Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: 配給会社:HBO

『 華氏451(2018) 』 -リメイクの意義を再確認すべし-

Posted on 2019年7月4日2019年7月4日 by cool-jupiter

華氏451 50点
2019年6月30日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:マイケル・B・ジョーダン マイケル・シャノン ソフィア・ブテラ
監督:ラミン・バーラニ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190704185201j:plain

書物が焼かれる。いわゆる焚書を古代中国の悪習と思うことなかれ。知識は個の強さの基盤であると同時に、権力者にとっての脅威でもある。そのことは『 図書館戦争 』にしっかりと描かれている。日本でも新しい歴史教科書を作ろうと目論む連中がいるが、こうして考えてみると彼ら彼女らの思考は権力者のそれであって大部分の国民を形成する一般市民のそれではないことが良く分かるというものである。

 

あらすじ

書物の存在が許されない世界。モンターグ(マイケル・B・ジョーダン)は育ての親同然のベイティ隊長(マイケル・シャノン)のもとでFireman =昇火士として働いていた。ある時、老婆の家で膨大な量の書物が見つかった。本を焼却処分せんとする昇火士たちの前で、老婆は焼身自殺を遂げる、「オムニス」という謎の言葉を残して・・・

 

ポジティブ・サイド

数十年前は知識=富と考えられていた。特に日本のように土地が狭く、家屋自体もこじんまりしている国では。知識を伝える媒体が書物であり、その書物を所蔵できるだけのエキストラのスペースを家に持てる者が知識人とされた。知識=収入だったわけである。デジタル技術の進歩がそれを変えた。電子書籍リーダー一つで何万何十万冊の本と同等の情報が保持できる。逆に言えば、遍く知識を広めようと思えば、デジタル化をとことん推進すれば良いということになる。インターネット、本作で呼称されるナインは、その一つの結実である。そして現代では中国がGoogleを遮断し、バイドゥを検索エンジンとして推奨しているのは誰もが知るところである。デジタルの情報は容易に操作や加工ができるという点で、素晴らしくもあり、恐ろしくもある。この点を鋭く、かつユーモアに指摘している書物に新城カズマの『 われら銀河をググるべきや: テキスト化される世界の読み方 』がある。興味ある方は一読を。本書の終盤で新城が説くTwitterの在り様は、この映画のプロットと共通するところが多い。さらに興味が湧いたという向きには林譲治の小説『 記憶汚染 』をお勧めしておきたい。

 

デジタル技術ならびにAIに囲まれた生活によって、人間は何を得て、そして何を失うのか。そのことが映画の随所で端的に示される。だが、あまりにも遠い未来の技術ではなく、ほんの数十年先の未来、充分に予見できる範囲の未来であるがゆえの怖さもある。そこに“歴史修正主義”の思想と実践を読み取ることが余りにも容易だからである。SFは文明批判の最も効果的な表現媒体であるが、そのことを充分に力強く本作を描き出している。またclassical musicの”グノシエンヌ”が流れるタイミングに注目をされたし。『 その男、凶暴につき 』のBGMでおなじみだが、本来はこうした意味のある曲なのである。

 

ネガティブ・サイド

冒頭のボクシングシーンは、殴り合いながらも信頼関係、親子の情のようなものがしっかと存在することを見せようという演出なのだろうが、マイケル・B・ジョーダンはアドニス・クリードでもあるのだ。もっと違う形での殴り合いでも良いだろうに。

 

また、途中までのプロットがそのまんま『 メトロポリス 』である。現代にリメイクするからには、現代的な味付けが必要である。男女のロマンティックな関係を悪いとは思わないが、100年近く前の映画と同じプロットを用いるというのは、脚本家の敗北ではないだろうか。またエンディングも思いっきり『 猿の惑星 創世記 』のそれとそっくりである。これも考えものである。独創的なアイデアというのは、たいてい既に誰かが思いついているものだが、それでもこれらのようなメジャーな作品の亜種、亜流と看做されるようではリメイクの意義を大きく損なっていると判断されても仕方がないだろう。

 

最後に映画そのものの質とは関係のないことを。字幕には字数制限があるため仕方ないのかもしれないが、サラマンダーを火トカゲと訳してしまうと、どうにも間が抜けて聞こえる。Eelもイールで良い。ウナギと訳してしまうと、ぬるぬる捕まえづらく、すぐに地面の下に潜る感じは出るが、やはり間が抜けて聞こえてしまう。

 

総評

全体的に薄暗いシネマとグラフィーも、ダークな世界観と調和している。やや弱いながらもタイムリーなメッセージ性も持っている。マイケル・シャノンやマイケル・B・ジョーダンのファンならば、鑑賞しても損は無いのではなかろうか。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アメリカ, マイケル・B・ジョーダン, マイケル・シャノン, 監督:ラミン・バーラニ, 配給会社:HBOLeave a Comment on 『 華氏451(2018) 』 -リメイクの意義を再確認すべし-

最近の投稿

  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-
  • 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-
  • 『 RRR 』 -劇場再鑑賞-
  • 『 RRR:ビハインド&ビヨンド 』 -すべてはビジョンを持てるかどうか-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme