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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 配給会社:東芝エンタテインメント

『 親切なクムジャさん 』 -イ・ヨンエの復讐劇に戦慄せよ-

Posted on 2020年9月19日 by cool-jupiter

親切なクムジャさん 70点
2020年9月17日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:イ・ヨンエ チェ・ミンシク オ・ダルス
監督:パク・チャヌク

 

Jovianの教えている大学の女子大生たちが『 愛の不時着 』に夢中になっている。だが彼女らは知らないだろう。自分たちが生まれた頃、あるいは直後ぐらいに放送された『 冬のソナタ 』や『 宮廷女官チャングムの誓い 』は、自分たちの親世代を熱狂させていたことを。特に前者のペ・ヨンジュンはマダムを、後者のイ・ヨンエはオッサンの心を鷲掴みにしていた。当時20代だったJovianもイ・ヨンエの虜になったものだ。そのイ・ヨンエの新作が間もなく公開される。復讐・・・ではなく復習のために本作をレンタル。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200919112941j:plain
 

あらすじ

誘拐と殺人の罪で服役するクムジャ(イ・ヨンエ)だったが、彼女は無実だった。13年の刑務所暮らしの中で囚人仲間に数々の親切を施すクムジャだったが、それはシャバに出た時に真犯人に復讐するための仲間作りのためだった。そして彼女の復讐劇が幕を開ける・・・

 

ポジティブ・サイド

どうしてもチャングムのイメージが強いが、あのドラマでも少女の天真爛漫さ、放逐されて途方に暮れる表情、医女となる決意を固めた顔、王や長年相思相愛だった文官とのロマンスで見せる艶のある顔など、イ・ヨンエの演技力の幅はすでに証明されていた。しかし、『 オールド・ボーイ 』のパク・チャヌク監督は、そんなイ・ヨンエの内からダークサイドを引きずり出した。復讐を果たさんとするクムジャの怒りと悲しみに満ちた苦悶の表情は、アカデミー賞級ではないか。『 MOTHER マザー 』のラストでは長澤まさみにこのような表情を見せてほしかったのだ。鬼子母神がいるとすれば、それはイ・ヨンエのような表情を見せる狂乱の母であろう。また、ホラー映画かと見紛うほどの顔面崩壊劇を見せており、美貌も何もかも吹っ飛ばしている。『 ディストラクション・ベイビーズ 』の柳楽優弥のボコボコの顔をイ・ヨンエが再現したと言ったら、その衝撃と恐怖が伝わるだろうか。とにかく本作はイ・ヨンエの表情だけでご飯が3杯はいけるのである。

 

脇を固める復讐仲間も味わい深い。刑務所と言えば『 ショーシャンクの空に 』や『 ブラッド・スローン 』のように、良くも悪くも濃密な人間関係が生まれるところである。中には殺人者だったいるわけで、そうした者たちとの交流と友情は、単なる友人関係を超えて戦友の域にあるのだろう。パク・チャヌク演じる教師に復讐するために、そこまでやるかと思う仕込みがある。普通に考えれば成立しないプロットだが、刑務所あがりならありえるかもしれないと思わせるパワーがあった。『 ショーシャンクの空に 』のアンディとレッドの抱擁がどんな男女のロマンスよりもセクシーかつ崇高に見えたように、特別な人間関係は刑務所で生まれるのかもしれない。

 

復讐のために生きる。その姿は時に神々しいまでに美しいが、復讐を果たした時にその輝きがどうなるのかは誰にも分からないだろう。『 アジョシ 』でも、ソミが殺されたと思い込んでいたテシクは、組織に復讐を果たした後、自らの頭を銃で撃とうとした。復讐は生きる理由になるが、逆に言えば死ぬ理由にもなる。親切なクムジャさんが最後に見せる表情とは何か。そして我々はその表情を見られるのか。その答えは是非、自分の目でお確かめを。

 

ネガティブ・サイド

凄惨な暴力シーンもあるが、『 オールド・ボーイ 』が凄すぎたこともあり、今一つ衝撃的には感じなかった。SBホークスの柳田みたいだ。超弾丸軌道の特大ホームランをコンスタントにかっ飛ばすせいで、普通にスタンドに入るだけのホームランでは客は満足しない。

 

クムジャの有罪を確信しきれない刑事が少々無能すぎやしないか。『 暗数殺人 』のように、大人絡みの事件なら、事件が表面化せず、結果的に暗数犯罪になってしまうこともあるだろうが、子どもばかりを狙う誘拐犯という線で捜査をしていけば、チェ・ミンシクには割とすぐにたどり着けたのではないか。

 

