Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: スペイン

『 スターシップ9 』 -どこかで観た作品のパッチワーク-

Posted on 2018年10月19日2019年11月1日 by cool-jupiter

スターシップ9 40点
2018年10月16日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:クララ・ラゴ アレックス・ゴンザレス
監督:アテム・クライチェ

 

シネマート心斎橋またはシネ・リーブル梅田で鑑賞するはずだったが、色々と重なり未鑑賞のままだった作品。閉鎖空間SFは、Jovianのまあまあ好物テーマなのである。この分野の傑作と言えば『 エイリアン 』であり『 CUBE 』だろう。また、少ない登場人物でスリルやサスペンスを生み出すのはフランスの小説や映画の技法だが、今作はスペインとコロンビアの合作である。期待に胸を躍らせていたが・・・

 

あらすじ

エレナ(クララ・ラゴ)は、独り恒星間宇宙船に乗っていた。ある時、空気の循環システムに故障が発生、近くの船に救難信号を送った。そこにやって来たのはエンジニアのアレックス(アレックス・ゴンザレス)。朴念仁のアレックスだったが、すぐにクララとまぐわい、惹かれ合う。故障も修理され、アレックスは自分の船に還っていく。クララも自分の旅を続けていく。しかし、アレックスにはある秘密があった・・・

 

ポジティブ・サイド

宇宙に漂う船に乗組員は一人。船内には無機質な機械音と、AIによる音声だけが響く。誰がどう見ても『 2001年宇宙の旅 』を想起させる設定である。もちろん、ほとんどの全てのSF(Space Fantasy)映画はキューブリックに多くを負っているわけで、そこから陸続と名作、傑作が生まれてきた。『 エイリアン 』や『 スター・ウォーズ 』のオープニングの巨大な宇宙船のショットは、いずれも『 2001年宇宙の旅 』にインスパイアされたものだ。本作はどうか。少し違う。本作がその名を連ねるべき系譜は『 パッセンジャー 』や『 月に囚われた男 』のそれである。非常に狭い空間を描くことで、宇宙の広大さと人間の心の孤独の深さの両方を描いているからだ。同時に、これらの映画(だけではなく、あれやこれらのSF作品)に通じている人は、本作の見せる展開に満足するであろうし、同時にがっかりもするであろう。この辺りは完全に個人差と言うか、style over substance とでも言おうか。雨の日にSFでも観るかぐらいの気分で再生するのが吉だ。

 

ネガティブ・サイド

自分の中で盛り上がりすぎていたせいか、イマイチ話に乗って行けなかった。例えば『 エイリアン 』は、それこそクルーの面々があまりにも普通にプロフェッショナルだった。宇宙船を飛ばすのは、船の操舵や飛行機の操縦よりも簡単な、大型バスを走らせるような、もしくは工場のアセンブリーラインを操作するかのようなカジュアルさが、テクノロジーの進化を何よりも如実に物語っていた。本作は、いきなり船が故障するわけで、もちろんそこから発生する素晴らしい物語も無数に存在する。賛否両論の『 ゼロ・グラビティ 』が一例か。

 

本作は、多くの先行作品に敬意を払うあまりに、オリジナリティをどこかに忘れてきてしまっている。率直に言わせてもらえば、本作のプロットは(そのツイスト=どんでん返しも含めて)下北沢の芝居小屋で見れそうなほど陳腐だ。構造的に全く同じ物語は『 世にも奇妙な物語 』でも見られた。そして、またもや森博嗣の『すべてがFになる』ネタである。SFはたいていの場合、時間と共に風化してしまう。なぜならテクノロジーや知識の進歩が、ほとんど常に物語を陳腐化させる方向に働くからだ。それを防ぐには、根源的な問いを作品をして発せしめるか、何よりもユニークな方向に作品を持っていくかをするしかない。本作は、残念ながら、そのいずれも果たせていない。

 

総評

新しいもの、もしくはSF的なアクションを期待すると失望を覚えること必定である。SF映画はそれこそ星の数ほどあるのだから、レンタルショップで適当に借りてきても、おそらく5割程度の確率でこれよりも面白い作品に出会えるはずだ。もちろん、この数字はその人の映画鑑賞歴によって上下する。ただし、もしも貴方が自らをして熱心なSF映画ファンであると任じるなら、本作に過度の期待を抱いてはならない。もしも貴方がライトなSFファンということであれば、本作を手に取る価値はあるだろう。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アレックス・ゴンザレス, クララ・ラゴ, コロンビア, スペイン, 監督:アテム・クライチェ, 配給会社:熱帯美術館Leave a Comment on 『 スターシップ9 』 -どこかで観た作品のパッチワーク-

『ALONE アローン』 ―実存主義的な問いからのプレッシャーに如何に抗うか―

Posted on 2018年7月6日2020年2月13日 by cool-jupiter

ALONE アローン 70点

2018年7月5日 シネ・リーブル梅田にて観賞
出演:アーミー・ハマー アナベル・ウォーリス トム・カレン
監督:ファビオ・レジナーロ ファビオ・ガリオーネ

*以下、少量のネタバレあり

これはアーミー・ハマーの代表作になるのではないか、そんな印象を劇場でまず受けた。『ソーシャル・ネットワーク』では嫌な双子の両方を、『君の名前で僕を呼んで』では最初は少し取っ付きにくそうなあんちゃんを見事に演じてくれていたが、今作では意志の強さと肉体の強靭さ、そしてそれらに似合わない(というよりも、それらにふさわしい)人間性の持ち主を演じている。ふと、ジェームズ・P・ホーガンの小説『 星を継ぐもの 』のコリエルを演じさせるとすれば、それはアーミー・ハマーしかいない。個人的にはそう思えるほどだった。恐ろしいほどのハマり役である。『 ベイビー・ドライバー 』におけるアンセル・エルゴート並みにハマっているし、キマっている。

あらすじでご存知の通り、砂漠で地雷を踏んでしまって動けない。救助まで52時間。なにをどうやって凌ぐのか。襲い来る砂嵐、夜の闇としじまに紛れて忍び寄る狼の群れ、容赦なく照りつける太陽、凍てつく夜の冷気、飢え、そして渇き。極限状況を生き延びるために必要なことは何なのか。この映画のキーワードに”Move on”というものがある。「前に進む」という意味だが、これは物理的に体を動かしてそうするの意と、出来事や話題を振り切って新しいものに向かって進んでいくの意、両方を持っている。足を一歩前に踏み出せないことで、ハマー演じるマイクは過去に踏み出せなかった数々の一歩が胸に去来する。陳腐ではあるが『 モリーズ・ゲーム 』や『 ハクソー・リッジ 』にも見られたような父親殺しもその中には含まれている。念のために言うが、犯罪としての殺人ではなく文学的・精神的な意味での父殺しである。また重要な狂言回しとしてベルベル人の男が登場する。彼は片言の英語でマイクの心の隙間を浮き彫りにする。それはこんな具合だ。

「なぜ地雷を踏んだ?」
『ここが地雷原だと知らずに迷い込んだからだ』
「なぜここに来た?」
『任務があったからだ』
「なぜ任務があった?」
『戦争だからだ』
「なぜ戦争に来る?」
『俺が兵士だからだ』
「なぜ兵士になった?」
『俺には守るべきものがもうないからだ』

(あくまで記憶を頼りにしているので、多少の不正確さはご容赦を)

ここで、序盤に散々ほのめかされていた恋人ジェニーとの関係、母との別離、その他多くのしがらみについて、観客は知ることになる。それでも一歩を踏み出せないマイク。それは本当はその一歩を誰よりも踏み出したかったからなのだ。ベルベル人の男の言葉に、マイクは自分でも気づいていなかった本心を知ることになる。第一次および第二次湾岸戦争に従事した兵士が帰国後PTSDを発症する率が異様に高かったとされるのは、戦場での悲惨な体験が一番の要因であると思われるが、極限的な状況に追い込まれることで、マイクのように過去のトラウマが一時に刺激されてしまうことも事由の一部としてあったのではなかろうか。お前は一体何者なのだという実存主義的な問いほど恐ろしいものは、実はこの世にはないのかもしれない。

劇場鑑賞でもレンタルでもストリーミングサービスでも何でも良い。マイクの生のこの一瞬をぜひ追体験してほしいと思う。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村 

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アーミー・ハマー, アメリカ, イタリア, スペイン, スリラー, 監督:ファビオ・ガリオーネ, 監督:ファビオ・レジナーロ, 配給会社:パルコLeave a Comment on 『ALONE アローン』 ―実存主義的な問いからのプレッシャーに如何に抗うか―

投稿ナビゲーション

新しい投稿

最近の投稿

  • 『 ラブ・イン・ザ・ビッグシティ 』 -自分らしさを弱点と思う勿れ-
  • 『 近畿地方のある場所について 』 -やや竜頭蛇尾か-
  • 『 脱走 』 -南へ向かう理由とは-
  • 『 JUNK WORLD 』 -鬼才は死なず-
  • 『 リライト 』 -小説をまあまあ上手く改変-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年6月
  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme