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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: サスペンス

『 ベン・イズ・バック 』 -タフな母親を描く上質サスペンス-

Posted on 2019年6月9日2020年4月11日 by cool-jupiter

ベン・イズ・バック 75点
2019年6月6日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:ジュリア・ロバーツ ルーカス・ヘッジス
監督:ピーター・ヘッジス

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本作ではジュリア・ロバーツ会心の演技が堪能できる。こうしたタフな母親像というのは『 スリー・ビルボード 』でミルドレッドを演じたフランシス・マクドーマンド、『 ハナレイ・ベイ 』におけるサチを演じた吉田羊で一つの完成形を見たと思ったが、ジュリア・ロバーツが新しい解を提供してくれたようである。

 

あらすじ

クリスマスイブの朝、薬物依存症者のリハビリ施設にいるはずのベン(ルーカス・ヘッジズ)が前触れもなく帰ってきた。まっすぐにベンを受け入れる母ホリー(ジュリア・ロバーツ)だが、父や妹は懐疑的な態度を崩せない。一日だけ共に過ごすことを認められたベンだが、家族が教会から帰ると自宅が荒らされ、愛犬が消えていた。昔のドラッグ仲間の仕業と確信するベンは家を出る。それを追いかけるホリーだが・・・

 

ポジティブ・サイド

近年、特にこの3年ほどは女性を主題に持つ映画が量産されてきた。その中でも本作は異色である。『 エリン・ブロコビッチ 』や『 ワンダー 君は太陽 』で力強い母親を演じてきたジュリア・ロバーツが、さらに複雑な母親像を描き出すことに成功したからだ。『 スリー・ビルボード 』のミルドレッドは警察署長のがんの告白にも一切動じない鉄面皮だったが、今作のホリーは菩薩の慈悲深さと鬼夜叉の激情を併せ持つ、まさしく「母親」という獣を描出した。息子の帰還に心から喜びを表現しながら、その数分後には鬼の形相で「これから24時間、あなたを監視下に置く」と宣言する。いや、息子に強く厳しく接するだけならよい。この母は、息子の薬物依存のきっかけを作った、今や認知症の症状を呈する医師にも牙をむく。このシーンは多くの観客を震え上がらせたことであろう。街を当て所もなく彷徨うホリーは『 ハナレイ・ベイ 』のサチを思い起こさせる。しかし、なによりも強烈なのは、息子の居場所を知るためなら、薬物依存から抜け出したがっている、しかし禁断症状に苛まされているかつての息子の友人に、情報と引き換えにあっさりと薬物を渡してしまう場面である。息子の居場所を探るためなら、誰がジャンキーになっても良い。ホリーの息子ベンへの態度、歪んでいるようにすら映ってしまう愛情の濃さ、深さ、強さは、彼女自身が息子依存症を罹患しているのではないかと疑わせるほどだ。母親という人種は洋の東西を問わず、非常に強かな生き物なのだ。Women are weak, but mothers are strong. 『 ある少年の告白 』のニコール・キッドマンも脱帽するであろう渾身の演技をジュリア・ロバーツは見せてくれた。

 

『 ある少年の告白 』で主人公のジャレッドを演じたルーカス・ヘッジズは、今作では薬物依存症者を演じる。『 ビューティフル・ボーイ 』でティモシー・シャラメは薬物依存の暗黒面に堕ちていってしまうが、そこで描かれたのは彼の心理的なダークサイドが主であった。今作では、ベンの心の中の闇の深さは、ミーティングに出席するワンシーンを除いては、ほとんど描写されない。だが、彼が社会的に与えた負のインパクトの大きさ、彼がドラッグを通じて培ってしまった闇の人間関係の深さと薄汚さに、観る者の多くは怖気を振るうだろうし、そこに躊躇なく突っ込んでいける母親像にも、感銘を受けるだろう。

 

ネガティブ・サイド

ジュリア・ロバーツが車のドアを開けて嘔吐するシーンは必要だっただろうか。耳をふさぎたくなるような悪態をつくぐらいでよかった。彼女の神経の太さと意外な繊細さを表すには、もっと適切な手法・演出があったのではないかと思う。

 

ベンが踏み込んでいった先のアングラな連中が、それほど恐ろしさを感じさせないのもマイナス点。『 運び屋 』でも顕著だったが、麻薬取引に関わる人間というのは、一見して堅気ではないと分かる、独特のオーラを纏っている(ことが多そう)。本作に出てくるクレイトンは、そういう意味ではちょっと迫力不足である。

 

最後の最後のシーンでは、ベンの胸が全く上下しないにもかかわらず、息を吹き返していた。肺に空気が届いているようには見えず、ちょっと冷めてしまった。

 

総評

ジュリア・ロバーツの近年の出演作、というか彼女自身のキャリアを通じても一、二を争うほどの会心の出来栄えではないだろうか。我々(特に男性陣)は、しばしば母親を慈母のイメージで眺めてしまう。特に本作のようなクリスマスイブが舞台であれば、なおさらそのようなイメージを喚起させられる。しかし、鬼夜叉の如き母親というのも、母の確かな一面であるし、その新境地を開拓してくれたロバーツには脱帽するしかない。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, サスペンス, ジュリア・ロバーツ, ルーカス・ヘッジズ, 監督:ピーター・ヘッジズ, 配給会社:東和ピクチャーズLeave a Comment on 『 ベン・イズ・バック 』 -タフな母親を描く上質サスペンス-

『 空母いぶき 』 -素材は一流、演技は二流、演出・構成は三流-

Posted on 2019年5月26日2020年2月8日 by cool-jupiter

空母いぶき 50点
2019年5月25日 東宝シネマズ梅田にて鑑賞
出演:西島秀俊 佐々木蔵之介 佐藤浩市 
監督:若松節朗

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どこかのアホなハゲチャビン放送作家がいちゃもんをつけていたので、どれほどのものかと思い、鑑賞。観る前から酷評していたコピペ作家とは違い、Jovianは劇場に赴き、この目で観た。感想は、素材は一流、演技は二流、演出・構成は三流であった。

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あらすじ

世界の警察を自任する国がその座から降りたことで、各国にはナショナリズムが再燃しつつあった。その中でも小国家連合「東亜連邦」は、日本近海で緊張感を高め、軍事衝突の危機が高まりつつあった・・・

 

ポジティブ・サイド

佐々木蔵之介のキャリアで、これは最高の演技であろう。少々近視眼的な思考の持ち主であるものの、職務に忠実、使命を必達しようとする強い意志を持ち、何より有能にして、平和を真に希求する軍人にして船乗りである。自衛隊もしくは大日本帝国海軍にモデルとなる人物がいる/いたのだろうか。

 

空母いぶきを含む連隊全艦に、政治と軍事の狭間でぎりぎりの行動、つまり専守防衛を逸脱しない範囲で軍事力の行使をしなければならないという緊張感が全編に漂っている、いや漲っている。それは特に艦長の秋津竜太(西島秀俊)と副長の新波歳也(佐々木蔵之介)の関係が、日本という国の持つ矛盾(と言っていいだろう)をそのまま体現しているからだ。軍事力を有するということは、それを行使するかしないかの問題ではない。いつ、どこで、どのようにそれを行使するかが問題になる。なぜなら、現代の兵器はあまりにも進み過ぎてしまって、一発の破壊力が大きいからである。あるいは、日本の場合なら、ミサイルや爆弾の一発、敵機一機、敵船一隻、極端な話、敵兵一名に防衛線を破られただけで、ある意味負けだからである。守りに徹するというのは、甘んじて先制攻撃を受けるということであり、核兵器を持つような狂った相手が敵になるなら、その時点ですでに敗れているとさえ言える。それでも日本が核武装を選ぶことなく、そして今後もそうすることを選ばないだろうということを、本作は強く語りかける。

 

本作で最も光ったのは「忖度」シーン。Jovianの義父は元警察官であるが、どうしても同期と出世に差がつくことは有りうる。片や巡査長、片や警察署署長。同期であっても敬語で話す。しかし、二人きり、あるいはプライベートの付き合いであれば、警察学校時代の関係に戻れる。そうしたフラットな関係が根底にあるから、上司となった同期にも忖度ができる。周囲に対して、上下関係を示すことができる。そうしたことを切々と教えてもらったことがある。秋津と新波の対話は、ドラマのひとつのピークであった。

 

ネガティブ・サイド

コンビニのシーンは不要である。これは全てノイズである。中井貴一は素晴らしい役者だが、何の存在感も感じられなかった。本田翼もいらない。あんなジャーナリストはいらない。100社中でたった2社だけが建造間もない航空母艦の取材乗船を許可されたというのに、もっと張り切れと言いたい。冒頭で東アジアで軍事的緊張が高まっているとご丁寧にもアナウンスしてくれているのに、リポーターがこの調子では・・・ 中井貴一らは平和ボケ日本の象徴と言えないこともないが、マスコミまでもがこの調子では日本の未来は本当に暗いと言わざるを得ない。これらのシーンを全て削れば、2時間以内に収まったのではないか。

 

海上自衛隊も何をしているのか。マスコミの持ち物検査ぐらいしろ。何故に民間人が作戦行動中の船内を自由に行き来できるというのか。それを許可させるなら、広報担当官を貼りつけさせるか、もしくは護衛を口実に同室内にいてその挙動には常に目を光らせるべきだろう。戦闘において最も危険なのは、強大な敵ではなく足を引っ張る味方だからだ。結果的にグッジョブを成し遂げたとはいえ、それは偶然の産物に過ぎない。

 

キャラクターには臨場感、緊張感、緊迫感があるが、肝心かなめのストーリー展開にそれがない。何故に東亜連邦軍は、最もやってはいけない戦力の逐次投入をしてくるのか。いぶき艦隊に「どうぞ各個撃破してください」と言っているようにしか思えなかった。せっかく初撃でいぶきに打撃を与えたのだから、そのダメージの程度を探ろうとしないのは何故か。観る側としては、艦載機を飛ばせない空母に襲いかかる敵航空編隊というのをどうしても期待する。当たり前田の広島クリシェだが、それが最もサスペンスフルな展開だからだ。であるにもかかわらず、艦載機用のエレベーターの修理が完了した、ちょうどそのタイミングで敵機襲来というのは、あまりにもご都合主義が過ぎる展開だろう。これでハラハラドキドキしてください、と観客に伝えるのは無理だ。

 

佐藤浩市演じる垂水総理の優柔不断っぷりから歴史的決断に至る過程、周囲からの過剰とも思える圧力も、残念ながら既に『 シン・ゴジラ 』が描き出してくれていた。二番煎じであるし、何よりもポリティカル・サスペンスとして弱いと言わざるを得ない。

 

本作全体を通じての最大の弱点は、間延びした台詞の数々である。それこそ『 シン・ゴジラ 』の二番煎じとなってしまうが、全員が1.3倍速ぐらいで喋れたはずだ。トレイラーにあるのでネタばれにはあたらないが、玉木宏の「総員、衝撃に備えい!」がその最も悪い例であろう。記憶が鮮明ではないが、「アルバトロス隊、会敵まで○秒」や「敵魚雷、着弾まで○秒」というカウントにまったく緊張感がない。絶叫しろと言っているわけではない。張りつめた声を出してほしいと言っているのだ。戦闘シーンも前半はBGM無し、後半はありと方針がはっきりしない。とにかくキャラの台詞が間延びしていて気持ち悪い。特に気持ちが悪いのは高嶋政宏である。スーパーX3に搭乗してデストロイアに向かっていった孤高の軍人はどこに行った?この男だけは張りつめた声で軟弱な台詞を吐くという離れ業を見せてくれた。ギャグにすらなっていない、ひどいキャラクターである。

 

その他、対艦ミサイルを食らい、間近で僚艦が爆発炎上したにも関わらず、戦闘翌日の朝日を一身に浴びる空母いぶきのなんと美しいことよ。艦隊にいささかの煤けもなく、甲板に金属片や微細なひびなども見当たらない。戦闘そのものが乗員全員の白昼夢だったとでも言うのか。若松監督はこの絵で何を伝えたかったのというのか。一介の映画ファンには知る由もない。

 

総評

自衛隊の協力が得られていないところから色々と察することができる。原作未読者の感想であるが、キャラクターはいずれも立っている。しかし、一部の大根役者の演技がその他大勢の役者の足を引っ張っている。また、演出にリアリティが圧倒的に足りない。大人の鑑賞に耐える作品に仕上がっていない。かといって子どもに見せるような作りにもなっていない。残念ながら、興行的にも振るわないだろうし、批評家や一般ファンからの評価も芳しいものとはならないだろう。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, アクション, サスペンス, 佐々木蔵之介, 佐藤浩市, 日本, 監督:若松節朗, 西島秀俊, 配給会社:キノフィルムズLeave a Comment on 『 空母いぶき 』 -素材は一流、演技は二流、演出・構成は三流-

『 PERFECT BLUE 』 -様々なクリシェの原点となった作品-

Posted on 2019年5月26日2020年2月8日 by cool-jupiter

PERFECT BLUE 75点
2019年5月23日 塚口サンサン劇場にて鑑賞
出演:岩男潤子
監督:今敏

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恥ずかしながら、これまでこの作品のことは耳にしながら、観る機会を持っていなかった。『 プラダを着た悪魔 』と同じく、観ようと思いながら、何かが自分を押し留めていた。いつになったら自分は『 タイタニック 』を観るだろうか?そんなことも映画館から帰り道で考えてしまった。

 

あらすじ

アイドル活動をしていた霧越未麻(岩男潤子)は女優への転身を目指していた。あるテレビドラマでレイプされるシーンに体当たりで挑んだことで、女優としての評価を高め始めた。しかし、彼女の周りで奇妙な傷害事件や殺人事件までもが発生するようになり・・・

 

ポジティブ・サイド

驚くほどにクリシェに満ちた作品である。しかし、それは現代的な視点で観たからこそ言えることで、逆に言えば本作はどれほど後発の作品にインスピレーションを与えたか、その影響の巨大さを窺い知ることができる。

 

飯田譲治の小説『 アナザヘヴン 』のナニカの移動や運動シーンは、ここから丸パクリしたのではないかというピョーンというステップ。

 

M・ナイト・シャマランの『 スプリット 』および『 ミスター・ガラス 』のジャケットデザインのヒントはここにあったのではないかというクライマックスのワンシーン。

 

プレイステーションのやるドラゲームの『 ダブルキャスト 』も、おそらく本作から多大な影響を受けている。そのことは、劇中作のタイトルが“ダブルバインド”であることからも明らかだろう。

 

本作サウンドトラックの肝とも言える楽曲“Virtual Mima”は、プレイステーションゲームの『 エースコンバット3 エレクトロスフィア 』のサウンドトラックの無機質かつオーガニックでメタリックなサウンドにも影響を及ぼしたのではないかとも思えてならなかった。AC3自体が、かなり時代を先取りしすぎていたゲームだったが、主人公の名前もNemoとMima、何か似ているように思えないだろうか。ちなみに塚口サンサン劇場は、本作開始前に延々と“Virtual Mima”を劇場内に流し続け、観客の精神に軽い不協和音を引き起こしていた。こうした工夫は歓迎すべきなのだろう。

 

本作は、霧越未麻という人物とミマというアイドルが虚実皮膜のあわいに溶け合い、そして別れていく物語である。自分が生きている世界が何であるのか。自分という存在が確かに実在することを、誰が、または何が担保してくれるのか。女優という虚構の生を紡ぎ出すことを生業とする未麻もまた、誰かに演じられたキャラクターではないのか。何がリアルで何がフェイクなのかが分からなくなる。そんな感覚を紙上で再現してやろうと、我が兄弟子の奥泉光は意気込んで『 プラトン学園 』を執筆したのだろうか。

 

劇中でたびたび繰り返される問い、「あなた、誰なの?」に対する回答が最後の最後で語られるが、それすらも噂話好きの看護師たちへの回答なのかもしれない。どこまでも入れ子構造、二重構造を貫くその作家性は嫌いではない。

 

とにかく『 PERFECT BLUE 』が1990年代後半の様々なメディアやコンテンツに巨大な有形無形の影響を与えたことは間違いない。同時期の『 攻殻機動隊 』や『 新世紀エヴァンゲリオン 』と並ぶ古典的・記念碑的作品であることは疑いようもない。

 

ネガティブ・サイド

事件の真相探しは極めて簡単である。Jovianは最初の10~12分で犯人は分かった。時代が全く違うし、本作はそもそもミステリーではなくサイコ・サスペンス、サイコ・スリラーであることから、殺人事件の犯人や真相を追うことに主眼を置いていない。にもかかわらず、観る側に怪しいと思って欲しいキャラクターをこれ見よがしに配置するのは、少々邪魔くさく感じた。

 

また、いくらインターネット黎明期の頃の話とはいえ、自分で作っていないサイトが存在していることを未麻はもっと不審に感じて然るべきである。ファックスや電話番号にしても同じで、1980年代くらいの本には、巻末に著者の住所や電話番号が普通に乗っていたりしたのものだが、90年代だと、どうだったのだろうか。

 

総評

リアリティの面でやや弱いかなと感じるところもあるが、これはサイコ・サスペンス、サイコ・スリラーの佳作にして、ジャパニメーションの一つの到達点である。アニメに抵抗が無い、グロ描写にも抵抗が無いという向きは、時間を見つけて是非鑑賞しよう。

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Posted in 国内, 映画Tagged 1990年代, B Rank, アニメ, サスペンス, スリラー, 岩男潤子, 日本, 監督:今敏Leave a Comment on 『 PERFECT BLUE 』 -様々なクリシェの原点となった作品-

『 The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ 』 -女の園に男一匹-

Posted on 2019年5月13日 by cool-jupiter

The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ 50点
2019年5月9日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ニコール・キッドマン キルステン・ダンスト エル・ファニング
監督:ソフィア・コッポラ

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The Beguiledとは、魅了された者の意味である。同時に、騙された者という意味にも解釈可能である。無理やり日本語にするなら、「 落とされた者 」にでもなるだろうか。誰が誰に騙されたのか、誰が誰に魅了されたのか。これは何とも心憎いタイトルである。

 

あらすじ

南北戦争中のアメリカは南部のミシシッピの女子寄宿学園に、傷ついた北軍兵士が舞い込んでくる。園長のマーサ(ニコール・キッドマン)や教師のエドウィナ(キルステン・ダンスト)、年長のアリシア(エル・ファニング)らは、兵士マクバニー(コリン・ファレル)を介抱するうちに、精神的な変化を自覚するようになり・・・

 

ポジティブ・サイド

立ち上がりから非常に静かな映画である。音響的な意味でも静かであるし、台詞も特に多いわけではない。またドラマチックな展開になるまでにそれなりの時を要する。しかし、白を基調にしたドレスに身を包んだ婦女が、薄暗い屋敷兼校舎の中を楚々と動く様は色々な想像を掻き立てる。女の園というと、韓国の歴史宮廷ドラマの『 宮廷女官チャングムの誓い 』や『 トンイ 』が思い出されるが、これらのようなドロドロの暗闘や露骨な権力闘争などではなく、逆にこれらのドラマではほとんど触れられることの無かった、邦題で付された“欲望への目覚め”が大いに予感される。ソフィア・コッポラ監督の美意識というか、作家性なのだろう。これは心憎い。そしてこの監督の作家性は非常に露骨な形で終盤に爆発する。亀とキノコが重要なガジェットとして用いられることに笑わずにはいられようか。ここでは男性諸賢に大いに笑って頂きたいと思う。と同時に、冒頭からさりげなく小道具を仕込んでいる脚本にも拍手である。

 

女性陣ではキルステン・ダンストが特に良かった。うら若き乙女には出せない色気を出していた。というか、色気を出さないようにしようとすること自体が色気になっているという、非常に重層的な演技を見せてくれた。妖艶さとはまた違った妖しさがあり、無垢な(しかし悪女の素質にも恵まれた)スパイダーマンのメリー・ジェーン・ワトソンの成長した姿の一つの可能性の結実を見たように思う。

 

ネガティブ・サイド

原作の男性視点バージョンを未見のため何とも言いかねるが、マクバニー伍長の魅力がもう一つ伝わらなかった。確かにナイスガイではあるが、兵士としての力強さや泥臭さには欠けていた。早い話、同じ男性として、男性ホルモンがたくさん出ているような男には見えなかった。少なくとも中盤までは。女性目線で見ると異なるのだろうが、あいにくと嫁さんは未鑑賞・・・

 

Jovian期待の星の一人、エル・ファニングの見せ場が足りなかった。濡れ場ではない。見せ場である。繰り返すが、濡れ場ではない。見せ場である。濡れ場だけが見せ場ではない。期待した自分が悪いのだ。濡れ場だけが見せ場ではない。スケベ心を抱いて本作を鑑賞しようという向きは、決して過度な期待を抱くべからず。

 

総評

初回鑑賞中に痛恨の寝落ちをしたために、あらためて見直した作品である。盛り上がるところでは恐ろしいぐらいに展開が盛り上がる。だが、そうではないところでは至って静かな、噴火前の火山がゆっくりじっくりとマグマを溜めこむような趣がある。そこを楽しめるかどうか、ソフィア・コッポラ監督の美意識と波長が合うかどうかで評価ががらりと変わる作品だと言えよう。

 

Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アメリカ, エル・ファニング, キルステン・ダンスト, サスペンス, ニコール・キッドマン, 監督:ソフィア・コッポラ, 配給会社:STAR CHANNEL MOVIES, 配給会社:アスミック・エースLeave a Comment on 『 The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ 』 -女の園に男一匹-

『 お米とおっぱい。 』 -栴檀は双葉より芳し-

Posted on 2019年5月4日 by cool-jupiter

お米とおっぱい。 65点
2019年5月3日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:高木公佑
監督:上田慎一郎

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『 カメラを止めるな! 』の上田慎一郎監督のキャリア初期の実験的作品である。こういう作品を見ると、上田慎一郎監督という人は、ビッグバジェット・ムービーにはあまり興味は無く、自分の信頼できるスタッフと共に、自分の思い描くビジョンを生み出すのが好きな映画人のようだ。近いタイプとしてはM・ナイト・シャマランが挙げられるだろうか。

 

あらすじ

公民館の一室に集まった互いに面識の無い5人の男。「おっぱいとお米、この世に残すとすればどちらなのか」を討議し、全員一致の結論を出すことができれば、一人につき謝礼十万円が支払われる。彼らはまずは決を取って、おっぱい派とお米派に分かれた。そして議論の戦端は開かれたのだが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 十二人の怒れる男 』、『 キサラギ 』、『 エグザム 』などのテイストを意識的にか無意識的にか取り入れた作品に仕上がっている。つまり、閉鎖空間内部で赤の他人同士が次第に濃密な人間関係を構築していく=濃密な対話やフィジカルな交流(それは時に暴力でもある)を行う様を映画にしたのである。上田監督は『 カメラを止めるな! 』でもその傾向は顕著だったが、一つのクローズドな空間を徹底的に撮り切るのが好きなのだろう。そして、それは本作でもある程度は成功している。

 

議論の本質はおっぱい vs お米ではない。男たちは時に功利主義的な、時に哲学的な議論を戦わせるが、その議論の根底にあるのは自らの人生観であると考えて間違いない。おっぱいに仮託して語ること、もしくはお米に仮託して語ることで、彼らのディベートは青年と壮年の世代間闘争や、フリーランサーとサラリーマン、または経営者と非正規雇用者という対立軸までも生み出していく。非常に舞台ドラマ的で、人間の心という究極の閉鎖空間の在り様を、この公民館の一室内に再現するのが監督の目論みなのだろう。それは成功した。人間の思考は根本的に分裂状態で、それらを最も巨大な意識が統合したものを、我々は通常、「自我」と呼んでいる。このような思考の過程を大仰な形で可視化することで、人は変わりうるし、現に変わるのだということを見せようとしている。好むと好まざるとに関わらず、グローバル化待ったなし、移民の増加待ったなしの日本において、対話の重要性はいや増すばかりである。そうした背景を下敷きに観れば、アホな議論に多層性が見出せるだろう。

 

ネガティブ・サイド

ところどころに意図がはっきりしないカメラワークがある。ここは天井からのショットではないだろう、ここでこそ360°のショットだろうという、少しこちらの期待と実際の撮影の間のずれがあった。こうした対話劇は、徹底的にPOVにしてしまうか、全体を俯瞰するような視点で撮り切ってしまうか、どちらかの方が良かったように思う。いずれにしろ、もっと実験的なアプローチをカメラワークにも求めたい。と感じてしまうのは、やはり『 カメラを止めるな! 』が傑作だったことの証左なのだろう。

 

暴力は、状況によっては必要な小道具だが、絵をびりびりに破るのはどうなのか。そのことについての真摯な悔悛の言葉が聞かれれば良かったのだが、そんなものはなかった。お米派の中年オヤジに対しては、どす黒い嫌悪感が募るばかりであった。もちろん、この男にはこの男なりの分かりやすい背景があるのだが、それと彼の暴挙が上手くリンクしているとは感じなかった。

 

総評

かなり観る人を選ぶ作品であろう。ドラマチックな要素はあっても、シネマティックな要素には欠ける作品なので、『 カメラを止めるな! 』に大笑いしただけの人が興味本位で鑑賞するとがっかりするかもしれない。大の男の真剣にアホな対話劇を自己に重ね合わせることができる、そうした人が鑑賞すれば、上田慎一郎の才能の一端に触れられるのだろう。

 

Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, C Rank, コメディ, サスペンス, 日本, 監督:上田慎一郎, 高木公佑Leave a Comment on 『 お米とおっぱい。 』 -栴檀は双葉より芳し-

『 映画 賭ケグルイ 』 -続編ありきの序章-

Posted on 2019年5月4日 by cool-jupiter

映画 賭ケグルイ55点
2019年5月3日 東宝シネマズ梅田にて鑑賞
出演:浜辺美波 高杉真宙 池田エライザ
監督:英勉

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元は漫画、そしてテレビドラマ化された作品が満を持して銀幕に登場。これが意味するところは、よほど原作およびドラマが面白いということか。Jovianが南沙良と並んで最も買っている若手女優の浜辺美波が主演とあらば、観ないという選択肢は存在しない。

 

あらすじ

 

舞台はギャンブルの強さで学園内の序列が決まる百花王学園。そこに転校してきた蛇喰夢子(浜辺美波)は、学園の頂点に君臨する生徒会長、桃喰綺羅莉(池田エライザ)とのギャンブル勝負を渇望していた。しかし、学園にはギャンブルを拒絶する集団「ヴィレッジ」も台頭しつつあった。夢子とヴィレッジ、両方を一挙に叩き潰そうと画策する生徒会は、「生徒代表指名選挙」を開催する。夢子は鈴井涼太(高杉真宙)を相棒に参戦するが・・・

 

ポジティブ・サイド

前向きなヒロイン像から少女漫画の定型を外れるヒロイン像、それらの加えてギャンブルにエクスタシーを感じるヒロイン像を浜辺美波は開拓した。これはファンとして大いに歓迎したい。天然で、それでいてシニカルで、ユーモラスでもあり、賢しらさを隠さない狡猾さを、その口調や佇まいで悟らせない。そんな複雑なキャラをしっかりと演じた浜辺をまずは称えようではないか。

 

歩火樹絵里を演じた福原遥の演技力にも舌を巻いた。彼女はテレビや映画よりも、舞台上で演じる方が映えるのではないか。カリスマ性すら感じさせる演技で、今後も多方面での活躍を期待できるだろう。今作のような世界観の作品やキャラクターばかりを演じると、藤原竜也のように chew up the scene の役者になってしまう恐れがあるので、彼女のハンドラー達には注意をしてもらいたいものである。ちなみにJovianは藤原竜也を高く買っていることをを申し添えておく。

 

その他には小野寺晃良、中村ゆりか、秋田汐梨らも印象に残った。この世代の若手俳優は、一頃のサッカー日本代表とは異なり、人材難ではなさそうだと思えた。それが一番の収穫だったと言えるかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

個人的な嗜好の問題も多分にあるのだろうが、先行作品の世界観の構築の点で『 カイジ 人生逆転ゲーム 』に劣り、勝負の駆け引きや頭脳性の描き方において『 ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ 』に劣る。ライアーゲームやカイジは原作を読んでいて、こちらに関しては原作漫画、テレビドラマ、いずれも鑑賞していないので、このあたりの評価に偏りが生じているのは承知している。

 

浜辺美波は良い仕事をしたが、クライマックスのシーンを販促物に載せる必要は一切ない。究極のドヤ顔を、上映前に見せまくってどうする。それをするのであれば、プロローグの夢子の紹介シーン全てで賭け狂っている時の必殺の顔として観る側に認知させておくべきだった。こういうのは出し惜しみしておくべきだと切に思う。

 

肝心のギャンブルについても突っ込みどころが満載である。票争奪じゃんけん勝負を先手必勝とあるキャラクターコンビは結論付けたが、これはおかしい。普通に考えれば、1/3の確率で敗北する勝負に先手必勝などあり得ない。まずは自分の手札を秘密にし、素早く勝負が発生する場に行き、誰がどの手を有しているかを観察しなければならない。1/3の確率であいこが発生するのだから、その勝負を見届けてから動く方が合理的だ。というか、自分から真っ先に手札をばらしに行くというのは、どうなのだろうか。誰か他の者に獲物をさらわれるのがオチだと思うのだが。

 

トランプの1~7+ジョーカーを使うデュアルクラッシュ・ポーカーにも突っ込みたい。これも普通に考えれば、チームで相談し、第1ターンは2人そろって最弱の1を出して、相手チームの手札を削りにかかるのではないだろうか。というか、チームで相談することなく、つまりバッティングをいつ起こすのか、もしくは起こさないようにするのかを相談しないなどということは、ゲームの性質上、ありえないし、考えられない。このあたりが本作がライアーゲームに及ばないと感じる一番の理由である。

 

森川葵の生脚は眼福であるが、池田エライザは何故、生脚ではないのか。そして、ああいう座り方をする以上は『 氷の微笑 』の審問シーン的なサービスショットを盛り込んでくれても良いではないか。オッサン映画ファン100人に訊けば100人が賛同してくれるだろう。

 

全体的には、賭けに狂っている高校生達というよりは、ゲームを楽しんでいる若者達という印象の方が強い。そこがディレクションの一番の問題点であろう。

 

総評

浜辺の新たな一面を切り拓いた作品と言えるが、その他のキャストに関してはどうだろうか。以前にも評したが、英勉監督は『 貞子3D 』および『 貞子3D2 』という超絶クソ作品を世に送り出した。一方で、『 あさひなぐ 』のような佳作を作る力もある。今作では若手俳優たちの演技力に救われた感があるが、監督としてはかなり伸び悩んでいるのかもしれない。劇場に行く際には、ドラマもしくは漫画である程度の予習が必要かもしれない。また、続編政策にかなり色気を見せたエンドクレジットを作っているが、その時には英監督以外を起用することも選択肢に入れるべきであろう。

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Posted in 国内, 映画, 未分類Tagged 2010年代, D Rank, サスペンス, スリラー, 日本, 池田エライザ, 浜辺美波, 監督:英勉, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 映画 賭ケグルイ 』 -続編ありきの序章-

『 運び屋 』 -実話を脚色した異色のロードムービー-

Posted on 2019年3月23日2020年3月20日 by cool-jupiter

運び屋 75点
2019年3月17日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:クリント・イーストウッド ブラッドリー・クーパー
監督:クリント・イーストウッド

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イチローも引退を決めたようだ。生涯一捕手と今でもサインに書き添えるらしい野村克也の如く、生涯一野球選手を貫いて欲しかったが・・・ そして、ここに生涯一映画人を貫くクリント・イーストウッドがいる。本作の原題は”The Mule”、ラバ、頑固者、麻薬の運び屋などの意味がある。邦題は「 運び屋 」の意を選び取ったようだが、Jovianはクリント・イーストウッドとmuleという言葉の組み合わせに、中学生ぐらいの頃だったか、親父と一緒にVHSで観た『 荒野の用心棒 』を思い浮かべてしまう。果たして本作のイーストウッドは愚直なラバなのか、それとも一筋縄ではいかない凄腕の仕事人なのか。

あらすじ

家庭そっちのけで園芸業に精を出すアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は、いつしか事業に失敗し、自宅も差し押さえられてしまった。孫娘の婚約を祝うために訪れた先で、ふとしたことから車を運転するだけで大金が稼げる仕事を紹介される。しかし、それはメキシコの麻薬カルテルの「運び屋」=muleとなる仕事だった・・・

ポジティブ・サイド

麻薬の運び屋と聞けば、どうしてもダークなイメージを抱く。事実、現米大統領のトランプはメキシコとの間に巨大な壁を建てる構想をまだ諦めてはいないようだ。コロンビアからの麻薬流入に関しては『 エクスペンダブルズ 』が、メキシコからの麻薬の流入に関しては『 ボーダーライン 』と『 ボーダーライン ソルジャーズ・デイ 』で描かれていた。日本でも清原和博、ごく最近ではピエール瀧も薬物使用で御用となっている。麻薬は、種類と使い方に依るようだが、癌性疼痛で「殺してくれ!」と叫ぶほどの苦痛に苛まれる人に適切に投与すると、スタスタと自分の足で歩いて「あ、看護師さん、ちょっとおしっこ行ってきます」と言えるほどなるというのが、知人の看護師さんや医師らから聞く麻薬の使い方である。となれば普通の人間が麻薬を摂取すれば、バカボンのパパとは異なる方向でタリラリラ~ンになってしまうのは理の当然である。そのような麻薬を運ぶ仕事を請け負う爺さんを、何故か応援したくなってしまう。その絶妙な仕掛けとは何か。

アールはまず、単なる枯れた爺さんなどでは決してない。ベトナム戦争にも赴いた古強者で、度胸があり、機転が利き、ユーモアを解する心もあり、社交性も高く、そして適度に外の世界に敵というか、憎まれ口を叩き合うような友人にも恵まれている。ただし、そこに幸せな家族の姿は無い。娘の結婚式よりも仕事を優先させ、妻との記念日も顧みることは無い。そんなアールが仕事を失い、カネも失い、住む家も失った時に手に入れた仕事が運び屋だった。アールはそこで得たカネで人生を一つ一つ取り戻していく。カルテルの手先のチンピラに時には説教をし、時には世俗の歓楽を共に享受する。黒人家族にniggaと爽やかに言い放つ。相手によって態度を変えることなく、自然体を貫く。その姿に観る者は憧憬と尊敬の念を抱く。泰然自若。事において動ぜず、淡々と、しかし楽しみながら仕事に打ち込む姿は、男のあるべき姿ではないだろうか。クリント・イーストウッドの俳優人生の集大成がここにあるとの宣伝文句は誇大広告ではなかった。

そんなアールを追い詰めんとするDEAの捜査官には、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、そして新鋭と言っても良いマイケル・ペーニャ。特にブラッドリー演じる捜査官とイーストウッド演じる運び屋の仕事と人生が交錯する時、我々は人生における仕事の意義を思わず自らに問いかけてしまう。自分は、彼らのうちのどちら側の人間なのだ、と。何気ない日常のワンシーンが非常にサスペンスフルに仕上がっている。映画の世界に没入しながら、冷静に自分というものを考えるという得難い経験をすることができた。

本作はお仕事ムービーであると同時に、ロードトリップを堪能する映画でもある。アールの仕事と共に、数々の往年の名曲が作品世界を彩る。John Denverの“Take Me Home, Country Roads”のように、眼前に雄大な自然、wildernessが浮かび上がるかのような感覚がもたらされる。これは『 グリーンブック 』からも得られた感覚だが、本作はそれが更に顕著である。『 荒野の用心棒 』や『 続・夕陽のガンマン 』といった、若かりし頃のイーストウッドが無窮のアメリカの大地を旅する光景が蘇ってくる(と言っても、決してリアルタイムでそれらを観たわけではないが)。何度でも言うが、これは正にイーストウッドの集大成だ。

ネガティブ・サイド 

終盤のアールと妻の交わす会話に、不意に涙がこぼれた。アールは稼いだ金で人生を取り戻していったわけだが、妻の心を完全に取り戻せてはいなかったからである。これは事実なのだろうか。もしそうなら、仕方がない。しかし劇作上の脚色あるいは創作であるのなら、こんな残酷な話は無い。一部の映画ファンは間違いなくアールの姿に自身を重ね合わせる。アールの生き方に共鳴する。その結果がこれでは・・・ 自分がこれほどショックを受けているということそれ自体が、脚本家からすれば「してやったり」なのかもしれないが・・・

エンディングのショットも個人的には納得がいかない。アールがlate bloomerだったという比喩には受け取りたくない。

そのエンディングにおいて、この物語のインスピレーションの源泉となった事件および人物を、ほんの少しで良いので掘り下げる絵が欲しかった。『 ボヘミアン・ラプソディ 』のように、ピークのその後をほんの少しで良いので描写してほしかったものである。

総評

これは傑作である。クリント・イーストウッドファンのみならず、コアであろうがライトであろうが、あらゆる層の映画ファンに観てもらいたいと思う。特に壮年以降のサラリーマンには刺さるだろうと思われる。もし本作で運び屋家業に興味を持たれた方がいれば、水沢秋生著の『 運び屋 一之瀬英二の事件簿 』をお勧めしたい。仕事とは何かについての考察を深めたいなら、『 きばいやんせ!私 』よりも、こちらの小説の方が面白いし役立つだろう。何より水沢秋生氏はJovianと同郷にして、大学の寮の先輩なのである。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, クリント・イーストウッド, サスペンス, ヒューマンドラマ, ブラッドリー・クーパー, 監督:クリント・イーストウッド, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 運び屋 』 -実話を脚色した異色のロードムービー-

『 シンプル・フェイバー 』 -現代風サスペンスの模範的作品-

Posted on 2019年3月16日2020年1月10日 by cool-jupiter

シンプル・フェイバー 65点
大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:アナ・ケンドリック ブレイク・ライブリー ヘンリー・ゴールディン
監督:ポール・フェイグ

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『 ピッチ・パーフェクト 』シリーズのアナ・ケンドリック、『 ロスト・バケーション 』のブレイク・ライブリー、『 クレイジー・リッチ! 』のヘンリー・ゴールディングの共演となれば観ないという選択肢は無い。特にゴールディングは、Jovianが勝手に私淑しているHapa英会話のセニサック淳に似ているので、やはり勝手に応援しているアジア俳優なのである。

あらすじ

シングルマザーのステファニー(アナ・ケンドリック)はV-Logでママ友向けの動画を作成する傍ら、子育てにいそしんでいた。ひょんなことから、NYの大企業でフルタイムで働くエミリー(ブレイク・ライブリー)と知り合う。エミリーの夫、ショーン(ヘンリー・ゴールディング)は大学教授にして作家。対照的なステファニーとエミリーは親密になっていき、ステファニーはエミリーの子どもの世話役をすることも。しかし、ある日、ステファニーに子どもを預けたままのエミリーが姿を消して・・・

ポジティブ・サイド

ギリアン・フリン原作の『 ゴーン・ガール 』と非常によく似た構造を持っている。消えた女を追えば追うほどに新たな謎が見つかっていくというのは、ウィリアム・アイリッシュの古典的名作『 幻の女 』以来のクリシェである。タイムトラベル物、記憶喪失物と並んで、消えた女のミステリというのは出だしの面白さにおいてはハズレが少ないジャンルなのである。近年では『 ドラゴン・タトゥーの女 』や『 セブン・シスターズ 』などが標準以上の出来だと言える。そして本作はこれらよりも、サスペンスで僅かに、ユーモアで大きく、そしてミステリ部分で僅かに上回る。ただし『 ゴーン・ガール 』にはいずれの面でもやや及ばない。

本作の面白さは、まず第一にアナ・ケンドリックとブレイク・ライブリーの好対照ぶりにある。シングル・マザーにしてYouTuberのステファニー、そしてワーキング・マザーにしてNYの会社でタイトル持ちのエミリー。この二人がふとしたことから親密になり、秘密を明かし合い、お互いの子どもを預け合うようになるまでが実にテンポ良く描かれる。もちろん、そこまでの展開に伏線がてんこ盛りなので、しっかりと目を凝らして耳をすましておくように。

他に注目すべきところとして、エミリーの哲学というか生き方に、ステファニーが共感し、それを実践するシーンである。と同時に、ステファニー自身の過去の秘密が現在にも蘇ってくるのだ。What a femme fatale! 余り深く考え込んでしまうと背筋が寒くなるので、ステファニーの秘密の謎を探ろうとするのは、ほどほどにしておくべし。また、エミリーにはてっきり陳腐過ぎる直球のトリックが仕込まれているのかと思いきや、ちょっとした変化球であった。綾辻行人の『 殺人鬼 』のトリックかと見せかけて、飛浩隆の『 象られた力 』所収の短編『 デュオ 』に見られるトリックだった。

ブレイク・ライブリーのファッション、アナ・ケンドリックの美乳(ブラまでしか見えないが)、ヘンリー・ゴールディングのRPアクセントの英語にも注目しながら本作を堪能して欲しい。

ネガティブ・サイド

いくつかのサブ・プロットとエンディングに謎が残る。特に、ステファニーの過去の秘密の真相については、観る者を試す、あるいは意図的に混乱させようとしているかのようである。特に、中盤のステファニーの活躍を見るにつけ、彼女の過去の秘密の真相がどんどんとどす黒くなっていく。ここまでモヤモヤとした気分にさせるなら、いっそ真相を明かしてくれと思ってしまう。

また、エミリーの使うトリックでは、おそらく警察を欺けない。アメリカの警察の捜査力はドラマや映画から推し量るしかないが、このトリックで絶対に日本の警察は騙せない筈だし、アメリカの警察も騙せまい。その理由については中橋孝博先生の著作を読めば分かるかもしれないし、分からないかもしれない。人間の身元を確認する方法は一つだけではないということである。

総評

弱点はあるものの、適度なユーモアがある上質なサスペンスである。実績充分にして今後の活躍も期待できる2人の女優のガチンコ演技対決を見逃してはならない。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アナ・ケンドリック, アメリカ, サスペンス, ブレイク・ライブリー, 監督:ポール:フェイグ, 配給会社:ポニーキャニオンLeave a Comment on 『 シンプル・フェイバー 』 -現代風サスペンスの模範的作品-

『 THE GUILTY ギルティ 』 -北欧サスペンスの傑作-

Posted on 2019年3月10日2020年1月10日 by cool-jupiter

THE GUILTY ギルティ 75点
2019年3月7日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ヤコブ・セーダーグレン
監督:グスタフ・モーラー

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原題は“Den skyldige”、英語ではthe guilty oneもしくはthe guilty partyの意であるようだ。「有罪なる者」とでも訳すべきだろうか。パッとあらすじだけを読んだ限りではハル・ベリー主演の『 ザ・コール [緊急通報指令室] 』のデンマーク版かと思えたが、これはそれ以上の掘り出し物にして傑作であった。

 

あらすじ

職務に熱心な警官、アスガー・ホルム(ヤコブ・セーダーグレン)は、とある出来事から緊急司令室の電話オペレータとして勤務していた。ある日、アスガーは今まさに誘拐され車で連れ去られているという女性、イーベンからの通報を受ける。電話越しにアスガーは彼女を救うことができるのか。アスガーの苦闘が始まった・・・

 

ポジティブ・サイド

低予算映画の作り方でありながら、スリル、サスペンス、ミステリ、そしてホラーの要素までもが詰め込まれている。だが、それらが互いに喧嘩することなく、一本の作品の中で互いを高め合っている。これは凄いことだ。あるシーンで、アスガーが同僚警察官にとある場所に踏み込むように依頼するのだが、その緊張感たるや『 セブン』(”Se7en”)に迫るものがあった。

本作については、ネタばれめいたことがほとんど言えない。それほど絶妙なバランスの上に成り立っている作品である。我々は「ラスト10分間の衝撃!」だとか「前代未聞のどんでん返し!」なる惹句を、映画や小説の販促文句で定期的に目にする。中には「あなたは二度騙される」など、それ自体が重大なネタばれになっているものまで存在する。そうまでして観客や読者を獲得しようとする努力は買うが、そのことが作品の面白さ=受け手が作品の真価を味わう機会、経験を減じていることに、版元や配給会社はそろそろ気付いてよい。

本作の素晴らしさは主として2点。一つには、通話先の相手の容貌や状況、心理を観客が知らず知らずのうちに想起してしまうこと。これは主演のヤコブ・セーダーグレンの演技力に依るところが大きい。画面に映るのはほとんど全部この男なのだが、我々はいつの間にか彼と同化させられてしまう。ヘッドセットからの声に真剣に耳を傾けてしまう。そこから漏れ伝わる声や音は我々の想像力を否応なく喚起する。Jovianはデンマーク人の友人はいるが、デンマーク語はさっぱり分からない。それでも、アスガーの苦闘ぶりは充分に伝わる。Non-verbalな部分で、彼が如何に奮闘しているかということが、実によく伝わってくるのである。

もう一つには、映画のプロットそのものが、主人公のアスガーの背景についての興味関心を掻き立ててくることである。なぜこの男は緊急司令室で電話番をしているのか?この男が警察の関連部署と通話する際にときどき感じられる物々しさ、よそよそしさは何であるのか?そうしたことが最終盤まで明かされることなく、それでいて情報が絶妙に小出しにされてくるのである。この展開が素晴らしい。手に汗握るというか、アスガー自身の抱える闇とイーベン誘拐事件のクライマックスが見事に交差する瞬間の緊張感!これ以上は言えない。ぜひ多くの方に劇場で確かめて欲しい。それだけである。

 

ネガティブ・サイド

88分とやや短めの映画であるが、序盤にもう5~6分をかけて、アスガーの仕事がどんなものであるのかを、電話の音声とPC画面にもっとフォーカスする形で見せてくれても良かったのではないだろうか。民間ではないが、コールセンターの中の人がどのように働いているのか、興味のある人は世の中には結構いるはずである。

中盤でアスガーが思考の陥穽に嵌まってしまい、着信に気付かないところを同僚に告げられるシーンがあるのだが、Jovianが昔働いていた信販会社なら、怒声もしくは下段蹴りが飛んでくる場面だ。コールの積滞時間の長さは、そのままクレーム発生率に比例すると言っても過言ではなく、同僚の冷静さが、やや腑に落ちなかった。重大事件の通報であるかもしれないのだから、尚更だ。このあたりの描写に甘さを感じた。

 

総評

いくつかの弱点を抱えているものの、傑作であると評することができる。特にタイトルが秀逸なのである。他には、アスガーの同僚の名前が、Jovianの大学時代の寮の友人と同じで、思わずニヤリとさせられた。兎にも角にも、本作に関してはうっかりとネタばれめいたことが言えないのだが、本作を鑑賞して、なおかつ小説も好きだという方には、以下の三作品を是非ともお読みいただきたい。作品の中身それ自体が重大なネタばれに直結するようなものばかりなので、白字で記載させていただく。

作者:田中啓文 タイトル:『 水霊 』

作者:米澤穂信 タイトル:『 犬はどこだ 』

作者:範乃秋晴 タイトル:『 マリシャスクレーム―MALICIOUS CLAIM 』

以上である。本当に面白い作品であれば、この時代であれば自然に拡散されていく。本ブログもその一助でありたい。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, サスペンス, デンマーク, ヤコブ・セーダーグレン, 監督:グスタフ・モーラー, 配給会社:ファントム・フィルムLeave a Comment on 『 THE GUILTY ギルティ 』 -北欧サスペンスの傑作-

『 天才作家の妻 40年目の真実 』 -邦題がアウトだが、観る価値はあり-

Posted on 2019年3月4日2020年1月3日 by cool-jupiter

天才作家の妻 40年目の真実 70点
2019年2月24日 大阪ステーションシネマにて鑑賞
出演:グレン・クローズ ジョナサン・プライス クリスチャン・スレイター
監督:ビョルン・ルンゲ

邦題が良くない。原題が“The Wife”なのだから、そのまま『 妻 』または『 作家の妻 』で良かった。40年目の真実というのも微妙な副題だ。40年間の真実というのが、より正しいのかもしれないが、この部分もそもそも蛇足なのだ。こうした微妙な邦題問題というのは、マーケティングのためには避けて通れない。それでも、稀に『 判決、ふたつの希望 』のような大傑作もあるのだから、Don’t judge a film by its title.

 

あらすじ

ジョセフ・キャッスルマン(ジョナサン・プライス)はノーベル文学賞を受賞することとなった。糟糠の妻、ジョーン(グレン・クローズ)と息子にして作家志望のデビッドと共にスウェーデンのストックホルムに向かう。しかし、そこにはジョセフの作品は別人の手によるものと訝しむ記者兼作家のナサニエル・ボーン(クリスチャン・スレイター)もおり・・・

 

ポジティブ・サイド

グレン・クローズによる渾身の演技。これに尽きる。元々、『 危険な情事 』から『 セブン・シスターズ 』まで、怖い女性を演じさせれば右に出る者はいない人だったが、本作では二重性、二面性のあるキャラクターを見事に演じ切った。女性が能力を認められない時代に、学問を学び、文芸作品を執筆することの労苦が、彼女ではなく別のキャラクターの口から語られるシーンがあるが、これは秀逸であった。似たような表現として、『 マネーボール 』でブラッド・ピット演じるビリー・ビーンがバットを放り投げるシーンがあったが、それと共通している。映画とは絵で魅せるものでもあるが、音で魅せるものでもあるのだ。

世界の名言、格言では結婚に関するものが特に多いが、それはおそらく結婚という制度の普遍性に比べて、夫婦の在り様というものが余りにも多様性に富んでいるからだろう。Jovian自身、以前に信販会社のセキュリティ関連部門勤めの頃に、財布ごとカードを紛失した女性の応対時に「ご主人の・・・」と言ったところで『この家の主人は私です!この人は私の稼ぎでカードを持ってるんです!』と相手を激怒させてしまったことがある。ことほど左様に、夫婦というのはステレオタイプどおりではないし、それを外から見分けることは難しい。職場では威厳を保っている男性が、家の中では妻に頭が上がらないという構図もステレオタイプではあるが、そんな人は多いはずだ。ジョセフとジョーンのカップルは、ノーベル文学賞の受賞決定を機に、成功した夫とそれを支える妻という典型的な枠に押し込まれるが、そうすることで初めてジョーンは自分という存在の形を知る。この見せ方も秀逸である。ジョセフに自分への謝辞を述べないように迫るジョーンの心情はいかばかりか。そして、ジョセフのスピーチを聞いた時のジョーンの反応に、あなたは何を思うだろうか。

Jovianは本作を妻と共に観たが、妻は感心することしきりであった。曰く、「いやあ、女性の心情をしっかり捉えられてるよ」とのことだった。『 プラダを着た悪魔 』のアンドレアとは対照的に、女性が何かを掴み取れることそのものを否定する時代や職業が存在したということに、妻は本気で憤っていた。

あまりここに妻の意見を書くと後でJovianが説教を食らってしまうのだが、本作が気になるという男性諸氏は、ぜひ奥様やパートナーと共に観よう。熟年離婚がトレンドから一般的な事象にまで成り下がり、日本全体でも離婚率が30%というこの時代に、本作は健全な夫婦喧嘩および人間の情念の深さとそれを上回るかのような慈愛も見せてくれる。『 追想 』にはサスペンスが不足していたが、本作はそこにサスペンスだけではなくミステリ、ロマンス、さらには父親殺し的なテーマまで加えてくれた。小説の映画化としてはこちらの方が面白いと感じた。

 

ネガティブ・サイド

もしかすると『 シン・ゴジラ 』を上回るかもしれない超高速会話劇である。そのことが下手なアクション映画のカーチェイスや銃撃戦よりも、よほど手に汗握る展開なのであるが、こちらの理解が少々追いつかないところや、唐突に始まり、唐突に終わる言い争いも少なからずある。このあたりは観る者によって評価がかなり割れそうだ。もしかすると『 レディ・バード 』以上の唐突会話劇であると見ることすら可能かもしれない。大学生以上でないと、この緊迫感は掴めないのではないだろうか。

個人的には息子の存在とそのサブ・プロットがノイズになっているように思えた。もちろん、彼の存在によって新たなドラマが生み出され、今あるドラマがよりドラマチックになるという作用もあるが、ジョーンという女性のキャラクターから母という要素を剥ぎ取ってもよかったのではないだろうか。そうすることによって、浮気大好きで、なおかつ嫉妬深い夫の心を「記者と何をやっていたんだ」とより強くかき乱すことができたのではないだろうか。老いたりといえども、女性としの色香をジョーンが残していることは、冒頭のベッドシーンでも明らかだったのだ。『エル ELLE 』のイザベル・ユペールが頑張れたのなら、グレン・クローズもまだまだやれる、というのは望み過ぎだろうか。

 

総評

ノーベル賞の舞台裏を垣間見ることができるという点で非常にユニークである。しかし、そのせいでジョスリン・ベル・バーネルのような素晴らしい科学者も、家庭ではどんな陰物なのだろうかと勘繰ってしまうようになるという副作用がある。元々、結婚などというのは乱暴極まりない制度なのである。夫婦という関係以上にサスペンスフルなものはこの世にはないのかもしれない。夫役のジョナサン・プライスも息の長い俳優。彼の出演作で最もサスペンスフルでミステリ要素もあるものとして『 摩天楼を夢みて 』がある。ケビン・スペイシーやアル・パチーノらの名優揃い踏みの佳作なので、サスペンスに興味のある向きは是非どうぞ。

 

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, イギリス, グレン・クローズ, サスペンス, スウェーデン, 監督:ビョルン・ルンゲ, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 天才作家の妻 40年目の真実 』 -邦題がアウトだが、観る価値はあり-

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