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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 田中圭

『 哀愁しんでれら 』 -転落サクセス・ストーリー-

Posted on 2021年2月11日 by cool-jupiter

哀愁しんでれら 50点
2021年2月7日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:土屋太鳳 田中圭 COCO 山田杏奈
監督:渡部亮平

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210211215123j:plain
 

なにやらストーリーがさっぱり分からないトレイラーばかりを見せられているうちに、気になってきた作品。土屋太鳳が母親役を演じるということで、新境地が見られるかと思い、劇場へと向かった。

 

あらすじ

市役所で自動相談員として働く小春(土屋太鳳)は、10歳の頃に母親に捨てられたことから、そんな大人にだけはなるまいと誓っていた。祖父の入院、実家の火事などの災難続きなところへ恋人の浮気も発覚。どん底にいた小春は、偶然にもクリニック経営者の大吾(田中圭)を踏切内で助ける。大吾の娘のヒカリにも気に入られた小春はとんとん拍子に大吾と結婚、幸せな生活が始まるが・・・

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ポジティブ・サイド

土屋太鳳の新たな一面が見られる。これまでのどこか受動的なキスではなく扇情的なキス。閨事のはじまりに、事後のピロートークなど、年齢相応の役を演じられるようになってきた。『 累 かさね 』でも鼻持ちならないキャラを演じていたが、本作をもってそうしたキラキラ女子高生および女子大生イメージからは完全に脱却したと言っていいだろう。

 

相手の田中圭も安定感のある演技で応える。さわやか系ではあるが、チンピラから暴力的な刑事まで何でも過不足なく演じられる標準以上の俳優で、今回は哀愁しんでれら相手のプリンス・チャーミング役を好演。白馬に乗った王子様であるが、この王子様は馬刺しを食べる王子様である。

 

役者陣で最も印象的だったのはCOCOという子役。『 コクソン 哭声 』の子役のキム・ファンヒの怪演には及ばないが、それでも最近の子役のパフォーマンスでは白眉。無邪気な小学生の顔ともう一つの顔を見事に演じ分けた。監督の演出と本人の個性がマッチしたのだろう。こういう子どもが『 約束のネバーランド 』にいれば、ミステリーとサスペンスがもっと盛り上がっただろうに。

 

ところどころに人間の根源的な願望というか、見たいものを見るという選択的な意志が働くショットがあり、そこは面白いと感じた。そして、そのビジョンの一つを実現させてしまうラストには笑ってしまった。邦画らしくない邦画で、こうした企画が通り、実現されるのだから、日本の映画界ももう少し見守ろうという気になれる。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210211215216j:plain
 

ネガティブ・サイド

土屋太鳳を追い込むなら、もっと徹底的にやるべきだ。男性器をかわいらしく言い換えた言葉も使うが、そこは「あんたの粗末なアレ」とか言うべきだったと思う。序盤と終盤での土屋の変化の落差を印象付けたかったのだろうが、すでにこの時点で小春は不幸のどん底だった。つまり、本音がポロリと漏れやすい状態、思わずきつい言葉を吐いてしまう状態だったわけで、落差を印象付けるなら、ここだった。

 

新居となる家が大きすぎる。『 シンデレラ 』の城のイメージなのだろうが、それなら靴ばかりに不自然にフォーカスするのではなく、小春のバックグラウンドも分かりやすくシンデレラのようにするべきだった。母親に捨てられるというのは辛い体験であるが、その後に家族と共に結構楽しそうに暮らしていては、シンデレラ・ストーリーを成立させにくい。家族によって無意識のうちに抑圧されていたという背景を小春に持たせた方が、荒唐無稽なストーリーにも少しはリアリティが生まれる。

 

その迷い込んでしまった城でも、ホラーのクリシェが多すぎる。薄気味悪いガジェットで埋め尽くされた部屋も既視感ありありだし、気味の悪い肖像画というのもお馴染みのアイテム。シンデレラ・ストーリーを恐ろしいものに見せたいのなら、王子様が怖い人だったという構成ではなく、お城暮らしをするようになったシンデレラが、いつの間にか下々の者を見下すようになっていた、という筋立ての方が説得力があっただろう。山田杏奈演じた小春の妹が大吾にネチネチと嫌味を言われるシーンがあるが、こういった言葉を小春自身が可愛がっていた妹に知らず知らずのうちに浴びせていたという方がサイコな怖さを演出できたと思う。

 

総評

『 パラサイト 半地下の家族 』並みにジャンル・シフトする作品である。だからといって面白さはその域には全然達していない。けれども、邦画が及び腰になっていた領域に果敢に突っ込んでいった点は評価せねばなるまい。ドラマスペシャル『 図書館戦争 BOOK OF MEMORIES 』、『 図書館戦争 THE LAST MISSION 』の二人のreunionを喜べる人であれば、チケットを購入してみてもいいだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

disqualify

失格させる、の意。元々の動詞、qualifyに否定の接頭辞disがくっついたものである。「母親失格です」ならば“You are disqualified as a mother.”となる。他にもunderqualifiedやoverqualifiedなどの語は、外資系で採用に携わっている人はしょっちゅう耳にしていることだろう。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, COCO, D Rank, スリラー, 土屋太鳳, 山田杏奈, 日本, 田中圭, 監督:渡部亮平, 配給会社:クロックワークスLeave a Comment on 『 哀愁しんでれら 』 -転落サクセス・ストーリー-

『 スマホを落としただけなのに 』 -スマホという楔は人間関係を割るのか繋ぎ止めるのか-

Posted on 2018年11月5日2019年11月21日 by cool-jupiter

スマホを落としただけなのに 40点
2018年11月3日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:北川景子 田中圭
監督:中田秀夫

f:id:Jovian-Cinephile1002:20181105012648j:plain

原作とほんの少しだけ異なるところもあれば、大胆な改変を加えたところもある。それらの変化を好意的に受け止めるか、それとも否定的に評価するかは、意見が分かれるところだろう。しかし、一つはっきりと言えることがあるとすれば、今作のトレーラーを作った人間は万死に値する・・・とまでは言わないが、はっきり言って猛省をしなければならない。これから本作を観ようと思っている人は、できるだけ予告編やトレーラーの類からは距離を取られたし。

 

あらすじ

富田誠(田中圭)は営業先に向かうタクシーにスマホを置き忘れてしまう。恋人の稲葉麻美(北川景子)が電話したところ、たまたまそのスマホを拾ったという男に通じ、横浜の喫茶店に預けるというので、ピックアップすることになった。しかし、その時から富田のクレジットカードの不正利用やSNSのアカウント乗っ取りなど、誠と麻美の周辺に不穏な動きが見られるようになる。時を同じくして、山中から黒髪の一部を切り取られた女性の遺体が次々と見つかり・・・

 

ポジティブ・サイド

犯人の怪演。まずはこれを挙げねば始まらない。少年漫画と少女漫画を原作に持つ映画が溢れ、役者というよりもアイドルの学芸会という趣すら漂う邦画の世界で、それでもこのような役者が出て来てくれることは喜ばしい。頑張れば香川照之の後継者になれるだろう。

 

童顔と年齢のギャップでかわいいと評判の千葉雄大もやっと少し殻を破ってくれたか。刑事として奮闘するだけではなく、序盤に見せた容疑者を鼻で笑う表情に、何かが仕込まれた、もしくは何かを背負ったキャラなのかと思わされたが、その予感は正しかった。役者などというものはギャップを追求してナンボの商売なのだから、もっともっとこのような演出やキャスティングを見てみたいものだ。

 

本作は観る者に、現代の人間関係がいかに濃密で、それでいていかに空虚で希薄なのかを思い知らせてくれる。ちょっとした録音メッセージ、メール、テキスト、スタンプなど、生身の触れあいなどなくとも、スマホを介在して何らかのコンタクトをするだけで、人は人を生きているものと考えてしまうことに警鐘を鳴らしている。この点について実にコンパクトにまとめているのが、THIS IS EXACTLY WHAT’S WRONG WITH THIS GENERATIONというYouTube動画である。英語のリスニングに自信がある、または自動生成の英語字幕があれば意味は理解できるという方はぜひ一度ご視聴いただきたい。

 

ネガティブ・サイド

原作小説と映画版では色々と違いが見られるが、その最大のものは麻美の設定であろう。はっきり言ってネタばれに類する情報なのだが、なぜかトレーラーで思いっきり触れられている。なぜこのようなアホなトレーラーを作ってしまうのか。そのトレーラーの北川景子も髪の長さが全く違って、なおかつ踏切の中に佇立するという、いかにもこれから死にますよ的な雰囲気を漂わせている。もうこれだけで、原作を既読であろうと未読であろうと、仕込まれた設定がほぼ読めてしまう。実際にJovianは観る前からこの展開の予想はできていたし、そのような人は日本中に1,000人以上はいたのではなかろうか。原作のその設定が映画的に活かしきれない、難しい、微妙だ、というのなら、その痕跡自体も消し去ってほしかった。なぜ冒頭のシーンで北川景子のキャット・ウォークをヒップを強調するカメラアングルで捉える必要があったのか。それは麻美がアダルトビデオに出演していた過去を持っていたからに他ならない。このあたりは中高生も注意喚起の意味で見るべき作品としての性格からか、全く別の設定に変えられているが、それなら痕跡すら残さず一切合財を変えてしまうべきだった。この辺りはエンディングのシークエンスでも強調されていることなので、なおのことそう思ってしまった。

 

また犯人像があまりにも分かりやす過ぎる。これも原作の既読未読にかかわらず、分かる人にはすぐ分かってしまう。もちろん、トリックらしいトリックを使う、いわゆるミステリとは異なるジャンルの作品なのだから、そこは物語の主眼ではない。しかし、驚きは最も強烈なエンターテインメントの構成要素なのだ。だからこそ我々は「ドンデン返し」というものに魅せられるのである。本作はこの部分が圧倒的に弱い。これはしかし、同日に『 search サーチ 』という近いジャンルに属する圧倒的に優れた作品を鑑賞したせいであるかもしれない。いや、それでも映画化もされた小説『 アヒルと鴨のコインロッカー 』というお手本であり、乗り越えるべき先行作品もあるのだから、そのハードルは超えて欲しかったが、本作はそのレベルにも残念ながら達していない。

 

総評

もっともっと面白い作品に仕上げられたはずだが、残念ながら原作小説以上の出来にはならなかった。時間とお金に余裕があるという人は、是非『 search サーチ 』と本作の両方を観て、比較をしてみよう。前者の持つ突き抜けた面白さが本作にはなく、極めて無難な映画になっていることに否応なく気付かされてしまうだろう。北川景子ファンならば観ておいても損は無い。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, サスペンス, ミステリ, 北川景子, 日本, 田中圭, 監督:中田秀夫, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 スマホを落としただけなのに 』 -スマホという楔は人間関係を割るのか繋ぎ止めるのか-

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