Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: 藤原夏海

『 地球外少年少女 後編「はじまりの物語」 』 -もっとオリジナリティを-

Posted on 2022年2月14日2022年2月14日 by cool-jupiter

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220214223908j:plain

地球外少年少女 後編「はじまりの物語」 50点
2022年2月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:藤原夏海
監督:磯光雄

 

『 地球外少年少女  前編「地球外からの使者」 』の続き。Jovianの予想が外れたのもあるが、全体的に内向きに閉じた完結編だった。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220214223923j:plain

あらすじ

なんとか彗星の欠片との衝突に耐え、管制室との通信も回復した登矢(藤原夏海)たちだったが、彗星本体はなお地球軌道上を周回している。しかも、彗星からのナノマシンはかつて破棄された超AI、セブン由来だった。状況を打開するために登矢たちはダッキーとブライトをフレーム合体させ、ダッキーの知能リミッターを解除するが・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220214223942j:plain

ポジティブ・サイド

前編と同じく30分で1エピソードというテレビアニメ的な構成。そのことが引き続き、展開をジェットコースター的にしている。宇宙ステーションが事故や災害に見舞われるというのは『 ゼロ・グラビティ 』など、SF映画・小説では日常茶飯事だが、やはり宇宙=真空=死という恐怖感がこたえられないサスペンスを生み出す。このあたり、主役級の登場人物は誰一人として死なないのだろうと予想していても、ハラハラドキドキさせられてしまった。

 

UN2に代表されるような地球人が彗星の破壊を試みる一方で、登矢たち地球外少年少女たちが彗星との対話、それによる説得を試みるという対照的なアプローチは面白かった。UN2自体は相手を問答無用で破壊しようとするが、問答を試みるというのは極めて日本的・・・とまでは言えないが、それでも本作をユニークたらしめる一つの要因になっている。

 

説得成功の直前に、潜入していたテロリストが牙を剥く。まあ、テロリストというよりは狂信者なのだが、『 コンタクト 』然り、この展開は現代に刺さる。特に、新型コロナウィルスやそのワクチン関連の狂騒、さらには地球温暖化などの環境問題と、絶えて久しいと思われた終末思想の相性の良さを、本作であらためて間接的に見せられたように思う。だからといってエンタメ性が失われているわけではなく、元々の長所であるテンポの良いストーリー展開をさらに強化するのに役立っている。このあたりが本作を単なるジュブナイル映画に留めていない点で非常に好ましく感じられる。

 

超知性と化したセブンと、インプラントの不調で死の危機に瀕する心葉を救おうとする登矢との対話も実に興味深い。取捨選択された情報だけを与えられた旧知性であるルナティック・セブンと、人間の清濁の両面すべての情報を吸収した超知性であるルナティック・セブンが、人間と人類を峻別しているところが目を引く。行きつくところは命とは何かという問いと、それに対する一定の答えになるわけで、Jovianは本作の提示する答えが最適解だとは思わない。もちろん、最適解があると考えることそのものがあまりに人間的なのかもしれないし、逆にあまりにも非人間的とも言えるかもしれない。ただ、このあたりの解釈はかなりの程度、受け取り手側に委ねられており、ここを考えるきっかけを得るだけでも本作を鑑賞する価値はあるのだろうと感じた。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220214223957j:plain

ネガティブ・サイド

全体的に盛り下がった感じがする。前編に堂々と「地球外からの使者」と銘打っておいて、実際は地球由来だったというのはこれ如何に。太陽系外の異星文明から飛来した超高度AIが自らの創造主に代わって恒星間飛行に飛び立った。そこで地球に飛来して、地球外で生まれ育った登矢の存在に興味を示し・・・という展開を予想していたのだが、これはまるっきりハズレ。

 

この過去に破壊され、廃棄されたシンギュラリティに達したルナティック・セブンが、ナノマシンとして宇宙で増殖し、彗星に乗って帰ってくるというのは、まんま『 太陽の簒奪者 』と『 二重螺旋の悪魔 』のアイデアを味付けし直したもの。ここはもっとオリジナリティが欲しかった。

 

最も違和感を覚えたのはルナティック・セブンの残したポエム=予言。起こる事象をある程度正確に予測するならまだしも、美衣奈といった固有名詞まで出るものだろうか。そこまでいくと超知性ではなく、オカルトである。オカルトとSFは混ぜてはいけない。

 

総評

前編の勢いが少し落ちたが、それでも非常にテンポの良い作品であることは間違いない。『 海獣の子供 』と同じく、エンタメ性と深遠なテーマの両方を成立させた佳作である。小学校高学年であれば直感的に理解できるストーリーになっているし、高校生あたりのデートムービーにもちょうどいい。もちろん、ファミリーでの鑑賞もありである。Netflixで視聴可能なようなので、週末のステイホーム時に6話を一気に観るというのもありだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Terran

地球人の意。terraというのはラテン語で、土地、大地、陸地を意味する。ここから地球という意味が生まれた(ちなみに gaia は terra のギリシャ語)。America → American となるように、Terra → Terran で地球人となる。もちろん複数形は Terrans である。宇宙人が普通に出てくる英語SF小説で「地球人」という言葉が出てきたら、Terran か、またはEarthman が使われていると思ってよい。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, SF, アドベンチャー, アニメ, 日本, 監督:磯光雄, 藤原夏海, 配給会社:アスミック・エース, 配給会社:エイベックス・ピクチャーズLeave a Comment on 『 地球外少年少女 後編「はじまりの物語」 』 -もっとオリジナリティを-

『 地球外少年少女 前編「地球外からの使者」 』 -予想外に硬質なSFアドベンチャー-

Posted on 2022年2月1日2022年2月14日 by cool-jupiter

地球外少年少女 前編「地球外からの使者」 70点
2022年1月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:藤原夏海
監督:磯光雄

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220201203918j:plain

オミクロン株が猛威を振るい、まん防が発令されても、映画館が営業してくれるのはありがたい。それでも週末の昼~夕方は喋りまくる客が多すぎて、さすがに二の足を踏む。なのでしばらくはレイトショーを中心に、若者が少なそうな作品を鑑賞するしかないか。

 

あらすじ

2045年。「あんしん」は世界初の未成年も宿泊できる宇宙ステーションとして稼働していた。そこにやってきた少年少女たちだが、彗星の欠片との衝突事故が起きてしまう。月で生まれた14歳の登矢(藤原夏海)心葉は、皆と力を合わせて窮地を脱しようとするが・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20220201203931j:plain

ポジティブ・サイド

AIと宇宙、そしてファースト・コンタクトという、Jovianが好物としているSFジャンルが全て詰まっている。

 

AIが生活の隅々にまで浸透し、宇宙ステーションのオペレーションもAIに依存するところ大というのは、現実的であるように思う。ちょうど先日鑑賞した『 ブラックボックス 音声分析捜査 』でも、航空機の安全のために人間の介在する余地を減らす云々という考え方が開陳されていたが、そのこと自体はあながち間違っていないと思う。また同じくAIが浸透していた『 イヴの時間 』の世界とは少し異なり、本作ではユニークな形のドローンが個々人に付属している。これもありそうな未来の形に映った。

 

宇宙に関しても、世界各国で様々なベンチャー企業が生まれ、宇宙への輸送や、宇宙からの送電、デブリ掃除などは現実の企画として存在しているし、宇宙宿泊も時間の問題だろう。このあたり小川一水の小説『 第六大陸 』を彷彿させるし、SF世界でありながら法律云々の話になるのも同作を強く想起させる。単なる少年少女のスペース・ファンタジーではなく、ハードSF風味のアドベンチャー物語になっているところが好ましい。

 

主人公の登矢がひねくれたガキンチョであることにしっかりとした意味付けがなされているのが良い。宇宙生まれ宇宙育ちという存在が出現するかどうかは分からない。しかし、外国生まれ外国育ちの日本人というのはたくさんいるし、今後ますます増えていくだろう。その中で『 ルース・エドガー 』のような異端児は必ず出てくる。登矢は、まさにそうした異端の天才児である。そうした人間を日本社会は包摂できるのか。本作はそうした視点に立って作られていると見ることも可能である。

 

本作は2022年という今と劇中の2045年の間に何があったのかを懇切丁寧に説明してくれるわけではない。もちろん、断片的な情報は大いに語られる。全体像が見えそうで、決して見えない。そのもどかしさが知的興奮とサスペンスにつながっている。一話30分×三話構成という劇場上映作品らしからぬ作りだが、これによって中だるみすることなく、常に一定以上の緊張感あるストーリー描写が続いていく。

 

本作はシンギュラリティ=技術的特異点以後の世界が描かれており、AIがどのように進化し、またその進化がどのように人間によって封じ込められたのかについても、後編で明らかになるはず。後編の上映が待ち遠しい。

 

ネガティブ・サイド

「地球外からの使者」という、どう考えてもファースト・コンタクトを示唆しているとしか思えない副題がつけられているが、前編に関する限りでは、異星人のいの字がちょっとにおわされているのかな、という程度。ただ、このアイデアは野尻包介の小説『 太陽の簒奪者 』のオマージュのような気がしてならない。または野崎まどの小説『 know 』のラストそっくりの展開が、後編のクライマックスになるような気がしてならない。または長谷敏司の『 BEATLESS 』のような、モノがヒトを凌駕した世界での実存の意味を問うシーンもありそうだ。

 

こうした予想は見事に裏切ってくれればそれで良いのだが、全編を通じて漂うチープさはもう少し何とかならなかったのか、そらTuberだとか、ジョン・ドウだとか、現代のYouTuberやアノニマスをそのまま言葉だけ変えても未来感は出ない。現在には存在しない、かつ現代人が予想もできないようなテクノロジー、たとえば教育ツール(なぜ博士が博士というニックネームを持つのかと絡めれば尚よい)が一つでも描写されていれば素晴らしさを増したことだろう。

 

常にBGMが鳴り響いていて、少々うるさい。映画的というよりも、テレビアニメ的である。その構成自体は面白さに貢献しているが、BGMの面ではマイナスであると感じた。また楽曲そのもののクオリティもあまり高いとは感じず、ビジュアルやシーンとは噛みあってないなかったように思えた。

 

総評

オッサンが見ても面白かった。レイトショーで鑑賞したからかもしれないが、劇場の観客で一番若く見えたのは30代男性だった。かといって子どもが楽しめないわけでは決してない。『 劇場版 ダーウィンが来た! 』を鑑賞するような家族にも、ぜひともお勧めしたい。本作が最もターゲットにしているのは、異端の存在や変革の時に臨んで、柔軟に対応できる者である。そこに老若男女は関係ないが、やはり若い世代にこそ、そうした柔軟性を求めたいと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

It’s not your business.

作中で何度か登場する「お前には関係ない」の意。少々無礼な表現なので、自分からは使わないようにしたい。似たような表現に Mind your own business. がある。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, SF, アドベンチャー, アニメ, 日本, 監督:磯光雄, 藤原夏海, 配給会社:アスミック・エース, 配給会社:エイベックス・ピクチャーズLeave a Comment on 『 地球外少年少女 前編「地球外からの使者」 』 -予想外に硬質なSFアドベンチャー-

最近の投稿

  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-
  • 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-
  • 『 RRR 』 -劇場再鑑賞-
  • 『 RRR:ビハインド&ビヨンド 』 -すべてはビジョンを持てるかどうか-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme