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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ

『 別れる決心 』 -歪んだ純愛-

Posted on 2023年2月23日 by cool-jupiter

別れる決心 70点
2023年2月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:パク・ヘイル タン・ウェイ
監督:パク・チャヌク

大学の追試や試験代替課題の採点と新年度の準備と研修ラッシュ。ここから1か月半はまさに繁忙期。しばらく簡易レビュー続きになるか。

 

あらすじ

刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、ある男性が山頂から転落死した事件を捜査していた。殺人の可能性を見出したヘジュンは、男性の妻ソレ(タン・ウェイ)に疑惑の眼差しを向ける。しかし彼女にはアリバイがあった。捜査を進めるうちに、強くしなやかに生きるソレに、ヘジュンは徐々に惹かれていき・・・

ポジティブ・サイド

タン・ウェイの妖艶さに尽きる。別にきわどい露出や激しいラブシーンがあるわけではないが(ヘジュンと奥さんのセックスシーンはある)、その femme fatal ぶりには魅了されざるを得ない。理解したいのに理解できない。いや、理解できるが間接的にしか理解できないという刑事ヘジュンと容疑者ソレの距離感が絶妙。時に使用されるスマホの翻訳機能が二人の間の越えがたい、しかし超えられないことはないという壁を象徴している。

 

パク・チャヌクといえば『 オールド・ボーイ 』のようなエロスとバイオレンスが持ち味。しかし、本作のエロスは実に控えめ。バイオレンスなシーンもあるにはあるが、青あざと流血に彩られるようなものでもない。ヘジュンが捜査のために一方的に室内のソレを覗くシーンの演出は見事だった。こうやって、いつの間にか容疑者に同化してしまう、というのは実際にありえそうに感じた。

 

誰かが死ねば、あの刑事がやって来る。あるいは、何らかの謎さえあれば、あの男はやってくる。これをサイコパスの思考と見るか、それとも究極の愛情と見るか。セックスする相手を愛しているのか、それとも愛しているからこそセックスしないのか。様々な問いが渦巻く中、女たちは別れる決心をする。なんとも苦みと深みのある作品だった。

 

ネガティブ・サイド

実質的に二部作的な構成になっているが、これをもうちょっと縮めて2時間ちょうどにはできなかったか。

 

殺人事件そのものの捜査の描写が弱い。ヘジュンが捜査に憑りつかれているのは分かるが、客観的に見て「警部、ちょっとおかしいですよ」と言ってくれるキャラが後半になってはじめて現れるのには違和感を覚えた。

 

総評

韓国映画らしいと言えば韓国映画らしいが、パク・チャヌク映画らしいかと言われれば、あまりそうではない。それでも、巨匠の新境地と言うか、見せないことで想像力を刺激する、あるいは直接的にではなくシンボルを通じて見せるという手法に唸らされることが多かった。もう少しコンパクトにまとめられていれば、韓国映画ファン以外にも勧められる。逆に言えば、韓国映画ファンならばチケット代の価値は十分に得られる。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ヨボ

韓国映画ではしばしば夫婦が互いに「ヨボ」と言って呼びかける。日本語で言うところの「あなた」や「なあ」などに当たるらしい。劇中のヘジュンが時々発する言葉だが、この言葉ひとつで距離感が近くなったり遠くなったり感じるのだから、人間関係、就中、夫婦の関係というものは難しい。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 エゴイスト 』
『 銀平町シネマブルース 』
『 シャイロックの子供たち 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, B Rank, サスペンス, タン・ウェイ, パク・ヘイル, ラブロマンス, 監督:パク・チャヌク, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ, 韓国Leave a Comment on 『 別れる決心 』 -歪んだ純愛-

『 そして僕は途方に暮れる 』 -逃げて、逃げて、逃げた先には-

Posted on 2023年1月29日 by cool-jupiter

そして僕は途方に暮れる 70点
2023年1月28日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:藤ヶ谷太輔 前田敦子 中尾明慶
監督:三浦大輔

『 娼年 』の三浦大輔監督が、とにかく目の前の現実から逃げる男の話を作ったと知り、面白そうだと思いチケットを購入。

 

あらすじ

フリーターの菅原裕一(藤ヶ谷太輔)は、鈴木里美(前田敦子)と同棲していた。しかし、里美に浮気を問い詰められた裕一は、発作的に家を出てしまう。そして親友の今井伸二(中尾明慶)の自宅に転がり込むが・・・

ポジティブ・サイド

元々舞台劇だったようだが、その臨場感は映画でも健在。主演と監督が舞台と同じだからだろう。冒頭から主人公が絵にかいたようなクソ野郎で、まったく共感できない。いや、クソ野郎ではなくダメ野郎か。日本のモラハラ夫の大部分ははこのようにして生まれているのだろうし、いわゆるニートの一部もこのようにして生まれていると推測される。このダメ男がなにかあるたびに次から次へと逃げていく。そして行きついた先に、自分を超えるダメ野郎と出会い、どう変わっていいのか分からないが、とにかく変わろうと決心する。ここは少し共感できた。特に藤ヶ谷太輔が見せる泣きの演技は『 志乃ちゃんは自分の名前が言えない 』の南沙良の泣きの演技に匹敵する。

 

『 そばかす 』に続き、ここでも前田敦子が絶妙な演技を披露している。Jovianはすっかり前田ファンである。この前田演じる里美も良妻賢母(今はこの言葉を使ってもいいのだろうか・・・)的なキャラと見せかけて、非常に人間味のある失敗をして、観る側を戦慄させる。いや、里美だけではなく、裕一の周囲の人間すべてがそうで、まさに共感と反感をジェットコースター的に感じられる一作に仕上がっている。

 

いくつか第四の壁を破るかのようなセリフがあるが、裕一が最後の最後に何度もこちら=観客席を振り返るのは、そういうこと。あとは世間様が何とか尻拭いしてくれるという甘い期待を抱いているのだ。実際、(Jovianの見た限りでは)劇場に訪れていた人の多くは、中年女性のおひとり様あるいは中年女性の二人組だった。嗅覚の鋭い観客たちである。

 

ネガティブ・サイド

 

映画としての絵のつなぎ方に問題多々あり。夜中のにわか雨のシーンから姉の家に転がり込むところで、小さなハンドタオルで濡れネズミの裕一の全身が拭けるはずがないし、ソファにも座るべきではないだろう。その後、姉の家を飛び出したシーンでも水たまり一つなし。さすがに不自然。

 

裕一のヒゲも変だった。鼻下だけに少し生やしているが、そんなデザインができるような生活をしていないだろう。

 

野村周平がゴジラ映画を撮っていた(?)っぽいが、映画の中に新作映画のCMは入れなくてよい。

 

総評

個人的には共感6割、反感4割の作品。自分でも学校や仕事から逃亡したことがあり、裕一のダメ野郎っぷりにイライラさせられながらも、自分を重ね合わせて見る瞬間も多かった。備わらんことを一人に求むる無かれ。人生とは詰まるところ、他人同士の尻拭いなのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Like father, like son.

