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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 韓国

『 密輸 1970 』 -虚々実々の密輸ドラマ-

Posted on 2024年7月15日 by cool-jupiter

密輸 1970 70点
2024年7月13日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ヨム・ジョンア キム・ヘス
監督:リュ・スンワン

 

『 モガディシュ 脱出までの14日間 』のリュ・スンワン監督作品ということでチケット購入。

 

あらすじ

港町クンチョンは工場排水により漁が成り立たなくなりつつあった。そんな中、海女のリーダーのジンスク(ヨム・ジョンア)は生活のために密輸に協力することを決断する。ある時、税関によってジンスクは現行犯逮捕され、親友チュンジャ(キム・ヘス)だけがその場から逃亡するが・・・

ポジティブ・サイド

1970年代の韓国と言えば民主化前=軍事政権下ということぐらいしか知らないが、工業化による公害が問題になるところは日本と同じか。海女たちが自発的にではなく、生活の糧を売るためにやむなく密輸に協力するというプロットには説得力があった。

 

その海女たちが一度は摘発され、刑務所で過ごし、娑婆に戻ってからも汚れた海で生きるしかないという描き方が痛切。腐った海藻でスープを作って幼い子どもに与えざるを得ないシーンには胸が痛んだ。こうした背景があるため、密輸という犯罪に従事する海女たちを一方的に断罪することができない。

 

その海女の中心人物ジンスクを演じたヨム・ジョンアと、裏切り疑惑のチュンジャの再会。そこから動き出すヒューマンドラマとクライムドラマの両方が、非常にテンポよく展開される。随所で挿入される韓国版懐メロも映像とストーリーにマッチしていて、それもストーリーテリングに一役買っている。

 

ソウルの密輸王、クォン軍曹と彼の片腕がアメリカのグリーンベレーかと思うほど強すぎるが、ベトナム戦争帰りだという設定によって、荒唐無稽なアクションシーンにもリアリティが感じられた。終盤の水中での大立ち回りは非常に新鮮に映った。水連達者の海女が男たちを一人また一人と始末していくのは痛快だった。

 

最後はすべての悪を華麗に打ち倒して、ハツラツとしている海女たち。密輸や殺人に関わっておきながらそれはないだろうとも思うが、「まあ、そんなことはええか」と思わせるだけのデタラメなパワーを持った作品でもある。韓国映画は邦画が絶対に作れない作品を時々軽々と作ってくれるが、本作は間違いなくそうした一品である。

 

ネガティブ・サイド

海女たちの集合写真がまんま『 セックス・アンド・ザ・シティ 』なのは時代が合わないし、オリジナリティにも欠けると感じた。

 

チュンジャがクォン軍曹の信用を得る過程の描き方が弱かった。軍人上がりでソウルの地下社会・密輸業の実力者たるクォン軍曹の片腕的なポジションに成り上がるまでに、クンチョン以外の舞台でのチュンジャの活躍を2~3分挿入しても良かったのではないかと思う。

 

韓国(映画)では警察=無能、役人=悪人という等式が成立するが、本作でもそれは例外ではない。そういう意味では本作の真相にはあまりサプライズを感じられなかった。

 

総評

50年前の韓国でこんなに生き生きと女性が活躍していたとは思えないが、それでも「ひょっとしたらこんな人たちがいたのかも・・・」と思わせるだけの妙なパワーが本作にはある。実話ベースということだが、おそらく海女さんが密輸に協力していたことがあっただけで、ヤクザや税関相手に大立ち回りをしていたはずはない。ただ、そうした荒唐無稽な想像を実際に映画に仕立て上げてしまうリュ・スンワン監督の手腕は見事。子供向けとは言えないが、40代以上なら男女を問わずに楽しめるはずの作品だ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

セグァン

税関の意。言わずと知れた輸出入に関わるレギュレーションを担当するお役所。本作で最も多く聞こえてくる語彙の一つ。今学期、Jovianは薬学部で英語を教えていたが、受講者の中には「将来は麻薬取締官になりたい」という者も毎年ちらほらいる。彼ら彼女らは将来、税関と連携して、水際で禁輸や密輸を食い止めてくれることだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 朽ちないサクラ 』
『 キングダム 大将軍の帰還 』
『 YOLO 百元の恋 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アクション, キム・ヘス, ヨム・ジョンア, 歴史, 監督:リュ・スンワン, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:KADOKAWA Kプラス, 韓国Leave a Comment on 『 密輸 1970 』 -虚々実々の密輸ドラマ-

『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

Posted on 2024年7月9日2024年7月9日 by cool-jupiter

THE MOON 60点
2024年7月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ド・ギョンス ソル・ギョング
監督:キム・ヨンファ

 

怪作『 ミスターGO! 』の監督で、傑作『 モガディシュ 脱出までの14日間 』の製作を務めたキム・ヨンファが監督/脚本を努めた作品ということでチケット購入。

あらすじ

韓国のロケット「ウリ号」は米国に次ぐ月面有人探査を実行するため、3人のクルーを乗せて月軌道を目指していた。しかし太陽風の影響で通信が途絶、修理のためEVAに従事していたクルー2名も命を落としてしまう。ひとり残されたソヌ(ド・ギョンス)を救出するため、前ミッションのフライト・ディレクターだったジェグク(ソル・ギョング)が呼び戻されるが・・・

ポジティブ・サイド

『 アポロ13 』や『 ゼロ・グラビティ 』、『 ライトスタッフ 』、『 オデッセイ 』などの先行ハリウッド作品を意識していることが伺える。ハラハラドキドキが最優先。そしてその期待にしっかり応えてくれている。韓国映画の「とにかくエンタメ路線に徹しよう。社会的なメッセージはその後だ」という割り切った姿勢は買いである。

 

地球側ではほぼすべて会話劇、宇宙および月ではほぼすべてアクションと、非常にメリハリが効いている。シリアス一辺倒にならないのは、政治家キャラが韓国特有の selfish な論理を振りかざしまくるから。政治は科学をサポートこそすれ、コントロールしてはならないという製作者の意図は十分に伝わった。

 

月面のCGは『 アド・アストラ 』並みに美麗で、そこで起きる事象のスリルと恐怖は『 アド・アストラ 』の月面上での小競り合いをはるかに超えていた。つくづくハリウッド作品の亜種をうまく作るものだと感心する。

 

名優ソル・ギョングの重厚な存在感と、若きアイドルのド・ギョンスの演出された未熟さが、一挙に逆転する終盤の展開は(その論理的・倫理的な意味合いはともかく)衝撃的だった。

 

中国映画『 ボーン・トゥ・フライ 』でも無人機が登場したが、時代は有人から無人へと移行しつつある。実際に本作でもドローンのマルが good job を見せてくれる(『 インターステラー 』のTARSを意識していたように思う)。それでも人が宇宙に向かうことについて、資源調査以上の意義があることを本作は示している。宇宙からは地球の国境は見えない。そして、宇宙に国境はないのだ。

 

ネガティブ・サイド

普通に考えて強烈な太陽風が吹き付けたり、あるいは流星雨が来ているというタイミングで、友人ロケットは打ち上げないだろうと思う。特に太陽風は普通に地上にも影響を及ぼすし、月に降り注ぐ極小天体もテレビで「月の謎の発光現象」と取り上げられるくらいにはメジャーな現象だ。ここらへんを無視してロケット打ち上げを強行するような背景が無かったのはリアリティの面で大きなマイナス。

 

目指すのが永久影のある月の南極だというのが気になった。月の極は航法的にそう簡単にたどり着ける場所ではない。月周回軌道に乗ってから、月の極を目指すというプロセスが大胆に省かれてしまったのが気になった。事細かに描写する必要はないが、月の極に着地できる軌道までどのように移動するのかについて言及だけはしてほしかった。

 

また、最終盤に驚きの告白が主要キャラクターによって連続でなされるが、これは普通に警察や検察が捜査して、事実ならば逮捕されるような内容。韓国の警察は無能だが、検察は有能。ポリティカル・ドラマの一面も有する作品だけに、この点も大いに気になった。

 

総評

『 ボーン・トゥ・フライ 』に続く、アジア発の国威発揚映画。日本もハヤブサが帰って来た時には立て続けに関連映画が3本公開されていたが、もはやそういう映画は作れないのだろうか。最後に流れる Fly Me to the Moon がハリウッドの『 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン 』の壮大なCMソングに聞こえた。韓国映画は良くも悪くもハリウッド映画の亜種というか後追いなのだ。単なる後追いではなく、いつか追い越してやるという気概が感じられる。そこは素直に凄いと思う。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ソンベ

先輩の意。過去にも書いたと思うが、韓国は日本と同じく役職や肩書を非常に重視し、それで相手に呼びかける文化を持っている。軍隊では当たり前のことだが、これは世界的にはかなり珍しい文化なのではないだろうか。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 THIS IS LIFE スマホから見る中国人の人生 』
『 クワイエット・プレイス:DAY 1 』
『 朽ちないサクラ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, SF, ソル・ギョング, ド・ギョンス, ヒューマンドラマ, 監督:キム・ヨンファ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 THE MOON 』 -韓国産の国威発揚映画-

『 マイ・スイート・ハニー 』 -韓流ラブコメの佳作-

Posted on 2024年5月7日 by cool-jupiter

マイ・スイート・ハニー 65点
2024年5月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ユ・ヘジン キム・ヒソン
監督:イ・ハン

 

『 キラー・ナマケモノ 』鑑賞を妻に却下され、逆に本作を提案されたのでチケット購入。

あらすじ

製菓会社の研究員チャ・チホ(ユ・ヘジン)は、刑務所上がりの兄の借金を返済する過程で、シングルマザーのイルヨン(キム・ヒソン)と出会う。二人は意気投合し、食べ友になるが・・・

 

ポジティブ・サイド

色んな作品でちらほら見かけるユ・ヘジンがラブコメの主役に。このあたりも韓国映画らしい。『 パスト・ライブス/再会 』が30代男性のピュアすぎる恋を描いたかと思えば、こちらは40代男女のピュアな恋愛模様を活写してきた。なんというか、痛々しい男子大学生のようなノリの良さ、あるいはノリの悪さを40代半ばのブサイク男子がやるのだから、これが面白くないはずがない。

 

お菓子やらジャンクフードばかりで栄養失調になっているチホとシングルマザーのイルヨンが食べ友になるという流れも自然。最初は金の貸し借りの関係だったのが、知人になり、友人になり、そしてかけがえのない恋人になっていくというストーリーは凡庸ではあるが楽しめた。チホの会社の役員会議の内容やその面々の台詞やアクションが笑えるし、イルヨンの職場の上司も『 ただ君だけ 』に出てきたような典型的な下心ありありの小悪人キャラで、観る側としてはどうしたってイルヨンを応援せざるをえない。

 

すったもんだがありながらも、落ち着くべきところに落ち着く物語だった。案外、高校生や大学生などの若い世代が観ても楽しめるかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

チホの兄貴とチホの関係性や幼少時のとある出来事などは全部省略して、10分ぐらい短縮してしまっても良かった。

 

イルヨンの夫のネタも笑えるには笑えるが、必要なサブプロットだったかというと、うーむ・・・ これもバッサリとカットしてしまって良かったのでは?

 

総評

チホの外見と行動のキモチワルサが最初の見どころ。しかし、そのチホがどんどん魅力的に見えてくるのが本作の movie magic。その絶妙な仕掛けを知りたい人はぜひ鑑賞を。本作は一風変わった家族の物語でもあり、変則的なサラリーマン物語でもある。若い世代でもチホやイルヨンと同世代でも楽しめるはず。ぜひ多くの方に鑑賞いただきたい韓流ラブコメの佳作である。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヒュン

兄の意。必ずしも血のつながりがなくても使える。やくざ者の映画でもしょっちゅうヒュンニム=兄様=兄貴という形で使われている。Jovianの元同僚韓国系アメリカ人も「俺のことをヒュンと呼んでいいぞ」と言ってくれていたっけ。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 貴公子 』
『 ザ・タワー 』
『 劇場版 再会長江 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, キム・ヒソン, ユ・ヘジン, ラブコメディ, 監督:イ・ハン, 配給会社:松竹, 韓国Leave a Comment on 『 マイ・スイート・ハニー 』 -韓流ラブコメの佳作-

『 パスト ライブス/再会 』 -初恋は実らない-

Posted on 2024年4月14日 by cool-jupiter

パスト ライブス/再会 65点
2024年4月7日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:グレタ・リー ユ・テオ
監督:セリーヌ・ソン

 

大学開講の第1週で多忙につき、簡易レビュー。

あらすじ

12歳のノラ(グレタ・リー)とヘソン(ユ・テオ)は互いに思いあっていたが、ノラの両親のカナダ移住に伴って離れ離れになってしまう。24歳でオンラインで再会を果たす二人だったが、やがて疎遠になってしまう。そして36歳、ヘソンは休暇でニューヨークを訪れ、ノラと再会することになり・・・

ポジティブ・サイド

監督の自伝的要素が非常に強く、パーソナルな面で突き刺さるものが多かった。特に Facebook のような Social Media でかつての知人友人を見つけて連絡が取れてしまうというのは過去にはありえない、現代に特有の事象。似たような経験があるという30代、40代、50代は多いのではないだろうか。

 

イニョンという考え方はアジア、特に仏教圏、輪廻転生の概念が普及している地域の人間には分かりやすい。イニョンとはいわゆる縁起のこと。本作がアカデミー賞にノミネートされたというのは、ここらへんがアメリカ人に新鮮だったのもあるからでは?

 

ヘソンとアーサーの距離感、またノラとアーサーの距離感が絶妙だった。アメリカ人がアメリカで異邦人の気持ちになる。これもアカデミー会員の心の琴線に触れたシーンかなと思う。

 

ネガティブ・サイド

男はいくつになっても男の子のままというある種の偏見を飲み屋に集まる変わらない面々で描くというのは少々芸がないと感じた。いや、これも一種の同族嫌悪かな。

 

結局のところ、両親のエゴに振り回された子どもたちの話だったのでは?という印象が拭えなかった。割と引っ越しばかりで、それが嫌だった自分が強く思い出されたからな気がしないでもないが。

 

総評

『 僕の好きな女の子 』をもっとドラマチックに、もっと哲学的にしたものだったなという印象。運命というにはあまりにも淡すぎて、悲恋というのはあまりにも濃い。ぜひパートナーと鑑賞してほしい。Jovianと妻の感想は多くの点で非常に対照的だった。逆に結婚という因習は、そうした互いの違いから以下に目をそらし続けるのに役立つかということが逆接的に感じられるかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Lives

lifeの複数形は正しくはライブズとスではなくズとなる。Black lives matter もブラック・ライブズ・マターと報じられていた。一方でワーナー・ブラザースのように、公式にズではなくスを使っている組織もある。まあ、発音は正確に越したことはない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 あまろっく 』
『 貴公子 』
『 ブルックリンでオペラを 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, グレタ・リー, ユ・テオ, ロマンス, 監督:セリーヌ・ソン, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ, 韓国Leave a Comment on 『 パスト ライブス/再会 』 -初恋は実らない-

『 ソウルメイト 』 -リメイク大成功-

Posted on 2024年3月13日 by cool-jupiter

ソウルメイト 85点
2024年3月10日 Tジョイ梅田にて鑑賞
出演:キム・ダミ チョン・ソニ ピョン・ウソク
監督:ミン・ヨングン

 

中国映画『 ソウルメイト 七月と安生 』の韓国リメイク。なまなかにリメイクするだけになってしまうのでは・・・という懸念を吹っ飛ばす大傑作に仕上がっている。

あらすじ

少し内気なハウン(チョン・ソニ)は自由なミソ(キム・ダミ)と出会い、やがて二人は無二の親友になっていく。しかし、ハウンがジヌ(ピョン・ウソク)と付き合い始めたことで二人の関係に少しずつ変化が生じて・・・

ポジティブ・サイド

オリジナルが傑作だったので、リメイクしても質が低下するだけでは・・・。鑑賞前はそう感じていたが、とんでもない。残すべきところは残し、変えるべきところは変える。傑作が大傑作に生まれ変わった。

 

話の大筋は原作と同じ。ただし、大きな変更もある。原作では七月と安生の二人の友情がネット小説によって表現されていたが、本作では小説を絵画に置き換えた。これによって本作はいきなりミソの巨大な肖像画を見せられることになる。つまり二人の友情、その産物が一気に可視化される。原作では文字だったものが、その後の映像によって雄弁に語られたが、本作ではそれを一気にビジュアル化した。正直なところ「いきなりこんなもの見せて大丈夫か?壮絶なネタバレでは?」と怪訝にすら感じたが、これは完全に杞憂だった。というか、小説を絵画にすることで、終盤のドラマがこれほど泣けるものになるとは・・・

 

キム・ダミはチョウ・ドンユイに勝るとも劣らぬ演技でミソを好演。子役もどこで探し出してきたのか、キム・ダミにそっくり。それにしても高校生から20代後半ぐらいまでを全く違和感なく演じ分けるキム・ダミやチョン・ソニの演技力の高さよ。もちろんそれを演出するミン・ヨングン監督の手腕もあるのだろうが、日本で本作をリメイクできるだろうか。ミソが河合優実で、ハウンが南沙良?監督は今泉力哉または三宅唱とか?

 

閑話休題。オリジナルでは七月はいつもボーイフレンドの自転車に二人乗りしていたが、今作のハウンはいつもミソの原付の後ろに乗っている。この違いは大きいと感じた。特に中盤のとある大きな出来事の後、いつも二人一緒だったミソとハウンだったはずが、ミソはハウンとジヌをある意味置き去りにして先に帰ってしまう。これがその後の二人の関係性を何よりも雄弁に物語っていた。

 

その後、済州島を出ることになったミソと済州島に残ることになったハウン。オリジナルを忠実になぞりつつも、わずかな脚色を施している。印象的なのはミソという名前が漢字では微笑となるところ。常に明るく笑顔をたたえていたミソが、思わぬタトゥーを彫っていたり、あるいは一人暮らししていたアパートの壁にほんのちょっとした落書きをしていたり。本人が語らずとも、それらがミソの心情を見事に代弁していた。物語るオリジナルから、シネマティックなリメイクへ。この脚本家、相当な手練れ。

 

その後、再会を祝した二人だったが、離れて過ごした間に際立つようになってしまった考え方や行動様式から仲違いへ。このあたりも原作に忠実ながら、しかし巧みに換骨奪胎している。それでも離れられない二人。原作でも光と影の関係に言及されていたと記憶しているが、ある時から常に自分の先へと歩いていくミソに対し、ハウンはついに自分でも別世界へ飛び出していく。今まで影だった自分が、今度はミソを影にしてしまう。

