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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: パク・ジョンミン

『 ただ悪より救いたまえ 』 -容赦ない韓流アクション-

Posted on 2022年1月4日2022年1月4日 by cool-jupiter

ただ悪より救いたまえ 75点
2022年1月2日 心斎橋シネマートにて鑑賞
出演:ファン・ジョンミン イ・ジョンジェ パク・ジョンミン
監督:ホン・ウォンチャン

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新年の韓国映画鑑賞第一弾。心斎橋の人出は多いが、信頼できる客層のシネマートへ。『 ソワレ 』、『 成れの果て 』という重い映画の鑑賞が続いたので、派手なアクションを観たいと思ったのだが、スカッとするどころか(良い意味で)身も心もボロボロになるような映画だった。

 

あらすじ

暗殺者のインナム(ファン・ジョンミン)は最後の仕事として日本のヤクザ、コレエダを殺害する。しかし、義絶状態にあったコレエダの弟にして狂気の殺人鬼レイ(イ・ジョンジェ)がインナムへの復讐を誓う。インナムはかつての恋人に娘がおり、その娘がタイで誘拐されたことを知り、救出のためタイへ渡る。そしてレイもインナムを追ってタイへ・・・

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ポジティブ・サイド

これは(『 アジョシ 』+『 チェイサー 』+『 哀しき獣 』)を3で割って、そこにホン・ウォンチャン監督のテイストを加えた、韓流ノワールの秀作である。まさに「そこまでやる必要があるのか」である。

アジョシは元々、チェ・ミンシクやソン・ガンホといった本物の中年オジサンを使う予定だったらしいが、イケメン青年ウォンビン(当時)を起用することで思いがけずスタイリッシュな作品に仕上がった。一方で本作はファン・ジョンミンという、中年のオッサンでありながら、ガンホやミンシクといった濃いめのオッサン色ではなく渋みを前面に押し出したアジョシを起用することで、悲哀がより色濃く表現されるようになった。

本作の特徴は国際的なスケールの大きさ。日本、韓国、タイ、そして最終的には中米パナマにまで至り、聞こえてくる言語も日本語、韓国語、中国語、タイ語、英語である。明らかにアジア市場、そして世界市場を視野に入れた作品作りである。主演の二人も片言ながら、日本語、英語を操り、インナムのバディとなるもう一人のジョンミン、ユイはタイ語も流暢に話す。『 PMC ザ・バンカー 』のハ・ジョンウとまでは言わないが、邦画の世界ももっと役者に外国語を喋らせてもいいのではないか。近年だと『 ゲノムハザード ある天才科学者の5日間 』の西島秀俊の韓国語ぐらいしか思いつかない。

閑話休題。本作は優れた過去の韓国映画だけではなく、ハリウッド映画なども下敷きにしている。レイがバンコクで銃器を調達する方法は、まんま『 ターミネーター 』のシュワちゃんだし、最終盤の対決の決着シーンは、まんま『 レオン 』だったりする。ただ、そうした一見するとパクリにしか思えないシーンの数々が韓国色に染め上げられた結果、優れたオマージュとして機能している。

インナムとレイの対決を決して正義と悪にぶつかり合いのように描かないところが良い。インナムへの連絡係(『 パラサイト 半地下の家族 』のリスペクトおじさん!)を牛や豚のように解体していくレイが「俺のおやじは屠殺業者だった」と語るシーンでは、『 血と骨 』のビートたけしが思い起こされたし、日本でもタイでも、殺すと決めた相手は容赦なく殺す姿勢が徹底している。一方のインナムもハサミで拷問相手の指を切り落とすという血も涙もない所業で相手の口を割らせる。ハサミが放つ鈍い光に使い込まれ具合が見て取れ、インナムの暗殺家業の凄惨さが垣間見える。二人が対峙していく過程で、タイという国の裏のビジネス、そこで韓国人が韓国人を搾取するという構図、その中にちゃっかり存在する中国人、ついでに人気の日本人など、これでもかと大都市の闇、人間の闇が暴かれていく。その濃い闇を背景に、暗殺者 vs 殺し屋というどっちもどっちの対決の構図の中に「見知らぬ娘を救うため」という大義と、「兄貴の敵を討つ」という大義がぶつかり合う。単なるドンパチと見せかけて、韓国人の家族観が非常に強く投影された対決になっていく。

