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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: パク・ヘイル

『 別れる決心 』 -歪んだ純愛-

Posted on 2023年2月23日 by cool-jupiter

別れる決心 70点
2023年2月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:パク・ヘイル タン・ウェイ
監督:パク・チャヌク

大学の追試や試験代替課題の採点と新年度の準備と研修ラッシュ。ここから1か月半はまさに繁忙期。しばらく簡易レビュー続きになるか。

 

あらすじ

刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、ある男性が山頂から転落死した事件を捜査していた。殺人の可能性を見出したヘジュンは、男性の妻ソレ(タン・ウェイ)に疑惑の眼差しを向ける。しかし彼女にはアリバイがあった。捜査を進めるうちに、強くしなやかに生きるソレに、ヘジュンは徐々に惹かれていき・・・

ポジティブ・サイド

タン・ウェイの妖艶さに尽きる。別にきわどい露出や激しいラブシーンがあるわけではないが(ヘジュンと奥さんのセックスシーンはある)、その femme fatal ぶりには魅了されざるを得ない。理解したいのに理解できない。いや、理解できるが間接的にしか理解できないという刑事ヘジュンと容疑者ソレの距離感が絶妙。時に使用されるスマホの翻訳機能が二人の間の越えがたい、しかし超えられないことはないという壁を象徴している。

 

パク・チャヌクといえば『 オールド・ボーイ 』のようなエロスとバイオレンスが持ち味。しかし、本作のエロスは実に控えめ。バイオレンスなシーンもあるにはあるが、青あざと流血に彩られるようなものでもない。ヘジュンが捜査のために一方的に室内のソレを覗くシーンの演出は見事だった。こうやって、いつの間にか容疑者に同化してしまう、というのは実際にありえそうに感じた。

 

誰かが死ねば、あの刑事がやって来る。あるいは、何らかの謎さえあれば、あの男はやってくる。これをサイコパスの思考と見るか、それとも究極の愛情と見るか。セックスする相手を愛しているのか、それとも愛しているからこそセックスしないのか。様々な問いが渦巻く中、女たちは別れる決心をする。なんとも苦みと深みのある作品だった。

 

ネガティブ・サイド

実質的に二部作的な構成になっているが、これをもうちょっと縮めて2時間ちょうどにはできなかったか。

 

殺人事件そのものの捜査の描写が弱い。ヘジュンが捜査に憑りつかれているのは分かるが、客観的に見て「警部、ちょっとおかしいですよ」と言ってくれるキャラが後半になってはじめて現れるのには違和感を覚えた。

 

総評

韓国映画らしいと言えば韓国映画らしいが、パク・チャヌク映画らしいかと言われれば、あまりそうではない。それでも、巨匠の新境地と言うか、見せないことで想像力を刺激する、あるいは直接的にではなくシンボルを通じて見せるという手法に唸らされることが多かった。もう少しコンパクトにまとめられていれば、韓国映画ファン以外にも勧められる。逆に言えば、韓国映画ファンならばチケット代の価値は十分に得られる。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヨボ

韓国映画ではしばしば夫婦が互いに「ヨボ」と言って呼びかける。日本語で言うところの「あなた」や「なあ」などに当たるらしい。劇中のヘジュンが時々発する言葉だが、この言葉ひとつで距離感が近くなったり遠くなったり感じるのだから、人間関係、就中、夫婦の関係というものは難しい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エゴイスト 』
『 銀平町シネマブルース 』
『 シャイロックの子供たち 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, タン・ウェイ, パク・ヘイル, ラブロマンス, 監督:パク・チャヌク, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ, 韓国Leave a Comment on 『 別れる決心 』 -歪んだ純愛-

『 グエムル-漢江の怪物- 』 -怪物を生み育てたのは誰か-

Posted on 2020年11月21日 by cool-jupiter

グエムル-漢江の怪物- 75点
2020年11月18日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ソン・ガンホ ペ・ドゥナ ピョン・ヒボン パク・ヘイル オ・ダルス
監督:ポン・ジュノ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201121231529j:plain
 

『 ゴジラ 』がそうであるように、怪獣は戦争や災害、あるいは人間の業の象徴である。本作を通じてポン・ジュノは何を描こうとしたのか。英語タイトルが“The Host”であるところから、『 パラサイト 半地下の家族 』の対になる作品であることは間違いない。

 

あらすじ

在韓米軍基地は毒薬を漢江に垂れ流していた。その数年後、突如として漢江から巨大なオタマジャクシのような怪物が出現し、人間を襲っていく。怪物に娘ヒョンソをさらわれたカンドゥ(ソン・ガンホ)は家族総出でヒョンソを救出しようとするが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 パラサイト 半地下の家族 』が韓国人家族と韓国人家族(と韓国人家族)の寄生関係を描いたものであるとすれば、本作の英語タイトルが指し示す“宿主”とは何か。それは歪な韓国社会そのものだろう。歪とはどういうことか。それは宗主国たるアメリカの軍部に言われれば、自らの国土を猛毒で汚染することもいとわない国家の体質だ。いわば、このグエムルは韓国社会の鬼子なのだ。

 

本作は怪獣映画にしては珍しく、怪獣の登場を引っ張らない。開始10分も経たないうちに怪獣が姿を現す。そして人々を襲っていく。ゴジラ級のサイズではなく、マイクロバス程度の大きさの怪獣が白昼堂々と全身を晒して人間を食べていく様は爽快ですらある。凡百の作り手ならば、グエムルの初登場は夜、それも酔っぱらって、ひとり夜風にあたろうと川べりにやってきた者を尻尾でヒュンと引き寄せて終わり、のような焦らす構成にするはず。ポン・ジュノ監督はそれをせず、怪獣の見せ場をいきなり序盤に持ってきた。そうして怪獣の社会に与えるインパクトを最大限に観客に見せつけ、そこから怪獣に対処していく韓国政府や米軍、そして娘を奪われた家族の動きに視線をフォーカスしていく。『 GODZILLA ゴジラ 』のサブプロットになりそうだった「怪獣出現によって離散してしまった(主人公とは赤の他人の)親と子の物語」を、『 エイリアン2 』でリプリーがニュートを救出せんとする勢いで展開される家族の奮闘物語は、日本の怪獣映画ジャンルではあまり見られなかったものだろう。怪獣が暴れていなくても、カンドゥの家族が当局や軍を向こうに回して奮戦して、緊張感が途絶えない。

 

ダメ男であるソン・ガンホが娘のために立ち上がり、一度はあきらめかけた家族が、それでもヒョンソ救出のために一致団結して、韓国の当局や米軍をも相手に回して、堂々とグエムルに立ち向かっていく描写は、リアリスティックとは言えないが、非常に力強く上質なファミリードラマになっている。ぺ・ドゥナがアーチェリー選手というのもいい。映画の世界では『 ロード・オブ・ザ・リング 』のレゴラス、『 ハンガー・ゲーム 』のジェニファー・ローレンスに次ぐ射手で、スマートに標的を素早く射抜くのではなく、泥まみれになって必中のタイミングを待つタイプである。終盤の一撃はひたすらにかっこいい。

 

本作の背景には『 サニー 永遠の仲間たち 』で描かれたような、軍事政権に圧迫されていた民衆の蜂起の歴史がある。グエムルは鬼子であって奇形生物であり、その原因は米軍が作ったとなると、どうやってもベトナムを想起しないわけにはいかない。『 息もできない 』で描かれたように、戦争は人間の心を壊すのである。本作は、家族の再生物語でもあるのだ。『 ブリング・ミー・ホーム 尋ね人 』にも通じる、というか受け継がれたエンディングがそこにある。邦画の世界が『 朝が来る 』で提示したテーマを、韓国は10年以上前に先取りしていたようである。さらにCOVID-19やMERS以前でありながら、マスク姿の市民のパニックを正確に描き出してもいる。ポン・ジュノの慧眼、恐るべし。

 

ネガティブ・サイド

結末がちょっと・・・ 韓国の家族観には感動させられることもあるが、困惑させられることもある。本作はその両方を味わわせてくれるが、感動3:困惑7の割合である。

 

グエムルを倒すための最終兵器もやや???である。グエムルに効いて、人間相手には効いたり、効かなかったりする。もちろん米軍への皮肉なのであろうが、気象条件によっては使用できない兵器というのはいかがなものか。いっそのこと、漢江に対グエムルの物質を大量に放流するぐらいのエクストリームな展開にしてもよかったのではないかと思う。

 

最後に米軍サイドの人間にもなんらかの勧善懲悪的な展開があってほしかった・・・ これは大人の事情で難しいか。

 

総評

シンプルに面白い一作。コロナ禍の今だからこそ再鑑賞する意味や機運が高まっていると言えそう。怪物グエムルのCGっぽさに2000年代を感じさせるが、その他の家族ドラマの部分には普遍性が感じられるし、国家や社会の怪物(およびウィルス)への反応には先見性が感じられる。年末年始は里帰りせずstay homeの予定であるという向きは、本作をwatch listに入れておかれたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be broad-minded

『 罪の声 』で三頭竜=Three-headed Dragonなど、分詞の形容詞的用法の例を紹介させてもらった続きである。序盤の米軍科学者が“The Han River is a broad river. Let’s be broad-minded.”=漢江は広い川だ。我々も広い心を持とう(そして汚染物質を川に流そう)と言うシーンがある。narrow-minded=偏狭な、狭量な、心の狭い、とセットで覚えよう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, B Rank, オ・ダルス, ソン・ガンホ, パク・ヘイル, ヒューマンドラマ, ピョン・ヒボン, ペ・ドゥナ, 怪獣映画, 監督:ポン・ジュノ, 配給会社:角川ヘラルド映画, 韓国Leave a Comment on 『 グエムル-漢江の怪物- 』 -怪物を生み育てたのは誰か-

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