 

ここで二人が小さな頃から対照的な絵を描いてきたことが大いなる伏線となって活きてくる。抽象的な絵を描くミソと極めて写実的な絵を描くハウン。この二人の絵が交わる瞬間のドラマに涙を流さずにはいられようか。絵を描くということが、これほどの深い愛情表現になるのか。絵を描くという行為が、これほど深い対象理解につながるのか。そして絵を描くということが、これほど自分の心の中を映し出すものなのか。冒頭で大写しされるミソの肖像画が、まったく違った意味を帯びて迫ってくる最終盤の展開に涙が止まらなかった。間違いなく2024年のベストである。

 

ネガティブ・サイド

あのケーキは一体どこから出てきたのだろうか。

 

原作では「ダサい下着」を思いっきりカメラに映し出していたが、本作はそこを回避。うーむ・・・

 

総評

ミン・ヨングン監督の情報がほとんど見当たらないのだが、いったい何者なのだろう。日本では漫画のドラマ化の問題点が浮き彫りになって久しいが、原作を脚色するなら原作を超えなければ意味がない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

シバラマ

使ってはいけない韓国語の一つ。意味はクソ野郎。劇場の照明点灯後のJovian妻の第一声は「ジヌはクソ野郎やな」だった。クソ野郎=シバラマである。この言葉が実際にどのように使われるのかを知るには『 息もできない 』を鑑賞のこと。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 デューン 砂の惑星 PART2 』
『 梟ーフクロウー 』
『 12日の殺人 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, A Rank, キム・ダミ, チョン・ソニ, ヒューマンドラマ, ピョン・ウソク, 監督:ミン・ヨングン, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 ソウルメイト 』 -リメイク大成功-

『 犯罪都市 NO WAY OUT 』 -すべては鉄拳で解決-

Posted on 2024年2月25日2024年2月25日 by cool-jupiter

犯罪都市 NO WAY OUT 65点
2024年2月24日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:マ・ドンソク イ・ジュニョク 青木崇高
監督:イ・サンヨン

 

『 犯罪都市 』、『 犯罪都市 THE ROUNDUP 』の続編。

あらすじ

ソウル広域捜査隊に異動したマ・ソクト(マ・ドンソク)は、ある転落死事件の原因が麻薬中毒であると知り、捜査を開始する。その新型麻薬の裏には、日本のヤクザ、そしてその麻薬を中国に横流ししようとする勢力も蠢いていた。麻薬を横流しする者を粛清するために、日本からリキ(青木崇高)という暗殺者が韓国に送り込まれてきて・・・

ポジティブ・サイド

テンポが非常に良いので、スイスイ鑑賞できる。麻薬取引現場での凄惨な殺しの場面で、メインのヴィランをていねいに紹介。場面変わってマ・ドンソクが暴漢たちを次から次にノックアウト。転落死事件の原因に新型麻薬が関わっていると分かれば、すぐに麻薬取引の現場のクラブへ急行。コミカルなキャラを導入しつつ、やっぱり鉄拳ですべて解決。そうこうしていると日本から暗殺者のリキが登場して役者がそろう。

 

末端価格300億ウォンの20kgの新型麻薬を奪った者を追って、警察、ヤクザ、横流し勢力の三つ巴の血で血を洗う闘争が勃発。ソクトの側からのストーリーでコミカルパートを担当、チュ・ソンチョルと青木崇高のパートでバイオレンスを担当。このヴィランたちが最終的にソクトにボコボコにされて、観る側はスカッとする。単純な作りではあるが、これで面白いのだから認めるしかない。

ネガティブ・サイド

前作からのキャラが2~3人減った?ソクトの異動という事情があったにせよ、ホ・ドンウォンやチェ・グィファのキャラ達とは再会したかった。

 

日本刀で襲撃してくる暗殺者というのはシネマティックではあるが、韓国側もなにか刃物で対抗できなかったのか。『 初恋 』にあったような日本刀 vs 偃月刀のようなチャンバラを観てみたかった。

 

総評

トム・クルーズの『 ミッション・インポッシブル 』シリーズと同じで、マ・ドンソクが好き勝手にあれこれやるシリーズになりつつある。東南アジアや中国、日本がコンスタントに登場しているので、シリーズは今後も国際路線で行くのだろう。次作は日本の一条組と韓国暴力団の国際抗争だろうか。M:Iと同じで、ここまで来たらシリーズの行く末を見守るしかない。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヒョン

兄の意味。ただし、日本語と同じく血のつながりがなくても目上、年長の男性に対して使える表現。もう辞めてしまったが、うちの職場にいた韓国系アメリカ人も You can refer to me as Hyeong. と言っていた。 

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 夜明けのすべて 』
『 ソウルメイト 』
『 ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アクション, イ・ジュニョク, ノワール, マ・ドンソク, 監督:イ・サンヨン, 配給会社:ツイン, 青木崇高, 韓国Leave a Comment on 『 犯罪都市 NO WAY OUT 』 -すべては鉄拳で解決-

『 Sダイアリー 』 -思い出をいかに昇華させるか-

Posted on 2024年1月16日 by cool-jupiter

Sダイアリー 60点
2024年1月10日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:キム・ソナ コン・ユ イ・ヒョヌ キム・スロ
監督:クォン・ジョングァン

 

簡易レビュー。

あらすじ

ナ・ジニ(キム・ソナ)はボーイフレンドから突然、愛想をつかされた。これまでの彼氏に本当に愛されていたのか確かめろと言われたジニは、自分の恋愛日記を読み返す。そして現在の元カレたちに会いに行こうと思い立って・・・

 

ポジティブ・サイド

過去の恋愛を回想する映画は数多くあるが、本作がユニークなのは恋愛の甘酸っぱい部分、そしてセクシャルな部分を非常にリアルかつ等身大に映し出しているところ。性欲丸出しでジニに襲い掛かる聖職者には笑ったし、大学の先輩とひたすらベッドインし続けたり、イケメンだけれど将来性ゼロの男に自分から合体を促しまくったりと、ジニの恋愛遍歴が赤裸々に開陳される前半から中盤は文句なしに面白い。

 

過去の男たちに復讐を企てる中盤以降では聖職者へのリベンジとイケメンへのリベンジは、ブラックユーモアたっぷりで笑うことができた。

 

過去の恋人を散々かき回したものの、最後はキレイに思い出に決着をつけることができた。本作は2004年公開で、ということは撮影は2002年か2003年だろう。日本では携帯電話やパソコンが急激に普及した時期だが、デジカメはまだまだ高価だったし、写真や動画を日常的に大量に残すことは難しい時代だった。韓国も同じはず。だからこそ可能な結末だったとも言える。Those were the days! 

 

ネガティブ・サイド

警察官になった大学時代の彼氏へのリベンジはちょっとなあ。劇中でも触れられていたように、警察を脅迫するのは重大犯罪を構成する可能性もあるわけで、もうちょっと何か別のプロットは考えられなかったのだろうか。いくら韓国映画=警察をコケにしてナンボ、であっても、それは警察の公の部分の話であって、警察官の私の領域までコケにするのには賛同しかねる。

 

エンドクレジットのシーンは賛否両論ありそう。元カレ連中は実はこうでしたと見せるのではなく、「ん?実は良い奴らだった?」と思わせるぐらいで良かったように思う。

 

総評

主人公のキム・ソナと同世代、つまり1970年代生まれなら、本作を高く評価できるはず。1990年代以降の生まれだと厳しそう。カップルで鑑賞するというよりは、夫婦で鑑賞するのに向いているのかな。性的にオープンな描写がいっぱいあるので、間違ってもファミリーで観ないように。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

サランへ

愛してる、大好きだ、の意。かなり前にペ・ヨンジュンが「サランヘヨ」とつぶやくCMがあったが、これは「愛しています」という丁寧な表現。英語で言うところの I love you. だと思えばいいだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 VESPER ヴェスパー 』
『 みなに幸あれ 』

Sダイアリー [DVD]

Sダイアリー [DVD]

  • キム・ソナ
Amazon

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, C Rank, イ・ヒョヌ, キム・スロ, キム・ソナ, コン・ユ, ラブコメディ, 監督:クォン・ジョングァン, 配給会社:エスピーオー, 韓国Leave a Comment on 『 Sダイアリー 』 -思い出をいかに昇華させるか-

『 コンクリート・ユートピア 』 -人間社会の汚穢を描く-

Posted on 2024年1月12日 by cool-jupiter

コンクリート・ユートピア 70点
2024年1月7日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:イ・ビョンホン パク・ソジュン パク・ボヨン
監督:オム・テファ

 

簡易レビュー。

あらすじ

突如発生した天変地異により、韓国社会は崩壊した。唯一崩落しなかった皇宮アパートには生存者が押し寄せるが、住民は団結し、彼らを排除することを決定。住民のリーダーとして、冴えない中年のヨンタク(イ・ビョンホン)が選ばれるが・・・

ポジティブ・サイド

韓国の苛烈な経済格差および移民問題を痛烈に皮肉った序盤、そして民主主義の正の面と負の面が露になる中盤、そして閉鎖・孤立したコミュニティが民主主義の負の面から自壊していく終盤と、非常にテンポよく物語が進んでいく。

 

韓国映画あるあるなのだが、まったくもって普通の一般人に見える人が、突如発狂するシーンが何度もあって、緊張感も持続する。男性のほとんどが兵役経験者ということで、住民とその他の争いにもリアリティがある。

 

能登半島地震の被災現場の本当の悲惨さは知るべくもないが、「人間社会はこうあってはならない」という韓国映画のメッセージは、ある意味でこれ以上ないタイミングで届けられたと思う。

 

ネガティブ・サイド

細かいところだが、男性陣の誰もひげが伸びないのは何故?韓国成人男性はもれなくひげの永久脱毛済み?そんなはずはないと思うが・・・

 

ラストは正直なところ、賛否両論あるだろう。自分はやや否かな。最後まで狂気で突っ走ってほしかった。

 

総評

韓国映画の佳作。災害ものでは人間の本性があらわになるが、韓国映画はそこで人間のダーティーな面を映し出すことを恐れないところが素晴らしい。イ・ビョンホン以外のキャストの演技力も申し分なく、いつも同じメンツで映画を作っている邦画界とは役者層の厚さが違うところが羨ましい。2010年代ほどではないにしろ、2024年も韓国映画には期待して良さそうである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

apartment

いわゆるマンション、集合住宅を指す。ちなみに英語の mansion は大邸宅を指す。apartmentは一室を指し、集合住宅全体は apartment house と言う。一応区別して覚えておこう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 ゴーストワールド 』
『 ブルーバック あの海を見ていた 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イ・ビョンホン, サスペンス, パク・ソジュン, パク・ボヨン, パニック, 監督:オム・テファ, 配給会社:クロックワークス, 韓国Leave a Comment on 『 コンクリート・ユートピア 』 -人間社会の汚穢を描く-

『 デシベル 』 -看板・ポスターはネタバレだらけ-

Posted on 2023年11月22日 by cool-jupiter

デシベル 65点
2023年11月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:キム・レウォン
監督:ファン・イノ

 

韓国映画お得意のサスペンスものということでチケット購入。

あらすじ

とある家に爆弾が届けられ爆発。そのニュースを知った潜水艦の元副長カン・ドヨン(キム・レウォン)のもとに犯人からの電話が入る。次のターゲットがサッカースタジアムだが、そこに仕掛けられた爆弾は一定以上の音量に反応すると起爆までの時間が半減するというもので・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭の潜水艦シーンは『 ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE 』そっくり。もちろん真似たわけではないだろうが、韓国映画はハリウッド映画的な文法を忠実に実行することがある。この時点で期待が盛り上がってきた。

 

一年後、謎の爆破事件が勃発。そこから元副長のカン・ドヨンの苦闘が始まる。途中でなし崩し的に仲間になる記者のオ・デオがめちゃくちゃ良い奴。韓国映画界には味のある三枚目がよく出てくるが、彼もそんな感じ。コミックリリーフが存在するおかげで、そのコントラストとしての爆弾テロリストの恐怖が倍増している。

 

一定以上のデシベルを感知すると爆弾のカウントダウンの残り時間が半減するというのはなかなか怖い。日常の街中の声や音がそのまま凶器と化すからだ。潜水艦の隠密性も音を出さないことから得られるので、潜水艦乗りのカン・ドヨンが音に苛まれるのは観ていて本当に痛々しかった。

 

謎の爆弾魔が犯行に及ぶ動機が明らかになるにつれ、サスペンスが盛り上がる。真相を知ったところから、さらにもう一歩踏み込んでその深層部分を非常に硬質なドラマとして見せつけてくる。ストーリーはカン・ドヨンの家族をも巻き込んで進む。奥さんと娘がとことん追いつめられる本作だが、逆に新しい家族観を提示したとも言える。記者オ・デオが最終盤に放つ質問に対するドヨンの答えは、その場では語られない。しかし、彼の思いが最後の最後に回想される。子曰く「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」。人間、ドヨンのように強く生きねばならんなと思わされた。

 

ネガティブ・サイド

爆弾が絡むシークエンスはすべて緊張感がみなぎっているが、終盤の肉弾アクションになると急にクオリティが低下する。細かいカットの連発で、ここはもっと頑張れただろうと思う。軍人同士の格闘戦で、韓国の成人男性のほとんどが兵役経験者ということを考えれば、もっと攻めた演出を監督には施してほしかった。

 

明らかに無関係な一般人をも巻き込むような爆弾設置は、犯人の思想信条上どうだろうか。カン・ドヨンの関係者を徹底的に排除しようとする方が、彼の失ったものとのバランスがとれていると思うのだが。

 

最後に、これは映画の中身とは関係ないが、一言だけ。なんで日本の配給会社や宣伝会社は販促物で盛大なネタバレをかますの?パネルのビジュアルが全部ネタバレしているではないか。のみならず、某映画情報サイトもキャラクター紹介欄でネタバレをかます始末。いや、本作はミステリではないが、だからといってサイトや販促物でネタバレをしていい理由は一つもない。日本の宣伝・配給会社にはもう少し考えてほしいものだ。

 

総評

韓国映画らしいサスペンス。警察をとことんコケにすることに定評がある韓国映画界だが、本作では軍上層部の怠慢や無責任さも堂々と批判している。潜水艦ものだと本邦では『 沈黙の艦隊 』が上映中だが、自衛隊は映画製作にきょぅ力してくれるもので、映画によって批判される対象ではない。それが良いかどうかはさておき、政治や軍事、司法を容赦なくエンタメの形で批判する韓国映画と日本映画のコントラストがここにも見て取れる。単なるサスペンスとしてもなかなかの面白さ。『  白鯨との闘い 』的なサスペンスも楽しめる。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヨボ

配偶者への呼びかけに使われる。男女どちらが使っても良い。日本語にすると「あなた」や「ねえ」あたりになるだろうか。ドラマでもしょっちゅう聞こえるし、なんなら日本人・韓国人の夫婦YouTuberもよく使っている。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 月 』
『 花腐し 』
『 首 』

 

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『 ハント 』 -北のスパイを突き止めろ-

Posted on 2023年10月5日 by cool-jupiter

ハント 75点
2023年10月1日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:イ・ジョンジェ チョン・ウソン
監督:イ・ジョンジェ

 

簡易レビュー。

あらすじ

1980年代。安全企画部の海外班長パク・ピョンホ(イ・ジョンジェ)と国内班長キム・ジョンド(チョン・ウソン)は、機密情報が北朝鮮に漏洩していることを知る。そして組織内にスパイがいると告げられる。パクとキムは互いのチームを探り始めるが・・・

ポジティブ・サイド

1983年という、韓国民主化前夜の時代。その3年前に「光州事件」という、韓国版の天安門事件とも言うべき事態が引き起こされており、アメリカ系韓国人が韓国大統領の訪米に対して抗議のデモを起こすところから物語が始まる。

 

そこで勃発する要人暗殺未遂事件。パクとキムの二人は反目しあいながらも事件を解決。しかし謎のスパイ「トンニム」によって次々に機密情報が漏洩。一息つく暇もなく、二人はトンニムの追跡に乗り出すが成果なし。このあたりの展開の疾走感がたまらない。元々浅からぬ因縁のある二人だが、その過去の語られ方がめちゃくちゃ。まるで昭和の任侠映画のよう。というか時代背景的に昭和か。

 

二人のスペシャリストの対決は、それこそハリウッドでは撮り尽くされた印象があるが、そこに北朝鮮というファクターを混ぜるだけでサスペンスとミステリのレベルが一段上がる。トンニムとは誰か?パクとキムの捜査と虚々実々の駆け引きにぐいぐいと引き込まれる。本作が上手いのは、トンニム探しをゴールとするのではなく、そこから先に更なるクライマックスを持ってくるところ。冷酷非情な諜報員と情に厚い面を併せ持つ二人の男の極限の対決の結末には茫然自失。

 

韓国のみならずアメリカ、日本やタイをも破壊しつくす気か?と思わせる作品。と思いきや、撮影はすべて韓国内で完結したとのこと。国策で映画を作っている国は違いますなあ・・・

 

ネガティブ・サイド

全編を通じてまさにストーリーが疾走するが、説明不足の感も否めない。特に韓国近現代史の知識がある程度ないと、キム班長の苦悩の回想シーンの意味を理解できないだろう。当時の韓国の置かれていた政治的状況をもう少し上手く物語の展開の中で自然に説明できなかっただろうか(Jovian妻はここでつまずいていた)。

 

最終盤の怒涛の展開の中で、韓国の政府組織はどれだけ北朝鮮スパイに跳梁跋扈を許しているのか?というシーンがある。ここだけは、ちょっと北朝鮮の脅威を過大に描き過ぎだと感じた。

 

総評

こりゃまた血生臭い韓国映画。血の臭いだけではなく、男臭さもムンムンと漂ってくる。『 ビースト 』や『 ただ悪より救いたまえ 』といった、男二匹の対決をテーマにした作品が好きだという向きはチケット購入をためらってはならない。そうそう、中盤に思わぬ大スターが出演して、ケレンミたっぷりの演技を見せてくれる。これは嬉しい不意打ちである。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

インミン

劇中で突如登場する大物俳優がこの言葉を何度も口にする。意味は「人民」である。「人民のため」などと為政者が口にする時は、だいたい嘘をついている時だと思っていい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ほつれる 』
『 まなみ100% 』
『 オクス駅お化け 』

 

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