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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 配給会社:ワーナー・ブラザーズ映画

『 フロントライン 』 -見せ方に一考の余地あり-

Posted on 2025年7月8日2025年7月8日 by cool-jupiter

フロントライン 60点
2025年7月5日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:小栗旬 松坂桃李 窪塚洋介 池松壮亮
監督:関根光才

 

看護師の母が絶賛(一部酷評)していた作品ということでチケット購入。

あらすじ

豪華客船のダイヤモンド・プリンセス号で新型コロナ患者が発生。横浜に停泊する同船内で治療にあたるため、本来は災害派遣されるDMATに白羽の矢が立つことに。リーダーの結城(小栗旬)はチームを招集し、厚労省の役人の立松(松坂桃李)と共に現地に赴くが・・・

ポジティブ・サイド

当時のニュースはよく覚えているし、マスコミの論調もよく覚えている。また岩田某がアホな動画をアップしたことも覚えているし、その動画に踊らされたアホなメディアや民衆のこともよく覚えている。そうした喧騒を背景に、静かに戦った医師や看護師を丁寧に描き出していた。

 

まず目についたのは窪塚洋介。野戦病院のリーダーとして、冷静沈着ながらも内に秘めた闘志と使命感を感じさせる医師を好演した。官僚を演じた松坂桃李も印象的だった。杓子定規な役人かと思いきや、意外に話せるし、見た目通りに有能。かなり柔軟な姿勢の持ち主で、必要とあらば法の規定も迂回する。2020年の春は大学関連業務の中でも教務パートを受け持っていたが、物流が滞っていて肝心の教科書が会社にも学校にも普通の書店にも届かなかった。そんな時に文化庁長官が各出版社に「著作権について格別の配慮」を求めた結果、教科書のデータを一時的に使わせてもらえたり、それを複製して配布したり、あるいはZoomなどで画面共有したりすることが可能になった。同じようなことがもっと大きなスケールで医療の現場で起きていたのだなと感慨深かった。

 

閑話休題。医師たちは、メディアやその背後の多くの国民の願い、すなわちコロナを国内に持ち込むなという思いとは別の思いで動いていたことが知れたのは非常に良かった。ここのすれ違いがメディアの暴走を生み、ひいては差別や国民間の分断を生んだことは記憶に新しいところだ。実際、トラックの運転手などはウィルスの運搬人扱いされていた。なんたること・・・

 

船内の状況や近隣(とは言えないところまで含めて)の医療機関との連携が形を成してきたところで、物語は暗転していく。例の動画だ。医療従事者たちが手指消毒を欠かさず、マスクや防護服も着用していたことは分かるし、船にクリーンルームやクリーンフロアが作れるはずがないことも、ちょっと頭を使えば分かる。あるいは取材すれば分かる。メディアはそれをしないし、大衆もそれを調べようとしない。それどころか(もう故人なので名前を出すが)小倉智昭などは「患者がいっぱいなので病院は儲かっている」だの、「ECMOは高額なので利益が出る」だの、めちゃくちゃ言っていたし、それに信じる人間も一定数この目で見た。こうした無責任なメディアを本作は遠回しに、しかし確実に批判している。

 

エッセンシャル・ワーカーたちの戦いに改めて敬意を表する機会を本作は提供してくれる。

 

ネガティブ・サイド

医療従事者のプロフェッショナリズムとプライベートの部分、すなわち彼ら彼女らの私生活、なかんずく家族についての描き方に不満がある。池松壮亮の家族がサブプロットとして描かれていたが、これは蛇足だった。なぜなら本作を鑑賞する多くの人々は、このことを覚えているはずだから。また、後年に見ることになる人々も周囲に話を聞いたり、あるいはネットで調べたりすることができるから。主要人物すべてが、時々メールをしたり、ひそひそ声で電話したりするシーンを映し出し、観客の想像力に訴えかければ事足りたはず。

 

