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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: ニコラス・ホルト

『 ザ・メニュー 』 -Don’t just eat. Taste.-

Posted on 2022年11月27日 by cool-jupiter

ザ・メニュー 70点
2022年11月26日 TOHOシネマズ梅田にて鑑賞
出演:レイフ・ファインズ アニャ・テイラー=ジョイ ニコラス・ホルト
監督:マーク・マイロッド

あらすじ

有名シェフのジュリアン・スローヴィク(レイフ・ファインズ)が手がける、孤島のレストラン「ホーソン」を訪れたマーゴ(アニャ・テイラー=ジョイ)とタイラー(ニコラス・ホルト)たち。絶品料理の数々に感動するタイラーを横目に、マーゴは違和感を覚える。そしてコースが進むにつれ、シェフの凝らした趣向がどんどんとエスカレートし、ある時ついに一線を越えてしまい・・・

ポジティブ・サイド

何とも奇妙な趣向を凝らした映画である。これでもかと瀟洒な料理を見せつけつつ、作り手たちが届けたいメッセージは食べ物に関することではない。食べ物を味わう姿勢、もっと言えば芸術作品そのものを味わう姿勢についてだ。

 

ごく少数の客が船に乗り、孤島のレストランに向かう様子は『 ナイル殺人事件 』を彷彿させ、否が応でもサスペンスが盛り上がる。孤島で出迎えてくれるエルサの存在がさらに不穏な空気を充満させる。この役者、ホン・チャウさんというらしい。方向性は全然違うが、『 カメラを止めるな! 』の竹原芳子(どんぐり)並みのインパクトを残したと思う。今後、どんどん売れて、最終的にミシェル・ヨーの領域を目指してほしい。

 

閑話休題。レイフ・ファインズ演じるシェフは技巧の限りを尽くしたフルコースを振る舞うが、一品ごとに小咄を挿入してくる。そこで彼が言う「ただ単に食べてはいけません。味わってください」=Don’t just eat. Taste. こそが本作のメッセージ、いや裏メッセージと言うべきか。芸術を消費するな、ちゃんと鑑賞しろという、一種の批判になっている。ごく最近、ファスト映画のアップロード者2名に5億円という目玉が飛び出るような賠償金請求が出たが、Jovianはこの判決はありだと考える。抑止力になることもそうだが、なによりファスト映画を消費することによって、映画を観たと堂々と言えるような風潮を世間に広めてはならないと思うからだ。

 

本作でもレストランオーナーの友人だという3人組が「一回あのレストランに言っておけば箔がつく」と話すシーンがあるが、これは味を楽しむ姿勢ではなく、単なるステータスを獲得しようという姿勢である。Jovianと同世代なら T.M.Revolution の『 WHITE BREATH 』の歌詞、「タランティーノぐらいレンタルしとかなきゃなんて、殴られた記憶もロクにないくせに」 を思い出すかもしれない。殴られる痛みを知らないのに、暴力的な映画を鑑賞して、その真価が分かるのか?という疑問である。ニコラス・ホルト演じるタイラーを通じて、シェフはこのことを非常に痛烈に批判してくる。こんなブログ書いてる俺も大丈夫かいなと心配になってきた。

 

最後の一品の際に、マーゴが機転を利かして虎口を脱するが、この知恵は見事だった。結局のところ、ファスト映画の消費や、あるいは配信などの形態に、古き良き劇場鑑賞という経験そのものが屈してしまう。それが認められない映画人による壮絶な自爆テロ的な寓意をはらんだ結末なのかと思う。

 

ネガティブ・サイド

『 フード・ラック!食運 』と同じく、食材の調達や調理のシーンが決定的に不足していた。撮影開始の前のロケハンや、大道具・小道具の作成、衣装の用意、役者のリハなど、映画製作もカメラが回り始めるよりも前の方が重要であると思う。料理も同じで、キッチンで調理をする前の段階こそが大事で、牡蠣を取るシーンにもっとクローズアップしたり、ハチミツや鶏卵を収穫するシーンを挿入することも出来たはずだ。またレイフ・ファインズ自身の調理シーンも、もう少し欲しかった。

