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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: ジェフ・ゴールドブラム

『ジュラシック・パーク』 -科学の功罪を鋭く抉る古典的SFホラーの金字塔-

Posted on 2018年9月28日2019年8月22日 by cool-jupiter

ジュラシック・パーク 80点

2018年9月24日 レンタルDVD鑑賞
出演:サム・ニール ローラ・ダーン ジェフ・ゴールドブラム サミュエル・L・ジャクソン リチャード・アッテンボロー B・D・ウォ
監督:スティーブン・スピルバーグ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20180928014135j:plain

ふと気になって近所のTSUTAYAで借りてきてしまった。確か劇場初公開時に岡山市の映画館で観たんだったか。1990年代半ばの映画館は、誰かが入口ドアを開けるたびに光が思いっきり入り込んでくるように出来ていた。まだまだ劇場というものの設計思想が日本では遅れていた時代だった。それでも座席予約や入れ替え制なども中途半端で、極端な話、入場券一枚で一日中映画三昧が可能なところもあった。良きにつけ悪しきにつけ、おおらかな時代だった。バイオテクノロジーやコンピュータテクノロジーが、ブレイクスルーを果たした時代でもあった。もちろん、2018年という時代に生きる者の目からすると、技術的にも設計思想にも古さが見てとれるが、この『ジュラシック・パーク』が古典とされるのは、それが生まれた背景となる時代と激しく切り結んだからだ。

大富豪のジョン・ハモンド(リチャード・アッテンボロー)は、琥珀に閉じ込められたジュラ紀の蚊の体内に保存された恐竜の血液からDNAを採取、復元。恐竜たちを現代に蘇らせ、一大テーマパークを作る構想を練っていた。そのテーマパークを見てもらい、構想に意見をもらうため、古生物学者のグラント博士(サム・ニール)、植物学者のサトラー博士(ローラ・ダーン)、カオス理論を専門とする数学者のマルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)を招聘する。一方で、ジュラシック・パーク内部には、恐竜の杯を高く売り飛ばそうとするネドリーもいた。様々な思惑が入り乱れる中、島には嵐が迫る・・・

まず過去の作品を評価するに際して、映像の古さには目を瞑らなくてはならない。現代の目で過去作品を断じることはあまりすべきではない。それでも本作に関しては、初めて劇場で観た時に魂消るような気持ちになったことは忘れようもない経験だった。巨大な生物が大画面に現れたからではなく、このような巨大な生物が現実の世界に存在してもおかしくないのだ、と思わされるようなリアリティがあったからだ。単に巨大な生き物が画面に現れて暴れるというのなら、ゴジラでも何でもありだ。ゴジラには怪獣としてのリアリティ=その時代において怪獣性に仮託される別の事象・現象があるのだが。時にそれは原子力に代表されるような科学技術の恐ろしさ、戦争という災厄、公害、宇宙からの侵略者、超大国の軍事力でもあった。

Back to the topic. 恐竜を復元、再生するリアリティに何と言っても生物学の長足の進歩があった。1990年代の生物学の歴史は、素人の立場ながら乱暴にまとめさせてもらうと、分子生物学と脳科学の発達の歴史だった。前者の分子生物学は、そのまま遺伝学と言い換えても良いかもしれない。その分野の最新の知見を、コンピュータ技術などと組み合わせることで、現実感が生まれたわけだ。これは過去数年の間に『エクス・マキナ』などに見られるような人工知能、そしてロボットの主題にした映画が陸続と生まれつつあることの相似形である。歴史は繰り返すのだ。ちなみにこの分野では『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)が白眉であると思う。スカーレット・ジョハンソン主演で実写映画化されたのも、偶然ではなく満を持してというところだろう。結果は、まずまずの出来に終わってしまったが。

Back on track. 映画の面白さを語る時、どこに着目するかは観る人による。ある人は演出に魅せられるだろうし、ある人は映像美を堪能するだろうし、またある人は役者の演技に注目するだろう。しかし、ある作品が名作、さらに古典たりえるか否かは、その作品が持つテーマが普遍性を有するかどうかにかかっている。『ジュラシック・パーク』のテーマは、イアン・マルコムがランチのシーンですべて語り尽くしている。「あんたらは他人の功績に乗っかかって、その技術を応用するが、その責任はとらない。その科学技術を追求することができるかどうかだけ考えて、追求すべきかどうかを考えもしない」と厳しく批判する。ゲノム編集技術を倫理的に議論し尽くせているとは言い難い状況で研究や実験をどんどん進める無邪気な科学者たちに聞かせてやりたい台詞である。絶滅の危機に瀕するコンドルを例に挙げ、自らを正当化しようとするハモンドにも「森林伐採やダムの建設で恐竜は滅んだのではない。自然が絶滅を選んだんだ」と理路整然と反論する。科学と倫理のバランスはいつの時代においても重要なテーマである。漫画『ブラック・ジャック』の本間先生の名言「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね」という声が、本作鑑賞中に聞こえてきた。“Life finds a way.”と”We spared no expense”という二つの象徴的な台詞の意味についても、よくよく考えねばならない時代に生きている我々が、繰り返し鑑賞するに足る映画である。本作を観ることで、『ジュラシック・ワールド』シリーズが『ジュラシック・パーク』に多大な影響を受けていることが分かる。構図があまりにも似すぎているものがそこかしこに散見されるからだ。小説家の道尾秀介は『貘の檻』で横溝正史の『八つ墓村』から無意識レベルでの影響を受け、意図せずにオマージュ作品を書いてしまったということを機会あるごとに語っているJ・J・エイブラムスも『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で直観的な演出を即興で多数盛り込んだことで、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のオマージュを創り出した。名作とは、頭ではなく心に残るものらしい。記憶ではなく、無意識の領域に刻みつけられるものが名作の特徴であるとするならば、『ジュラシック・パーク』は文句なしに名作である。

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Posted in 映画, 海外Tagged 1990年代, A Rank, SF, アメリカ, サム・ニール, ジェフ・ゴールドブラム, ホラー, ローラ・ダーン, 監督:スティーブン・スピルバーグ, 配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズLeave a Comment on 『ジュラシック・パーク』 -科学の功罪を鋭く抉る古典的SFホラーの金字塔-

『ジュラシック・ワールド 炎の王国』 -堕ちた王国の主とは恐竜なのか人間なのか-

Posted on 2018年7月16日2020年2月13日 by cool-jupiter

ジュラシック・ワールド 炎の王国 50点

2018年7月14日 MOVIXあまがさきにて観賞
出演:クリス・プラット ブライス・ダラス・ハワード ジェフ・ゴールドブラム B・D・ウォン
監督:J・A・バヨナ

  • ジュラシック・パークおよびジュラシック・ワールドのネタバレあり

原題は“Jurassic World: Fallen Kingdom”映画単体として見れば35点、『ジュラシック・ワールド』3部作の中間地点としてみれば50点だろうか。冒頭から海中を探査艇らしき乗り物が行く。何をしているのかと思えば、前作でモササウルスに食べられたはずのインドミナス・レックスの骨(正確にはそこに含まれる遺伝情報)を採取しようとしている。まず、なぜあんなにきれいな骨格標本が海底に横たわっているのだろうか。モササウルスは特殊な排泄の仕方でもするというのか。暗い海中のシーンは、物語全体が見通しの効かないものになるというEstablishing Shotとして意図されたものだろう。それはトレイラーでしこたま流されていた火山噴火の予兆のシーンも同様で、もくもくと湧きあがる噴煙、降り注ぐ土石が、その後のストーリーの薄暗さと衝撃を予感させていた。そしてその期待は、あくまで期待通りで、それを上回ることは無かった。

『ジュラシック・パーク』および『ジュラシック・ワールド』の舞台となったイスラ・ヌブラル島の火山活動が活発化し、早晩、島は溶岩に飲み込まれてしまうことが予想された。前作でワールドの責任者をしていたクレア・ディアリング(ブライス・ダラス・ハワード)は今は恐竜保護を議会に訴えるロビー活動をしていた。しかし、イアン・マルカム(ジェフ・ゴールドブラム)の議会での証言もあり、結果、アメリカ議会は恐竜を保護しないことを選択。そこにベンジャミン・ロックウッド(ジェームズ・クロムウェル)がパトロンとなっての民間による恐竜救出作戦が立案されていた。クレアはラプトルのブルーの育ての親であるオーウェン・グレイディ(クリス・プラット)を訪ね、作戦参加を頼み込む。かくして役者は揃い、一行は空路で島へ。