同じく、小栗旬が桜井ユキからあることを尋ねられた際にも、言葉でていねいに答える必要はなかった。単に小栗旬に「具問だな」という表情をさせるだけでよかった。言葉でもって物語るということは、マスコミが言葉でもって一面的、皮相的にニュースを報じるのと構図の上では同じだ。相手の発する言葉を受け止めるのではなく、相手の働きぶりや立ち居振る舞いから読み取ることの重要性を逆説的に訴えかけてほしかった。

 

あとはメイクか。船の中でどんどん髪が乱れ、髭も伸び、頬もこけて、肌つやもなくしていく野戦病院の院長然としていた窪塚洋介とは対照的に、常に小ぎれいに身を整えていた野戦病院の理事長的な小栗旬の対比が痛々しかった。

 

総評

演出にやや問題あり。考えさせる映画ではなく、教える映画のように感じた。当時のニュースで〇〇〇と感じたが、この映画でやっぱり◎◎◎だと感じた、というのでは、既存メディアは信用ならん、SNSは信用できるという思考とパラレルである。このあたりがアメリカや韓国の社会派映画との違いか。とはいえ、エンタメだと割り切って観れば、それなりに楽しめるはず。最後の最後に映し出されるスーパーインポーズに何を思うのかで、本作の評価や印象がかなり変わると思うので、最後を注視してほしい。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

listen to one’s chest

胸を聴診するの意。聴診するという医学用語にはauscultateという語があるが、こんなのは英検1級ホルダーでもなかなか知らない(OET受験者は案外知っているが)。劇中でも小栗旬が breathe in, breathe out と呼び掛けていたが、息を吸って吐くところまでがセットである。ちなみに心臓の音は基本的には胸側からしか聴けない。呼吸音は両側から聴ける。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 この夏の星を見る 』
『 愛されなくても別に 』
『 ハルビン 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, 小栗旬, 日本, 松坂桃李, 歴史, 池松壮亮, 監督:関根光才, 窪塚洋介, 配給会社:ワーナー・ブラザーズ映画Leave a Comment on 『 フロントライン 』 -見せ方に一考の余地あり-

『 ミッキー17 』 -やや一貫性に欠ける-

Posted on 2025年4月1日 by cool-jupiter

ミッキー17 65点
2024年3月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ロバート・パティンソン ナオミ・アッキー マーク・ラファロ トニ・コレット
監督:ポン・ジュノ

 

ポン・ジュノ監督の作品ということでチケット購入。

あらすじ

借金取りから逃れるために、使い捨て人間として宇宙に出ることに決めたミッキー・バーンズ(ロバート・パティンソン)。しかし、それは過酷な環境での人体実験の被験者になることだった。死んでも死んでもリプリントされ、記憶もインストールされるミッキーだが、ある時、事故から生還すると、そこにもう一人のミッキーがいて・・・

ポジティブ・サイド

『 TENET テネット 』や『 THE BATMAN ザ・バットマン 』でクールな役を好演してきたロバート・パティンソンが、悲惨なお笑いキャラに大変身した。もうそれだけで笑える。『 エリジウム 』とはある意味で正反対の世界ながら、同作の治癒マシーンをはるかに超えた、人間プリンターには驚かされた。ただ、100年後ぐらいには中国が作りそうな装置ではある。ここから量産される人間を使って、普通の人間に対しては行えないアレやコレをやってやろうというのは『 火の鳥 生命篇 』。漫画好きのポン・ジュノらしい。

 

宇宙船の中でも格差社会が存在するのは、『 スノーピアサー 』の拡大版。子どもが搾取されるのではなく、大人のエクスペンダブルが搾取される。しかし、宇宙放射線対策やワクチン開発のための人体実験で死にまくっているミッキーは、英雄なのか奴隷なのか。

 

そのミッキーを虐げる悪役をマーク・ラファロとトニ・コレットが巧みに演じた。特にトニ・コレットは、時にユーモラス、時にホラーと、顔芸だけではなく確かな演技力を披露してくれた。

 

やっとたどりついた新天地のニフルヘイムの先住者は『 風の谷のナウシカ 』の王蟲そっくり。この時点である程度展開は読めるのだが、ちょっとしたひねりも加えられていて、それがしっかりエンターテインメントにもなっている。

 

死ぬとはどういうことか問うことを通じて、生きるとはどういうことなのかを逆に問い直そうとする作品。一人でじっくり鑑賞しても良し、家族や友人と連れだって鑑賞し、あれこれを感想をシェアするのもいいだろう。

ネガティブ・サイド

ティモやカイといったキャラクターはもう少し深掘りできたのではないか。もしくはバッサリと存在ごとカットしてもよかったかも。

 

重複存在となったミッキー17とミッキー18が、マイルドとハバネロぐらい異なる性格になったことに対して全く説明がなかったのが気になる。記憶を保存して、それをリプリントされた個体の頭脳にインストールする。ここまではSFでよくある設定。ただ、同じ肉体、同じ記憶であるにも関わらず、全く異なるパーソナリティになってしまう説明が欲しかった。たとえば、ミッキー5まではこうだったけど、ミッキー6はちょっと変な奴だった、のようなエピソードがあればもっと得心がいったのだが。

 

テーマは What’s it like to die? だったはずだが、そこに占める異星生命との遭遇の割合が大き過ぎたように思う。延々と人体実験に晒されつつも、ある時、死んでしまったミッキーに人工呼吸やら胸骨圧迫をして蘇生させる必要が生じた。しかし、蘇生はできずリプリントした。なぜ我々はリプリントされる彼を蘇生させようとしたのか・・・と問うような物語もありえたのかな、と思う。

 

総評

決して傑作ではない。しかし駄作でも凡作でもない。ブラック・コメディとして普通に面白い作品。保守化に邁進する第2次トランプ政権のアメリカ社会とその歴史を下敷きに本作を鑑賞すれば、ポン・ジュノ監督が何を笑いに変えようとしたかったのかが見えてくる。格差、階級、移民、異邦人。なかなか解決できない問題だが、笑い飛ばすことはできる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

work one’s ass off

直訳すると、働いて誰かの尻が離れてしまうだが、実際は「めちゃくちゃ頑張る」ということ。We all have to work our asses off. To hell with my company… のように言える。こういうことがサラッと言えれば英検0級である。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 Flow 』
『 ケナは韓国が嫌いで 』
『 悪い夏 』

 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, トニ・コレット, ナオミ・アッキー, ブラック・コメディ, マーク・ラファロ, ロバート・パティンソン, 監督:ポン・ジュノ, 配給会社:ワーナー・ブラザーズ映画Leave a Comment on 『 ミッキー17 』 -やや一貫性に欠ける-

『 アクアマン 』 -暗くないDCヒーロー爆誕!-

Posted on 2019年2月17日2019年3月21日 by cool-jupiter

アクアマン 75点
2019年2月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジェイソン・モモア ニコール・キッドマン アンバー・ハード ウィレム・デフォー
監督:ジェームズ・ワン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190217025610j:plain

DCユニバースの顔と言えばバットマンにスーパーマンだった。バットマンは、怪人リドラーとかMr.フリーズのあまりのインパクトに目が曇らされそうになるが、基本的にはゴッサムの街もバットマン/ブルース・ウェインの心の在り様も非常に暗いものだった。スーパーマンにしても、クリストファー・リーヴverのものも、シリーズが進むにつれてトーンは暗くなっていった。ワンダーウーマンにしても同じで、パラダイス島を出てからは、やはり暗い。そこにアクアマンがやってきた!暗くないDCヒーロー!これを我々は待ち望んでいたのではなかったか。

あらすじ

灯台守と海底人の王女の間に生まれたアーサー・カリー。彼はそのスーパーヒーローとしての力を使って、海で悪事を働く者たちを成敗していた。しかし、海底人たちが地上世界の支配を目論み、侵攻を始めようとしていた。地上と海底の二つの世界の戦争を止められるのは、両方の世界の人間の血を引くアーサーしかいない!アーサーは真の海底人の王となって、戦争を止められるのか・・・

ポジティブ・サイド

本作は完全に漫画である。元々がアメコミなのだから当然と言えば当然だが、漫画の「漫」の字には

①みだりに。とりとめがない。「散漫」「放漫」
②そぞろに。なんとなく。「漫然」「漫遊」
③ひろい。「漫漫」「爛漫(ランマン)」
④みなぎる。一面に広がる。「瀰漫(ビマン)」
⑤こっけいな。「漫画」「漫才」

 (漢字ペディアhttps://www.kanjipedia.jp/kanji/0006588000より)

以上のような意味がある。本作は驚くべきことに上の全ての特徴を備えている。一部はネガティブ・サイドに回るべきなのだろうが、話にとりとめがなかったり、フォーカスが合っていなかったり、スケールがとにかく大きかったり、パワーが漲っていたり、容赦のないギャグを放り込んできたりもする。それは漫画的な面白さなのだ。長期連載漫画などは、しばしばサブプロットが大きくなってしまったり、または伏線の回収を忘れてい(るように見え)たりすることがある。それが短ければ1時間半、長くても2時間半の映画の世界でも起こるということに、良い意味でも驚かされた。

まず、プロットからして漫画というか、原作者は和月伸宏なのかと見紛うほどに間テクスト性に溢れている。先行テクストとして挙げられる、または考えられるのは『 インディ・ジョーンズ 』シリーズ、『 ドラえもん のび太の海底鬼岩城 』、『 エイリアン2 』、『 スター・ウォーズ 』シリーズ、『 ワンダーウーマン 』、『 バトルシップ 』、『 タイタンの戦い 』、『 ジュピター 』、『 センター・オブ・ジ・アース 』、『 キングコング 髑髏島の巨神 』、『 宇宙戦争 』、『 パーフェクト・ストーム 』、『 トランスポーター 』シリーズ、『 トランスフォーマー 』シリーズ、『 マトリックス 』シリーズ、『スーパーマン リターンズ 』などであろうか。こうした仕掛けをオリジナリティの無さと見るのは容易い。しかし、独創性を追求するあまり、意味が分からないものを作ってしまうのは、映画だけではなく、例えば料理の世界でもよくあることだろう。それならば、すでに味が分かっているもので、フルコースを作った方が賢明であるとの論理も成り立つ。ジェームズ・ワンはそのように考えたようだ。

まず冒頭の潜水艦のシーンからして、同じDCの先輩、スーパーマンの『 スーパーマン リターンズ 』の飛行機のシーンと構図としては全く同じである。さらに名前が示す通り、アーサー王物語を現代風に、そしてギリシャ神話風に換骨奪胎している。また魔術師マーリンにあたる役をウィレム・デフォーに割り振るという大胆な采配。カラゼンという海の化け物は名前もビジュアルもまんまクラーケン(ハリーハウゼンが粘土で作ったものではなくCGの方)。こんなのは序の口で、とにかくどこかで見たり聞いたりしたことのある物語要素がてんこもりなのだ。しかし、それが面白さを損なわない。逆に一定水準以上の面白さを担保しているのだから興味深い。

ユーモアの面でも魅せる。ワンダーウーマンことダイアナはアイスクリームの美味しさにほっぺたが落ちそうになった。今作のヒロインのグィネヴィア・・・ではなくメラは、地上の花に関心を示す。ここでのアーサーの反応は面白い。地上人としてはどうかと思うが、地上と海底、両方の世界に属す人間としての「らしい」リアクションを見せてくれる。笑ってよいシーンだが、笑いとは自分と対象の間に距離があることから生じる反応だ。これこそが、ある意味では本作のテーマであるとも言える。

劇中でアーサーはしばしばHalf-breedなる言葉で表現される。「あいの子」とでも訳すべきだろうか。純血主義を否定はしないが、純血を保つことを教条化してしまうと、現実の世界の変化に対応できなくなる。まるでどこかの島国の現状のようである。いわゆるハーフ、もしくはミックスというべきか、混血児はしばしば異能を示す。大坂なおみ然り。アクアマンはこれまでにいそうでいなかった、人間と人間でない者を親に持つ半人間のスーパーヒーローなのだ。まさに今という時代に現れるべくして現れたヒーローと言える。

また彼の母アトランナを演じるニコール・キッドマンについては【 73 Questions With Nicole Kidman 】というYouTube動画を先に観ておくことで、より深みを見出せるようになる。特に母親であることについて最も素晴らしいこと、最も難しいことについての彼女の答えを意識してみれば、本作の見方が少し深まるはずだ。

水中のシーンでは三次元的カメラワークが冴える。ある意味、宇宙と同じ無重力的空間でのチェイスやバトルをこれほど漫画的に映し出してくるとは思っていなかった。4DXまたはMX4Dでも観てみたいと純粋に思わせてくれる。とにかく色々なものがジェットコースター的なのである。

ネガティブ・サイド 

カラゼンがトライデントを守り続けること1000年とはどういうことなのだ。アトランティスが沈んだのは11000年以上前のはずだ。また、アーサーの年齢はどうも20歳らしいが、ジェイソン・モモアに20歳役はかなり苦しい。ここらへんの数字の齟齬がどうしても気になってしまった。

あとは兵隊サメか。ハリウッド映画に出てくるサメが何をしても、もう我々は感覚がマヒしているというか、驚くはずがないと思っていたが、こんなサメを出してしまうとは・・・ 夏の風物詩の糞サメ映画に燃料を与えてしまったのか、それとも貴重な糞アイデアを奪い取ってしまったことになるのか。その答えは今年の夏以降に分かるだろう。おそらく後者だと思うのだが。

総評

ジェームズ・ワンってホラー映画作ってるんでしょ?という認識の人は What a pleasant surprise! となるだろう。とにかくヒーローがアドベンチャーしてアクションしてSFしてロマンスする映画だと思って観るべし。ファミリーで観に行ってもいいし、付き合い始めて日が浅いカップルのデートムービー、または気になる女子をデートに誘う口実にも使いやすい健全な娯楽映画でもある。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190217025650j:plain
Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アクション, アメリカ, ジェイソン・モモア, 監督:ジェームズ・ワン, 配給会社:ワーナー・ブラザーズ映画Leave a Comment on 『 アクアマン 』 -暗くないDCヒーロー爆誕!-

『 クリード チャンプを継ぐ男 』 -The torch has been passed-

Posted on 2019年1月12日2019年12月21日 by cool-jupiter

クリード チャンプを継ぐ男 80点
2019年1月6日 レンタルBlu Rayにて鑑賞
出演:シルベスター・スタローン マイケル・B・ジョーダン
監督:ライアン・クーグラー

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190112020804j:plain

『 猟奇的な彼女 』と言えば、腰の入ったパンチ。パンチと言えばボクシング、ボクシングと言えば『 ロッキー 』。その魂はアポロ・クリードの息子、アドニス・ジョンソンに受け継がれた。クリードの最新作に備えて、前作を復習鑑賞した。

 

あらすじ

アポロ・クリードの息子、アドニスは我流でボクシング技術を磨いていた。メキシコのティファナで連戦連勝するも、アメリカの世界ランカーにはスパーで一蹴されてしまう。アドニスは父、アポロと激闘を繰り広げ、盟友となったロッキー・バルボアの指導を仰ぐべく、フィラデルフィアにやってきた。エイドリアンやポーリーが世を去る中、イタリアン・レストランを独り切り盛りするロッキーは、アドニスに“虎の目”を見出して・・・

 

ポジティブ・サイド

アドニスと拳を合わせる相手にSuper Sixの覇者アンドレ・ウォード、ミドル級のゲートケーパー的存在ガブリエル・ロサド、そして英国のやんちゃ坊主、トニー・ベリューと本物のプロボクサーを豪華に配置。これだけでもボクシングファンには嬉しいキャスティング。スタローン映画『 エクスペンダブルズ3 ワールドミッション 』に出演したヴィクター・オルティズは映画に出たことでキャリアが下降してしまったが、ウォード、ベリューらは既にキャリアの最終盤に入っていた。そうした意味でも安心できた。現役ボクサーが映画に出ても、あまり良いことは無いのだ。WOWOWでExcite Matchを熱心に観ている人なら、マイケル・バッファやHBOのマックス・ケラーマンやジム・ランプリーの存在が更なるリアリティを生んでいると感じられるだろう。そのHBOも2018年末でボクシング中継から撤退。何とも景気の悪い話である。

 

閑話休題。本作には Eye of the Tiger は流れないが、字幕が良い仕事をしてくれる。その瞬間は絶対に見逃しては、いや聞き逃してはいけない。

 

マイケル・B・ジョーダンは本作と『 ブラックパンサー 』のキルモンガー役で完全にトップスターの仲間入りを果たしたと評しても良いだろう。スタローンもボクシングのシルエットがきれいだったが、ジョーダンは元々の身体能力+ボクシングセンスで、スタローン以上のボクシング的な動きを披露する。

 

中盤の試合のワンテイクは圧倒的である。ズームインやズームアウトがされていたので、どこかで合成、編集されているのであろうが、はじめて東宝シネマズなんばで鑑賞した時は魂消たと記憶しているし、今回の復習鑑賞でもやはり驚かされた。

 

初代の『 ロッキー 』がそうであったように、本作も単なるボクシングドラマではない。アドニスというサラブレッドが、何者にもなれずにいることのフラストレーション、世間が自分を見る目と自分は自分でしかないという認識のギャップに、ロッキーが語った「自分はnobodyだった」という言葉が蘇ってくる。家族を失ったロッキーと、家族を手に入れようとするアドニスの、何とも切ない邂逅の物語なのだ。ロッキーがアドニスに自らの魂を渡す瞬間、“Gonna Fly Now”のファンファーレが響き渡る!!もう、この瞬間だけで100点を献上したくなる。

 

『 ロッキー 』シリーズはこれまでに何度も観てきたが、今後もふと疲れた時、目標を見失いかけた時、心が折れそうになった時に、何度でも立ち返るだろう。特に1、2と本作は何度でも見返すことだろう。

 

ネガティブ・サイド

中盤のアドニスの試合のワンショットだが、実時間では1ラウンド3分ではなかったし、ラウンド間のインターバルも1分ではなかった。そんなことに拘っても仕方がないが、映画ファンでもありボクシングファンでもあるJovian的には非常に気になるところではあった。体内時計世界王者対決というテレビ企画もあったように、ボクサーは3分を肌で分かっているものだ。映画はリアリティの追求が生命なのだから、試合の時間についてもリアルを追求して欲しかったと思うのは、高望みをし過ぎなのだろうか。

 

そして、これは完全に無理な注文だと分かってのことだが、オープニングのMGM(Metro Goldwyn Mayer)のレオを、本作に限って虎に変えるは流石に無理か。『 ピッチ・パーフェクト ラスト・ステージ 』や『 ボヘミアン・ラプソディ 』でも、オープニングの20th Century Foxのロゴのシーンの音をいじっていた。レオを虎には・・・やはり無理だろうか。これをもって減点すべきではないのだろう。

 

総評

ボクシングは最も歴史の古いスポーツの一つであると同時に、最も近代的なエンターテインメントでもある。アメリカのラジオ放送でニュース以外に初めて放送されたのは、ボクシングの世界タイトルマッチであった。そんなボクシングを題材にした物語が、面白くないわけがない。ましてや、この物語は『 ロッキー 』世界の出来事なのだ。ロッキーファンのみならず、広く映画ファンに勧められる傑作である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, A Rank, アメリカ, シルベスター・スタローン, スポーツ, ヒューマンドラマ, マイケル・B・ジョーダン, 監督:ライアン・クーグラー, 配給会社:ワーナー・ブラザーズ映画Leave a Comment on 『 クリード チャンプを継ぐ男 』 -The torch has been passed-

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