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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 香港

『 少林サッカー 』 -突き抜けた馬鹿馬鹿しさ-

Posted on 2022年10月22日 by cool-jupiter

少林サッカー 75点
2022年10月20日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:チャウ・シンチー
監督:チャウ・シンチー リー・リクチー

大学で教えている教材のユニットの中に The Changing Face of Kung Fu というものがあった。カンフー映画はたくさんあるが、その中でも本作は群を抜いて異彩を放っている。久しぶりに鑑賞せんと、近所のTSUTAYAで借りてきた。

 

あらすじ

かつてはスター選手だったが、八百長を飲んだことから落ちぶれたファン。しかし、少林拳の求道者である青年シン(チャウ・シンチー)と出会い、彼はシンにサッカーを教えることに。シンは少林拳の仲間を集めてチームを結成する。しかし、かつてのファンの因縁の相手であるハンも異能のサッカーチームを率いていて・・・

 

ポジティブ・サイド

拳法それ自体は中国映画、特に香港映画の主要なモチーフ。ブルース・リーにジャッキー・チェン、ドニー・イェンとスターが定期的に生まれてもいる。しかし、本作は拳法とサッカーを混ぜるのだから、言葉の正しい意味でのジャンル・ミックスと言えるだろう。ある意味『 えびボクサー 』や『 ミスターGO! 』に近いのかもしれない。

 

拳法家としてのシンの純朴さが光る。そのため、少林サッカーの馬鹿馬鹿しさが余計に映える。よくこんな大真面目にアホな構図の数々を構想したなと呆れてしまう。これは誉め言葉である。大空翼のドライブシュートか!と思うほどに脚を大きく後ろに反り返した状態から放つスーパーシュート一発でチンピラをのしていくシンに笑わずにはいられようか。

 

シンの仲間の拳法家たちも惜しむことなく笑いを提供してくれる。その一方で、彼らも彼らなりに生活は苦しい。この対比が彼らの快進撃が大きなカタルシスを生む要因になっている。太極拳の達人のムイの変化も見逃せない。醜女から始まって、ジュリアナ系に変身し、最後には坊主に変化する。何をどうやったらこんなプロットを思いつけるのか。

 

チームデビルの面々がアメリカ式のドーピングを使って強化されているのも笑ってしまう。強化されているということにではなく、その強化の見せ方だ。特に長髪ゴールキーパーの守護神ぶりはもはや漫画の領域。ただ、当時はMLBでもど派手なホームラン・ダービーが展開されていて、しかもその多くがステロイド使用者だった。なので、薬を使えば極限までパワーアップできるというアホな設定にも説得力があった時代だった。

 

ブルース・リーのオマージュあり、漫画『 ドラゴンボール 』かと思えるほどの過剰なCG演出ありと、観る者をまったく飽きさせない。22世紀にもカルト映画として鑑賞されていることだろう。

 

ネガティブ・サイド

序盤の展開が少々もたつく。いきなり皆が踊り始めるのは愉快だが、そこは別になくてもいい。皆が心の奥底に封じ込めてしまった夢が、シンたちの活躍によって解き放たれるというのは、別に序盤で示唆しなくてもいい。

 

シンが素でムイの勇気ある告白をスルーするシーンは何度見てもキツイ。ある意味、少林シュートが肉体に与えるダメージ以上に、観る側の精神を削るシーンだ。シンをここまで朴念仁に設定しなくてもよかっただろう。

 

勧善懲悪ものではあるが、悪役であるハンが懲役5年というのは短すぎではないだろうか。

 

総評

コメディの傑作。拳法というのはCGを極力排して、可能な限りレトロな手法で現実的に見せるものだという思い込みを軽々と打ち破ってくれた作品。そう、本作は固定概念をぶち壊してくれるのだ。「拳法を流行させたい」というシンの夢をあっさりと否定するファン。年を取ると夢が見られなくなるが、夢は見ないことには絶対に叶わない。そういう意味で、本作は10年に1回は観た方がいい気がする。本作にインスパイアされて、神韻芸術団の西宮公演のチケットを買ってしまった。単純やね、俺も。

 

Jovian先生のワンポイント中国語レッスン

モウマンタイ

無問題と書いてモウマンタイと読む。ある程度以上の年代なら、ナイナイの岡村の映画『 無問題 』でお馴染みのはず。読んで字のごとく No problem の意味である。タイ語でマイペンライ、韓国語でケンチャナヨーのように、中国旅行をする前に覚えおきたいフレーズ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ドライビング・バニー 』
『 秘密の森の、その向こう 』
『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, B Rank, コメディ, チャウ・シンチー, 中国, 監督:チャウ・シンチー, 監督:リー・リクチー, 配給会社:ギャガ・コミュニケーションズ, 配給会社:クロックワークス, 香港Leave a Comment on 『 少林サッカー 』 -突き抜けた馬鹿馬鹿しさ-

『 ソウルメイト 七月と安生 』 -女の愛憎物語-

Posted on 2021年8月13日 by cool-jupiter

ソウルメイト 七月と安生 80点
2021年8月3日 京都シネマにて鑑賞
出演:チョウ・ドンユィ マー・スーチュン トビー・リー
監督:デレク・ツァン

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『 少年の君 』鑑賞後に打ちのめされてしまい、チョウ・ドンユィの作品、またはデレク・ツァンの作品を一刻も早く観なければという思いに駆られ、超絶繁忙期にもかかわらず無理やり半休を取って京都に出陣。京都シネマが本作をリバイバル上映してくれていたことに感謝である。

 

あらすじ

アンシェン(チョウ・ドンユィ)とチーユエ(マー・スーチュン)の二人は13歳の頃からの親友。常に二人で友情をはぐくんできたが、チーユエにジアミン(トビー・リー)という恋人ができたことで、二人の関係は微妙な変化を見せていき・・・

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ポジティブ・サイド

デレク・ツァンの映画製作手法がこれでもかと詰め込まれている。『 少年の君 』と同じく、キャラクターと物語の両方がdevelopしていく。13歳から高校生、専門学校生、そしてその先へとアンシェンとチーユエが進んでいく。凄いなと感じたのは、二人が関係の始まりから「女」だったこと。邦画が絶対に描かないであろう、少女同士の奇妙な友情。それがどうしようもなく「男」の存在を想起させる。

 

その男、ジアミンの存在をめぐる二人の関係は単純にして複雑だ。要するに、親友の恋人を好きになってしまったという、古今東西の恋愛話あるあるなのだが、その描き方が秀逸。アンシェンは家庭的には恵まれておらず、チーユエの家でしょっちゅうご飯を食べさせてもらい、風呂にも入れてもらう。そうした有形無形の様々な借りのようなものが、アンシェンをしてチーユエとジアミンから遠ざかることを決断させるのだが、そこに至る道筋の描き方がとにかくcinematic、つまり映像によって語られるのだ。冒頭ではナレーションが多めだったが、それ以降は徹底して映像で登場人物の心象を映し出す。風景、街並み、ちょっとした視線の先にあるもの。それらがとても雄弁だ。

 

アンシェンとチーユエとジアミンが連れ立ってサイクリングと山登りに興じるところで、ついに3人の微妙な距離感が壊れていく。アンシェンとジアミンの接近、それを見て見ぬふりをするチーユエ。下手なサスペンスよりもスリリングで、ここからドラマも大きくうねり始める。

 

地元に縛られながらジアミンとの交際を続けるチーユエと、文字通りに世界をめぐりながら男遍歴を重ねていくアンシェン。アンシェンの方が旅先から一方的に手紙を送るので、チーユエは返信のしようがない。この距離感と一方通行性が、終盤のとある展開に大きく作用してくる。この脚本の妙。

 

そしてついに再会を果たす二人の旅行と、その旅先のレストランでのケンカのシーンは白眉。映像で物語られてきたシーンの意味を再確認させつつ、目の前で起きている二人の感情変化も同時に伝えてくれる。ケンカになるシーンは終盤手前にもう一つ。こちらはバスルームでの感情のぶつけあいなのだが、こちらもロングのワンショットで二人の赤裸々な感情の衝突を淡々と描く。『 美人が婚活してみたら 』でも女性同士の醜い言い争いがあった。迫力では負けていないが、一方がしゃべるたびにカメラがそちらにカットしていくことには閉口した。明らかに作られたシーンだからだ。本作のケンカのシーンは、言い争う二人をカメラが長回しで捉え続けながら、少しずつ引いていく。まるで自分がそこにいるかのように。しかし、実際には周りには誰もいないということを強調するかのように。基本的な演出だが、迫真の演技と合わさることで、素晴らしい臨場感を生み出している。

 

チョウ・ドンユィの演技力抜きに本作を語ることはできない。中学生から20代後半までを全く違和感なく演じるその能力には脱帽するしかない。単純に年齢だけではなく、純粋な10代半ば、すれていく10代後半、早くも人生の酸いも甘いも嚙み分けた感のある20代前半、険のとれた20代半ばと、まさに変幻自在。チーユエを演じるマー・スーチュンの硬軟織り交ぜた演技も素晴らしい。無邪気な笑顔の裏にあるほんのわずかな毒、愁いを帯びた表情の中にあるちょっとした安堵。女の見せる表情=心情という等式が成り立たないということを、この役者はよくよく体現していた。

 

ネット小説と絡めた筋立ても良い。小説は小説でも、フィクションではなくノンフィクション、あるいは私小説であるが、そこに虚実皮膜の間がある。終盤では様々な事柄が次々に明かされるが、何が事実なのか、何が真実なのか。その境目を揺るがすような怒涛の展開には、まさに息もできない。愛憎入り混じる二人の関係、そこに女性と社会の歪な関係性も挿入された傑作である。『 Daughters(ドーターズ) 』を楽しめた人なら、本作はその10倍楽しめるだろう。

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ネガティブ・サイド

けちのつけようのない本作であるが、一点だけ。アンシェンとジアミンの”関係”は、もっと密やかに描くべきだった。もしくは、その”関係”を仄めかすことすらも、もしかしたら不要だったかもしれない。そうすれば、終盤の車内でのアンシェンとジアミンの会話の内容が、もっと衝撃的に聞こえてきたかもしれない。

 

総評

2016年の映画であるが、この時点で中国映画はこんなにも面白かったのかとビックリさせられる。香港映画と中国映画は別物で、中国映画と言えば『 ムーラン 戦場の花 』のように、面白いけれど洗練されていないという印象を抱いていたが、それは偏見だった。おそらく中国は韓国の10年前ぐらいの段階にいるのだろう。つまり、国を挙げて映画をバンバン作って、てんこ盛りの凡作の上にごくわずかな傑作を積み上げて行っているのだろう。本作が聳え立つ凡作の山の頂きに立つわずかな作品の一つであることは疑いようもない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

soul

soul = 魂 であるが、では魂とは何かというと哲学になってしまう。ここではより実践的な使い方を説明するために、昔、Jovianが数名のネイティブに尋ねた質問と回答を持ってくる。

「”You are on my mind.”と”You are in my heart.”と”You are in my soul.”では、どの順に想いが強い?」

答えは全員同じで、

1.You are in my soul.

2.You are in my heart.

3.You are on my mind.

であった。英語の上級者を自任する人であれば、サザンオールスターズの『 いとしのエリー 』とRod Stewartの『 You’re in my soul 』を聞き比べてみるのも一興かもしれない。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, チョウ・ドンユィ, トビー・リー, ヒューマンドラマ, マー・スーチュン, 中国, 監督:デレク・ツァン, 配給会社:クロックワークス, 香港Leave a Comment on 『 ソウルメイト 七月と安生 』 -女の愛憎物語-

『 少年の君 』 -中国映画の渾身の一作-

Posted on 2021年8月7日 by cool-jupiter

少年の君 85点
2021年7月31日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:チョウ・ドンユィ イー・ヤンチェンシー
監督:デレク・ツァン

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嫁さんが面白そうだと言っていたので、チケット購入。鑑賞後は「中国映画はいつの間にかここまで来ていたのか」と自らの蒙を啓かれたように思えた。チンピラと少女の邂逅物語としては『 息もできない 』以上ではないかと感じた。

 

あらすじ

高校3年生のチェン・ニェン(チョウ・ドンユィ)はいじめを苦に飛び降り自殺をした同級生の遺体にシャツを被せてあげた。それがきっかけで今度はチェン・ニェン自身がいじめの標的にされてしまう。ある日、下校にチンピラ同士のケンカに遭遇したチェン・ニェンはシャオベイ(イー・ヤンチェンシー)という不良少年と知り合って・・・

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ポジティブ・サイド

中国=学歴社会であることがよくわかる。Jovianも大学時代に何人かの中国人留学生塗料で一緒に暮らしたことがあるが、日本の学生よりもはるかにたくさん勉強する。何故そんなに勉強するのかと一度尋ねたことがあるが「俺たちは勉強量と知人友人の数が帰国後の地位と収入に直結するから」という答えだった。ちなみにロシア人も同じようなこと言っていた。超学歴社会と加熱する受験戦争の下地は2000年ごろには既にその萌芽はあったわけである。

 

そんな学校社会において、萌芽のような甘ったるいボーイ・ミーツ・ガールが展開されるはずがない。甘酸っぱいキスなどとは言えない、チンピラたちに強制されたキスから始まるチェン・ニェンとシャオベイの関係。どこかキム・ギドクの『 悪い男 』を彷彿させる。憎しみで結ばれる男と女ではないが、チェン・ニェンとシャオベイは社会に居場所がない孤独な者たちという点で結ばれ、歪であるがゆえに、その関係はますます強まっていく。ロマンス映画ならば、男女の関係が近くなっていく様を楽しめるが、この二人の距離はある時点まで常に一定だ。

 

随所で挿入される暴力シーンにいじめのシーン。五輪たけなわの日本であるが、小山田圭吾のいじめ武勇伝に再び注目が集まっているが、まるでその現代版いじめを見るかのようであり、結構しんどい思いをさせられる。そのいじめの背景にあるのは、貧富の格差に受験の重圧である。それを感じさせるシーンが随所で挿入されるため、いじめる側にもそれなりの理があるかのように感じてしまい、ゾッとした。

 

シャオベイの無言のプレッシャーによりいじめから解放されたチェン・ニェンが、一瞬のスキをついて凄絶な虐待を食らう展開は、言葉そのままの意味で胸糞が悪くなった。それを知ったシャオベイの怒り、走り出そうとするシャオベイを制止するチェン・ニェン。そして二人してバリカンで髪を刈り上げるシーンは、『 アジョシ 』のウォンビンの決意を想起させた。

 

ある大事件の発覚。その後の二人の思いやりと共謀。特に対面した二人が言葉ではなく表情だけでやり取りするシーンでは鳥肌が立った。もちろん顔面で演技するのは役者にとって基本中の基本であるが、二人の表情だけでのコミュニケーションを見ている自分の頭に、次々に二人の言葉が溢れてきたのだ。「この物語をここまで丹念に追ってきたのなら、二人の間で交わされる言葉が何だかわかるでしょ?」とデレク・ツァン監督は言っているわけである。この演出の冴えと観客への信頼よ。特にチェン・ニェンを演じたチョウ・ドンユィの演技力は、この場面だけではなく全編を通じて遺憾なく発揮された。アジアでトップクラスの女優であることは疑いようもない。

 

最後の監視カメラの映像にも様々な意味が込められている。今見ているものは幻なのだとも、あるいは幻ではないのだとも解釈できる。そんな映像だ。同時に、中国が恐るべき監視社会で、いじめは絶対に許さない、誰かが必ず見ているのだ、というメッセージであるとも受け取れる。冒頭のチョウ・ドンユィがある生徒に向ける眼差しとラストシーンの眼差しを対比させれば、中国社会の優しやと恐ろしさの両方が実感できる。いやはや、凄い映画である。

 

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ネガティブ・サイド

物語上のキーパーソンとしての刑事の存在感が途中で消えてしまう。この刑事は、言うなれば監視中国社会の擬人化であり、なおかつ一党独裁共産党の善の部分の具現化でもある。本作自体が国家的な規模で製作された虐め撲滅キャンペーン推進コマーシャル動画なのだから、この刑事の存在を消してしまうような筋立てはいかがなものか。

 

さらにこの刑事、終盤でサラっととんでもないセリフを吐くが、これは終始感情を押し殺しているチェン・ニェンの感情爆発シーンを描くためのやや不自然かつ唐突なお芝居に見えてしまった。

 

総評

『 共謀家族 』にも度肝を抜かれたが、本作はさらにその上を行く。もちろん『 羅小黒戦記~僕が選ぶ未来~ 』という傑作もあったが、これはアニメ作品。実写で、人間関係や学校・受験というシステムの暗部を真正面から捉えつつ、瑞々しく、そして痛々しいガール・ミーツ・ボーイな物語を送り出してきた中国映画界に脱帽する。今作も、韓国映画と同じく、いわば国策映画。Jovianは中国共産党を支持する者ではないが、それでも中国社会が自国の闇をさらけ出し、なおかつそこに介入し、改善していくのだという力強いメッセージを発していることは評価したい。なによりも主演のチョウ・ドンユィが素晴らしすぎる。仕事が超絶繁忙期にもかかわらず半休を取って『 ソウルメイト 七月と安生 』を鑑賞すべく、チケットを買った。中国が韓国のような映画先進国になる日も近そうである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

used to V

劇中でチェン・ニェン自身が説明しているように、現在にはもう失われてしまった過去の営為を表現する際に使われる表現。あまり知られていないが、否定形や疑問形でも使われる。疑問形の場合は

Did you use to live here? = 前はここに住んでたの?

のように使う。否定形の場合は、

I never used to live here. = ここに住んだことはない。

のように never を使うことが今は主流になっている。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, イー・ヤンチェンシー, チョウ・ドンユィ, ロマンス, 中国, 監督:デレク・ツァン, 配給会社:クロックワークス, 香港Leave a Comment on 『 少年の君 』 -中国映画の渾身の一作-

『 パーム・スプリングス 』 -結婚について考えよ-

Posted on 2021年4月14日 by cool-jupiter

パーム・スプリングス 70点
2021年4月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アンディ・サムバーグ クリスティン・ミリオティ J・K・シモンズ
監督:マックス・バーバコウ

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無名キャストたちが主演を張りながらも、アメリカではかなりの高評価だったことからチケットを購入。タイムトラベルものやタイムループものは出だしは絶対に面白いのだが、着地に失敗することも多い。本作はちゃんと着地できている。

 

あらすじ

結婚式で出会ったナイルズ(アンディ・サムバーグ)とサラ(クリスティン・ミリオティ)は、二人でロマンチックな雰囲気に。しかし、そこへ謎の老人ロイ(J・K・シモンズ)が現れ、ナイルズにボーガンの矢を放つ。ナイルズは「来るな!」と言い残して、赤い光を放つ洞窟の中に消えていく。ナイルズを追って洞窟に入ったサラは、気が付くとその日の朝に戻っていて・・・

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ポジティブ・サイド

同じ一日を何度も繰り返すという作品には『 オール・ユー・ニード・イズ・キル 』があるが、ある意味ではこちらのナイルズの方があちらのトム・クルーズよりも遥かに深刻で、なおかつ状況を楽しんでいる。冒頭のシークエンスから笑ってしまう。起き抜けにいきなり一戦交えるナイルズとそのガールフレンドのミスティだが、ナイルズはまったく興奮しておらず、ミスティも「時間がないから」と言って、ナイルズに自分で出すように言うが、そのそばで”Shit!”を連発するミスティを見つめるナイルズの表情が様々なことを物語っている。物語の中盤以降にこの顔を思い浮かべれば、アンディ・サムバーグの演技力・表現力の豊かさを称賛できるはずだ。

 

ヒロインのサラは大きな目が特徴的な妙齢の女性。しかし、妹が結婚するというのに本人は独身、家族の態度も何やらよそよそしい。パーティーでも一人で延々と飲むタイプで、社交的には見えない。割とすぐに本人の口から語られることだが、いろいろちょっとアレな人なのだ。この序盤の家族、特に父親の言動をしっかりと覚えておくと、終盤の物語の舞台裏(タイムループ現象の謎ではない)が明らかになる瞬間に役立つ。

 

ナイルズがミスティの浮気に傷心して、それを見たサラがナイルズを癒してやりたくなってしまい・・・という部分だけ見ればよくある三文芝居なのだが、ここの作りが非常によく、二人の盛り上がりにリアリティがある。と同時に、実はこのプロット自体が・・・と、これ以上は書いてはいけないんだった。

 

色々あってループ世界を楽しむ二人の様子を観るのはこちらも楽しくなってくる。実際に自分でもこういう行動をとるだろうな、という大胆な行動をとってくれるのだ。だって死んでもリセットされる(一応痛みは感じるらしい)だけで、どんなリスクだって取り放題なのだから。つまり、二人は二人だけの世界で生きているわけだ。というあたりで愚鈍なJovianは、これが恋愛および結婚生活の象徴であることに気が付いた。恋愛をしているときは無敵な感じがする。そして結婚当初もそうである。しかし、だんだんと二人だけの生活を続けていくと、そこに新鮮味を感じられなくなってくる。そうした時にどうすべきなのか。これはある意味で結婚観を問われる映画である。Jovianは結婚とは「その相手と一緒に年を取っていきたいと思えるかどうか」だと考えている。もちろん、「その相手との間に子を持ちたい」だとか「その相手と一緒に子供を育てたい」、「その相手と一緒に笑いたい」、「その相手と一緒に苦労をしたい」など、これは人の数だけ答えがある問いだ。不正解と言える答えはあるだろうが、唯一の正解などというものは存在しない。

 

タイムループもラブコメ要素も普通といえば普通だが、本作のメッセージは「結婚について真剣に考えてほしい」ということなのだろうと受け取った。もしも独身者や「結婚?しねーよ」と言う人は、絵本の『 100万回生きたねこ 』を読んでから、本作を鑑賞されたし。そうすればナイルズの決断について、より深く共感できるようになるはずである。

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ネガティブ・サイド

J・K・シモンズの出番はもっとあってよかった。というか、時々現れて殺しに来ると言いながら、実際にやってくるのは2回だけ。これだけでは拍子抜けだ。もちろん、なぜあんまりやって来ないのかは後から説明されるが、前半で能天気に楽しむナイルズとサラに a change of pace をもたらすために、もう少し高い頻度で殺しに現れてほしい。そうすれば、無意味だと感じてしまうようになる生にも何らかの意味があるはずだと考えるきっかけになったのではないか。

 

素朴な疑問が二つ。一つは、サラがタイムループからの脱出方法を実験するためにヤギを使うのだが、なぜサラはそのヤギがタイムループをしていると知っていたのだろう。あるいは、ヤギを洞窟の赤い光に連れ込んだのだろうか。であれば、その描写はカットしてはいけなかったのではないか。

 

疑問のもう一つは、タイムループの内と外。この終わり方だと、タイムループは実はタイムループではない。あるいは『 アベンジャーズ/エンドゲーム 』のように、時間線=意識線のような時間構造を想定しなければならないが、だとするとサラが独学していた量子力学は・・・まあ、これはタイムトラベルの原理と同じで深く考えてはいけない領域か。

 

総評

余計な登場人物や余計なサブプロットもなく90分でサクッと終わるので非常に観やすい。一部、性的な描写もあるが露骨なものではない(一応、PG12である)ので、高校生ぐらいならデートムービーとして鑑賞することもできそうだし、夫婦で鑑賞すればさらに味わい深くなること間違いなしである。コメディ調でありながら、訴えてくるテーマはシリアス。しかしシリアスさは感じさせず、ライトなノリで最後まで楽しめる。結構な掘り出し物だと思うので、映画ファンならチケットを買われたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

cheat on somebody

日本語でもチートという片仮名で根付いているが、英語ではcheat on somebody = 誰かという相手を裏切って浮気をする、の意味。cheat on Nancyというのはナンシーが浮気相手という意味ではないので注意。この場合、裏切られたのはナンシーである。cheat in an exam=試験でカンニングをする、というのも割と使われる表現である。cheat = 何らかの不正行為を行う、と理解しておこう。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, J・K・シモンズ, アメリカ, アンディ・サムバーグ, クリスティン・ミリオティ, ラブコメディ, ラブロマンス, 監督:マックス・バーバコウ, 配給会社:プレシディオ, 香港Leave a Comment on 『 パーム・スプリングス 』 -結婚について考えよ-