 

趣向の一つとしての男性だけの逃走タイムは何だったのだろう。

 

アニャ・テイラー=ジョイのキャラの職業もちょっと捻りすぎかなと感じた。また。エルサとの対決の結果は、レストランの惨状とは無関係なので、そこをどうカバーするのだろうという疑問は残った。

 

総評

アニャ・テイラー=ジョイがR15+ということで、ついに脱ぐのか?という期待が高まったが、そういう意味でのR指定ではないので、スケベ映画ファンは期待してはいけない。またグルメ映画だと思ってもいけない。本作は一種のシチュエーション・スリラーだと思うべきだ。そのうえで豪華な食材=有名俳優を使って、美味を極めた料理=極上の映画を送り届けてきたと解釈すべし。つまり、レストラン「ホーソン」のゲスト=映画の観客なのだ。それを念頭に置いて鑑賞されたし。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

theater

普通は劇場という意味だが、これは a theater のように冠詞がつく場合。劇中では、This is theater. = これはお芝居よ、のように使われていた。書籍『 マネーボール 』の原書でも、アート・ハウ監督のダグアウトでの在り方が、Everything was theater. =「何もかもが芝居なのだ」と訳されていた。a theater と theater の区別が適切にできれば、英検準1級以上はあるだろう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 ザリガニの鳴くところ 』
『 サイレント・ナイト 』
『 母性 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, B Rank, アニャ・テイラー=ジョイ, アメリカ, スリラー, ニコラス・ホルト, レイフ・ファインズ, 監督:マーク・マイロッド, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 ザ・メニュー 』 -Don’t just eat. Taste.-

『 モンタナの目撃者 』 -山火事と暗殺者から逃れられるか-

Posted on 2021年9月12日 by cool-jupiter

モンタナの目撃者 65点
2021年9月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アンジェリーナ・ジョリー フィン・リトル ジョン・バーンサル エイダン・ギレン ニコラス・ホルト
監督:テイラー・シェリダン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210912151400j:plain

テイラー・シェリダン監督の最新作。アメリカの大自然とアメリカ社会の闇の両面を描くという点で『 ウインド・リバー 』の同工異曲だが、クオリティはそこまで及んではいなかった。だからといってホームランと比べると2塁打は確かに劣るが、凡退やシングルヒットよりも全然良い。

あらすじ

森林局のパラシュート隊員であるハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、過去の消防活動からトラウマを抱えていた。そんな中、小川のほとりでコナー(フィン・リトル)と出くわす。コナーの父が恐るべき陰謀に巻き込まれたことを知ったハンナはコナーを助けると決意する。しかし、そこには追手と彼らが放った火によって起きた森林火災が迫って・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210912151415j:plain

ポジティブ・サイド

アメリカの雄大な自然の森や山々が活写されると共に、それが牙を剥いてきた時の恐ろしさも真正面から捉えられている。山火事の炎は言うに及ばず、雷の恐怖もなかなかのもの。序盤に新人たちの入隊セレモニーが行われているそばで飲んだくれながら、F-words連発で下世話なトークを繰り広げるハンナとその仲間たちに「こいつらが消防隊員で本当に大丈夫か?」と思ったが、実際はこれぐらい図太さと豪胆さがなければ大自然の脅威には立ち向かえないということがよく分かった。

かといってハンナは単に口が悪い、頭のねじが外れた消防士ではない。過去のトラウマに今も苛まれている。そんな彼女がコナーと巡り合うことで、過去のトラウマに決着をつけられる機会を図らずも手に入れる。序盤、いきなり住宅が吹っ飛ばされ、それをニュースで知った男性が息子を連れて逃走するシーンは観る側を置いてけぼりにするが、それを追撃してくる暗殺者ふたりの奇妙なバディっぷりが不気味さを倍増させる。

あるサバイバルスクールで文字通りに役者が揃い、ハンナとコナー、ハンナの元恋人で地元の保安官とその妻、そして山火事の猛威の三つ巴の戦いはまさに手に汗握る展開。「殺される」と感じた瞬間からの逆転や、「勝った」と確信した瞬間からの再逆転など、とことんまでサスペンスを追求した作りに100分という上映時間をもっと短く感じた。

エイダン・ギレンとニコラス・ホルトの暗殺者二人組の容赦のない仕事ぶりと、それゆえの倒され方には納得。ジョン・バーンサルの保安官役も板についていた。子役のフィン・リトルの演技力も堂に入っている。涙を流すのではなく、父の遺志を継いで涙を必死にこらえる姿には脱帽。演出家や演技指導者の腕が良いのか、この子の訳とシーンの解釈が素晴らしいのか。最後にアンジェリーナ・ジョリーを称えないわけにはいかない。豪快さと繊細さ、力強さと優しさの両方を備えている。父子家庭で育ったと思しきコナーが父を失くしたからといって、安易に母親的な存在になろうともしない。相手を子どもではなく一人の人間として、まっすぐに目と目を合わせて話をする。ルックスでデビューして、加齢とともに消えていくどこかの国のアイドル卒の女優たちには、アンジェリーナ・ジョリーの出演作品を10回以上見せてやりたいと思う。

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ネガティブ・サイド

コナーが仔馬と交流するシーンが冒頭近くにあるが、これは何だったのだろう。てっきり終盤に森林の中で馬と出会い、動物と心通わせる力でもって、窮地を脱するのかと思ったらさにあらず。

バーンサルの上官が自身の妻からの電話応答を”Absolutely not.”といって断るシーンは必要だったか。これをやってしまうとそそっかしい人は「保安官は職務中は家族からの電話にも出ないのだな」と思ってしまう。ここは逆に電話に出て、保安官同士で使う隠語で妻に言葉をかけるぐらいが望ましかった。

不満を言わせてもらえば、落雷する平原を駆け抜ける際のハンナの指示にプロフェッショナリズムがもっとあれば良かった。いつ落雷するか分からないような超危険地帯では、雷しゃがみが鉄則。「こんな風にしゃがむのよ」的なことを言っていたが、こここそ「手を地面につかない」とか「かかとを浮かせる」といったことを復唱させる場面であると感じた。

あとは映画そのものの出来とは関係ないが、これまたトレイラーがほとんど全部のプロットを明かしてしまっている。できるだけトレイラーを見ずに臨むのが吉である。

総評

炎の熱がスクリーン越しにこちらに伝わってくるようなヒリヒリ感に満ちた作品である。自然の脅威と人間の追撃者の両方を扱った作品としては『 ローグ 』以上のサスペンスとアクションに満ちている。アンジェリーナ・ジョリーの迫真の演技とテイラー・シェリダンの描く極限的な状況がハイレベルで融合した佳作である。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

read 

「読む」の意。通常は文字を読むのに使われる表現だが、日本語動揺に実は守備範囲が非常に広い動詞である。

lipreading = 読唇術
mind reading = 読心術
palm reading = 手相見
card reading = カードの読み取り(クレジットカードからタロットカードまで)

劇中では read the wind wrong =「風を読み違えた」という表現が出てきたが、ここまでくれば wind reading = 風読みも、ゴルフをたしなむ人なら分かるだろう。もっと一般的なところでは、正月に凧を揚げる時にどこに注目するかを思い浮かべればいい。それが風読みである。

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, アンジェリーナ・ジョリー, エイダン・ギレン, ジョン・バーンサル, スリラー, ニコラス・ホルト, フィン・リトル, 監督:テイラー・シェリダン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 モンタナの目撃者 』 -山火事と暗殺者から逃れられるか-

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