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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: モーガン・フリーマン

『 アウトブレイク 』 -アメリカの本音が詰まったウィルス・パニック映画-

Posted on 2020年5月31日 by cool-jupiter

アウトブレイク 70点
2020年5月27日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ダスティン・ホフマン ケビン・スペイシー モーガン・フリーマン
監督:ウォルフガング・ペーターゼン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200531174506j:plain
 

これは確か高校3年生ぐらいの時にWOWOWだかレンタルVHSだかで家族そろって観た記憶がある。エボラ出血熱のニュースがその2~3年前にあり、人食いバクテリアなる言葉が人口に膾炙するようになった時代だったように思う。本作もまたCOVID-19禍によって再評価が進む作品の一つだろう。

 

あらすじ

サム(ダスティン・ホフマン)はアフリカで未知のウィルスが猛威を振るうの目の当たりにして、アメリカ本土も警戒の要ありと認めた。だが軍の上層部や政府は動かない。そうしている間にも、シーダー・クリークという田舎町で突如謎の感染症によって人々が死に始める。サムはこの苦境に立ち向かえるのか・・・

 

ポジティブ・サイド

単純に未知の病原体が現れて人類を恐怖と混乱のただ中に放り込む・・・というだけのストーリーではない。そこには職業人と家庭人の両立をできなかった男の悲哀があり、軍という自制が必要な組織体の自制の無さという問題があり、なおかつ自然と人間の適切な距離の問題がある。さらに過剰とも思えるほどのヘリコプター・アクションもあり、よくこれだけのストーリーを2時間に凝縮したなと、脚本家と監督、そして編集の手腕に感心させられる。

 

25年前の映画だが、現代にも通じる点としてウィルスが変異する点が挙げられる。COVID-19もアジア株とヨーロッパ株の2種に大別できるとされているが、実際は何十にも何百にも枝分かれしているとされる。小説および映画化もされた『 パラサイト・イブ 』では「ミトコンドリアは人間の10倍の頻度で変異する、つまり人間の10倍のスピードで進化する」とされていた。微生物を人間がどうこうしようというのが、そもそもおこがましいことなのかもしれない。ましてや兵器にしてやろうなどと。そうしたことも本作から学べるのだ。

 

ダスティン・ホフマンの名探偵も斯くやの快刀乱麻を断つがごとしの推理や論理展開の速さは必見。そして「自分を抜きにしてアメリカの防疫を語るな!」というプライドとプロフェッショナリズム。日本にこれほど熱く有能な科学者や官僚はいるのだろうかと思われてしまう。モーガン・フリーマンやドナルド・サザーランドのいかにもアメリカ軍人らしい冷徹さも、そのコントラストが際立っている。その裏には少数を切り捨てることで絶対的多数を守ろうと決断する者たちの姿が見えるからだ。シーダー・クリークを爆撃し、ウィルスおよび感染者を文字通りに一掃しようと立案する大統領補佐官らしき男の官僚連中への「この顔を刻み付けろ!一生思い出す顔だ!」という怒声は、果たしてダイヤモンド・プリンセス号を見捨てた(としか思えない)日本政府の中でも聞かれたのだろうか。フィクションと現実を比較しても詮無いことだが、現実がフィクションに侵食されている今こそ、現実を鋭く批判検証せずに、いつするというのか。

 

アクションも熱い。現代ならおそらく95%はCGで描いてしまうであろうヘリコプターのチェイスと曲芸飛行を、おそらく9割は実物、1割は模型(ハンマーヘッドターンはさすがに模型だろう)だと思われるが、それでもこのヘリコプターアクションのシークエンスは90年代の作品では『 ターミネーター2 』のそれに次ぐクオリティであると感じた。相当な腕っこきパイロットを連れてきたのだろうな。

 

ネガティブ・サイド

ヘリコプターの燃費が良すぎる。通常巡航速度以上の飛行をずっと続けて、なおかつ戦闘機動も織り交ぜ、なおかつ巡航速度を超大幅に下回る飛行を行いつつも、給油なしで飛び続けるあのヘリコは一体全体何であるのか。またAWACSがついていながら軍用ヘリをロストするというのも頂けない。カーナビがついているのに迷子になった、あるいは暗視スコープをつけているのに暗闇でこけてしまった、そういうレベルの盛大なミスである。さすがにちょっとご都合主義が過ぎやしないか。

 

ケビン・スペイシーの感染シークエンスが不可解だ。あの一瞬でウィルスを吸い込んでしまうだろうか。あれでは、防護服周辺に来た人間全員に感染してもおかしくないではないか。その後のラボの人間が誰も発病していないところを見ると、防護服に穴が開いた瞬間に感染というのも大げさすぎる演出だと感じた。

 

土壇場での血清培養も、シーダー・クリークのような地方の片田舎でどのように行ったのだろうか。厳密な温度管理や滅菌処理など、かなり大掛かりな施設が必要となるはずだが、「いいぞ、もっとドンドン作れ!」とはこれいかに。

 

総評

色々と不可解な面もあるが、ヒューマンドラマの要素とSFの要素、そして家族愛や友情の要素に、『 ランペイジ 巨獣大乱闘 』が前面に出しきれなかった人間vs自然のような視点までも包含した、ジャンル横断的な傑作である。願わくば、『 Search サーチ 』のような様式、すなわち全編これ顕微鏡下の映像だけで送る最近・ウィルスのパニック・スリラーも観てみたい。映画関係者よ、作るなら今だ!

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I’m on it.

itは大抵の場合、何らかの仕事やミッションを指す。「自分がそれを担当します」、「今取り組んでいるところです」のような意味で、日常会話というよりは、どちらかというと職場でよく使われる表現。実際にJovianの職場でも、

 

X: “We need to make a guideline for this.”「ガイドラインが必要だな」

Y: “I’m on it.”「私が作成します」

 

のようなやりとりはまあまあの頻度で聞こえてくる。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, B Rank, アメリカ, ケビン・スペイシー, スリラー, ダスティン・ホフマン, モーガン・フリーマン, 監督:ウォルフガング・ペーターゼン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 アウトブレイク 』 -アメリカの本音が詰まったウィルス・パニック映画-

『 くるみ割り人形と秘密の王国 』 -鑑賞時はCG酔いに注意のこと- 

Posted on 2018年12月12日2019年11月30日 by cool-jupiter

くるみ割り人形と秘密の王国 40点
2018年12月2日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:マッケンジー・フォイ キーラ・ナイトレイ モーガン・フリーマン
監督:ラッセ・ハルストレム ジョー・ジョンストン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20181212024607j:plain

チャイコフスキーの“くるみ割り人形”と言えば、圧倒的に「行進曲」と「花のワルツ」のイメージが強いだろう。この軽快にして優雅な調べは、聴く者の心に沁み入るような印象をもたらす。この典雅な音楽に乗せて展開される映像世界はどのようなものになるのだろうかと期待に胸を躍らせていたが・・・

 

あらすじ

母を亡くして以来、内向的になってしまったクララ(マッケンジー・フォイ)は、あるクリスマス・イブに名付け親のドロッセルマイヤー(モーガン・フリーマン)の邸宅を訪れる。そこでは各人へのクリスマスプレゼントが用意されており、自分の名前が書かれた札のついた紐をたどっていく仕組みだ。そしてクララが紐をたどっていく先には、不思議な世界が広がっていた・・・

 

ポジティブ・サイド

インターステラーのマーフがここまで大きくなったかと、マシュー・マコノヒーならずとも父のような目で見てしまう。クロエ・グレース・モレッツ的な存在になるのか、それともジェニファー・ローレンスのような恐れ知らずの女優にまで変貌するか。今後が実に楽しみである。なんとなくルックスが杉咲花を思わせるのだが、出演作は本人およびハンドラーもしっかりと吟味をしてほしいと切に願う。

 

ゴッドファーザーのモーガン・フリーマンも、日本の国村準に負けず劣らずのハイペース出演。正直なところ、この偉大なる俳優のキャリア、というか寿命もそこまで長くは残されてはいないだろう。彼の今後の一作一作が、文字通りの遺作になる覚悟で臨んでいる。言えるうちに言っておこう。この不世出の名俳優に乾杯。

 

そしてキーラ・ナイトレイである。『 はじまりのうた 』や『 アラサー女子の恋愛事情 』では典型的なお姉さんキャラを演じていたが、本作ではハイテンションお姉さんキャラに変貌を遂げた。しかし、大人でありながら大人の余裕をそれほど感じさせないお姉さんキャラという点では、いつものキーラなので、彼女のファンであってもそうではなくても、安心して鑑賞できる。このことをポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかは人による。Jovianは好意的に受け取った。キーラは何となく、蒼井優を思わせる。可愛らしさ、色気、儚さ、物憂げな様子、名状しがたい負の感情、倒錯。そうしたところが共通しているように思う。

 

ネガティブ・サイド

ストーリーそのものに真新しいところはない。というよりも、ディズニーらしい改変が加えられている。ディズニーがよく知られた物語を実写化すると、しばしばフェミニスト・セオリーなどの現代的な読み変えを行う。女性はどこまでも受け身で、物語を雨後がしていくのはもっぱら男性的なキャラクター達というのが古典的な物語の在り様だ。赤ずきんちゃんでも白雪姫でも何でもよい。そうしたおとぎ話の女性の受動性とディズニー映画の女性の積極性には見事なコントラストがあるのだが、それが常に成功するわけではない。なぜクララがいきなりガンガン闘えるのか。なぜクララに女王の威厳が備わっているのか。なぜクララが機械仕掛けに精通しているのか。こうした男性的な特徴を、特に説明もなくクララが持っていることが、物語にマイナスに作用しているように思う。近年の実写ディズニー映画で個人的に最も面白かったのはリリー・ジェイムズの『 シンデレラ 』だ。なぜなら、女性の女性性を損なうことなく、一貫した物語に仕上がっていたからだ。クララ本人とその母親、そして四つの王国の背景がほとんど語られないままにキャラが動き出すせいで、観客は置き去りにされたかのように感じてしまう。

 

また、CGの量は何とか抑えられなかったのだろうか。全ての王国の背景が、あまりにも作り物然としていた。CGが今後どれほどの進歩を見せるのかは分からないが、それでもCGはCGとして目に映るだろう。最近観た『 グリンチ(2000) 』でも感じたことだが、着ぐるみや特殊メイクは幼稚かもしれないが、存在感という点ではいかなるCGにも勝る。最近も『 GODZILLA 星を喰う者 』で、ほとんど動かないキングギドラを見せられたが、かつての昭和、平成のキングギドラは二十人ほどの操演によって動いていたという。しかし、ピアノ線による操演技術はロストテクノロジーとなって久しい。今ではエキストラの人間さえもCG作成して合成してしまう映画が多いが、ディズニーほどの予算を持っているのなら、オーガニックな素材をふんだんに使った映画を作り続けるべきだ。本作のCGヘビーな面は、技術の進歩というよりも技術の後退、継承の失敗という文脈で捉えるべきではないだろうか。

 

総評 

はっきり言って、本作にはストーリー上の面白さは無い。キャストにお気に入りがいないのであれば、素直にスルーするのが吉である。そうはいっても、チャイコフスキーの音楽の調べによって語られる物語の映像美は、雨の日の過ごし方やちょっとした時間つぶしのためには最適であるのかもしれない。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20181212024758j:plain

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アメリカ, キーラ・ナイトレイ, ファンタジー, マッケンジー・フォイ, モーガン・フリーマン, 監督:ジョー・ジョンストン, 監督:ラッセ・ハルストレム, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 くるみ割り人形と秘密の王国 』 -鑑賞時はCG酔いに注意のこと- 

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