様だと思われる。『 グリンチ(2018) 』でもB・カンバーバッチがグリンチの声優を務めてそれなりに良い仕事をしたように、今後は海外でもこうした傾向が拡大していくのかもしれない。幸い、Voice Actingという意味ではレイノルズはデッドプールで経験済みであるし、彼の語りの面白さは、その声の微妙な甲高さに同居する絶妙なオッサン臭さである。本作は、吹替えではなく字幕で鑑賞して欲しい。そしてピカチュウの声を堪能して欲しい。

 

CGの美麗さも素晴らしい。ピカチュウというモフモフ系のクリーチャーがこれほど可愛らしく表現されること、そしてそれ以上にその他のポケットモンスターたちが自然や建造物といった背景に違和感なく溶け込んでいるに驚かされる。CGはどれほど精巧でもCGであると分かってしまう。しかし、それを認識する我々は、CGを不自然なものではなく、自然なものとしていつの間にか受け取りつつあるのではないか。『 シン・ゴジラ 』で初めてゴジラというキャラクターが着ぐるみではなくフルCGとして再現された頃から、我々のCG認識に変化が生じてきているのかもしれない。そんなことさえ考えてしまうほど、美麗にしてナチュラルなCGである。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190507004401j:plain 

ネガティブ・サイド

一応、ヒロインらしきキャラクターが存在するが、プロット上で欠かせない役割を演じるわけではない。このキャラについては、よりしっかりした活躍をする脚本を採用するか、あるいはばっさりと切り捨ててしまうぐらいで良かったように思う。

 

またティムの職業である保険の営業員というバックグラウンドも、ストーリー上で何も有効に作用していない。また、友達作りが下手だというキャラ属性も同様である。ヒロインとの距離の取り方および縮め方にぎこちなさがあり、そこをピカチュウに適宜に突っ込まれるも、特にトラブルも何も生じないからだ。要するにバディムービーのお約束が果たされないのだ。これはちょっと物足りない。

 

最後に、映画そのものではなく邦題について。原題のPokemon Detective Pikachuのdetectiveを名探偵と訳しているが、ストーリー展開から考えるに、これは刑事の方だろう。刑事のバディなら、普通は刑事だろう。邦題をつけた担当者には、もう少ししっかりとストーリーを見てもらいたいと思う。

 

総評

熱心なポケモンファンではない人間からすれば、この映画は面白い。改善点は残すものの、長所の方が目立つ作りになっている。『 プーと大人になった僕 』、『 アリータ バトル・エンジェル 』でもそうだったが、CGと実写がもはや違和感なく共存する時代になってきた。本作がヒットすれば、さらに多くの類似のコンテンツが大スクリーンを彩ることだろう。大いに期待したい。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190507004415j:plain

Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2010年代, B Rank, SFアクション, アメリカ, ライアン・レイノルズ, 渡辺謙, 監督:ロブ・レターマン, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 名探偵ピカチュウ 』 -まさかの実写化成功!?-

デッドプール

Posted on 2018年6月3日2020年2月13日 by cool-jupiter

デッドプール 80点

2016年6月 東宝シネマズ梅田 109シネマズHAT神戸その他およびブルーレイにて鑑賞
主演:ライアン・レイノルズ
監督:ティム・ミラー

のっけからブッ飛ばされる映画である。アメコミでキャラクターの存在自体は聞いたことはあったし、X-MEN映画でもウルヴァリンと激闘を演じていたので、予備知識ゼロではなかった。それでも劇場で観た時の衝撃は忘れられないものがあった。

何よりも第4の壁の超え方に、あまりにも遠慮が無い。Jovianが初めて第4の壁を経験したのは映画『ネバーエンディング・ストーリー』だったが、この物語にはそれこそしっかりとした Build-Up があった。日本でも古畑任三郎が視聴者に語りかけてきたり、近年だと『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でディカプリオが観客に話しかけてきたが、デッドプールの節操の無さには文字通り度肝を抜かれる思いがした。なぜならストーリーと一切関係の無いことで話しかけてきたからだ。

そうして観客をポカーンとさせておいたまま、カーチェイスアクションとバトルシーンに雪崩れ込んでいく。CG全開のファイトとはいえ、グロシーンの連発にR指定映画であることを思い出す。DCやマーベルには決してできない演出が炸裂する。そこから一気に回想シーンへ。ここでようやく人心地ついた観客は、じっくりとラブ・ストーリーが醸成・・・されるシーンを楽しめるわけではない。なぜなら、やはりこれはR指定映画。いきなりのベッドインから、あれよあれよの時間の経過、そして残酷な運命の瞬間と、傭兵ウェイド・ウィルソンがミュータントに変貌する瞬間までが一気にジェット・コースターのように展開される。 

Jovianのお気に入りのシーンは、T・J・ミラーとのコントそのものの掛け合い。男の淡い友情がさらりと描かれる名シーンであると感じている。“To you, Mr. Pool. Deadpool. That sounds like a fuckin’ franchise.という台詞には、紛れもなくシリーズ化への希望が込められた映画で、ミラーも実はここで密かに第4の壁を壊していた、ということを『デッドプール2』を観たうえで本作を見返すと、そう思えてくるのだ。

アメコミ映画では割と珍しく本格的な刀アクションを見せてくれ、誰もがやりたくて、しかしできなかった首切断からのサッカーボールをキックを実現してくれたりと、とにかくR指定映画作りを役者もスタッフも満喫していた様子がうかがえる。

またクレイジーと言えるほどの小ネタが投入されており(それは続編も継承した路線)、初見では笑えなくとも、その他のメジャー作品(アメコミに限らない)を観るたびに、何らかのオマージュを見つけることができるかもしれない。逆に、熱心なアメコミファン、映画ファンであれば、3分に1回は笑える、あるいは感心させられる映画であるとも言える。

これまで数人のカナダ人にライアン・レイノルズについて尋ねてみたことがあるが、「カナダでライアンと言えば、レイノルズじゃなくてゴズリングだぞ」、「悪い役者ではないが、出演作のほとんどがゴミ(garbage)だ」、「誰だ、そいつは?」など散々な評価であった。だが本作によって遂にライアン・レイノルズは代表作を得たと言ってもよいだろう。

今作を際立たせている要素にBGMがある。特にヒロインのヴァネッサとの関係性の構築は、ほとんど全てベッド上で行われるが、ニール・セダカの“Calendar Girl”があまりにもハマっている。またデッドプールの大ピンチシーンで流れてくるChicagoの“You’re the inspiration”のディスト―ションは、まんまプールのダメージと精神状態を表現する素晴らしい演出。エンディングで流れるWham!の“Careless Whisper”は、今になって聞き返すと寂しさがしみじみと込み上げてくる。

とにかく傑作である。頭を空っぽにして楽しんでも良いし、あらゆるカメオや小ネタを見逃すまいと鵜の目鷹の目で観賞してもよい。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アクション, アメリカ, ライアン・レイノルズ, 監督:ティム・ミラー, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on デッドプール

デッドプール2

Posted on 2018年5月31日2020年1月10日 by cool-jupiter

デッドプール2 75点

2018年5月31日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
主演:ライアン・レイノルズ ジョシュ・ブローリン
監督:デビッド・リーチ

 

* ネタバレ部分は白字

『アトミック・ブロンド』という、ありえなさそうで、おそらく実際はあったのだろう極限状況で、実際にありそうな、つまり主人公が次から次に雑魚敵を屠っていくのではなく、一人また一人と苦労しながら倒していく、そんなファイト・シーン、アクション・シークエンスを撮り切ったデビッド・リーチがすったもんだの末にデッドプールの続編を撮影するとなると、確かに一抹の不安はあった。しかしそれは杞憂であった。

前作の『デッドプール』でこれでもかと取り入れられていた Fourth Wall Break 、いわゆる第四の壁破りは今作では鳴りを潜めていた。が、その理由を我々はエンディングで知る。デッドプールは破ってはいけないものを次々に破っていく。それは因果律であったり業界のお約束でもあったりする。エンドクレジットのシーンでは絶対に席を立ってはいけない。

前作ではラブ・ストーリーであることを悪党を串刺しにしながら高らかに宣言していたが、今作でもやはり悪党をぶちのめしながらファミリー・フィルムであることを宣言する。前作でウェイドとヴァネッサが、どれだけ自分が家族に恵まれてこなかったかを競う場面が印象的だったが、今作はその家族の意味を追求しようというわけか。その思惑はしかし、良い意味で裏切られる。

冒頭のアクション・シーンでは前作の冒頭およびクライマックス並みのグロシーンがあるので、耐性が無い人は注意されたい。ただし本当に注意しなければならないのは、冒頭のクレジットシーンである。前作では笑える人には笑える、笑えない人にはさっぱり笑えないクレジットシーンから物語が始まったが、今作は観客を混乱の只中に叩き込む。なぜ、なぜ、なぜ・・・ 

コミックに詳しくない、あるいはトレイラーをじっくり観てきた人ほど、ある意味で裏切られる展開が待っている。だが、デッドプールが何故その選択肢を選んだのかについて理解できないという場合には、今作が家族映画であるということを思い出してほしい。家族を構成するものは何か。夫婦だけでは普通は家族とは言わないのだ。実際に英語で “I have a family of four.” と言うと、「自分には子どもが4人います」という意味になる。ウェイド・ウィルソンにとっての家族の意味を考えることが非常に重要である。

アクション面では期待を裏切らない。元々、『ジョン・ウィック』シリーズの制作に関わっていたリーチ監督だけに、アクション・シークエンスには常に驚きと興奮がある。冒頭の刀を使ったアクションシーンは『キル・ビル』を、ケーブルとのバトルシーンは『ターミネーター2』を、第3幕のCGバトルは『インクレディブル・ハルク』を思わせる(実際にその直前のシーンで、あるキャラがアボミネーションという言葉を口にする)。にも関わらず既視感に捉われるわけではないというのが監督としての力量を物語っている。パクリとオマージュの境界線がここにある。もちろん、『 レディ・プレーヤー1 』ほどではないが、今回も前作に続いて小ネタが満載である。DCのスーパーマンに言及するのは朝飯前で、ジョージ・マイケル、アカデミー賞選考委員、さらにはカナダという国までディスっていくのは痛快である。更なる続編は、黒澤明作品にインスパイアされているとの情報もあるので、単なるネタだけではなくシネマトグラフィーの面からも大いに期待できそうだ。前作からのキャラも再登場し、さらにはX-MENシリーズについてもある程度知っておかなければならないというハードルはあるが、それを差し引いても満足できる出来だ。

最後に本作を観る際に、ある意味で最も重要なアドバイスを。ビルの壁に注意をしてほしい。そう、『 ベイビー・ドライバー 』で冒頭、ベイビーがコーヒーを買うシーンを観る時の、あるいはそれ以上の集中力で、ビルの壁に注意を払って欲しい。以上である。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, ジョシュ・ブローリン, ライアン・レイノルズ, 監督:デビッド・リーチ, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on デッドプール2

最近の投稿

  • 『 今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は 』 -青春の痛々しさが爆発する-
  • 『 28週後… 』 -初鑑賞-
  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-
  • 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme