Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: 配給会社:カルチャヴィル

『 ショーン・オブ・ザ・デッド 』 -スタイリッシュ・ゾンビ映画の快作-

Posted on 2019年4月10日2020年2月2日 by cool-jupiter

ショーン・オブ・ザ・デッド 75点
2019年4月7日 東宝シネマズ梅田にて鑑賞
出演:サイモン・ペッグ ニック・フロスト
監督:エドガー・ライト

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190410005206j:plain

ジョージ・A・ロメロの死の翌年に『 カメラを止めるな! 』という傑作が世に送り出された。しかし、それを遡ること十数年、イングランドでもスタイリッシュなゾンビ映画が生み出されていた。『 バジュランギおじさんと、小さな迷子 』は現地での製作と発表から四年後に日本で劇場公開されたが、本作のタイムラグはなんと15年である。DVD鑑賞済みとはいえ、これは劇場にまで行かねばならない。

あらすじ

ショーン(サイモン・ペッグ)はうだつのあがらない家電のセールスマン。同居人のエド(ニック・フロスト)は無職のろくでなし。いつも同じ酒場で飲むだけの日々に、ショーンの恋人のリズはついに愛想を尽かしてしまう。一念発起して変わろうと奮起するショーンだが、折しもロンドンの街は謎の原因でゾンビが溢れかえることに。ショーンは愛しのリズを救い出すことができるのか・・・

ポジティブ・サイド

冒頭でサイモン・ペッグが自宅から近所の店まで買い物に行くシーンは、まるで『 ベイビー・ドライバー 』のアンセル・エルゴートの Coffee Run の原型である。計算されたワンカット(実際は編集されているだろうが)で、街の異常さとそれに気づかないショーンの対比が、否が応にも観る側の緊張を煽る。また、本作はビジュアル・ストーリーテリングの面でも魅せる。個々の事物への瞬間的ズームアップの連続で、どのキャラクターが何をしたのかを観る者に瞬時に伝えきってしまうのである。この手法は見事である。唸らされてしまった。栴檀は双葉より芳し。

『 ベイビー・ドライバー 』で Hocus Pocus のリズムとテンポに合わせた銃撃シーンの原型となったであろう、Queenに”Don’t Stop Me Now”に合わせてゾンビをしこたまボコっていくシーンはとにかくシュールで笑える。『 ボヘミアン・ラプソディ 』の大ヒットも、本作の劇場公開を後押ししたのかもしれない。

本作を評価するにあたって何よりも優先せねばならないのは、サイモン・ペッグとニック・フロストのケミストリーである。はっきり言って、エドはクソ野郎以外の何者でもないのだが、だからこそショーンは彼の親友であり続けられる。“Never let your friends feel lonely. Disturb them all the time.”というやつである。兵庫県加古川市の【 結婚物語のブログ 】で喝破されているように、野郎同士は基本的にいつも同じ店で飯を食い、同じ店で酒を飲む生き物なのだ。もしくは「白木屋コピペ」を思い出してもらっても良い。ショーンとエドの関係の本質がそこにあり、だからこそショーンとリズの関係の脆さや危うさ、さらには得難さまでもが際立つ。マーティン・スコセッシの『 タクシードライバー 』のトラヴィスのように、女心が全くわかっていないショーンとその親友のエドに、何故か我々アホな男たちは自己同一化をしてしまう。このあたりのキャラの造形と描写は見事である。

一部にグロいシーンもあるが、本作は紛れもないゾンビ映画でありながらもユーモラスなコメディ映画でもある。その絶妙なさじ加減とテンポの良さに、エドガー・ライト監督のセンスの良さとインスピレーションの豊富さを垣間見ることができる。

ネガティブ・サイド

ショーンとエドとリズ以外のキャラクターが動き出すまでに少し時間がかかる。ゾンビという理不尽な存在は、人間性への究極の挑戦であろう。何しろ死なないのだから。愛する者との死別が、新たな恐怖と惨劇の始まりになることにどのように立ち向かうのか。そうした悲劇的展開の描写が弱い。というか、あれもこれもと盛り込み過ぎた感がある。特にショーンの家族を巡る悲劇と喜劇は、エンディングとは調和しなかった。少なくともJovianの目にはそう映った。だからこそショーンはどうしようもない愛すべきボンクラだと言えるのだが。

もう一つ、やや不満に感じたのが、「レコードを投げるのか?」ということ。このあたりのギャグは波長が合うかどうかだが、貴重なLPレコードを ninja star か何かのように放り投げていくシークエンスは、ドン引きした。

総評

映画(に限らず小説なども)は波長が合うかどうかが大きい。特にエドガー・ライト監督の作品全般に言えることだが、波長が合う部分を大いに楽しみ、合わない部分については片目をつぶるぐらいの気持ちが必要かもしれない。Jovianは『 ベイビー・ドライバー 』には90~95点ぐらいをつけたい。それぐらい好きな作品である。おそらく本作も、一部の人にはカルト的な人気を博し、そうではない人には変な作品、または普通に笑える作品として親しまれるだろう。つまり、ゾンビが苦手という人以外なら、万人に勧められる作品である。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, B Rank, イギリス, コメディ, サイモン・ペッグ, フランス, 監督:エドガー・ライト, 配給会社:カルチャヴィルLeave a Comment on 『 ショーン・オブ・ザ・デッド 』 -スタイリッシュ・ゾンビ映画の快作-

『スウィート17モンスター』 ―大人でもなく、さりとて子どもでもない17歳という諸刃の剣―

Posted on 2018年6月23日2020年2月13日 by cool-jupiter

スウィート17モンスター 70点

2018年3月21日 レンタルDVD観賞
出演:ヘイリー・スタインフェルド ウッディ・ハレルソン ヘイリー・ルー・リチャードソン
監督:ケリー・フレモン・クレイグ

原題は“The Edge of Seventeen”、つまり「17歳の刃」である。洋楽ファンなら、これがスティーヴィー・ニックスに同名のナンバーがあるのを知っているかもしれない。ジャニス・ジョプリンやロッド・スチュワートといったしわがれ声を武器にするシンガーで、マイ・フェイバリットは“Stand Back”である。日本で言えば映画『不能犯』のテーマソング「愚か者たち」を見事に歌い上げたGLIM SPANKYの松尾レミもこの系統のシンガーと言えるかもしれない。

Back on track. この作品で描かれるのは、17歳のネイディーン(ヘイリー・スタインフェルド)がくぐり抜けて行く数々の試練である。まず、これを目にするのが10代なのか、20代なのか、30代以上なのかで、ネイディーンへの感情移入度合いが相当に変化してくるであろう。10代であればシンクロ率は400%… 20代でも女性なら100%に到達する人もいるかもしれない。それはあまりにも典型的なトラブルの数々ではあるが、ネイディーンの性格・パーソナリティとも相俟って、とんでもなくエクストリームな展開を見せる。

親友のクリスタ(ヘイリー・ルー・リチャードソン)が、あれよあれよと言う間にイケメンで秀才の兄のダリアンとベッドイン。最初は兄の気まぐれな遊びかと思っていたが、二人の仲が本物であると知ったネイディーンは大爆発。兄と親友の2人を一気に失ってしまう。と書くと悪いのは2人のようだが、実際はネイディーンのひとり相撲。兄貴も親友も幸せで、自分が幸せではないのは、2人のせいだと勝手に勘違い。そして自分は、片思いの相手に勢いでとんでもないテキストを送ってしまい・・・

父親不在の家庭で育ったことが大きな影響を及ぼしているのは分かるが、これほどキレやすい高校生というのも、洋の東西を問わず、なかなか見つけられないのではないか。邦題の『スウィート17モンスター』は言い得て妙である。このモンスターを手懐ける時に必要なのは、positive male figureである。そう、『 プールサイド・デイズ 』におけるサム・ロックウェルのような。今作でその役割を果たすには教師のウッディ・ハレルソンである。この男には登場シーンから注目してほしい。おそらく日本の教育機関でこの男の言動が通報されれば、一発で教員として追放されてもおかしくないのではと思う。しかし、17歳のモンスターを大人しく躾けるのには、もう一人の17歳が必要となってくる。それがアーウィン・キムというアジア系アメリカ人、おそらく韓国系アメリカ人だろう(しかし、家族は中華料理屋を経営していてかなり羽振りが良い)。白人であることが必ずしも社会的なステータスを保証するものではなく、White Trashなる言葉さえ生まれている中(その典型例は『 パティ・ケイク$ 』だ)、アーウィンという少年がネイディーンにアプローチしてくる様はある意味、痛快である。観る者によっては、アプローチしていく様、とも表現できるだろう。白人と付き合うのは白人という時代ではない、つまり白人と分かりあえるのは白人だけではないのだ。ほんの少し、自分の殻を破れば、兄や親友が手に入れたような幸せに手が届く。このアーウィンという少年の内面やその努力を知ることで、観る者はネイディーンの幸せを祈りたくなってくる。だが、残念ながら彼の恋心は実らない。怪物の心の殻を優しく溶かしてくれるのは、ウッディ・ハレルソン・・・ではないのだ。このシーンは本当に心温まるというか、直前に母親ととんでもないトラブルを起こしているが故に、余計に輝くシーンとなっている。大人と子どもの境目、他人への不信感、自己嫌悪など、様々なものが入り混じったせいでひねくれるしかなくなった少女がどのように癒されるようになっていくのか。これは誰もが青春の一頃に通ってきた、一種のイニシエーションを極端な形で切り取ってきたストーリーなのだ。私立高校ぐらいなら、道徳の教材として使っても良いのではないかと思わせる完成度である。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, ウッディ・ハレルソン, ヒューマンドラマ, ヘイリー・スタインフェルド, 監督:ケリー・フレモン・クレイグ, 配給会社:カルチャヴィルLeave a Comment on 『スウィート17モンスター』 ―大人でもなく、さりとて子どもでもない17歳という諸刃の剣―

『 パティ・ケイク$ 』 -A White Trash Girl Lashes Out !!!-

Posted on 2018年5月14日2020年1月10日 by cool-jupiter

題名:パティ・ケイク$ 60点
場所:2018年4月29日 シネリーブル梅田にて観賞
主演:ダニエル・マクドナルド
監督:ジェレミー・ジャスパー

プロのラップミュージシャンになることを夢見る女の物語、と書いてしまうといかにもサクセス・ストーリーを予感させてしまうかもしれない。実際はそんなに単純な話ではなく、祖母と母と娘の関係、男友達、ストリートで知り合った男、偶像視している男など、主人公のパティを取り巻く人間模様は多様で複雑だ。

この物語をどこまで受容できるかは、ラップに対する理解というよりも、現状への満たされ無さ、不満の心をラップを通じてどこまで昇華できるのかという度合いに比例するように思う。なぜストリートで即興のラップバトルに興じるのか、それはストリートでブレイクダンスに明け暮れるB-BoyやB-GIrlと同じで、生き残るための場を確保するための必然的な努力なのだ。ある意味で非常に動物的な、本能的な生存競争なのだ。

主役のパティはまさにそうした存在だ。若い白人女性になんのディスアドバンテージがあるのかと、人によっては訝しむのかもしれない。しかし、太っていて定職もなく、父親のいない家庭に暮らし、同性の親友がいない、と彼女の属性を少し取り上げるだけで、いかにマイノリティなのかが浮き彫りになる。これはそういう物語なのだ。

それにしてもアメリカ映画に出てくる役者というのは、基本的に台詞回しが日本の役者のそれよりも遥かにスムーズだ。元々ローコンテクストな言語なので、声のテンポやピッチ、間の取り方、表情、身振り手振りも交えてのコミュニケーションが発達した結果というか副産物なのだろうが、日本の場合は演技以前の声の出し方からして未熟なままの役者がちらほら見られる。MLBとNPBではないが、やはり差というものはあるものだと実感させられる。

この映画の大きな特徴として、音楽の効果的な使い方にある。もちろん、BGMや効果音を使わない映画というのは一部のPOVぐらいで、本作にも音楽はふんだんに取り入れられている。注目すべきは劇中音楽の全てを監督のジェレミー・ジャスパーが手掛けたという点。ドキュメンタリー映画『すばらしき映画音楽たち』でも言及されていたが、ほとんどの映画監督はシーンに合った音楽を自分で生み出すことができないものだ。しかし近年は『 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 』のジェームズ・ガン然り、『 ベイビー・ドライバー 』のエドガー・ライト然り、シーンと音楽を自在に組み合わせられる監督も増えてきている。ジェレミー・ジャスパーもスコット・スピアらと同じく、そうした新時代の映画監督の道を往くのかもしれない。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アメリカ, ジェレミー・ジャスパー, ヒューマンドラマ, 監督:ジェレミー・ジャスパー, 配給会社:GEM Partners, 配給会社:カルチャヴィルLeave a Comment on 『 パティ・ケイク$ 』 -A White Trash Girl Lashes Out !!!-

最近の投稿

  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-
  • 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-
  • 『 RRR 』 -劇場再鑑賞-
  • 『 RRR:ビハインド&ビヨンド 』 -すべてはビジョンを持てるかどうか-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme