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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: 監督:セルヒオ・G・サンチェス

『 マローボーン家の掟 』 -精緻に作られた変則的スリラー-

Posted on 2020年4月21日 by cool-jupiter

マローボーン家の掟 65点
2020年4月20日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ジョージ・マッケイ アニャ・テイラー=ジョイ
監督:セルヒオ・G・サンチェス

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200421164937j:plain
 

アニャ・テイラー=ジョイが出ていたら、とりあえず観る。それがJovianのポリシーである。『 1917 命をかけた伝令 』で堂々たる演技を見せたジョーイ・マッケイも英国紳士然としていて好感が持てる。これはきっと良く出来たクソホラーに違いない。そう思っていたが、どうしてなかなかの佳作であった。

 

あらすじ

辺鄙な街はずれで暮らすマローボーン家。長男のジャック(ジョージ・マッケイ)はアリー(アニャ・テイラー=ジョイ)と恋仲になっていた。しかし、母ローズが亡くなってしまう。兄弟たちはジャックが法的に成人と認めらる21歳になるまで、母の死を秘匿することを誓う。だが、虐待者であり殺人者の父の影が屋敷に迫っていて・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200421165002j:plain
 

ポジティブ・サイド

どこかロン・ウィーズリー/ルパート・グリントを思わせる顔立ちのジョージ・マッケイが輝いている。母代わりに一家を主導する者として、青春のただ中の青年として、そして父親に立ち向かう長兄として、様々な役を一手に引き受けている。『 1917 命をかけた伝令 』でも序盤はあどけなさを残しつつ、中盤のある女性との交流からエンディングまでの流れで一人前の男の顔になっていた。なんとも男前な役者である。

 

本作のテイストを一言で説明するのは難しい。『 ヘレディタリー/継承 』と『 スプリット 』と『 ジョジョ・ラビット 』を足した感じとでも言おうか。ジュブナイルで始まり、サスペンスが盛り上がり、スーパーナチュラル・スリラーのテイストが色濃く現れてくる中盤までは、まさにホラーの王道。このあたりまでは「ああ、やっぱり良く出来たクソホラーだな、こりゃ」と高を括っていた。だが、本作が本当に面白くなるのはここからである。前半~中盤ははっきり言って盛り上がりに欠ける展開だが、全てはあるプロットのためなのである。やはり白字で書くが、『 カメラを止めるな! 』とまでは行かなくとも、『 ブルーアワーにぶっ飛ばす 』ほどにはぶっ飛ばされる。悔しいなあ、こんな演出に引っかかるなんて。しかし、伏線の張り方としては、これは非常にフェアであると言える。物語のどの部分を見返しても、ちゃんと筋が通っている。

 

最終盤は山本弘の短編小説『 屋上にいるもの 』を思い起こさせる。同時に、作中の様々なキャラクターやガジェットがどれもこれも見事なコントラストを成していることにも気づかされる。またまた悔しいなあ、こんな仕掛けに気づかないとは。観終わってDVDプレーヤーのトレーを開けて、また悔しい思いをさせられた。これはジェームズ・アンダースンの小説『 証拠が問題 』を出版した東京創元社の Good job のパクリ見事な模倣、オマージュになっているではないか。借りる時にも気付けなかったのか。アニャ大好き、『 スプリット 』大好きな、このJovianが・・・

 

エンディングも味わい深い。『 ゴーストランドの惨劇 』はとてつもない悲劇だが、ある意味ではこの上なく幸せな状態でもあった。これもまた、一つの愛のカタチなのだろう。

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ネガティブ・サイド

日本の宣伝広報が言うような、5つの掟というのは、話の本筋でも何でもない。古くは『 ヘルハウス 』、近年では『 パラノーマル・アクティビティ 』や『 インシディアス 』といった屋敷や館に巣食う何かを呼び起こさないようにルールを守る。あるいは、その何かに立ち向かうというストーリーに見せかけているのは何故なのか。羊頭狗肉の誹りを恐れないのか。まあ、ちょっとでも下手な売り出し方をすると、本作の面白いところをスポイルしてしまうという懸念は理解できなくもないが、そこを巧みに宣伝するのが腕の見せ所というものだろう。安易なクソホラーに見せかけたPRは評価できない。

 

アニャ・テイラー=ジョイの出番が少ないし、見せ場もほとんどない。『 ウィッチ 』的な、人里離れた森でジャックら兄弟と不思議な出会い方をしたところでは、「ああ、ここからアニャがロマンスとミステリ/ホラー要素をバランスよく体現していくのだろうな」と予感させて、しかし実際はほとんど退場状態。スリラーやサスペンスの申し子のアニャをもっと効果的に使える脚本や演出があったはずだ。アリーはアリーで、母親から苛烈な仕打ちを受けていてだとか、あるいは以前に付き合った男がとんでもないDV野郎で、ジャックといい雰囲気になっても体が無意識に拒絶してしまうだとか、なにか不安感や緊張感を盛り上げる設定を盛り込めたのに、と感じる。

 

総評

一時期、高齢者の死亡を届け出ずに、年金を不正に受給し続ける世帯がたくさんあったと報じられたことがあった。まあ、今でも日本の津々浦々で起きていることだろう。それにプラスして、世界中の人間が“家に引きこもっている”という現状を下敷きに本作を観ると、なかなかに興味深い。ホラーというよりも、スリラーやサスペンスである。ホラーはちょっと・・・という向きも、ぜひ家に引きこもって観てみよう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I don’t have all day.

直訳すれば「一日全部を持っているわけではない」=「そんなに暇ではない」=「早くしてくれ」となる。取引先に電話してみたら「確認して、すぐに折り返しますね」と言われた。しかし、30分待っても1時間待っても連絡がない。そういった時に心の中で“C’mon, I don’t have all day.”=おいおい、早くしてくれよ、と呟いてみよう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, C Rank, アニャ・テイラー=ジョイ, アメリカ, ジョージ・マッケイ, スペイン, スリラー, 監督:セルヒオ・G・サンチェス, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 マローボーン家の掟 』 -精緻に作られた変則的スリラー-

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