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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: ジュリアン・ムーア

『 僕らの世界が交わるまで 』 -コミュ障家族の再生物語-

Posted on 2024年1月23日 by cool-jupiter

僕らの世界が交わるまで 65点
2024年1月20日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ジュリアン・ムーア フィン・ウルフハード
監督:ジェシー・アイゼンバーグ

 

ジェシー・アイゼンバーグの監督作品ということでチケット購入。

あらすじ

DV被害者のシェルターを運営する母エヴリン(ジュリアン・ムーア)と、音楽のライブ配信に夢中の息子ジギー(フィン・ウルフハード)は、互いを理解しあえず、すれ違うばかり。そんな中、シェルターに受け入れた女性の息子を第二の我が子のように思い始める。一方でジギーも、政治を知的な同級生女子に惹かれていき・・・

ポジティブ・サイド

コミュ障というのは、単に喋りが下手という意味ではない。中島梓は『 コミュニケーション不全症候群 』で、コミュニケーション不全症候群とはコミュニケーションの対象を人間とそれ以外に分けて、人間以外とのコミュニケーションにより親和性を持つことだと喝破した。本作に引きつけて言うなら、PCのモニターの向こう側のリスナーに夢中なジギーは立派なコミュニケーション不全症候群患者である。その母も、息子のジギーを独立した人格の持ち主ではなく、育成シミュレーションゲームのキャラか何かだと思っている節がある。これも立派なコミュニケーション不全症候群患者だと見なせるだろう。

 

本作は、この困った母と息子が互いに向き合うようになるまでを丹念に描いていく。面白いのは、親子というのは似たもので、エヴリンもジギーもお互いに真摯に向き会えばいいものを、わざわざ代替の対象を見つけ出して、それに執着していく。ジギーは聡明で、政治を語り、集会にも参加するアクティブな同級生女子に惹かれていく。観ながら「おいおい、その娘はお前の母ちゃんの若い頃そっくりなんやぞ?」と思いながら、ある意味でハラハラしながら観ていた。同時並行で、エヴリンはシェルターに転がり込んできた女性の息子がよくできた母思いの孝行息子ということで、彼を疑似息子に見立てて、再度の育成ゲームに乗り出す始末。

 

この絶妙なすれ違いが終わり、親子が互いに向き合う過程が、原題 = When You Finish Saving the World(あなたが世界を救ったら)によくよく表れている。マザー・テレサは日本人に「インド人ではなく、まずは家族を気にかけてください」と言った。最近の『 コンクリート・ユートピア 』でも「修身斉家治国平天下」が聞かれた。治国や平天下を語る前に、まずは家族や家庭に向き合うべし。過度に説教臭くなることなく、かといって安易なお涙頂戴になることなく、とある家族の姿を淡々と描いていく。自分もしっかりしなくちゃ、と感じられる人はきっと多いはず。

 

ネガティブ・サイド

エヴリンの妻、ジギーの父親の存在感がイマイチだった。中途半端なインテリで、自分の意見というものがない。これなら別に、エヴリンをシングルマザーに設定しても良かった。

 

ジギーがライラに嫌われてしまう経緯をすべてライラの言葉で説明してしまうのは残念だった。ライラの態度や周囲の視線から、自分で何かを悟るというシークエンスにしてほしかった。

 

エンディングが少し雑。『 スリー・ビルボード 』と同じで、もう1~2分でいいので、その先が欲しかった。

 

総評

コミュ障家族というのは、おそらく先進国あるいは経済が一定程度に発展した国では必然的に発生するはず。職場や学校という家庭以外に属するコミュニティがあり、なおかつ自宅には個室があるという条件がそろえば、本作のような物語は実はそう珍しくないのではないかと思う。Z世代云々という矮小な世代論ではなく、もう少し普遍的な親子像、家族像を模索しようとしているという視点で本作は鑑賞されるべきではないだろうか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

Sup

これは What’s up? の短縮形。What’s up? → Wassup? → Sup? という具合にどんどん短縮されていく。しばしばネットでは What’s up? に対してどう反応するか?という記事やら解説が出回るが、正しい答えなどない。ただし日常レベル(Jovianの体感)で最もよくあるやりとりは

 

A: Hey dude, sup?
B: Hey!

 

または

 

A: Sup, man?
B: Sup?

 

のようなものである。本作でもそういうシーンがある。Sup? を使えればそれだけで英会話中級者だろう。それだけくだけた感じで話せる友達がいるということだから。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 雑魚どもよ、大志を抱け! 』
『 VESPER ヴェスパー 』
『 みなに幸あれ 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, ジュリアン・ムーア, ヒューマンドラマ, フィン・ウルフハード, 監督:ジェシー・アイゼンバーグ, 配給会社:カルチュア・パブリッシャーズLeave a Comment on 『 僕らの世界が交わるまで 』 -コミュ障家族の再生物語-

『 秘密への招待状 』 -邦画もしくは韓国映画で再リメイク希望-

Posted on 2021年2月27日2021年2月27日 by cool-jupiter

秘密への招待状 75点
2021年2月26日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ミシェル・ウィリアムズ ジュリアン・ムーア ビリー・クラダップ アビー・クイン
監督:バート・フレインドリッチ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210227161041j:plain
 

タイトル(邦題)はイマイチだが、ミシェル・ウィリアムズとジュリアン・ムーアの共演および対決というだけでチケット購入。期待以上の出来栄え。大人のテーマを大人の映画技法で語りつくした逸品。

 

あらすじ

インドで孤児院を運営するイザベル(ミシェル・ウィリアムズ)は、200万ドルの支援を検討している会社経営者テレサ・ヤング(ジュリアン・ムーア)に会いにニューヨークへ向かう。「娘の結婚式に来てくれればもっと話せる」というテレサの招待に応じたイザベルだが、そこで目にしたのはテレサの夫はかつての恋人オスカー(ビリー・クラダップ)だった・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210227161112j:plain
 

ポジティブ・サイド

ジュリアン・ムーアの演技力が光っている。カリスマ的な会社経営者、精力的に働くキャリアウーマン、良妻賢母(という表現はもしかしたらアメリカではnot PCかもしれないが)のすべてを情感たっぷりに演じている。見どころは、イザベルとのとある会食前のシーン。友人たちとにこやかに談笑したかと思えば、自分の部下を恐ろしく口汚い言葉で罵る。ジェットコースターのように気分があちらこちらへと瞑想・・・ではなく迷走する。ラストの慟哭も観る者に深く、痛く突き刺さる。

 

ミシェル・ウィリアムズは対照的に抑えた演技で魅せる。二度だけ声を荒げるが、その他のシーンは基本的には感情を押しとどめている。逆に、所作で存分に語っている。靴を脱ぎ捨て、足早に階段を下りていくシーンに彼女の内面の怒りや混乱がよく表れている。こうした演出の方が逆に彼女の内面をよりはっきりと伝えてくれる。監督の演技指導やカメラマンの腕前もあるのだろうが、日本の女優もミシェル・ウィリアムズが本作で見せる演技を参照してほしい。

 

全体的なストーリーテリングも巧緻だ。イザベルとオスカーの口論や、グレイスとイザベルがアルバムを一緒に見るシーンなど、過去に何があったのかを断片的に物語ってはいるものの、全体像や真実は決して明らかにしない。それは、本当に重要なのは「今」であるという作り手の信念の反映なのだろう。グレイスが父オスカーに“Did you love her?”と問い、さらに“Do you?”と重ねて尋ねるシーンがそのことを証明していると思う。

ドラマチックなシーンでも妙に凝ったカメラワークやBGMに頼らず、あくまで俳優たちのエモーションを淡々と映し出し続けたのが心地よかった。『 私は確信する 』でも感じたことだが、テンプレに沿って映画を作っている日本の監督たちは、時には調味料なしで素材の味だけで勝負する度胸を持って欲しい。

 

家族とは、結婚とは、子育てとは、仕事とは、人間関係とは。様々な問いが渦巻く本作では、明確な答えは示されない。巨大な企業で、白人、黒人、アジア系、男性、女性の区別なく人を雇い、血のつながらぬ子供も血を分けた子どもも育てたテレサ。ひっそりと孤児院を運営するイザベラとは対照的だが、血縁者以外を家族として扱う点では同じ。そのことは、彼女たちだけではなく今後の世界では広く共有されるべき価値観となるはず。イザベラの言う“It’s your life. You decide.”という信念・理念がそれを表しているように思えてならない。彼女自身、息子のように育てている孤児のジェイに人生の選択を委ねるシーンには何とも言えない苦みと少しのさわやかさが残る。日本では『 ヤクザと家族 』が家族の意味を問い直してきたが、アメリカでも家族の意味を再定義する時期に差し掛かってきているのだろう。

 

ネガティブ・サイド

色々な解釈の余地を残す本作で、逆にそれが心地よいのだが、一つだけ気になる点が。テレサがイザベラのニューヨーク訪問を強硬に主張した理由の真相は何だったのか。偶然だったのか、必然だったのか。

 

イザベラおよび施設のマザーらしき女性がカネにこだわるのは大いに理解できる。しかし、そのカネへの執着に説得力を持たせるには、第一にインドの子ども達が置かれている窮状、惨状をよりつぶさに映し出すこと。そして第二にニューヨークのホテルの部屋をスイートからスタンダードに変えてくれ、その差額を寄付金に加えてくれという要求。この二つが少なくとも必要だったのではないか。

 

総評

上質なドラマである。『 ブリング・ミー・ホーム 尋ね人 』のように養子制度にあまり抵抗のなさそうな韓国、『 朝が来る 』で養子という制度への気づきが高まった日本でも、機を見てリメイクしてほしいもの。『 おとなの事情 スマホをのぞいたら 』のように、各国が自国の特色を盛り込めることだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

grace

楽曲『 アメージング・グレース 』でお馴染みの語。意味は「恩寵」。スペイン語のありがとう=グラシアス(gracias)やイタリア語のありがとう=グラッツェ(grazie)などと語源を同一にする語。大河ドラマ『 麒麟がくる 』の主人公・明智光秀の娘たまが細川ガラシャとなるが、ガラシャというのはラテン語のGratia=英語のgraceである。Every picture tells a story. Every word tells a story, too.

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アビー・クイン, アメリカ, ジュリアン・ムーア, ヒューマンドラマ, ビリー・クラダップ, ミシェル・ウィリアムズ, 監督:バート・フレインドリッチ, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 秘密への招待状 』 -邦画もしくは韓国映画で再リメイク希望-

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