「この父親にして、この息子あり」の意。母娘の場合は、Like mother, like daughter. となる。是枝裕和監督の『 そして父になる 』の英語タイトルも Like Father, Like Son だった。英検準1級以上を目指すなら知っておきたい表現。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ヒトラーのための虐殺会議 』
『 エンドロールの続き 』
『 イニシェリン島の精霊 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, 中尾明慶, 前田敦子, 日本, 監督:三浦大輔, 藤ヶ谷太輔, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 そして僕は途方に暮れる 』 -逃げて、逃げて、逃げた先には-

『 ケイコ 目を澄ませて 』 -岸井ゆきのの新境地-

Posted on 2022年12月23日 by cool-jupiter

ケイコ 目を澄ませて 75点
2022年12月18日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:岸井ゆきの 三浦友和 松浦慎一郎
監督:三宅唱

日曜の夜の回とはいえ、MOVIXあまがさきの観客はJovianひとりだけ。この『 百円の恋 』に勝るとも劣らない作品がこれでは少々寂しい。

 

あらすじ

生まれつきの感音性難聴の小河ケイコ(岸井ゆきの)は、荒川区の古いボクシングジムに所属するプロボクサー。聴覚障がい者として様々な葛藤を抱え、しばらくボクシングを休みたいと感じ始めるが、その手紙をなかなか会長(三浦友和)には渡せずにいて・・・

ポジティブ・サイド

16mmカメラの粗い映像が良い意味で冴えている。解像度の低い画を見せることで、あなた方がケイコたちを見る時の目はこうなっているのですよ、と言われているように感じた。本作のもう一つの特徴はBGMを極限まで排除したこと。これによって知らず知らずケイコの世界を我々も体験していることになる。バスのシーンが印象的で、路上や車内の騒音がまったく聞こえず、バスの車体の駆動音が振動のような形で伝わってくるシーンが特に印象的だった。

 

冒頭でケイコがトレーナー相手にミット打ちする長回しのワンカットにはしびれた。このワンシーンだけで、ケイコという人物がどれほどボクシングに打ち込んできたのかが如実に示されていた。それはとりもなおさず、演じた岸井ゆきのの鍛錬の成果だ。ボクシング映画は、そういう意味で他のスポーツとはかなり毛色が異なる気がする。ボクシングのバックグラウンドがある役者など、そうそう多くないだろう。もちろんトレーナー役の俳優の力も大きいが、彼は経験者だろう。

 

たいていのボクシング映画の主人公はボクシングにしがみつく男だが、ケイコは違う。ボクシングからしばらく距離を取りたいと思っている。オフの日には仲間とおしゃれなカフェでろうあ者の仲間と女子談義に花を咲かせている。このシーンには唸った。それまでに出ていた手話の字幕が出てこないからだ。一見して楽しそうな話をしていることは分かるが、手話の心得のある人以外にはさっぱりだ。ただし、この後のシーンのケイコの顔や手先をよくよく見れば、そしてジムの会長のケイコへの言葉を聞けば、ケイコたちの交わした会話の内容が自然と理解できてくる。この演出は非常に巧みであると感じた。

 

障がい者と健常者の間にはどうしても壁が生まれやすい。ケイコも社会の中で疎外されてきた経験からそう感じてしまう。一方でボクシングを通じて、実は多くのものを受け取ってきたことにホテルの清掃業を通じて気付くシーンもある。このシーンはちょっと泣けたな。耳が聞こえない中でトレーナーや会長からワンツー・フック・ツー・ウィービングからの右アッパーというコンビネーションを教わる時、観客は当然、指示の声が聞こえる。だが実はケイコには聞こえていない。けれど教える側の動作でそれが伝わるのだ。仕事でも同じこと。ベッドメイキングのコツは言葉ではなくジェスチャーで伝えられる。ボクシングはケイコにコミュニケーション力を与えていたのだ。

 

ボクシングの果てにケイコが見つける、もう一つのもの。それは河川敷にひとり佇立するケイコに唐突に訪れる。ジムは閉鎖し、会長やトレーナーとの縁は切れるかもしれない。けれど、袖振り合うも多生の縁。知らず知らずのうちにボクシングから得ているものがあるのである。意を決して走りだすケイコの姿に、勇気を与えられない人がいるのだろうか。

 

ネガティブ・サイド

ボクシング映画全体に言えることだが、ミット打ちはかなり頑張って撮るが、ガチンコのスパーリングは本作でもお目にかかれなかった。ボクサーはミットを通してパンチのコンビネーションやボディワークを身に着けていくが、ミットの位置に相手のボディや顔面があるわけではない。なので、スパーリングで打点や距離、角度を微調整していく。本作ぐらいボクシングをしている作品なら、そこまで見せてほしかった。

 

もう一つはボクサーに欠かせない減量。女子の場合は特に生理不順を伴うことも多く、非常に神経を使う。そうした過程が一切移されなかったのは拍子抜け。原作である『 負けないで! 』は未読だが、その辺もかなり赤裸々に書かれていると推察する。本当に女優・岸井ゆきのを追い込むのであれば、減量も避けて通るべきでなかった。

 

総評

岸井ゆきのは年間最優秀俳優にノミネートされるべき好演を見せた。Aランクには5点たりないが、それはJovianが過度なボクシングファンだから。これがボクシングではないスポーツあるいはヒューマンドラマなら文句なしにAランクである。『 母性 』で怪演を見せる女優が多数いたが、岸井ゆきのは全く負けていない。むしろ勝っている。このような映画こそ多くの人に見られるべきであると心底から思う。未鑑賞の方は年末年始休みに寒さと感染症に十分対策をして劇場へ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

sign language

手話の意。ボディ・ランゲージは日本語にもなっているが、サイン・ランゲージ=手話ということも知っておこう。野球など、今でも情報伝達にサインを使うスポーツは多いが、あれは一種の手話である。

次に劇場鑑賞したい映画

『 ホワイト・ノイズ 』
『 夜、鳥たちが啼く 』
『 散歩時間〜その日を待ちながら〜 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, スポーツ, ヒューマンドラマ, 三浦友和, 岸井ゆきの, 日本, 松浦慎一郎, 監督:三宅唱, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 ケイコ 目を澄ませて 』 -岸井ゆきのの新境地-

『 MEN 同じ顔の男たち 』 -要グロ耐性のスリラー-

Posted on 2022年12月11日2022年12月11日 by cool-jupiter

MEN 同じ顔の男たち 40点
2022年12月10日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジェシー・バックリー ロリー・キニア
監督:アレックス・ガーランド

 

『 ワイルドローズ 』のジェシー・バックリー主演作。『 エクス・マキナ 』で、え?という結末を見せたアレックス・ガーランドが監督(ところで『 アナイアレイション 全滅領域 』の続編はいつ?)。ということでチケット購入。

あらすじ

DV気質の夫の自死後、ハーパー(ジェシー・バックリー)は田舎町へやって来る。大家のジェフリー(ロリー・キニア)から家の鍵を受け取り、散歩するなどして田舎生活を満喫していたところ、庭に全裸の不審者が現れる。警察に通報して、男は取り押さえられたが、その後もお面をかぶった少年や牧師など、ジェフリーと瓜二つな男たちが、彼女に不安や不信を植えつけていき・・・

 

ポジティブ・サイド

イングランドの片田舎の自然の風景が美しい。低い空に生い茂った草木などは、鑑賞してはいないが、『 ピーターラビット 』のトレイラーに出てくるような景色を思い起こさせる。こうした風景は確かに都会人を癒やす効果を持つ。特にDV夫の自死を目撃した後なら尚更だろう。

 

前半は美しい自然と、どこか不穏な気配が入り混じった雰囲気が観る側の不安を書き立てる。ハーパーが山中の廃トンネル内の音声のリフレインを使って一人無邪気に歌って遊ぶシーンは、クライマックスの展開を示唆していたのか。

 

ハーパーが教会を訪れるシーン以後、一気にホラー色が強まってくる。このあたりの build up の仕方はお見事。イングランドといえばストーンヘンジのような巨石文化で知られているが、片田舎に行けば土着の古い信仰や遺物もまだまだ眠っている。表が男で裏が女という謎の石像も絶妙な気持ち悪さ。これも終盤の”トラウマ的”な展開の(一応の)伏線になっている。

 

最後の “トラウマ的なイベント” はかなりグロいシーンの連発なので、間違ってもデートで女性を連れてきてはいけない。高校生カップルとかなら尚更である。だが、それゆえに強烈なインパクトを残すことは間違いない。

 

ジェシー・バックリーは意識せず妖艶な雰囲気をまとう女性を好演。だが、それ以上にロリー・キニアが怪演を見せつける。気の良い大家から自己責任を追及してくる聖職者、そしておつむが少々足りない青年まで丁寧に演じ分ける。英国の役者はけれんみが強い印象があるが、キャスティングがハマれば強い。

ネガティブ・サイド

様々なメッセージを発しているのは分かるが、それが物語に直接つながっていない。いや、間接的にすらつながっていないことも多い。こちらにそれを読み解く力がないのかもしれないが、それにしても思わせぶりなメタファーが多すぎて、作っている側もそれを処理しきれなかったのではないか。

 

リンゴ=禁断の果実というのはイマイチ。せっかくイングランドの土着信仰的なアーティファクトを出しているのだから、知恵の実云々の蘊蓄は不要。失楽園を描きたいなら、別の舞台でやってくれ。

 

天の川銀河があるもののモチーフになっているが、このネタは古い。すでにテレビ映画の『 ランゴリアーズ 』が同じことをやっている。

 

トレイラーや邦題でも強調されているが、ロリー・キニアがほとんど全部の男性キャラクターを演じていることに、鑑賞中は恥ずかしながら気付けなかった。お面の青年と牧師と大家だけかと思いきや、全裸の不審者や警察官、バーテンダーやバーの客まで彼が演じていると言う。なぜもっとそのことをビジュアル面で強調しないのか。また、なぜハーパーがそのことに気付かないのか。ハーパーがこの狭いエリアの男たちが皆、同じ顔をしていることに怖気をふるう場面があれば、観ている側もハーパーの感じる不安や恐怖を共有しやすくなるのだが。

 

オチもなあ・・・ ラストの ”トラウマ的” とされるイベントが始まったところで、「ああ、最後はこうだよね」というのが見えてしまう。元ネタは、最近作者が死亡してしまったが、友人が志を継いで再開された某漫画の某展開だろうな。

 

総評

A24らしいと言えばA24らしい作品。『 LAMB/ラム 』や『 ウィッチ 』のように、辺境の地での異様な体験を描いてはいるが、これらの先行作品に比べると明らかに一枚も二枚も落ちる。同じ顔の男たちというのは、虐待された女性から見れば男は全員加害者候補という意味なのだろうが、いくらなんでもメッセージとして極端すぎる。ちなみに一緒に鑑賞したJovian妻は「なんちゅうもん見せてくれたんや」という感じで、鑑賞後はかなり不機嫌だった。人によっては突き刺さるもののある作品なのだろうが、刺さる範囲はかなり狭いと思われる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

a stone’s throw

石をひと投げ、転じて「目と鼻の先」という意味。しばしば

A is within a stone’s throw of B.

または

A is a stone’s throw away from B.

という形で使われる。意味はどちらも「AはBの目と鼻の先にある」となる。この表現はアメリカ人よりブリティッシュの方がよく使う印象がある。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 グリーン・ナイト 』
『 ホワイト・ノイズ 』
『 夜、鳥たちが啼く 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, D Rank, イギリス, ジェシー・バックリー, スリラー, ロリー・キニア, 監督:アレックス・ガーランド, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 MEN 同じ顔の男たち 』 -要グロ耐性のスリラー-

『 マイ・ブロークン・マリコ 』 -遺骨と共に行くリトリート-

Posted on 2022年10月9日2022年10月9日 by cool-jupiter

マイ・ブロークン・マリコ 65点
2022年10月8日 TOHOシネマズ西宮OSにて鑑賞
出演:永野芽郁 奈緒
監督:タナダユキ

ごく最近、お通夜と葬式に参列した。生きること、そして死ぬことについて追究しようとしているのではないかと本作に注目していたので、チケットを購入。

 

あらすじ

トモヨ(永野芽郁)は外回り営業中に、かつての親友マリコ(奈緒)がアパートから転落死したことを知る。幼少の頃から父に苛烈な虐待を受けていたマリコの遺骨を、トモヨはマリコの実家から強奪する。そして、マリコが生前に行きたがっていた「まりがおか岬」を目指すことにして・・・

ポジティブ・サイド

観終わってすぐの感想は「これはロードトリップではなく、リトリートだったな」というもの。リトリートと聞いて「はいはい、リトリートね」と得心できる人は、マインドフルネスにハマっている人、マインドフルネスを大いに実践している人か、または国際基督教大学の現役生か卒業生だろう。リトリートとは、日常から離れて内省することで、まさに本作のトモヨの旅そのものである。

 

本作がいわゆるバディ・ムービーともロード・トリップとも異なるところは、トモヨの相方であるマリコが死んでいるということである。マリコの願いを叶えようと旅に出るトモヨだが、実は癒やしや赦しを求めているのはマリコではなくトモヨの方なのだ。無造作なご飯の食べ方、明らかにニコチン依存症をうかがわせるタバコの吸い方、そして勤め先の絵にかいたようなブラック企業っぷりから、それは明らかである。

 

永野芽郁は『 地獄の花園 』での武闘派OL役が無駄ではなかったと思わせる演技。単純にギャーギャー言うだけなら素人でもできる。遺骨を強奪するシーンでの慟哭と咆哮は素晴らしかったし、居酒屋での切れっぷりも迫力十分。安藤サクラ路線に行けるか?と期待させてくれた。Jovian一押しの奈緒も、壊れてしまった女性を怪演。筆舌に尽くしがたい虐待を受けてきたことで感覚が麻痺してしまっている女性像を如実に提示してきた、DV被害に遭った女性が、再婚相手にまたもDV男を選んでしまうかのように、暴力男と付き合い始め、やっと別れたかと思ったら、またも相手は暴力男という具合。その自分の感性の狂いっぷりを淡々と語る喫茶店のシーンは素晴らしかった。駄作確定の『 貞子 』映画を作るくらいなら、奈緒や永野芽郁を使った『 富江 』映画が観たい。

 

一種の共依存であるトモヨとマリコの旅路の途中に現れる窪田正孝演じる男の飾らなさ、絶妙な距離感の取り方も良い。どうにもならなくなっても、ちょっとしたことで生きていける。そのことをさり気なく気付かせてくれる男で、だからこそトモヨは旅の後に日常に帰っていくことができた。『 レインマン 』のように旅で何かが大きく変わったのではなく、トモヨは日常から数日逃避したわけだ。最後のシーンの解釈は分かれることだろう。Jovianはトモヨが読み取ったのはマリコの感謝であると感じた。何が正解かは分からない。人生、そして人間関係はそんなものだろう。

 

ネガティブ・サイド

原作の漫画がどうなっているのは分からないが、あまりにも展開がご都合主義すぎる。まず引ったくりに遭うタイミングも出来過ぎだし、その引ったくり男が最後の最後で絶妙なタイミングで現れてくるのも「何だかなあ」である。85分という短い尺を95分にして、その10分間でもう少しストーリー展開にリアリティを持たせられたのではないか。

 

マリコの家庭および男性遍歴についても掘り下げられたのではないかと思う。特に付き合う男全てがハズレの暴力男というのはリアリティがある。だからこそ、それを映像でも示すべきだった。そうすることで窪田正孝演じる男と、その他の男どもとのコントラストがより際立ったと思う。

 

これは個人の感想だが、エンドクレジットに流れる曲がストーリーとマッチしていなかった。

 

総評

永野芽郁が『 地獄の花園 』に続いて殻を割ろうとしている作品。かつ、『 ハルカの陶 』の奈緒が新境地を開拓した作品でもある。男同士の恋愛物語が輸入されたり、あるいは邦画でも作られつつあるが、女同士のちょっと普通ではない依存関係、それも故人とのそれを描いた作品はかなり異色だろう。それでも西宮ガーデンズにはかなり多くの、それも若い観客が来ていた。若い人の心をとらえる何かが本作にあるのは間違いない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

child abuse

児童虐待の意。日常では決して使いたくない表現。せいぜい新聞やニュース番組でしか触れたくない。けれど児童虐待は現実に存在する。見かけたらバンバン通報するしかない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ドライビング・バニー 』
『 ソングバード 』
『 千夜、一夜 』

 

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2020年代, C Rank, アドベンチャー, ヒューマンドラマ, 奈緒, 日本, 永野芽郁, 監督:タナダユキ, 配給会社:KADOKAWA, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 マイ・ブロークン・マリコ 』 -遺骨と共に行くリトリート-

『 この子は邪悪 』 -もっと捻りが必要-

Posted on 2022年9月6日2022年10月31日 by cool-jupiter

この子は邪悪 40点
2022年9月4日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:南沙良 玉木宏 桜井ユキ
監督:片岡翔

Jovianは南沙良が大好きである。広瀬すずを吹っ飛ばす女優になると思っている。なので、どんなに駄作のにおいがしてもチケットを買う。

 

あらすじ

心理内科医の窪司朗(玉木宏)は、一家で交通事故に遭い、自身は脚に障がいを、次女は顔にやけどを、妻は意識不明の重体のまま植物状態になってしまった。唯一、長女の花(南沙良)だけが無傷だったことから、花はどこか罪悪感に苛まれていた。そんな時、母が5年ぶりに目覚め、自宅に帰ってきた。しかし、花は母にどこか違和感を覚えて・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

ミステリ風味ではあるが、ミステリではない。伏線の張り方は極めてフェアというか、あっけらかんとしている。意味不明の冒頭のシーンで「何だこいつ?」と思ったその感性を大事にしてほしい。「何だこいつ?」であって「誰だこいつ?」ではないことを心に留め置くべし。

 

南沙良が言い知れぬ不安に押しつぶされそうになる少女を好演。この女優は、少女漫画の映画化作品でヒロインを演じるのではなく、常にどこか陰のあるキャラを演じてほしい。天真爛漫な10代女優は毎年陸続と現れては消えていくが、陰のある役を説得力をもって演じられる若手女優は少ない。

 

ロングのワンカットが多用されており、監督の演出上のこだわりが感じられる。また、古い木造家屋を歩く時のキィキィときしむ音が効果的だった。作った音ではなく、ナチュラルな音が観客の不安を煽る。この手法は嫌いではない。

ネガティブ・サイド

ほとんど何の事前情報も入れずに鑑賞に臨んだが、すれっからしのJovianは開始30分ほど、より正確に言うと母親が帰ってきた後、父親がとある発表をするところで話のオチまで予想できてしまった。そのポイントは、過去に類似の先行作品を映画および他メディアでたくさん経験してきたからだろう。以下、それらの作品例(白字で表示)である。