廃工場、ホテル、市街地で繰り広げられるインナムとレイの激闘はまさに息を呑むもの。リハーサルとかできたのだろうか。どこまでが実写でどこからがCGだか分からない。戦いの中で人間性を取り戻していくインナムと、どんどんと獣になっていくレイというコントラストが絶妙だ。まさに血みどろの対決に、観ている側は完全に消耗しきってしまう。心地よい疲れでは決してない。しかし、凄いものを観たという感覚を味わえることは間違いない。

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ネガティブ・サイド

主人公インナムには特殊工作員あがりというバックグラウンドがあるので強いことは分かるが、レイの強さの背景がよく分からない。在日韓国人ということは日本育ちなわけで、ヤクザ稼業だけであそこまで刃物や銃火器の扱いに習熟できるものだろうか。豊原功補と義絶していたとはいえ、あれほど強烈な弟が全く知られていなかったというのは無理があるのでは。まあ、銃器については『 アウトレイジ 』でもどこからかマシンガンが調達されたりしているので、あまり突っ込むのは野暮かもしれない。『 哀しき獣 』のキム・ユンソクのように元々強かったと思うようにすべきか。

インナムがバンコクでもずっと黒のスーツを着用しているのは、一種のトレードマークだから仕方ないか。だが、あれでは目立ちすぎて、あっという間に警察に通報されて御用となりそう。プロらしく、密かにバンコクの街に溶け込むという描写が欲しかった。

バトルシーンで頻繁に使われるスローモーションがやや気になった。あまり多用すると、せっかくのアクションが安っぽく見えてしまう。

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総評

ひたすらに疲れる映画体験だった。劇場を出たところでスタッフが「ただいま売店にて”ただ渇きより救いたまえ”を販売中でーす」と案内をしていて、その商魂のたくましさに思わず笑ってしまった。これがなければ家路の間、ずっと重苦しさに支配されていたかもしれない。逆に言うと、それぐらい重い作品。派手なアクションでスカッとした気分になりたいと臨んだが、そんな爽快系の作品では決してない。どちらかというと『 ビースト 』のような悪のオッサン二人の極限の演技対決である。鑑賞の際は自身のメンタルをよくよく事前チェックされたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

You had it coming.

『 リアム16歳、はじめての学校 』でも紹介した表現。今作では「自分でまいた種だ」というセリフがあったが、それを英訳すると ”You had it coming.” となる。 積極的に使いたい表現ではないが、英会話中級者以上なら知っておきたい。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, イ・ジョンジェ, パク・ジョンミン, ファン・ジョンミン, 監督:ホン・ウォンチャン, 配給会社:ツイン, 韓国Leave a Comment on 『 ただ悪より救いたまえ 』 -容赦ない韓流アクション-

『 スタートアップ! 』 - 韓流・腕力コメディ-

Posted on 2020年10月25日2022年9月16日 by cool-jupiter

スタートアップ! 55点
2020年10月24日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:マ・ドンソク パク・ジョンミン チョン・へイン ヨム・ジョンア
監督:チェ・ジョンヨル

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序盤はコメディ色が強めだが、終盤はやはり腕力で全てを解決売る展開に。ある意味予想通りの作りである。シネマート心斎橋は9割以上の入り。『 鬼滅の刃 無限列車編 』も熱いが、韓国映画、そしてマ・ドンソクも固定客をガッチリと掴んでいる印象。

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あらすじ

テギル(パク・ジョンミン)とサンピル(チョン・へイン)の悪童連は、大学にも予備校にも行かず自堕落な日々を過ごしていた。サンピルはカネを稼ぐために就職するが、そこはヤクザの高利貸しだった。一方のテギルも地元を飛び出し、偶然に立ち寄った中華料理屋で異彩を放つ料理人、コソク(マ・ドンソク)に出会うが・・・

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ポジティブ・サイド

しょっぱなから主人公のテギルが殴られまくる。まずはヨム・ジョンア演じる母親からビンタを食らいKOされる。そして、謎の赤髪サングラス女子にもボディーブローでKOされる。極め付きは住み込みバイトをすることになった中華料理屋でもマ・ドンソク演じるコソク兄貴にもKOされる。いったいどこまで殴られるんだ?さらにこいつはどれだけ打たれ強いんだ?と、笑ってしまうほどに思わされる。しかし、住み込み初日明けの朝、逃げ出そうとするテギルにコソク兄貴が、拳ではなく言葉で語ってくる。それによって、殴られるよりも効いてしまうテギル。負け惜しみで「逃げるんじゃねえ。ウンコに行くだけだ」と言うのだが、このセリフが終盤のちょっとした伏線になっているのはお見事。

 

このテギルとコソク兄貴の関係を軸に、多種多様な人間関係が描かれていくが、実は彼ら彼女らは皆、社会のメインストリームから外れた者たちである。つまり、本作は「連帯」を描いているわけだ。社会の一隅には、こんな人たちがいる。しかも健気に生きている。そこにヤクザ者や半グレ集団が絡んできて、そしてそのヤクザ者の中に旧知の間柄の人物が・・・という、ある意味では陳腐な物語ではある。だが、非常に示唆的だなと感じたのは、弱い立場の人間を虐げる者の中にも、実は弱い人間がいるということ。誰も初めから弱者を虐げ搾取しようなどとは思わない。ヤクザの高利貸しがドスを効かせて言う「どんな仕事も長く続ければ、それが天職になるんだ」というセリフには、そうしたヤクザ者たちも最初はその仕事を嫌がっていたということが仄めかされている。

 

なんだかんだで最後はマブリーが腕力と胆力で解決するわけだが、テギルとサンピルの悪ガキコンビの成長も併せてしっかり描かれている。また、それを見守る中華料理屋のオーナーの渋みと深みよ。この人、『 エクストリーム・ジョブ 』のチキン店オーナーだったり、『 暗数殺人 』のマス隊長だったりと、見守る役を演じさせると天下一品だなと感じる。日本で言えば『 風の電話 』の三浦友和の雰囲気に通じる。陳腐な人間ドラマではあるが、感じ入るものがある。マ・ドンソクのファンなら観ておきたい。

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ネガティブ・サイド

テギルとサンピルのキャスティングは、逆の方が良かったのでは?これはJovianの嫁さんも同感だったようである。イケメンが反抗期で、ケンカの腕もたいしたことないのに、ところかまわず生意気盛りにケンカを売って殴られまくる方がより笑えるように思う。絵的にも、生傷が絶えない金髪テギルの方が借金取りに似合っている。というか、この男、DNA的に菅田将暉と遠い共通のご先祖様を持っている・・・???

 

テギルの母が元バレーボール選手という設定もあまり活きていない。ビンタよりも脳天唐竹割りの方がバレーのスパイクと似ているし、絵的にも笑えるのではないかと思うが、いかがだろうか。

 

個人的にはマ・ドンソクのおかっぱ頭にはそれほど笑えなかった(TWICE好きでノリノリで踊るには笑ったが)。いかつい風体の男が、目を開けて寝たり、中華鍋を華麗に振るったりするだけで十分にギャップがある、つまり面白い。おかっぱ頭はビジュアル的にはインパクトがあるが、それなしで勝負することも十分にできたと思うのだが。結局、最後はいつものマ・ドンソクに戻るわけだし。

 

社会的弱者の連帯を謳った本作であるが、未解決の問題も数多く残されたままストーリーは完結する。もっと荒っぽくてもよいので、無理やりにでも大団円にできなかったか。一部の問題は、まるで最初から存在しなかったかのようですらある。

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総評

序盤のギャグには面白いものとつまらないものが混在している。『 エクストリーム・ジョブ 』は劇場内のあちこちから「ワハハ」という声が聞こえてきたが、本作はそこまでではない。ちょこちょこ「クスクス」という笑いが漏れてくる程度だった。もっと振り切った笑いを追求できたはずだし、あるいはもっと容赦の無いバイオレンス描写も追求できたのではないか。マ・ドンソクの魅力やカリスマに頼りすぎた作品という感じがする。ファンなら観ておくべきだが、コメディ要素を期待しすぎると少々拍子抜けするかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

イーセッキ

『 サスペクト 哀しき容疑者 』でも紹介した表現。意味は「てめえ、この野郎」ぐらいだろうか。本作でも何十回と聞こえてくる。邦画でここまで罵り言葉を連発するのは北野武映画くらいか。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, コメディ, チョン・へイン, パク・ジョンミン, マ・ドンソク, ヨム・ジョンア, 監督:チェ・ジョンヨル, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 スタートアップ! 』 - 韓流・腕力コメディ-

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