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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 監督:アリ・アスター

『 ミッドサマー 』 -不協和音的ホラー映画-

Posted on 2020年2月27日2020年9月26日 by cool-jupiter

ミッドサマー 50点
2020年2月23日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:フローレンス・ピュー
監督:アリ・アスター

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予告編の日本語ナレーションが【 明るいところが怖くなる 】と煽ってきたので、「お、変化球のホラーが来たか」と思っていたら、『 ヘレディタリー/継承 』のアリ・アスター監督作だった。なんとなくだが、この人は波長の合う人はばっちり合うのだろうが、合わない人はとことん合わないように思う。Jovianはあんまり合わないかな・・・

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あらすじ

女子大生のダニー(フローレンス・ピュー)は、双極性障害の妹がる発作的に両親を殺害し、自身も自殺してしまったことから天涯孤独になってしまった。頼れるのはボーイフレンドのクリスチャンだけ。だが彼もダニーとの別れを考えていた。しかし、独りきりになってしまったダニーに別れを告げられない。そんな中、クリスチャンはダニーと距離を取るべく人類学の論文の調査のために、留学生の友人ペレの地元、スウェーデンの夏至祭に仲間と赴くことにする。だが結局はダニーも同行してしまう。その先には奇妙なコミューンが待ち受けているとも知らず・・・

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ポジティブ・サイド

何とも不穏な始まり方である。妹から奇妙な連絡が来たことを極度に不安がり、ボーイフレンドにヒステリックなまでに電話し続ける痛い女、ダニー。彼氏であるクリスチャンに粘着し、彼の「ごめん」の一言にも「謝ってほしいわけじゃない」と返す会話の無限ループ。さらには旅先にまで無理やりついて行くストーカー気質。映画文法に沿ったキャラではなく、極めてリアルなキャラなのである。つまり、ホラー映画もしくはラブコメに出てきそうなキャラではなく、実在するアッパーかつダウナー系の女子大生っぽさを醸し出している。主人公の女性が典型的映画キャラではないことが、今作にリアリティを与えている。

 

スウェーデン(実際はハンガリーらしいが)に作られた撮影用のコミューンも素晴らしい。このプロダクション・デザインは、ホラー映画としては異例の美しさである。陽の光が燦々と降り注ぐ自然に満ち溢れた村のかしこに見られる性的なアートやオブジェが、それゆえに際立って異様に映る。この神経にぞわぞわと来る感じがいい。明と暗のコントラストがあるが、この不快感に近い恐怖感はジョーダン・ピール監督の『 ゲット・アウト 』や『 アス 』に近いと感じた。こけおどしのジャンプ・スケアではなく、観る側が期待する恐怖感。それが本作にはある。

 

クライマックスのシュールさは近年稀に見るレベルである。詳しくは観てもらうしかないが、性的なオブジェに対して我々が抱くポジティブな感情・感覚とネガティブな感情・感覚がごちゃまぜにされる。その不快感たるや、筆舌に尽くしがたいものがある。この混乱に近い感覚は、新時代のホラー映画のひとつの基軸になるかもしれない。理不尽な怪異ではなく、理解できそうで理解できない不条理。『 ヘレディタリー/継承 』とは異なるテイストのホラー映画である。

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ネガティブ・サイド

以下にJovianが本作鑑賞中および鑑賞後にパッと思い起こした作品をいくつか挙げる。

 

『 タイタス 』
『 グリーン・インフェルノ 』
『 ウィッカーマン(1973) 』
『 ウィッカーマン(2006) 』
『 レクイエム・フォー・ドリーム 』

 

他にも色々と先行作品はあるのだろうが、普通にこれだけ思い浮かぶ。つまり、ストーリーとしてはそれだけ陳腐である。本作の面白さの肝は、ストーリーの見せ方であって、ストーリー展開そのものではない。ここにもう一工夫、あるいはもう一捻りがあれば、もっと高い評価を与えることができたのだが。

 

ゴア描写も『 アンダー・ザ・シルバーレイク 』の二番煎じだった。人体破壊を売りする安易なホラーと本作は一線を画すものだが、ここでもやはりオリジナリティの欠如が惜しまれる。

 

いくつか不可解に思えることもある。なぜ夏至祭は90年に一度なのか。人生を18年ごとに四季のように区切るのならば、72年に一度ではないのか?