また復讐の女神としてのイ・ヨンエが終盤で少々ぶれる。刑務所仲間は良いとしても、その他のキャラクターにも登場してもらうのは、物語的にはノイズになっていた。いっそのことキム・ヘジャとは一味違った『 母なる証明 』を追求してほしかったと思う。協力者はいても、ミッションの最も肝の部分は自分が達成するのだという気概が弱かったように感じた。

 

総評

韓国映画お得意の復讐物語としては標準以上の面白さ。イ・ヨンエの演技力の幅を存分に堪能することができる。日本でもバイオレンス物はそれなりに作られているが、血の臭いが漂ってくるもの、見ているこちらまで痛みを感じてしまうもの、キャラクターの放つ瘴気に精神を摩耗させられるものとなると、韓国映画には残念ながら敵わない。『 ブリング・ミー・ホーム 尋ね人 』が待ち遠しくなるし、イ・ヨンエの銀幕への復帰が、ウォンビンに良い刺激を与えてくれるのでは、との期待も生まれる。

 

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

クロニカ

だから、の意。『 新感染 ファイナル・エクスプレス 』でも紹介した表現。慣れてくれば、「クロニカ、オーケー(OK)」とか「クロニカ、カジャ」のように、すでに知っている表現を組み合わせて使ってみるのもよいだろう。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, B Rank, イ・ヨンエ, オ・ダルス, スリラー, チェ・ミンシク, 監督:パク・チャヌク, 配給会社:東芝エンタテインメント, 韓国Leave a Comment on 『 親切なクムジャさん 』 -イ・ヨンエの復讐劇に戦慄せよ-

『 オールド・ボーイ 』 -韓国ノワールの面目躍如-

Posted on 2020年4月14日2020年4月15日 by cool-jupiter

オールド・ボーイ 80点
2020年4月12日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:チェ・ミンシク カン・へジョン
監督:パク・チャヌク

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200414233705j:plain
 

心斎橋シネマートで韓国映画を観たいが、それもままならない。ならば近所のTSUTAYAの韓国映画コーナーで面白そうなものを借りてくるだけである。

 

あらすじ

オ・デス(チェ・ミンシク)はある日、突然誘拐され、以来15年間監禁されていた。部屋の壁を何とか削りながら、なんとか自力で脱出を果たせるかという時に、彼は突然解放される。途方に暮れるオ・デスは、しかし、自分を監禁した者への復讐を誓い・・・

 

ポジティブ・サイド

日本の漫画が原作ということだが、この映画のプロットと原作はどれくらい似通っているのだろうか。妥協しないバイオレンス・アクションと度肝を抜かれる展開に、2000年代の韓国映画の底力を見たような気がする。

 

あれよとあれよという間にオ・デスが監禁され、観る側はオ・デスと共に「何故?」「どこ?」「誰?」といった疑問を抱・・・く間もなく、オ・デスは復讐を誓い、ガムシャラに体を鍛え、『 ショーシャンクの空に 』のアンディのごとく、脱出を図る。そしていざ・・・という時に勝手に解放される。ここまでの展開のジェットコースター的なスピードよ。作る側は早くオ・デスを暴れさせたい、観る側は早くオ・デスが大暴れし、監禁された謎が解かれるのを見たい。両者の思いが見事にシンクロする。粗っぽく進行するのと、念入りに描写しながらもそのねちっこさを一切感じさせずスピーディーに進むのは全然違う。前者はアマチュアの仕事、後者はプロの仕事である。

 

シャバに舞い戻ったデスは、町のチンピラとの乱闘からイカの踊り喰いまで、監禁されていたとは思えないほどの健康的な振る舞いを見せる。いや、健康的というよりも、火山が噴火前にマグマをとことん溜め込むかのように、デスは監禁部屋の一室でマグマを内に溜め込んでいたのだ。デスとミドの出会いのシーンは一見して意味不明である。これもあれよあれよという間に話が進み、一気に恋仲になり燃え上がる二人になる。このあたりは昭和や平成初期の任侠映画や、アメリカン・ニューシネマの逃亡物のようである。それにしても、ミドを演じるカン・ヘジョンの何と官能的で魅力的であることか。『 RED 』の夏帆の2度目のラブシーンも艶めかしかったが、デスとのまぐわいは動物的と言おうか、愛情表現や濃密なコミュニケーションではなく、本能的につながってしまったという印象を強く受けた。美しいラブシーンではなく、荒々しいセックス。この演出が後々、二重の意味で効いてくる。一つはデスが自分を「獣にも劣る人間」と語るところ、もう一つは終盤のドンデン返しである。この計算された粗さと荒々しさというのがパク・チャヌク監督の持ち味なのだろうか。

 

