Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: ヤン・イクチュン

『 フェイク 我は神なり 』 -信じる者は救われる?-

Posted on 2022年8月21日 by cool-jupiter

フェイク 我は神なり 70点
2022年8月19日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ヤン・イクチュン
監督:ヨン・サンホ

待てど暮らせど返却されない『 マインド・ゲーム 』。しゃーないので、前々から気になっていた本作をセレクト。

 

あらすじ

韓国の田舎の村。ダム建設のために近く水没する予定のこの村に、ミンチョル(ヤン・イクチュン)が帰ってきた。村では若いソン牧師が村人から崇敬を集めていた。しかし、その傍らには村人から補償金を巻き上げようとする詐欺師ギョンソクの姿があり・・・

 

ポジティブ・サイド

アニメではあるが、韓国映画の容赦ないテイストがこれでもかと詰め込まれている。『 はちどり 』の父親よりも暴力的なミンチョル。それを『 息もできない 』のヤン・イクチュンがけれんみタップリに演じるのだから笑おうにも笑えない。いや、笑ってしまうようなストーリーではないのだが、韓国の伝統的な父親像を体現するダメ親父が、確立された宗教的権威に挑むというのだから、普通は笑ってしまうだろう。しかし、この無茶なプロットを成立させるのも韓国映画の剛腕っぷりと言えようか。

 

能弁家のギョンソクと若い牧師のソンが立ち退き料を受け取った村人に、あの手この手で浄財をさせようという序盤が目を引く。「こんな馬鹿な手口に引っかかるとは、さすが韓国の田舎者」と感じたら、それだけで負けである。日本でも毎年のように数億円規模の詐欺集団が検挙されているが、逆に言えば野放しの詐欺集団もたくさんいるということである。個人を悪く言うものではないが、2021年に死去した細木数子などはギョンソクと同種の人間だろう。彼女がテレビで「地獄に落ちるぞ」と言うたびに、ああ、室町時代の坊主はこんな感じで庶民を食い物にしてたんやろなあ、と思っていたものである。

 

閑話休題。本作は、ろくでなしが語る真実と聖人君子がもたらすまやかしのどちらを信じるのかを我々に問いかけてくる。『 沈黙 サイレンス 』そのままに、神は黙して語らない。だからこそ、その代弁者としてのソン牧師や、そのスポークスマンであるギョンソクの言葉に村人は耳を傾ける。このあたりのイライラ感と、他人に対して粗野にしか振る舞えないミンチョルのイライラ感が合わさって、観ていて非常にストレスが溜まる。警察もとことん無能で、こいつら仕事する気あんのかいな?とイライラさせられる。このイライラが最高潮に達する時、すべてが破滅に向かって動き出す。この救いの無さは『 ソウル・ステーション パンデミック 』でも明らかだったヨン・サンホ監督の持ち味か。何を信じるのかではなく、信じるという営為そのものが持つ危うさが本作の肝である。

 

ネガティブ・サイド

アニメではなく実写でやるべきテーマ、かつストーリーだろう。ミンチョルのような粗野で暴力的な中年を演じられる俳優も、韓国にはいくらでも存在するだろう。『 息もできない 』のヤン・イクチュンが、そのまま本作のミンチョルを演じるところを是非とも見たかった。

 

これは一種のネタバレだが、字幕に問題ありである。おそらく翻訳者は気を利かせて、ある簡単な韓国語を別の言い方に訳してしまっているが、これによって終盤のあるシーンの驚きが減じてしまうことにつながっている。小さな親切が余計なお世話になることもある。

 

総評

日本の代議士、特に政権与党が旧統一教会(&創価学会)に汚染されまくっていて、なおかつ「知らなかった、今後は気を付ける」で済ませようとする国会議員の多さ、その神経の図太さには呆れるばかりである。そんな状況なものだから「旧統一教会によって救われた人もいる」という発言も大いにバッシングを浴びるわけだが、日本人はそもそも宗教とは何か、信仰とは何かを知らない。「日本人に哲学なし」とは中江兆民の言だが、これは「日本人に宗教なし」とも言い換えられるかもしれない。では宗教とは何か?その問いに対するひとつの答えが本作にはある。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

カ

Ka is go, Ke is stay. と昔、Korean American の非常勤講師に教わったことがある。さよなら=アンニョンヒ「カ」セヨは相手が去る時、アンニョンヒ「ケ」セヨは自分が去る(=相手が残る)時だ、と。本作では「カ」の一言で「帰れ」のように使っていた。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村   

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アニメ, サスペンス, ヤン・イクチュン, 監督:ヨン・サンホ, 配給会社:ブロードウェイ, 韓国Leave a Comment on 『 フェイク 我は神なり 』 -信じる者は救われる?-

『 息もできない 』 -暴力の連鎖は止められるのか-

Posted on 2020年11月7日 by cool-jupiter

息もできない 80点
2020年11月2日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ヤン・イクチュン キム・コッピ チョン・マンシク
監督:ヤン・イクチュン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20201107173131j:plain
 

インディーズの名作として名高い本作。保守的な日本の家族観、風変わりな日本の家族観、新時代の日本の家族観を提示する作品を立て続けに観たので、外国が提示する「家族像」を消化してみたいと思い、レンタル。前評判通りに、暴力的な面白さを持った作品であった。

 

あらすじ 

借金の取り立て人のサンフン(ヤン・イクチュン)は女子高生ヨニ(キム・コッピ)と最悪の形で出会う。だが、二人はいつしか惹かれ合い始める。お互いが家族、特に父に問題を抱えていたからだ。ヨニとの交流からサンフンは借金取り稼業から足を洗おうと考え始めるが・・・

 

ポジティブ・サイド

主演かつ監督のヤン・イクチュンがサンフンというキャラクターを完璧な形で描出したことに満腔の敬意を表したい。目つきから歩き方、平手打ちの食らわせ方からストンピングまで、まさにチンピラとしか言えない。そして、路上ですれちがっただけのヨニにつばを吐きかけ、あまつさえ頭部にパンチさえお見舞いする。真正のDV体質としか思えない。事実、サンフンは暴力に憑りつかれている。暴力を能動的、自発的に振るっているのではなく、何かに突き動かされて暴力を振るっている。その何かが劇中で徐々に明らかにされると共に、サンフンも徐々に変わり始めていく。そのきっかけがヨニである。

 

『 君が君で君だ 』のソンでも薄幸の女性を演じたが、本作では薄幸でありながらも勝ち気で強気な女子高生を100点満点で演じ切った。はっきり言って『 サニー 永遠の仲間たち 』のミン・ヒョリンや『 建築学概論 』のスジのような、息を吞むような美人ではないのだが、だんだんと惹きつけられると言うか、どんどんと魅力的に見えてくるから不思議である。最近の映画だと、『 はちどり 』のキム・セビョクにも同じことを感じた。

 

この二人が出会い、徐々に惹かれ合っていく過程に言葉は要らない。屋台で飲み食いし、ちょっとしたウィンドウショッピングをして、街を練り歩くだけでいい。それまで色彩などほとんど感じられなかったサンフンの世界が、急に色づき始める。画面にはほとんど他者はおらず、サンフンの世界では他者とは殴る対象だったはずが、普通の人たちの普通の営みで画面が覆いつくされる。それだけでサンフンとヨニの距離が縮まったということの説得力は十分である。

 

ヨニは言葉使いも粗く、服装も地味なのだが、そうした自分と共通する外面にサンフンの荒れ果てた心が癒されるわけではない。ヨニの健気さや屈託のなさがそうするわけでもない。サンフンは自分が憎いのだ。憎むべき父親と同じことを繰り返してしまっている自分が憎くてたまらない。自分が好きではないから、本当は可愛がってやりたいと思っている甥っ子や気にかけている姉に対して素直になれない。だからこそ、自分に対してどこまでも素直に接してくるヨニの存在が突き刺さるのだ。そうしたサンフンの心情が手に取るように分かるのである。主演のヤン・イクチュンは脚本・監督を務めているため、キャラを誰よりも巧みに表現することは当然とはいえ、これほど固い殻に覆われた心の内を、言葉ではなく表情や動作、ちょっとした所作で表現するのは見事である。ヨニに膝枕をしてもらうシーンは、動物が腹を見せる=降伏の意思表示にも見えた。同病相憐れむ二人のシーンはあまりにも王道すぎて反則ではないか。

 

ストーリーも期待に応えてくれる展開と予想を裏切ってくれる展開が入り混じっていて良い。ヨニの弟ヨンジェとサンフンが同じ事務所で働き始めることで生じる不穏な空気。そこで同時に生じる淡い期待。少し先への展開を読ませやすくすることで敢えて読ませにくくしているところも印象深い。

 

また高利貸し事務所のマンシク社長という存在のおかげで、ストーリー全体が裏社会のそれに引っ張られず、社会の一隅の現実であるという領域に留まっていることも大きい。自分の生活世界のどこかでこんな物語が起きている、または起きてもおかしくないと感じられるからである。

 

エンディングのシークエンスは文字通りに「息もできない」もの。ヨニの目にした光景は、ヨニにある心象風景をもたらした。ヨニの心情がヨニ自身によって語られることはなく、物語は閉じていく。それを想像せよ!ということが本作のメッセージなのだろう。暴力とは受け継がれるものなのか。人は暴力に引き寄せられるのか。暴力に憑りつかれた者は暴力からは逃れられないのか。観る者の心に何かを沈殿させることは間違いない作品である。

 

ネガティブ・サイド

一つだけ不満を述べさせてもらえるなら、サンフンの過去を回想するシーンのいくつかをもっと短く、もっと断片的にできなかったかということだろうか。サンフンの過去を詳細に描写する必要はない。それこそヨニが母を思い出すシーンぐらいでよかった。ほんのちょっとした記憶しかもはや残っていない、それでも自分はその過去、体験に突き動かされてしまっているという描写の方が、暴力の原体験の根深さを逆に想像しやすくなるのではないだろうか。

 

総評

まさに「息もできない」物語である。劇中で展開される暴力は、『 マーターズ 』で見せつけられる“目的のある暴力”ではなく、無意味で衝動的な暴力である。そのことが観る者の心を抉る。憎むべき暴力を愛する家族に向けてしまう、そしてその暴力性が子に引き継がれる。この連鎖が思いがけない形で連鎖してしまうところに本作の悲劇性があり、それが本作を衝撃的な作品に押し上げている。悲恋の物語としても純愛の物語としても王道作品にして一級品である。『 血と骨 』を見事に映像化した北野武に本作をリメイクしてほしいという夢想を抱いてしまう。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

シバル

主人公サンフンが劇中で使いまくる卑罵語。意味は英語でf**cぐらいの意味らしい。『 ウルフ・オブ・ウォールストリート 』のディカプリオがFワードを連発していたのと同じようなインパクトを感じる。英語であれ韓国語であれ、ネイティブスピーカーの真似は効果的な学習方法であるが、状況や文脈を無視した安易な真似はご法度である。

 

 にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, A Rank, キム・コッピ, チョン・マンシク, ヤン・イクチュン, ラブロマンス, 監督:ヤン・イクチュン, 配給会社:ビターズ・エンド, 韓国Leave a Comment on 『 息もできない 』 -暴力の連鎖は止められるのか-

最近の投稿

  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-
  • 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-
  • 『 RRR 』 -劇場再鑑賞-
  • 『 RRR:ビハインド&ビヨンド 』 -すべてはビジョンを持てるかどうか-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme