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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: エマ・ワトソン

『 ブリングリング 』 -泥棒、ダメ、絶対-

Posted on 2021年5月9日 by cool-jupiter

ブリングリング 50点
2021年5月8日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ケイティ・チャン エマ・ワトソン イズラエル・ブルサール
監督:ソフィア・コッポラ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20210509194932j:plain
 

時間つぶしにTSUTAYAで借りてきた。難解な哲学書を読んでいて、頭をリセットする必要がある。そうした時には、何も考えていないティーンの映画でも観るに限る。これは偏見かな。

 

あらすじ

マーク(イズラエル・ブルサール)は転校先で出会ったレベッカ(ケイティ・チャン)に誘われ、ふとしたことから空き巣と窃盗の共犯になってしまう。やがてニッキー(エマ・ワトソン)らも加わり、彼らはハリウッドのセレブたちの留守を狙って、豪邸への侵入を繰り返すようになり・・・

 

ポジティブ・サイド

ティーンの日常風景が生々しい。ドロドロとした虐めや派閥争いではなく、淡々とした友情を淡々と描き出す序盤は、ドキュメンタリーのようにも感じられた。元が実話だからしょうがない。何度も侵入されては、色んなものを盗まれるパリス・ヒルトンだが、実際に自宅を撮影用に提供したというのだから、商魂たくましいと言うしかない。その豪邸の広さ、物の多さ、そして至るところから発せられる強烈なナルシシズムからは、確かにティーンならずとも惹きつけられてしまうカリスマ性を感じる。

 

戦利品のアイテムや金を使ってガキンチョどもが何をするかと言えば、お定まりのショッピングにドラッグ、そしてクラブ通い。このあたりは大人も子どももアメリカ人らしさ全開という感じがする。『 ウルフ・オブ・ウォールストリート 』のディカプリオも目のくらむよう大金を稼いで、同じようなことをやっていた。これも陳腐でありながら生々しい。リアルであると感じる。

 

生々しいのは、犯行に及ぶティーンたちの無計画性。そして、今風の言葉で軽く評するなら、自己承認欲求の強さ。なぜセレブ宅への侵入と窃盗の現場で写真を撮るのか、そしてそれをSocial Mediaに上げてしまうのか。なぜ自分たちの盗みを同級生たちに自慢してしまうのか。そして、犯行現場で素手であれやこれやをべたべたと触って指紋を残すのか。帽子もかぶらず、髪の毛も落としまくっていくのか。『 アメリカン・アニマルズ 』での、凝りに凝った犯行計画を練り上げていく過程とは対照的に、本当に何も考えずに次から次へと犯行を繰り返すブリング・リングの面々には嫌悪感すら催してしまう。観る側をこのような気持ちにさせた時点で、本作は一定の成功を収めていると言えるだろう。

 

ネガティブ・サイド 

『 スプリング・ブレイカーズ 』は青春への決別を映し出していたが、本作で描かれるブリングリングの連中は、マークを除いて全員アホである。反省の色が見られない。いや、反省しないだけならいいのだが、その原因を何らかの形で劇中で提示すべきだろう。ホームスクーリングや離婚した両親など、思わせぶりな描写は多いが、それは事実であって仮説の形にはなっていない。有罪が確定しているにもかかわらず、自らの将来をメディアに高らかに語ったり、事件の真相を知りたければ自分のウェブサイトを見ろと宣伝するニッキーは、どこまでも薄っぺらい。本当なら、そうしたティーンのアホな自己承認欲求をかなえる手伝いをするような映画ではなく、何が彼女たちをそこまで駆り立てたのかを考察し、そこを盛り込むべきだった。

 

他に不足を感じたのは、マスコミ及び大衆の反応の描写。アホなティーンがある意味で同じくらいアホなセレブに経済的な痛撃を一時的にも加えたこと、そしてそれを口コミおよびSocial Mediaを通じて一時的にもセンセーションを作り出したことを、当時のニュース映像と対比する形で挿入すべきだった。そこをもう少し手厚く描写しないと、ブリングリングの連中が特別だったことになり、ごく一部の無軌道な若者、若気の無分別の物語になってしまう。そうではなく、若いうちは(老いてからでも)誰でも道を踏み外す可能性があること。そして、セレブであろうが誰であろうが、情報の取り扱い、そのリテラシーについてもっと注意を要すべしという教訓が伝わってこない。

 

エマ・ワトソンは悪い女優ではないが、特別に良い女優でもないと今作の演技から感じた。ハリポタのハーマイオニーというはまり役は、『 スター・ウォーズ 』におけるルークやハン・ソロと同じく、役者の素の顔を引き出す演出が奏功したというのが大きい。本作のエマ・ワトソンのあざとさはあまりにも意図的で、逆に演技くさくなっている。本当のエマ・ワトソンの演技を観たい向きは『 ウォールフラワー 』を鑑賞すべし。 

 

総評

ハリウッドの豪邸に入り込んで、好き勝手なことをする。そんなことが出来るんかいなと思ってしまうが、『 ビバリーヒルズ・コップ2 』でもエディ・マーフィーが同じようなことをやっていたなと思い出した。つまりは出来てしまうし、実際にそうした事件が起きた。盗みに入る方もアホだなと思うし、盗みに入られる方もアホだなと思う。『 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 』のシャロン・テートの教訓からセレブたちは学んでいないのかと考えさせられるが、この能天気さや鷹揚さもアメリカの特徴なのだろう。暇つぶし用、典型的な a rainy day DVDである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

for all I know

文頭または文末に使って、「多分」、「もしかしたら」という意味を加える。

For all I know, the champion could lose.

I want to be a politician. I could even become Prime Minister for all I know.

のように使う。関西人ならば語尾につける「知らんけど」とほぼ同じだと説明すれば一発で理解できるかもしれない。知らんけど。

 

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Posted in 国内, 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アメリカ, イギリス, イズラエル・ブルサール, エマ・ワトソン, クライムドラマ, ケイティ・チャン, ドイツ, フランス, 日本, 監督:ソフィア・コッポラ, 配給会社:アークエンタテインメント, 配給会社:東北新社Leave a Comment on 『 ブリングリング 』 -泥棒、ダメ、絶対-

『 ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 』 -若草物語の再解釈-

Posted on 2020年6月20日2021年1月21日 by cool-jupiter

ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 70点
2020年6月14日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:シアーシャ・ローナン エマ・ワトソン フローレンス・ピュー ティモシー・シャラメ
監督:グレタ・ガーウィグ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200620002714j:plain
 

Jovianと同世代(不惑)か、それ以上の世代ならば、ハウス名作劇場の『 愛の若草物語 』を観ていたことだろう。まさかグレタ・ガーウィグが同作品を参照していたとは思わないが、豪華なキャスティングにもかかわらずマーチ四姉妹の特徴はしっかりと保たれていた。

 

あらすじ

ジョー(シアーシャ・ローナン)は小説家志望。長女メグ(エマ・ワトソン)や三女エイミー(フローレンス・ピュー)、四女ベス、そして向かいに住む裕福なローレンス家の長男ローリー(ティモシー・シャラメ)らと、南北戦争時代の陰鬱なアメリカで、それでも健気に前向きに生きていこうとするのだが・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200620002740j:plain
 

ポジティブ・サイド

シアーシャ・ローナンとティモシー・シャラメの共演となると『 レディ・バード 』を思い出す。実年齢からすればハウス名作劇場のような10代半ばを演じるのは厳しいはずだが、それを感じさせない。フローレンス・ピューとベス役のエリザ・スカンレンの童顔の果たす役割も大きいだろう。若草物語と言えば、どうしたって姉妹の少女時代の話がメインになる。同時に原題のLittle Womenというのも、「私たち姉妹は小さいけれども立派な大人の女性なのだ」という意味を内包している。そうでなければ Little Sisters や Little Girls というタイトルがつけられていたはずだ。そうした姉妹のビルドゥングスロマンを、本作はジョーの15歳時代と22歳時代を交互に行き来することで、効果的に、そしてユニークに描き出した。

 

効果的に、というのは『 若草物語 』の背景をくどくどと説明しなかったところ。『 スパイダーマン ホームカミング 』でも、蜘蛛に噛まれてスーパーパワーを手にするも、自らの不注意でアンクル・ベンを死なせてしまって・・・という誰もが知っているオリジンをばっさりと省略したところが潔かった。それと同じで、いきなりジョーが作家として世に旅立とうとするところから本作は始まる。これでいいのだ。

 

ユニークというのは、ある意味で観る側を置いてけぼりにしてもかまわないぐらいの勢いで二つの時間軸を何の前触れも説明もなく移動するところである。もちろん、ジョー15歳の時点ではあるキャラクターが存在して、ジョー22歳時点ではあるキャラクターが存在しないなど、『 若草物語 』に関する事前の背景知識があったり、キャラクターたちの話している事柄をすぐに理解できれば、目の前のシーンが“いつ”なのかを把握するのはたやすい。そうでなければ多少難しい。だが、それでもよいのである。この少々ややこしい時間の描写方法により、ストーリーの虚実皮膜の間が徐々にblurryになっていく。これがクライマックスの演出で効いてくる。これはなかなかの仕掛けである。

 

ローラ・ダーンはやはり『 ジュラシック・パーク 』のイメージが強かったが、『 マリッジ・ストーリー 』で完全に独立不羈の女性へと飛躍して、今では完全なる肝っ玉母ちゃんである。『 ジョジョ・ラビット 』のスカジョも良かったが、あちらはママ。こっちは母ちゃん、という感じ(本人は「ママと呼んで」とローリーに言っていたが)。

 

それでもパフォーマーとしては主役のシアーシャ・ローナンが光っていた。抑圧された時代を雄々しく生きる強い女性・・・ではなく、抑圧された時代に打ちのめされることで強くなった人物という印象を強く受けた。生涯をかけて打ち込めるもの、それが彼女にとっては物語や小説を執筆することだった。冒頭で「辛いことが多かったから、私は楽しい物語を書く」といった趣旨のジョー・マーチの言葉が映し出されるが、彼女にとって物語をつづることは、自分の人生を追体験することであり、経験することのなかった人生を生きることであり、生きていた人物が確かに「生きていた」ということを証明するための試みでもある。そして、それはそのまま今の時代に『 若草物語 』を再解釈しようとしたグレタ・ガーウィグ監督の意図と重なる。想像力があり、聡明で、時代によって規定される人間の枠組みにはまらず、孤高の生き方を目指すが、孤独に対して怯えや悲しみの心情を隠すことなく素直に吐露することもできる。どこまでもリアルなジョー・マーチ像が、確かにシアーシャ・ローナンによって生み出された。女性のみならず、男性も、子どもも、高齢者をエンパワーしてくれる、力強いパフォーマンスである。

 

ネガティブ・サイド

時代背景に関する説明がもう少し欲しかった。キャラクターの説明をばっさりと省略した点は評価に値するが、それと同じように時代背景や当時の社会の空気の説明までも省いてしまうのは賛成しない。国が内戦状態であることや、家父長の不在、独身女性の不遇なども、もう少し語れた、あるいは描写できたはずだ。

 

出版社の編集長に、女性キャラクターの行く末のあれこれを指示させるやり方はあまり上手いとは言えない。これはおそらくグレタ・ガーウィグ監督自身の経験が投影されているものと推測する。過去の人間の声を現代人が代弁することは良い。だが現代人の声を過去の人間に代弁させるのには少々違和感を覚える。

 

エマ・ワトソンとフローレンス・ピュー、特にピューにもっと見せ場が欲しかった。一番の見どころがジョーとの喧嘩とは・・・。さらにはclichéとしか言えない仲直りを見せつけられては・・・。『 ミッドサマー 』の時のように、精神的な脆さ、不安定さを引き出すことができていれば、後半の幸せなシーンがより際立ったように思う。シアーシャ・ローナンが主役ではあるが、その主役を最も輝かせるべき姉妹は、フローレンス・ピューであるべきだった。

 

総評

若草物語を知っている人なら劇場へ行こう。若草物語を知らないなら、最低限のあらすじやキャラクターだけを予習して劇場へ行こう。生きづらさを抱えていたり、過去に囚われて前になかなか進みだせない。そう表現してしまうと大仰だが、誰もがどこかで何かを間違えて、そのせいで目の前の現実に向き合えないことがある。そうした現実に、物語の力で向き合ったジョー・マーチの姿は、観る者に勇気を与えてくれる。豪華女優陣が勢ぞろいしているからではない。単純に良い作品だから、ぜひ劇場へ行こう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be hard on ~

三女エイミーの台詞に、“The world is hard on ambitious girls.”というものがあった。「若い女性が大志を抱くと、世間の風当たりが強くなる」のような意味である。be hard on ~=~にきつく当たる、のような意味である。いじめに少し近いか。学校でのいじめはbullyだが、「職場でマネージャーにいじめられて、腹立つ!」は“I’m so frustrated because the manager is hard on me!”のようになる。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, エマ・ワトソン, シアーシャ・ローナン, ティモシー・シャラメ, ヒューマンドラマ, フローレンス・ピュー, 伝記, 歴史, 監督:グレタ・ガーウィグ, 配給会社:ソニー・ピクチャーズエンタテインメントLeave a Comment on 『 ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 』 -若草物語の再解釈-

『 ウォールフラワー 』 -青春の甘さと苦さを思い出す-

Posted on 2019年4月27日2020年1月29日 by cool-jupiter

ウォールフラワー 70点
2019年4月25日 レンタルDVD鑑賞
出演:ローガン・ラーマン エマ・ワトソン エズラ・ミラー
監督:スティーブン・チョボウスキー

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190427022401j:plain

日本であろうとアメリカであろうと、学校には冷酷非情な生態系が存在する。スクールカーストというやつだ。高校生という、ちょうど大人と子どもの中間にある存在は、時に非常に脆く、時に非常に危うく、時に非常に強かで逞しい。そんな時期を追体験させてくれるのが本作である。

 

あらすじ

チャーリー(ローガン・ラーマン)は高校入学初日に、誰とも友達になれなかった。国語教師のアンダーソン先生(ポール・ラッド)にはポテンシャルを認められるも、生徒達とはどうしても距離が生まれてしまう。しかし、ある時、フットボールの試合で上級生のパトリック(エズラ・ミラー)とその義理の妹サム(エマ・ワトソン)と知り合い、友達になる。しかし、チャーリーにはある秘密があって・・・

 

ポジティブ・サイド

上級生にして親友となるパトリックを演じるエズラ・ミラーの演技。これは素晴らしい。『 ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 』、『 ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 』では完全なるダウナー系(にしてマグマをため込むタイプ)を演じ、『 ジャスティス・リーグ 』ではフラッシュという天然アッパー系キャラを演じていた。次代のハリウッドを牽引する可能性を秘めた役者であり、アダム・ドライバー並みか、それ以上に活躍できるポテンシャルがありそうだ。本作でも優しさと包容力がありながら、自分なりの闇や負の側面をも抱えたキャラを見事に体現した。登場の瞬間から観る者に違和感を抱かせるのだが、そそっかしい人は妙な演技と勘違いしてしまうかもしれない。それは妙なのではなく、分かりにくい分かりやすさ、もしくは分かりやすい分かりにくさなのだ。特に珍しい属性ではないので、慣れた人ならすぐに見抜くだろうし、慣れていない人でもすぐに納得できるだろう。このあたりの演技のさじ加減が絶妙なのである。

 

エマ・ワトソンも魅せる。なぜかダメ男とばかり付き合ってしまう女性は、往々にして良い女なのだ。いや、女が器量よしだから、そばに立つ男のダメさが余計に際立つのだろうか。本作にはハーマイオニーの面影は無い。ダニエル・ラドクリフが『 ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館 』や『 ヴィクター・フランケンシュタイン 』でハリーのイメージを払しょくしたのと同じく、今作はエマ・ワトソンは非常に racy なバックグラウンドを有する slutty なキャラを具現化した。これらの英単語の意味を調べるのが億劫な人は是非本作を鑑賞しよう。

 

原題の The Perks of Being a Wallflower とは、壁の花でいることの利点、ぐらいの意味か。パーティーなどで部屋の中央に陣取る花形ではなく、壁に背をつけて時間をつぶす、いわゆるはみ出し者キャラのことである。ローガン・ラーマンもそうしたキャラを説得力ある形で体現した。彼にはとある秘密(というか特徴)があり、まるで『 君が君で君だ 』の尾崎豊的なところがある。というか、普通の男であればこうした特徴を大なり小なり有しているものであるし、Jovianはこのキャラクターがいたく気に入った。学校でまともに話せるのが先生だけ、という状態から同世代の友人を得て、恋の素晴らしさを知り、また恋の恐ろしさを知る(それは自分の弱さや残酷さを知ることでもある)というビルドゥングスロマンが、心の琴線に触れるのだ。詳しくは観てもらうしかないが、チャーリーの“理屈”に賛同しする、あるいは同じように感じたことがあると思い当る男性連中は多いはずだ。

 

そうそう、国語教師のポール・ラッドも良い味を出していた。千万言を費やすよりも、自分の愛読書を読んでもらう方が、思いやりや尊敬、信頼の気持ちをより強く表すことができる。そんな理想的な教師像を彼の姿に見た。俺もこんな風になりたいなと思えた。

 

ネガティブ・サイド

チャーリーに仕込まれたトリックというか、とあるトラウマの秘密が、ややありきたりである。極端な話、漫画『 ベルセルク 』のガッツの抱えるトラウマと同質のものの方がよりインパクトがあり、なおかつパトリックという兄貴キャラとの整合性というか、相性の面でもより良かったのではないかと思う。

 

また、チャーリーの家族との触れあい、交流の場面がもっと欲しかった。チャーリーという主人公が、どのように変わり、また変われないのかを最もよく知るのは、やはり家族だからだ。

 

もう一つ、チャーリーの恋の始まり方の説得力が弱かった。この恋の終わり方がハチャメチャなので、始まりもある意味ではもっとぶっ飛んだ、若気の無分別で良かった。ここでの無分別というのは性欲と恋心を混同するというような意味ではなく、周囲に遅れているのではないかという焦燥感や異性への純粋な好奇心、そうしたものから偶発的に始まってしまった関係だったほうが、チャーリーというキャラによりマッチしていたように思う。

 

総評

青春ものとして佳作である。日本で同じテーマを描こうとしても、様々な意味で難しいだろう。しかし、こうしたはみ出し者たちの心温まる交流風景や衝突、断絶を経ての成長物語は普遍的なテーマであるはずで、誰が観ても何がしかのメッセージを受け取ることができるし、共感を呼び起こされるはずである。高校生以上なら充分に理解ができるはずだし、青春のほろ苦さを予習もしくは追体験することができる。お勧めの一作である。

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アメリカ, エズラ・ミラー, エマ・ワトソン, ヒューマンドラマ, ローガン・ラーマン, 監督:スティーブン・チョボウスキー, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 ウォールフラワー 』 -青春の甘さと苦さを思い出す-

『ラ・ラ・ランド』 -LAの街に夢を見る者たちの苦悩と幸福の物語-

Posted on 2018年8月4日2019年11月28日 by cool-jupiter

ラ・ラ・ランド 55点

2018年8月1日 WOWO録画観賞
出演:ライアン・ゴズリング エマ・ワトソン J・K・シモンズ ローズマリー・デウィット ソノヤ・ミズノ 
監督:デイミアン・チャゼル

『セッション』のJ・K・シモンズ演じるフレッチャーに違う形で再会してみたいと思い、本作を見返す。タイトルの『ラ・ラ・ランド』は、原題でも“La La Land”、LA=Los Angelesでもあり、現実から遠く離れたファンタジーの世界であり、そうした世界に住まう恍惚感を表わすTriple Entendreなのである。

ジャズ・ピアニストとして自分の店を持ちたいと願うセブ(ライアン・ゴズリング)と女優として大成したいと望むミア(エマ・ワトソン)は、最悪の形で出会いながらも、互いの夢へのリスペクトから惹かれ合うようになる。しかし、夢を追いかけるミアと、ミアとの将来のために、ジャズの店ではなく売れ筋バンドでの演奏を選択するセブは、すれ違い始める・・・

主題は至ってシンプルである。しかし、我々に投げかけられる問いは重く深い。男と女、お互いの夢を追求することがお互いの関係を疎遠にしてしまう時、自分なら何を選択するのか。相手の夢を叶えるサポートをしたいと心から願うのか。そのためには自分の夢をあきらめることも厭わないのか。しかし、自分が夢をあきらめることを、自分のパートナーが認めてくれない時、自分はどうすればよいのか。何もミュージシャンや俳優志望でなくとも、普通に誰にでも起こりうる事象である。Jovian個人としては、ミアが最後に夢見たラ・ラ・ランドのあまりの都合の良さに正直なところ、辟易してしまったが、逆にそうした一瞬のまどろみの中に見出した、ありうべきだった幸福な生活のビジョンこそが、観客へのメッセージだとの見方も成り立つ。夢よりも現実の幸せを選べ、と。いや、セブが最後に見せた一瞬の表情の陰りこそがメッセージなのかもしれない。自分こそが彼女の夢の後押しをしてしまったのだ、と。いずれにせよ、歌と踊りに彩られた華やかさの裏には、ほろ苦い悔恨の念がある。様々な意味を持つラ・ラ・ランドという言葉だが、本作が最も提示したかった意味はファンタジー世界のことだったのかもしれない。

J・K・シモンズは、『セッション』のノリと同じく、口うるさいレストランの支配人で、ジャズを何よりも愛するセブに、クリスマス・ソングを演奏しろとプライドを傷つける要求をする。セブのちょっとした反骨心に火がついてしまった時には、あっさりとクビを言い渡す。ほんのちょっとしたやり取りに、フレッチャーの姿がちらついてしまうのは、それだけの怪演、本人からすれば会心の演技だったからだろうか。

それにしても本作はゴズリングに尽きる。「ジャズは死につつある!」と、まるで「哲学は死につつある!」などと叫ぶ真面目過ぎる学徒の如く熱弁を振るう様に、究極的なギークの姿を見出せるが、それを微塵も感じさせず、逆に女性を惹きつけてしまうのだから大したもの。『博士と彼女のセオリー』でも、花火を見ながらホーキングが物理学を語って、女性を口説くシーンがあったが、ギークであっても、いや、ギークだからこそ惹きつけられる女性もいるのか。共通点は、どちらの映画でもヒロインは結局主人公の元を去ってしまうということ。

色々と示唆に富む映画で、観るたびに発見がありそう。『グレイテスト・ショーマン』とは違って、囁くような、呟くような歌が多いのもポイント高し。TOHOシネマズ梅田のDOLBY ATMOSでいつか再上映やってくれないかな。2800円でもチケット買うよ。

Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2010年代, D Rank, J・K・シモンズ, アメリカ, エマ・ワトソン, ミュージカル, ライアン・ゴズリング, 監督:デイミアン・チャゼル, 配給会社:ギャガ, 配給会社:ポニーキャニオンLeave a Comment on 『ラ・ラ・ランド』 -LAの街に夢を見る者たちの苦悩と幸福の物語-

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