 

夜中(といっても白夜なのだが)にしきりに聞こえる赤ん坊の泣き声が不快感をいやでも増幅してくるが、いったい何歳なのか。普通に考えれば夏至祭は4~5年に一回はやっているだろう。人類学・民俗学的に90年に一度のお祭りというのは考えづらい。『 凛 りん 』の“100年に一度”と同じで、信ぴょう性はゼロである。人類学の学徒であるクリスチャンやその友人が、このように思い至らないことが、宗教学専攻だったJovianにとっては全く腑に落ちない。

 

最も不満なのはドラッグの使い方である。『 レクイエム・フォー・ドリーム 』や、あるいは邦画では『 クリーピー 偽りの隣人 』など、ドラッグでトリップしたのでゴニョゴニョというのは個人的には受け入れがたい。これもまた二番煎じであるが、『 ジョーカー 』のように、抗うつ薬の効き目が弱くなった時のダニーが本当のダニーの姿である、というような描写をもっとクリアな形で序盤に入れておくべきだった。

 

また、ダニーの妹の死および両親との心中が双極性障害だったからというのにも説得力がない。というか配慮がない。躁状態であれ鬱状態であれ、それをはっきりと言明してしまうと、現実世界で双極性障害や鬱病、躁病に苦しむ人々があらぬ疑いをかけられてしまう。だからこそ、例えば『 四月は君の嘘 』や『 3D彼女 リアルガール 』では、病名が明かされないのである。

 

最も盛り下がったのは、とある動物が描写された瞬間である。上で挙げた作品の一つには、とんでもないギャグシーン(としか思えない)を含む作品があるが、まさかそれをここでも繰り返すとはゆめにも思わなかった。何度でもいうが、オリジナリティが欲しいのである。

 

総評

嫌ミス的なテイストの作品を好む向きにはぜひおすすめしたい。『 ヘレディタリー/継承 』と波長が合わないと感じた人も、本作は一度試しに見てみるのも一興である。ただし、カップルで鑑賞する際はタイミングに注意を要する。コミューンの住人との虚々実々のミステリに興味がある向きは、奥泉光の小説『 葦と百合 』を読もう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Problem solved.

「問題が解決された」の意である。冠詞やbe動詞は不要である。これはこういう決まり文句なのである。会議でトラブルの解決法が示され、実際にそれで解決の見通しが立った、あるいは解決された時に“Problem solved”とつぶやこう。

 

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『 ヘレディタリー/継承 』 -ホラーではなくスーパーナチュラル・スリラーに分類すべき-

Posted on 2018年12月14日2019年11月30日 by cool-jupiter

ヘレディタリー/継承 50点
2018年12月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:トニ・コレット アレックス・ウルフ ミリー・シャピロ アン・ダウド ガブリエル・バーン
監督:アリ・アスター

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heredityという言葉がある。遺伝という意味で、よりなじみ深い英単語ならinheritが挙げられるだろう。ityがつくことで、性質や状態を意味する。身近な例としては、abilityやunity、facilityがある。これにさらに、aryをつけると、場所や範囲、領域を意味するようになる。好個の一例がdictionaryだろう。dictについては、predictやcontradictから類推は容易だ。原題も”Hereditary”であることから、誰かが何かを受け継いでいることを指すのは一目瞭然なのだが、誰かとは誰か、何かとは何であるのかを理解するのは一筋縄ではいかなかった。

 

あらすじ

その一家は祖母を亡くした。その娘のアニー(トニ・コレット)は母には複雑な感情を抱いていながらも、仕事のミニチュア・ハウス作りに没頭する。息子のピーター(アレックス・ウルフ)と娘のチャーリー(ミリー・シャピロ)も日常に回帰しようとするが、名状しがたい異様な空気を一家は振り払うことができず、ある夜、悲劇が発生してしまう・・・

 

ポジティブ・サイド

非常に珍しい Establishing Shot から始まる映画である。ミニチュアのドールハウスを映したかと思えば、その部屋の一つにどんどんズームインしていく。それがピーターの寝室とぴたりと重なるところで、父がピーターを実際に起こしに来る。のっけから唸らされた。今からあなたが観るのは、全て誰かが組み立てた話なのですよ、とあけっぴろげに語られたような気がしたからだ。そして、実際にその通りなのである。

 

何と言ってもチャーリーを演じたミリー・シャピロに拍手を送りたい。強面のジェイソン・クラークをそのまま性転換させ幼児化させたようで、メイクの力もあるだろうが、尋常ならざる雰囲気を見た目だけで醸し出している。天才肌のグレイス・マッケナとは一味違う、一種異様な空気を纏うことができる子役だ。『 エクソシスト 』のリンダ・ブレアのようなキャリアを歩まないことを切に願う。

 

アメリカのメジャーな映画の母親役はトニ・コレットかアリソン・ジャネイとでも決まっているのだろうか。ほんの少し前まで、邦画のきれいなおばあちゃんは吉永小百合、ちょっとエキセントリックなおばあちゃんは樹木希林だったように。本作では主演だけではなく製作総指揮も務めたとのことだが、おそらく鏡の前で相当に顔の筋肉を動かしてから撮影に臨んだに違いない。恐怖の演出のための表情が、コメディ一歩手前にまで到達してしまっている。トニ・コレットでなければギャグになってしまうところを、その存在感と卓抜した演技力で見事に場面を締め付けている。

 

顔芸ではピーターも負けてはいない。特に運転席のシーンでは、観ているこちらも冷や汗をかくというか、脂汗をかくというか、バックミラーを見て後ろを確認すると、そこには!という演出は、おそらく『 ジュラシック・パーク 』で一気にスパークし、今やクリシェと化したが、今作はバックミラーを覗きこみたくても覗きこめないという演出で観る者の不安と恐怖を掻き立てた。残念なのは、恐怖の描写ではこのシーンがピークだったことか。

 

ネガティブ・サイド

ホラーとは何か、については実に興味深い議論がある。Cinemassacreの二人(James RolfeとMike Matei)による Is it horror? という動画がある。議論の冒頭で“Horror is something that’s always changing and adapting to the state of the world”=「ホラーは常に変化して、世界の状態に適応していくもの」という指摘がなされるが、これは正しい。そして、その議論を援用するならば、ホラーの定義は地域によって異なってもよいはずだ。極めて日本的なバックグラウンドを持つ人が、この映画から感じ取る恐怖とは、視覚的な恐怖や聴覚的な恐怖であったり、家族の崩壊の恐怖であったりで、宗教的・哲学的な意味での恐怖を感じ取る人がいたとすれば、相当に鋭い感受性か、もしくは類まれな知識と教養の持ち主と思われる。この映画から後者の意味での恐怖を受けるとすれば、それは西洋文明に相当明るい人のはずだ。Jovianは平均よりも上の知識をその方面に有していると自負しているが、正直なところ、家族の崩壊以上の意味を感じ取ることは難しかった。最後の最後の場面で諸々の伏線、前振りが回収されていく様は見事であったが、それはホラーといよりもサスペンスやスリラーであるように感じられた。

 

ホラー=恐怖とは、理不尽なもの、理屈が通じない状況から生まれるものだろう。しかし、本作の悲劇の始まりは、チャーリーがある行動を取ったから、という実に他愛のないものだった。隠す意味もないのだが、その行動とは「ケーキを食べる」である。もう、これだけでホラーの要素が薄まってしまうだろう。もちろん、その後の悲劇は本当に悲劇としか言いようがないのだが、その過程で観る者が感じるのはサスペンスであってホラーではない。これは西洋人であろうと東洋人であろうと同じだと考えられる。

 

本作は『 ローズマリーの赤ちゃん 』になろうとして、しかし『 タロス・ザ・マミー/呪いの封印 』になってしまった、と言えば通じるだろうか。誰がどう見ても怖い作品を作ろうとして、謎解き要素が強めの作品が出来上がったという感じである。同工異曲でもっと怖い作品を観たいという人は、『 ウィッチ 』を観よう。色々と腑に落ちた点をしっかりと頭に叩き込んでもう一度劇場に向かえば異なる感想を持つ可能性は高いが、残念ながらその予定はない。

 

総評

おそらく評価が真っ二つに分かれる作品である。恐ろしさを感じる人は感じるだろうし、スリルやサスペンス、またはミステリー要素を感じ取る人も相当数いると思われる。ホラーというものは常に現実に即しながら、必ず現実をはみ出た部分を持っている。どの方向にどの程度はみ出るかによって、どのような人にどの程度の恐怖感を催させるかが決定されるわけだ。そうした意味では、観る人を選ぶ作品である。もしもトニ・コレットのファンならば、即、劇場へGO!! である。イヤミス好きという人にもお勧めできる。

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