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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 監督:クレイグ・ゾベル

『 ザ・ハント 』 -D・トランプが問題視した良作-

Posted on 2021年8月29日 by cool-jupiter

ザ・ハント 70点
2021年8月23日 レンタル Blu rayにて鑑賞 
出演:ベティ・ギルピン ヒラリー・スワンク エマ・ロバーツ
監督:クレイグ・ゾベル

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210829021551j:plain

 

近所のTSUTAYAで発見。「全米が封印した問題作」とは大層なキャッチフレーズである。敢えてそれに乗ってみたが、なかなかのB級作品であった。

 

あらすじ

ある日、突然見知らぬ場所に集められた12人の男女。草原の真ん中で武器を発見した途端に銃撃されてしまう。どうやらそこはマナーゲートの中で、セレブが娯楽のために庶民をさらってきて「狩り」をする場所らしく・・・

 

ポジティブ・サイド

冒頭から優雅に上級民がくつろいでいる。そこへ下層民の闖入者。いきなり無残に殺されてしまい、「なるほど、これが本作のテーマか」と納得した。いきなりの血液ドバドバ描写は、確かに一部の映画ファンにはきついだろう。だが逆に言えば、一部の映画ファンには好評であるに違いない。現実で忌避されるからこそ、グロとバイオレンスは小説や映画などのフィクションでは根強い人気があるジャンルである。本作もそういう映画であることが開始2分で分かる。これは親切な introduction である。

 

目覚めた男女らが次々に訳も分からず殺されていく過程もサクサクと良い感じに進んでいく。「このキャラの目線で物語が進行していくのかな?」というキャラが一人また一人と、ある意味で面白いように倒れていく。『 NERVE 世界で一番危険なゲーム 』で主演も張ったエマ・ロバーツがいきなり死ぬのはかなり度肝を抜かれた。それもなかなかのグロ描写。他には穴に落ちてしまう女子の死に様は必見。どう見ても低予算映画だが、結構な額をこのシーンに費やしたのではと思える力の入れようである。

 

ストーリー展開もなかなか大仰で良い感じである。アメリカだけではなく、ある意味で世界的なスケールでマナーゲートおよびその領内での「ハント」が行われているが、そのことにリアリティがある。日本でも沖縄本島の森林地域のかなりの面積が近年になってようやく米国から返還されたというニュースがあったが、そうした治外法権地帯で何が行われていたかを我々には知る術がない。そしてそうした地域は世界中にある。

 

そうした中で奮闘するベティ・ギルピンがひたすらにクールでかっこいい。アフガン帰りの猛者で、道楽で人をハントする金持ちセレブを知恵と戦闘能力で逆に次々と撃破していく。まさに溜飲が下がる思いがする。大ボスとの対決でもハードなアクションを連発。女は怒らせると怖いのである。低予算映画ながら、バイオレンスに注力した佳作で、好きな人にはたまらなく面白いと感じられることだろう。

 

以下、ややネタバレあり

 

ネガティブ・サイド

冒頭と終盤のコメディ的な要素は確かに笑えるが、中盤にはその色が薄まった。局部ネタはコメディとは言えないだろう。作品全体を通じて乾いた笑いをもたらしてくれる要素が均等に埋め込まれていたら、大傑作になれたかもしれない。

 

マナーゲートを作ろうというエリート集団の動機が弱い。下層民の陰謀論に乗るのではなく、素直に下層民の作り上げた陰謀論が現実を突いていた、で良かったのではないかと思う。人間は本当のことよりも信じたいことの方を信じる生き物なのだから。

 

総評

『 バクラウ 地図から消された村 』と同工異曲のゲテモノ・バイオレンス・グロ映画である。先の米大統領のD・トランプが本作をかなり問題視したらしい。『 パラサイト 半地下の家族 』にケチをつけるという審美眼の持ち主が問題視する=良作と考えて良かろう。事実、Jovianは本作を楽しみながら鑑賞してしまった。謎が謎を呼ぶ展開にアクションも良好。カタルシスもある。人がどんどん死んでいくというストーリーに耐性があるのであれば、是非とも鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

No need.

「要らない」、「不要」、「必要なし」の意。

Should I wear a tie? ネクタイはつけるべきでしょうか?

No need. その必要はない

のように使う。『 シン・ゴジラ 』でも石原さとみが”No need.”と切り返す場面があった。割とよく使う表現なので、覚えておいて損はない。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アメリカ, エマ・ロバーツ, スリラー, ヒラリー・スワンク, ベティ・ギルピン, 監督:クレイグ・ゾベル, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『 ザ・ハント 』 -D・トランプが問題視した良作-

『死の谷間』 ―孤独と交流の狭間に人間の本質を垣間見る―

Posted on 2018年7月3日2021年1月17日 by cool-jupiter

死の谷間 55点

2018年7月1日 シネ・リーブル梅田にて観賞
出演:マーゴット・ロビー キウェテル・イジョホー クリス・パイン
監督:クレイグ・ゾベル

原題は“Z for Zachariah”、ZはゼカリヤのZ、という意味である。映画ファン、特にヒューゴ・ウィービングもしくはナタリー・ポートマンのファンという方であれば、即座に『Vフォー・ヴェンデッタ』を思い浮かべることだろう。これもVは復讐(ヴェンデッタ)のV、という意味である。また古いSF小説ファンであれば、レイ・ブラッドベリの『ウは宇宙船のウ』(R is for Rocket)や『スは宇宙(スペース)のス』(S is for SPACE)を思い起こすだろう。本作の原題の意味は、ZはゼカリヤのZ、である。ゼカリヤと聞いてゼカリヤ・シッチンの名前を挙げる人はかなりのオカルトマニアであろう。またゼカリヤと聞いて「ああ、聖書のゼカリヤ書ね」と分かる人はかなりの博識であろう。作中で一瞬だけではあるが、核戦争を生き延びた人類最後の女性と思われるアン(マーゴット・ロビー)が、”A for Adam”という本を手に取るシーンがある。AはアダムのA、ということだ。このアダムは言わずと知れたエデンの園のアダムである。ゼカリヤという名がここで暗示するのは、それが人類最後の男であるということだ。

そのようなPost-Apocalypticな世界において、人類最後の女として生き延びているのがアン・バーデン(マーゴット・ロビー)である。相棒にして愛犬のファロと共に、狩猟採集生活を送っている。非常に興味深いのは、アンは物語冒頭で対放射線の防護服を身にまとって、街の図書館らしきところから本を頂戴してくるところ。もちろん、食糧や日用品をあらかた失敬した後のことであろうと思われるが、これはサバイバルにおいて実に重要なことだ。貴志祐介の小説の『クリムゾンの迷宮』という佳作がある。シチュエーション・スリラーに分類されるであろう物語で、広大無辺の大地に突如取り残される男女複数名のサバイバル・ゲームを描く。その中で、主人公ペアはゲーム主催者から支給されるものの中から、食糧や武器ではなく、「情報」を選択する。これが決定的に重要な決断で、情報≒知識こそが、長い目で見たときに最も生存に資するリソースなのだということを示している。本作も同じく、アンの住む家には数多くの書籍があり、アン自身も農家で生まれ育ったことから、大自然の中で生き抜く知恵、そして孤独に耐えうる強い信仰を備えていた。一人と一匹の生活は、それなりに上手く回っていた。

そこに闖入者のジョン・ルーミス(キウェテル・イジョホー)がやって来る。科学者にして、黒人で、無神論者であり、酒に飲まれてしまうこともある。アンとは非常に対照的な属性の持ち主である。この二人が協力して、ガソリンを調達するシーンは、知恵が自然を克服する好個の一例である。人間の無力さは、力の欠如ではなく知識の不足から来ることを端的に証明している、非常に印象的な場面である。さらに一歩進んで、ジョンは核汚染されたエリアから来た水で構成される滝を使っての水力発電を思いつく。そのためには木材、それも数年から数十年単位で乾いた木が必要となる。それを調達するために、アンの心の拠り所であり父の遺産でもある教会を解体するか否かで、意見が分かれてしまう。将来ここにやってくる人間のためにも、食糧が保存できるように冷蔵庫などを稼働させなければならないというジョンと、別の人間など来ないと思うアン。信者と無神論者の穏やかな対立を描いた場面であると同時に、子を作るに際して能動の男と受動の女という対極的な姿をも描いた名シーンである。結論を急がずに暮らしを続ける二人の前に、しかし、ケイレブ(クリス・パイン)という若い炭鉱夫だという白人男性が現れる。物語はここから大きく動き始める。

とはいっても、アンを巡る男2人の仁義なき戦いというわけではなく、信仰の有無、肌の色の違いなど、この「死の谷間」を除いて荒廃してしまった世界で果たしてどれほどの意味を持つのか疑わしいことにも、人間は拘泥してしまうのだという、究極的な人間ドラマが描かれる。ケイレブ=Caleb=カレブである。聖書に描かれるカレブは神への信仰を生涯揺るがせにせず、荒涼としたエジプトの大地を脱出し、約束の地へたどり着いた男である。このことを知っていて映画を観る(あるいは原作小説を読む)のと、予備知識なしで観ることで、おそらく違う感想を抱くだろう。それは自分ならばどうするだろうかという主観的な見方と、この名前のキャラクターに込められた運命はこうであるという、運命論的な見方に二分されるのではなかろうか。もちろん、女性目線で分析することも大いに奨励されるべきであろうし、実際に理性と欲望の狭間でアン自身が翻弄されてしまうようなシーンもある。あらゆる場面で自分なりの解釈が可能であるし、創世記の如く、すでに誰もが知っている物語の再解釈と見ることもできる。スペクタクルには欠けるものの、思考実験として大いに知的好奇心をくすぐってくれる作品である。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アイスランド, アメリカ, キウェテル・イジョホー, クリス・パイン, スイス, スリラー, マーゴット・ロビー, 監督:クレイグ・ゾベル, 配給会社:ハークLeave a Comment on 『死の谷間』 ―孤独と交流の狭間に人間の本質を垣間見る―

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