アクションも楽しい。見ごたえがある。特に廊下の大立ち回りは、ロングのワンカットになっており、どれだけリハーサルを重ねたのか、心配になるほどの上々のクオリティ。何が素晴らしいかと言えば、ちゃんと主役の息が切れるアクションになっていること。これが例えばランボーやイーサン・ハント、ジェームズ・ボンドなら、息も乱さず雑魚を一掃するが、オ・デスはそうではない。テレビのボクシングを見様見真似で練習し、決して殴り返してこない壁を相手にパンチングを行い、妄想の中でスパーリングをこなしてきたのである。何人かを撃退したところでゼーゼーハァハァである。世間の評判はイマイチだったが、Jovianは同じ理由でシャーリーズ・セロンの『 アトミック・ブロンド 』を高く評価している。いくら主人公が強くても、息は絶対に切れるのである。それにしてもこの廊下の大乱闘の完成度の高さよ。特に、オ・デスが角材を右でガードしてからの左ストレートのカウンターを見舞う様は芸術的だ。

 

アクション以外の映像芸術面でも魅せる。デスが母校を訪ねるシーンも印象的。ホームページに映る校庭、そこで遊んでいる生徒たち、という動画が流れていると思わせて、そこにデスの乗る車が走って来るという映像のつなぎ方には唸らされた。セピア色の後者をかけるかつての自分を追いかけるシーンはベタな演出だが、謎解きの本質に迫る感じがしてグッド。手鏡と窓というガジェットの使い方も印象的である。それにしても、韓国というのは美女でも美少女でもどんどん脱ぐのだなと感心する。青春というのはキラキラと輝いている一方で、ドロドロの性欲に支配されている時期でもある。ついつい勢いでセックスしました、までは行かなくても過激なペッティングをしてしまいました、というのは説得力ある展開である。それもこれも、女優さんが文字通り一肌脱ぐから成立するんだよな。日本の二十歳前後の女優も頑張ってほしい。

 

終盤のドンデン返しは、箱の時点で感づいた。デヴィッド・フィンチャーの『 セブン 』以来、このような展開で箱を見ると中に最悪のものが入っているといやでも想像するようになってしまった。今作でもその予感は正しかった。うーむ、悔しいなあ。なぜ15年なのか。なぜ監禁者はデスを殺さなかったのか。なぜ監禁者は暴れまわるデスを一思いに始末しないのか。ここらあたりをとことん突き詰めて考えれば、人によってはあらすじから結末が読み解けるかもしれない。真相を知ったデスの振る舞いは、演技の域を超えてほとんど発狂した人間のそれである。イカの踊り喰いも、ある意味ではこの行動の前振りだったのか。ラストのデスの表情が物語るものは何か。『 殺人の追憶 』のソン・ガンホのラストの表情と並ぶ、渾身の顔面の演技である。やっていることは『 母なる証明 』の母に通底するものがあるのだが、これが韓国流の父性や母性の解釈なのだろう。人間の弱さや醜さ、汚さから絶対に目をそらさないという強さが、そこにはある。

 

それにしても本作の俳優さんたちは、なぜか日本の俳優に雰囲気がそっくりな人が多い。北村有起哉や中村獅童、千原せいじに水原希子などの顔がパッと浮かんできた。

 

ネガティブ・サイド 

15年ぶりに外の世界で出てきて、いきなり違和感なく携帯電話やパソコンを使うというのは少々疑問だ。この当時の携帯やPCは、『 スティーブ・ジョブズ 』が目指したような“子どもや高齢者でも直感的に使うことができるインターフェース”は実装されていない。テレビでプロダクトを見たからといって、いきなりそのまま使える代物ではない。解放された直後のオ・デスがもっと時の流れに戸惑うシーンが欲しかった。

 

欲を言えば、オ・デスが金づちをメイン・ウェポンに選ぶくだりをもっときっちりと描いてほしかった。DVDのカバーにもなっている、妖しいオーラを放つ不気味な中年が金づちを振りかぶっているという構図のインパクトは非常に大きい。このトレードマークとも言える金づちとデスの結びつきを示す演出が欲しかった。

 

総評

大傑作である。暴力も性も人間の業も、全てひっくるめてパーフェクトに近い。ハリウッドでリメイクされているが、これは日本版のリメイクも作るべきだ。というか、原作漫画は日本産なのだから、日本こそ本作を映画化すべきだ。制作委員会がガタガタうるさいのだろうが、日活あたりが腹をくくって制作費3~4億円ぐらいポンと出してくれないかな。主演は音尾琢真で、監督は三池崇史かなあ。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

アジョシ

「おじさん」の意である。劇中で何度も何度も使われるので、すぐにわかる。英語でも韓国語でもロシア語でも、語学学習で大切なことは“正しい文脈の中で学ぶ”ということである。そうした意味で、映画は語学学習の非常に大きな助けになってくれる。

 

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