 

小説『 わが体内の殺人者 』

漫画『 多重人格探偵サイコ 』

映画『 ゲット・アウト 』

  『 シェルター 』

  『 悪魔を憐れむ歌 』

 

他にも少年ジャンプで全く同じようなオチの読み切り作品が1980年代にあった(主人公の友達の名前が風太だったような)。

 

欠点は、オチの弱さ、意外性の無さだけではない。ストーリーの核心に触れて以降は、急にカメラワークや演出が陳腐になったと感じた。明らかに『 ミッドサマー 』や『 アンダー・ザ・シルバーレイク 』を意識したシーンがあったが、カメラが全然動かないし、こちらが観たいと思っている絵を映してくれない。その直後のシーンでも、登場人物たちが動かないのなんの。立ち尽くしているにしても、もっと震える、あるいは目を背けるなど、何らかの動きでキャラの心情や思考を語るべきシーンが、見事に spoil されてしまっている。前半と後半の演出上の落差がありすぎる。本当に同一人物が最初から最後まで監督したのだろうか。

 

おそらく玉木宏で女性を、なにわ男子の大西流星で女子を惹きつけようとした作品なのだろう。南沙良と桜井ユキでおっさんから青少年の層もカバー。そうしたライトなファンに各種の先行作品の優れたアイデアをごった煮にした作品を提供しよう、として作った映画にしか思えない。映画ファンをびっくり仰天させてやろうという気概に満ちた作品ではない。最初から「そこそこのヒット作」を志向している。監督は『 町田くんの世界 』の脚本などを務めており、Jovianと波長が合わないとは思わない。先行作品を敬うのはいいが、そのまま倣う必要などない。次作にとりかかる前に、商業主義的にではなくクリエイターとしての自分に向き合うべきだろう。

 

総評

主要キャストのファンなら鑑賞してもいいだろう。また、ライトな映画ファンにもお勧めできそうだ。逆に小説やら映画を相当に渉猟しているという人には勧め辛い。Jovianと同じで、一挙に結末まで予想出来てしまう人は、おそらく日本だけで数万人(その全員が本作を観るとは思えないが)はいると思われる。うーむ、誰に勧めるべきか難しい。『 NOPE / ノープ 』の監督のこれまでの作品を見て( ゚Д゚)ハァ?とならなかった人はどうぞ、と言っておこうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

hypnotize

催眠術にかける、の意。漫画『 聖闘士星矢 』世代なら、ヒュプノス=眠りの神だと知っていることだろう。似たような語に mesmerize もある。こちらの語を知りたければ、邦画ホラーの秀作『 CURE 』(主演:役所広司 監督:黒沢清)をお勧めする。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, D Rank, サスペンス, ホラー, 南沙良, 日本, 桜井ユキ, 玉木宏, 監督:片岡翔, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 この子は邪悪 』 -もっと捻りが必要-

『 PLAN 75 』 -姥捨て山は他山の石たりえるか-

Posted on 2022年6月25日 by cool-jupiter

PLAN 75 75点
2022年6月19日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:倍賞千恵子 磯村勇人 河合優実
監督:早川千絵

 

なんかこんな小説読んだなと思っていたが、小説『 七十歳死亡法案、可決 』と本作は全く別物だった。それでも10年前に提起された問題が、そのまま2022年に持ち越されているところが日本らしいと言えば日本らしい。

あらすじ

社会保障費増大の原因とされる高齢者が殺害される事件が頻発。満75歳から安楽死を選択できる法律、通称「プラン75」が施行された。客室清掃員の角谷ミチ(倍賞千恵子)は突然、ホテルを解雇されてしまう。仕事や、それまでの人間関係も失ってしまたミチはプラン75への申し込みを検討するが・・・

ポジティブ・サイド

冒頭でショッキングな事件が描かれる。高齢者施設に銃を持った男が侵入し、大量殺人を犯す。その後、速やかにプラン75成立までが描かれる。ここの描写に時間を使わなかったのは英断。『 図書館戦争 』で昭和から正化への移り変わりをダイジェスト的に描いていたのと同様の手法である。

 

ホテルの客室清掃員のミチを演じる倍賞千恵子が、どこまでも真に迫っている。70代後半でありながら年金暮らしではなく、日々あくせく仕事をしながら、同僚や友人を持ち、社会とつながりを保っている。しかし、同僚の一人が仕事中に倒れてしまったことから「高齢者を働かせるとは何事か」との投書があり、ミチらは解雇されてしまう。ここから日本社会の冷たさというか、早川千絵監督の描きたいものが見えてくる。社会参加の意思があり、その能力もあるにも関わらず、拒絶される。このあたり、Jovianは仕事柄、よく経験している。語学企業の教務トレーナーとして、学校・企業・官公庁でレッスンを担当する講師を採用・育成・オブザーブ・研修しているが、特に学校は65歳あるいは70歳以上の講師はNGというところが本当に多い。能力的にも体力的に、もちろん認知の面で問題ない講師でも、年齢だけで弾かれる。人間が人間ではなく数字で判断されてしまう世の中なのである。

 

そうして社会から孤立を深めていくミチとは対照的に、プラン75の受付業務に精勤するヒロム(磯村勇人)が描かれる。典型的な役人なのだが、そこに長く音信不通になっていた叔父が現れ、プラン75に申し込んでくる。ここで黙々と職務に励むヒロムと、叔父の死への旅路を自分が用意してしまうことに葛藤を覚える。このあたりの対照も非常に際立っている。なぜなら、叔父のプラン75を受け付けつつも、その一方で公園のベンチでホームレスが寝られないようにする仕切り金具をあれやこれやと試して、「ああ、これはもたれにくい」、「これなら寝られないな」と無邪気に感想を述べる。名前のない人間に対して、人はいともたやすく冷酷になれる。それは職務に忠実だからこそで、それこそまさにハンナ・アーレントが呼ぶところの「凡庸な悪」である。悪意のない悪と言ってもいい。

 

もう一人の重要人物として、フィリピンから来日したマリアの存在が挙げられる。祖国にいる病気の子どもを助けるための治療費捻出のために、教会から非常に shady な仕事を紹介される。それがプラン75で亡くなった人々の遺品処理。キリスト教の教会がそんな仕事の仲介をしているのにもビックリするが、では遺体の処理はどうなっている?という疑問が、ヒロムやミチの物語に絡んでくる。なるほどなと思わされた。脚本の妙である

 

切った爪をゴミ箱に捨てずに植木鉢=土に還すミチの姿に、命に対する彼女の考え方が静かに、しかし如実に表れている。人間だれしも年老いてしまえば「吾日暮れて途遠し」となる。しかし、そこで国家が「故に倒行して之を逆施す」となってはならない。残念ながら、日本は逆施倒行している。「年金は100年安心」と言いながら、「老後に自分で2000万円貯めろ」とも言っている。正直なところ、プラン75のような法案が日本で可決される可能性は2〜3%あるのではないかと疑ってしまう。社会派の硬質な映画が送り出されてきたなと思う。

ネガティブ・サイド

プラン75に対して「最初は反発していたけれど、孫のためならしょうがないかな」という女性の声があったが、こうした pro-Plan 75 の声をもっと紹介するべきだったと感じる。別にプラン75そのものが素晴らしいからという意味ではなく、プラン75へのニーズは潜在的に存在するという現実もあるからだ。Jovianの祖母が亡くなった数年後に、Jovian父はNHKの老老介護の番組を観ながら「おふくろは寝たきりになる前に死んでくれたなあ」と口にしたことがある。なんちゅうこと言うんや、と思いはしたものの、老老介護による共倒れという現実がそこにある以上、一個人の極めて健全な感想と受け取るしかない。そうした市井の声を劇中でもっと紹介してくれれば、個人の声も国家に届くということが逆説的に示されたのではないだろうか。

 

河合優実演じるコールセンター職員・成宮とミチが実際に出会う展開は興ざめ。必要なのはコールセンター側の人間の想像力であって、想像力を喚起するのは出会いではなく、声だけの触れ合いの方だろう。ミチとの電話のやり取りを通じて、成宮の社会を見る目、人を見る目が変化しつつある、ということを感じさせる演出こそがふさわしかったのでは?

 

総評

劇場はかなりの入りで、その多くが中年以上、あるいは高齢者だった。彼ら彼女らは本作が高齢者を虐げる物語ではないと直感的に感じ取ったのだろう。だからといって、高齢者を肯定する物語でもない。淡々と進行しながらも、物語の奥行きが広い。命についての深い考察がある。『 Arc アーク 』や『 いのちの停車場 』で慨嘆させられた映画ファンは、本作で大いに留飲を下げることができるだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

abort

「途中でやめる」の意。プラン75はいつでも止められるということだが、この場合の止めるに当てる訳語は abort がふさわしい。stop と言ってしまうと restart してしまう可能性があるが、abort は止めてしまって、もう元には戻らない。中絶を abortion という言うわけである。  

 

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Posted in 国内, 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, カタール, ヒューマンドラマ, フィリピン, フランス, 倍賞千恵子, 日本, 河合優実, 監督:早川千絵, 磯村勇人, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 PLAN 75 』 -姥捨て山は他山の石たりえるか-

『 ゴヤの名画と優しい泥棒 』 -英国版の鼠小僧物語-

Posted on 2022年4月19日 by cool-jupiter

ゴヤの名画と優しい泥棒 75点
2022年4月16日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:ジム・ブロードベント ヘレン・ミレン フィオン・ホワイトヘッド マシュー・グード
監督:ロジャー・ミッシェル

 

妻が観たいというので塚口サンサン劇場へ遠征(と言うほど遠くはないが)。休日の劇場にはかなりの人が戻ってきているが、ミニシアターは元々あまり混んでいないせいか、快適に鑑賞できた。

あらすじ

ケンプトン・バントン(ジム・ブロードベント)は妻と息子の3人暮らし。BBCの受信料支払いを拒否しているかどで、時折取り立て人がやって来る。ケンプトンは自分以外の孤独な老人たちの慰めとなるテレビの受信料を何とかしたいと思い、ゴヤの名画「ウェリントン公爵」に14万ポンドの価値がつけられたことに注目して・・・

ポジティブ・サイド

事実は小説よりも奇なり=Fact is stranger than fiction と言うが、本作の描く物語はまさにその好個の例だろう。ゴヤの名画を盗んで、それを返却する条件に高齢者のBBC受信料を免除せよ、と言うのだから笑ってしまう。1961年の英国に、今のN国党の先駆けになるような個人が存在していたことにもビックリするし、国立の美術館から名画がまんまと盗み出されたことにも度肝を抜かれてしまう。なによりも、この素材を単なる怪盗ものにせず、極上のヒューマンドラマに仕立てた脚本と監督の手腕が素晴らしい。

 

比較対象として『 ジーサンズ はじめての強盗 』が挙げられるかもしれないが、あちらはクライムドラマ。かたや本作はヒューマンドラマにしてファミリードラマ。ケンプトンと妻、そして息子たちの関係の微妙な機微が丹念に描かれる。ここの秘密を序盤にあっさりと見せてしまうことで、もう一つの巨大な秘密がきれいに隠れてしまう。これが事実だったのかどうかは不明だが、脚本の妙と言うしかない。

 

このケンプトン翁、タクシー運転手としての仕事中に要らんことをべらべら喋り、乗客から苦情を食らったりと老害(?)な雰囲気を漂わせるが、その実態にはさにあらず。人種差別に毅然と抗議する義の人である。これは1961年の物語だが、アメリカで公民権運動の真っただ中という時代。逆に言えば、人種差別が今よりも更に激しく、かつ国歌公認で行われていた時代である。ケンプトンが時代に左右されず、自分の信念を貫く人であることが非常によく分かるエピソードである。

 

名画盗難の罪でケンプトンは裁判にかけられてしまうわけだが、ここでの彼の答弁が面白い。詳しくは是非とも鑑賞してほしいが、自分と他人に関する彼の哲学が開陳される。なぜ2020年代に1960年代の事件と人物が掘り起こされるのか。それは、そこに秘められた思いが現代人の、いや、時代を超えて人の心を打つものがあるからである。

 

劇中ではまさに『 ウェスト・サイド物語 』が言及され、スパイダーマン以前の「良き隣人」と出会える。『 ウェスト・サイド物語 』が『 ウェスト・サイド・ストーリー 』にリメイクされた2022年。是非とも多くの映画ファンに本作を鑑賞し、1961年と現代を再びつなげていただきたいと思う。

ネガティブ・サイド

息子が船の修理をしているときに怪しいビジネスの話を持ちかけてくる悪友のパートは不要だったように思う。単に時々家にやって来る、口の悪い田舎の若者ぐらいの位置づけでよかった。その方が物語全体の着地もきれいになったはず。

 

ケンプトンはしばしば妻を怒らせ、あるいは呆れさせるのだが、そこで和解のバリエーションがもっと欲しかった。この夫がこれまでどれほど妻に謝罪をしてきたのかをしのばせるようなエピソードが必要だったように思う。いつもあれだと、亭主関白というか、ヘレン・ミレンが毎回ワンパターンな方法での謝罪を受け入れる従順な妻にしか見えない。

 

総評

一言、傑作である。笑いあり、涙あり、思わぬ真相ありと、映画の醍醐味が詰まった作品。ウェリントン公爵に関する予備知識は不要である。JovianもJ.P.ホーガンの『 巨人たちの星 』で “It was a close-run thing.” の引用で名前だけ知っていたぐらいだったが、本作を楽しむに際して何の問題もなかった。鑑賞時に注意するのは、事前に極力何も調べずに臨むこと、ということぐらいか。歴史的な事件を扱った映画を観る場合は、The less you know, the better. = 知らなければ知らないほど良いのである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

for the greater good

「大義のために」の意。ちょうど『 ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密 』でグリンデルバルドも使っていた。庶民がこういう感覚でいるのは結構だが、権力者がこういう言葉を使いだすと、その国は危ないのかもしれない。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, イギリス, コメディ, ジム・ブロードベント, ヒューマンドラマ, フィオン・ホワイトヘッド, ヘレン・ミレン, マシュー・グード, 伝記, 歴史, 監督:ロジャー・ミッシェル, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 ゴヤの名画と優しい泥棒 』 -英国版の鼠小僧物語-

『 メインストリーム 』 -その「いいね」は誰のもの?-

Posted on 2021年10月10日 by cool-jupiter

メインストリーム 60点
2021年10月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アンドリュー・ガーフィールド ホーク・マヤ ナット・ウルフ
監督:ジア・コッポラ

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『 沈黙 サイレンス 』や『 ハクソー・リッジ 』のアンドリュー・ガーフィールドが出演していて、コッポラ御大の孫娘が監督。それだけで観てみようという気になる。というわけで人混みを避けてレイトショーへ。

 

あらすじ

バーテンダーをしながらアート製作を志すフランキー(ホーク・マヤ)は、ある日、リンク(アンドリュー・ガーフィールド)という不思議なメッセージを発する青年と出会う。彼を撮った動画をYouTubeにアップしたところ、普段の自分の動画とは違い、バズることに。ライター志望でバーでの仕事仲間のジェイク(ナット・ウルフ)も誘い、フランキーはリンクと共にYouTube動画を作成し、リンクはノーワン・スペシャルとして人気を博していくが・・・

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ポジティブ・サイド

このフランキーという主人公の女性は、現代の典型的な鬱屈した若者像であり、なおかつジア・コッポラ監督自身の投影でもあるのだろう。映像作家を志す若い女性が「これだ!」という男性素材に出会うという点で『 サマーフィルムにのって 』にそっくりだが、フランキーが目指すのは映画ではなくYouTube動画。YouTube動画を作ることをテーマにした映画という意味で、なかなかメタでシュールな作品である。

 

多くの人間が成功を夢見ながら、諦めたり去って行ったりするのがLAという都市の常。そのことは『 ラ・ラ・ランド 』から良く分かる。また仮に売れたとしても、売れ続けられる保証はない。それも『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 』で描き出されていた。またLAという娯楽産業には裏の顔があり、裏のシステムがあるということは『 アンダー・ザ・シルバーレイク 』が寓話的に暴き出していた。本作はそうしたLAの固有性を背景にして鑑賞する必要がある。

 

一方で、フランキーがプッシュするリンクは何の代わり映えもしないセレブ系YouTuberだが、とあるインフルエンサーとのコラボ動画がバズったことでYouTuber界隈のプロデューサーと契約することになる。そこからブレイクを果たしたリンクたちだが、その過程で大問題を起こしてしまい・・・というのは、実際にありそうな事柄に思える。ペテン師メンタリストのDaiGoの「生活保護受給者は無視しろ、猫の命の方が大事だ」というメッセージおよびそれが巻き起こした動乱と、本質的には同じ流れが本作でも展開される。

 

このあたりはSNSを盛んにやる人は、自分に置き換えて考えてみても面白いだろう。あるいは最近話題になったYahooからヤフコメ民への「誹謗中傷はやめて」というお願い、あるいは自民党の高市早苗が自身の支持者に対して「総裁選の他候補への誹謗中傷はやめて」というお願いに通じるものがある。それらを受けて当事者らはどう反応したか。自分に関係のない事柄をさも自分のコンテンツであるかのように振る舞い、自分そのものがコンテンツである事柄には、さも無関係であるかのように振る舞ったのである。「高市さんも変な支持者がいて大変ですね」と言っているアカウントが、SNS上でとんでもない毒をばらまいていたりしたわけである。

 

本作でリンクが引き起こす騒動とその顛末の本質は、メインストリームというタイトルそのものに意味が込められているように思う。結局のところ、現代の、特にSNS上には、個人としての意見や主張などは存在しえないのかもしれない。あるのは、以下のメインストリームに迎合するかだけ。作家の八切止夫は「人間関係は一にかかっていかに相手を誤解させるか」と喝破した。合成あるいは編集したセルフィーをアップする。それはメインストリームに対するアピールに他ならない。本作の最後のリンクをアピールを聞いて、どう思うか。どう思ったところで、そのコンテンツを消費してしまったあなたは、もはやメインストリームの一部なのだ。

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ネガティブ・サイド

フランキーの満たされなさ、没個性さの描写が足りない。どんなアートを志向していて、どんな映像芸術をこれまでにYouTubeに公開して、どんな反響を得たのか、あるいは得られなかったのか。そのあたりの描写がわずかしかないため、リンクという素材との出会いのインパクトが弱くなっている。

 

そのリンクの思考や行動の原理の描写も弱い。フランキーとの3度目の出会いで彼女のスマホを奪い「他人から承認してもらうのが望みか」と問いかけるまで、彼の言動には思想がない。あるとすれば「スマホを持たない」ということぐらい。スマホを持たないことでスローライフを謳歌している、あるいは人間関係を非常に充実したもの、ストレスフリーなものにしているのであれば、まだ分かる。実際のところは定職を持たない変な奴である。もっとリンクを謎めいた、それでいて理知的な男には描けなかったか。

 

フランキーとリンクのロマンスにも必然性が感じられない。元々はジェイクと付き合っていたフランキーが、不意にリンクと関係を持ってしまう。その方が3人組の崩壊にもドラマ性が生まれるし、リンクというキャラが見せる落差も大きくなる。また、リンク=ノーワン・スペシャルという一種の怪物がだんだんとコントロールできなくなっていったのは、彼自身に原因があるというよりも、バックヤードでオペレーションをしているフランキーやジェイクの非であるとした方が、SNSと対比されるリアルの人間関係の生々しさがより際立ったと思う。

 

総評

普通に面白い作品。ただ、それはこの作品と鑑賞者の間にどれくらいの距離があるのかによるだろう。スマホやSNSに依存した生活を送っている若者であれば、チンプンカンプンかもしれない。逆に、彼ら彼女らの親ぐらいの世代であれば、本作の放つメッセージを読み取る(≠受け取る)ことは容易なのかもしれない。承認欲求とは、承認されたいという思い以上に、承認されることが可能なシステムへの参入の意志なのだ。10代20代よりも、40代50代が観るべき(少なくとも日本では)作品であるように思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

esteem-needs

「承認欲求」または「承認の欲求」と訳されることが多い。近年の日本で急激に人口に膾炙するようになった言葉だが、それだけ他者からの承認欲求に飢えているのだろう。Jovian自身はこの言葉を看護学校時代にマズロー心理学を学んだ際に知った。現代の承認欲求はヘーゲルやマズローの言う”承認”とはかなり意味がずれてきているように思えてならない。他者と承認の関係について考察を深めたいという向きには、Jovianの同級生が上梓した『 ヘーゲルの実践哲学構想 』をどうぞ。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, アンドリュー・ガーフィールド, サスペンス, ナット・ウルフ, ホーク・マヤ, 監督:ジア・コッポラ, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 メインストリーム 』 -その「いいね」は誰のもの?-

『 サマーフィルムにのって 』 -青春の勧め-

Posted on 2021年8月14日 by cool-jupiter

サマーフィルムにのって 75点
2021年8月8日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:伊藤万理華 河合優実 祷キララ 金子大地
監督:松本壮史

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210814180902j:plain

Jovianの好物ジャンルである「映画を作る映画」である。中国映画の傑作にあてられたタイミングなので、従来であれば面白不感症になっているはずなのだが、本業のあまりの多忙さのせいで、面白いと感じる閾値が下がっているのだろうか。粗削りかつパクリのにおいも強烈に漂っているが、秀作であると感じた。

 

あらすじ

時代劇好きのハダシ(伊藤万理華)は、ある日名画座で自分の描く武士のイメージぴったりの青年、凛太郎(金子大地)を見つける。出演交渉するも、渋る凛太朗。しかし、ハダシは親友のビート版(河合優実)とハワイ(祷キララ)と共に、夏をかけて時代劇制作に乗り出すが・・・

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ポジティブ・サイド

ハダシを演じた伊藤万理華がアイドルと言うにはビジュアル的に華がなく、だからこそ彼女が自分なりの青春を追い求める姿が神々しい。同じ映研で男が女に「好き」とだけ語りかけるだけの極めて陳腐(見方によっては実験的、前衛的)な映画を作るばかりの女子との対比が映える。脇を支えるビート版は『 佐々木、イン、マイマイン 』で短時間の登場ながら強烈なインパクトを残した河合優実。ハワイ演じた祷キララには『 町田くんの世界 』に出演した日比美思に通じる雰囲気を感じた。多分、ヒロインも脇役も両方こなせる女優になりそう。

 

時代劇をこよなく愛するというハダシの設定が良い。時代劇というジャンルは、西部劇と同じく、ある時代に固定されているがゆえに時を超える。その時々の流行りすたりを映像化した作品には出せない味がある。たとえば『 サッドヒルを掘り返せ 』ではエンニオ・モリコーネが『 続・夕陽のガンマン 』を指して「1000年先も残る」とある意味で自画自賛していたが、それはおそらく正しい。それは映画のクオリティはもちろんだが、ジャンルに依るところも大きい。その意味で、勝新太郎への愛とリスペクトをハダシと凛太郎の両方が共通して持っていることの説得力は大である。

 

映画を作るに際して最も大事なのは役者ではなく裏方である。その意味でも本作には好感が持てる。マジョリティに理解や受容をされるわけではないが、自分なりに芯の通った青春を過ごす者たちの連帯は見ていて清々しい。『 鬼ガール!! 』と同じく、最後の最後に言葉そのままの意味で theatrical なスペクタクルが展開される。チャンバラは時代劇の華。舞台は文化祭。甘ったるいばかりの青春映画が量産される邦画の世界で、本作のような作品こそ、高校生や大学生たちに広く観てほしいと思う。映画を作る映画というのはJovianの好物である。本当は70点であるが、ここでは5点をオマケしておく。

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ネガティブ・サイド

プロットの大筋は法条遥の小説『 リライト 』そっくりである。オマージュではなくパクリとの誹りを免れるのは難しい。

 

ハダシと凛太郎の時代劇をめぐる会話は非常に面白いし、よく練られていたと思う。惜しむらくは、言葉ではなく動作や立ち居振る舞いでもって、座頭市や藤枝梅安などの魅力を伝えてほしかった。そうしたシーンもあったのだが、量が足りない。『 サッドヒルを掘り返せ 』でボランティアたちが決闘シーンを再現したり、『 ピープルvsジョージ・ルーカス 』で『 スター・ウォーズ 』のキャラクターやインディアナ・ジョーンズになりきる熱狂的ファンが活写されていたのと同じで、ファンならば憧れの役にもっとなりきって欲しかった。そして、ハダシと凛太郎の間でしか通じない、しかし二人の間では確実に通じるような殺陣を演じてほしかった。

 

総評

邦画の世界の青春映画というと、胸キュンものかヤンキーものだが、もっとこういった創作系の青春ものが制作されてほしいもの。ミニシアターではなくTOHOシネマズなどで公開されれば、高校生たちにも観てもらえる。映画ファンだけではなく、まさに夏休み中の若者たちに観てほしい。デートムービーにもちょうど良いだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

film

言葉そのままにフィルムの意。『 映画大好きポンポさん 』ではフィルムをスプライシングするシーンがあったが、デジタル全盛の今となってはフィルムで映画を撮る業界人はマイノリティだろう。映画一つ一つは数えることができる( a film や films と言える)が、フィルムという物質そのものを指す場合は、常に film (不可算名詞)である。理由は、切ったり貼ったりして、数が増えたり、一つになったりするから。filmは、受験英語の指導者だけではなく英会話スクールの講師などですら結構な頻度で可算不可算を間違える語である。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, 伊藤万理華, 日本, 河合優実, 監督:松本壮史, 祷キララ, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオ, 金子大地, 青春Leave a Comment on 『 サマーフィルムにのって 』 -青春の勧め-

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