『 アニー・イン・ザ・ターミナル 』 -全てがクリシェのクソ映画-

Posted on 2020年1月5日 by cool-jupiter

アニー・イン・ザ・ターミナル 30点
2019年1月4日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:マーゴット・ロビー サイモン・ペッグ デクスター・フレッチャー
監督:ボーン・ステイン

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前々から気になっていたので、TSUTAYAで準新作になったので早速レンタル。マーゴット・ロビーとサイモン・ペッグに惹かれたが、中身はイマイチであった。

 

あらすじ

ロンドン地下鉄のとあるターミナルの24時間営業カフェで働くアニー(マーゴット・ロビー)は、地下クラブで働くコールガールでもあり、フィクサーの下で街のトラブルを裏で解決する仕事人でもあった。彼女の真の狙いは・・・

 

ポジティブ・サイド

マーゴット・ロビーの怪演とサイモン・ペッグの熟練の演技ぐらいしかい観るべきものはない。赤のストロボライトの明滅の合間に妖しい笑顔と平然とした表情を織り交ぜるのは絵としては良かった。

 

またロンドンは20km離れれば、日本で言えば200km離れたぐらいに違う言葉を話すと言われているが、劇中では確かにそのように感じられた。殺し屋稼業の二人組とサイモン・ペッグ、夜間管理人の男たちは、同じLondonerでも、日本で言えば大阪弁と岡山弁ぐらい違う言葉を話していた。

 

ネガティブ・サイド

クリシェだらけである。

 

時系列を狂わせて物語を見せるのは『 市民ケーン 』以来の一つの型であるが、そのことが結末の驚きにつながってこない。というか、それなりに型破りな見せ方をするのであれば、結末にもっとアッと驚く仕掛けを持ってきてほしい。邦画の『 イニシエーション・ラブ 』の方がはるかに優っている。

 

また『 グッドウィル・ハンティング 』以来、掃除人には何かがあると考える癖が映画ファンにはついてしまった。またはテレビドラマ『 家なき子 』の庭師のじいさんでよいだろう。こうしたjanitorは往々にして見かけ以上の役割を担っている。

 

また、地下世界への案内人が白ウサギという“アリス”以来の伝統にも変化球が必要である。『 マトリックス 』のように、ウサギはウサギでも、ウサギっぽくなさそうなキャラを用意すべきである。うさ耳カチューシャをつけたコールガールというのは、あまりにも下品である。

 

なによりもクリシェなのはアニーそのものに仕込まれたトリックである。まさか2010年代にもなってこのようなネタを使ってくるとは、脚本家は何を考えているのか。せめて『 シンプル・フェイバー 』ぐらいの変化球を放るべきである。このような手垢のついたトリックはもはや害悪である。そういう設定で観る者を驚かせたいなら、邦画『 キサラギ 』や同じく邦画『 アヒルと鴨のコインロッカー 』を参考にすべきだろう。

 

総評

はっきり言って観る価値はない。マーゴット・ロビーの熱烈なファン以外に勧めることはできない。といっても、マーゴット・ロビー信者でもこのプロットには腹を立てると思われるが・・・ 中盤まではひたすらに眠くなるような展開なので、一種の睡眠導入剤にはなるのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

have bigger fish to fry

実は今作で初めて耳にした表現である。しかし、ストーリーの文脈から意味はすぐに分かった(アニーは ”We got bigger fish to fry.” と言った)。直訳すれば「揚げるべきもっと大きな魚がいる」だが、その意味は「もっと大事な用事がある」である。調べてみたところイギリス英語らしいが、コンテクストが明らかであればアメリカ人にも通じると思われる。フィッシュ&チップスのお国らしい、面白い表現である。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, E Rank, アメリカ, イギリス, サイモン・ペッグ, ハンガリー, マーゴット・ロビー, ミステリ, 監督:ボーン・ステイン, 配給会社:アットエンタテインメント, 香港Leave a Comment on 『 アニー・イン・ザ・ターミナル 』 -全てがクリシェのクソ映画-

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