火山活動のシーンや、恐竜たちが逃げ惑うシーン、またブルーとクリスの再会シーンなどは特に強く印象に残る。その一方で、やっていることは『ジュラシック・パーク』時代から変わることなく、『恐竜を蘇らせる』、『新しい種類の恐竜を人為的に生み出す』、『その恐竜たちを使って金儲けを画策する』である。もちろんシリーズの各段階において、それぞれ独自のテーマがあった。私的な解釈に過ぎないが、『ジュラシック・パーク』のそれは“科学は生命を制御できるのか”、『ロスト・ワールド』のそれは“生命の強かさと人間の業”、『ジュラシック・パークⅢ』のそれは“人間の業の深さ”、『ジュラシック・ワールド』のそれは“自然の力の大きさと人間の小賢しさ”であった。つまり、テーマが循環しているのである。もちろん、時代に応じた科学力の進展と一般への知識の普及が進むたびに、新たな解釈が施されてきたのが本シリーズではあるが、それにしてもあまりにも同じテーマを繰り返しすぎていないか。そんな声を上げたくなるのはJovianだけではないだろう。というわけで、今作は「それをやっちゃあ、お仕舞いよ」という展開を持ってくる。どれくらいお仕舞いなのかはケン・グリムウッドの小説『リプレイ』並みにお仕舞いよ、である。他にも、永井するみだったか岡嶋二人だったかの、コンピュータウィルスと人類が緩やかに、ある意味幸せに共存せざるを得なくなった軽めのディストピア小説も彷彿とさせる展開である。その小説に心当たりがあるよという方がもしいらっしゃったら、ご一報を頂けますと幸いです。

Back on track. クリス・プラット。素晴らしい。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のディカプリオ的な動きで魅せる。不謹慎にも笑ってしまった。

ブライス・ダラス・ハワード! 私見では、アメリカ人女優で演技力ナンバーワンはジュリアン・ムーア、それに続いて行きそうなのはジェシカ・チャステインなのだが、ハワードは彼女らの追撃組というか、TOP25に入ってきそう。初見は『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』だったが、一部のダメ作品を除いて、出る映画を上手に選んでいる印象。

トビー・ジョーンズ。この人が出ると、それだけで画がコメディタッチに見えるのは何故なのか。『ベイビー・ドライバー』での地下の武器商人役といい、今作といい、traffickingが似合う男である。

B・D・ウォン。彼すらも、今作では何かより大きな嵌め絵の一つのコマであったようだ。今作ではジェフ・ゴールドブラムにその座を奪われたが、前作はこの人の再登場あってこそ、『ジュラシック・ワールド』は『ジュラシック・パーク』のリブートではなく正統的なシークエル足り得た。

ジェフ・ゴールドブラム。今でもベスト・パフォーマンスは『ザ・フライ』だと考えているが、『ジュラシック・パーク』でのニヒリスティックなチャラ男キャラも捨てがたい。今作は、年齢もあろうし、事態のシリアスさもあるのだろうが、『グランド・ブダペスト・ホテル』の代理人的なジョークとも大真面目とも捉えられる印象的な台詞を披露してくれる。続編への登場は間違いないと思ってよいのだろう。

アニメ版ゴジラと同じく、単体として見ると評価しづらい。純粋に三部作の中間地点と思って観賞するべし。さらに深いテーマの考察-KingdomとはAnimal Kingdom(ダブルミーニング!)なのか、人間の築き上げた文明世界のことか、それともレックス=王よりも強い恐竜の誕生を示唆しているのか-などに頭を使わなければ、週末の時間つぶしに好適な一本に仕上がっていると言える。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, SF, アメリカ, クリス・プラット, ジェフ・ゴールドブラム, ブライス・ダラス・ハワード, 監督:A・J・バヨナ, 配給会社:東宝東和Leave a Comment on 『ジュラシック・ワールド 炎の王国』 -堕ちた王国の主とは恐竜なのか人間なのか-

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