Skip to content

英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

  • Contact
  • Privacy Policy
  • 自己紹介 / About me

タグ: イ・ジェフン

『 悪魔の倫理学 』 -Demons live inside us-

Posted on 2020年5月3日2020年5月3日 by cool-jupiter

悪魔の倫理学 60点
2020年5月1日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:イ・ジェフン ムン・ソリ
監督:パク・ミョンラン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200503003535j:plain
 

近所のTSUTAYAで『 悪魔を見た 』が借りられていたので、すぐそばにあった本作をチョイス。これはこれでなかなかの出来栄えだった。韓国人は内面と外面が演技に直結しているのがいい。

 

あらすじ

女子大生のジナが死んだ。殺害されたのだ。それにより、ジナと不倫関係にあった大学教授、ジナの生活を盗聴することに喜びを感じる警察官の隣人、そしてジナに多額の借金を押し付けるヤクザ者、それぞれの悪魔的な内面が露わになっていき・・・

 

ポジティブ・サイド

どいつもこいつも、清々しいまでに嫌な奴らである。『 アウトレイジ 』の【 全員悪人 】ならぬ【 全員嫌な奴 】である。そうした連中を見ていても、腹立たしい気分にならない。これは凄いことである。大学教授や警察官は往々にして嫌味ったらしい人種であるが、嫌味ったらしさ全開でいることが、時に同情的に、時に滑稽に映る。そのすべてがサスペンスフルな終盤につながっていく。

 

印象的なのは高利貸しの男。長広舌からの女性への暴言および暴力、そして「 我怒る、ゆえに我あり 」という哲学者デカルトのパロディ。「ラテン語では・・・」のくだりが途中で終わってしまったので、第二外国語で古典ラテン語を学んだJovian先生が補足する。“Irascor ergo sum”= I get angry, therefore, I am. 韓国らしいと言えば韓国らしい。

 

警察官で盗聴魔の男も魅せる。日本でリメイクするなら、この役は伊藤淳史で決まりだろう。警察官でありながらも盗聴という犯罪行為にのめりこむ。その背徳的な快楽に抗えない、非常に情けない様を見事に体現した。こういう色々なものを内に秘める、溜め込むタイプほど、爆発すると怖いものである。そして実際に爆発した。これも韓国らしいと言えば韓国らしい。

 

大学教授のオッサンもキャラが立っている。中年のプロフェッサーが若々しい女子大生と関係を持つというのはこれ以上ないクリシェであるが、本作でこの教授を際立たせているのは、妻の存在とその関係性であろう。不倫した夫に、「プロポーズの時の言葉を思い出せるか?」と問うのは、古今東西のクリシェである。ドラマの『 スウィート・ホーム 』でも、布施博がしどろもどろになりながらも、何とか山口智子に正解を伝えたシーンを当時10代半ばの純粋純情純朴だったJovian少年は緊張感をもって眺めていた。「浮気はしたらあかんな。もし浮気しても、初心を忘れたらあかんな」と思ったものである。この大学教授のプロポーズの言葉は、多くの男から喝采と共感を集めることであろう。彼こそ、男の中の男である。男はよく頭と性器それぞれに脳があるなどと言われるが、蓋し真実であろう。世の男性諸氏は、この大学教授に共感するか、それとも反感するかを、よくよく分析されたい。それにより自分の心根が見えてくる。教授という非常なるインテリ人種が、下半身に支配されているという事実に、我々はほくそ笑むと同時に心胆寒からしめられるのである。

 

だが、『 悪魔の倫理学 』という邦題の“悪魔”が指す存在は別にいる。ボワロー&ナルスジャックの小説『 悪魔のような女 』を例に挙げるまでもなく、「悪魔のよう」という形容詞はしばしば女性に使われる。小悪魔的、という語は好個の一例だろう。日本語でも、我々はしばしば「鬼嫁」とか「鬼婆」とか、鬼という言葉を女性につけるではないか。既婚女性を「鬼女」と略すのもむべなるかな。男というのはアホな生き物であり、女性というのは悪魔的にしたたかな生き物である。これまた韓国らしいと言えば韓国らしい。

 

ネガティブ・サイド

盗聴という隠微な趣味を描写するのに、もう少し別の演出方法があったのにと思う。ジナの寝室からの嬌声を聞くことにこの上ない喜びを見出すのに、ジナの声をダイレクトにオーディエンスに聞かせるのではなく、イヤホンからほんのわずかにその声が漏れ聞こえる。そして、その声に恍惚とした表情で聞き入るイ・ジェフンを映し出せなかったか。『 建築学概論 』でも、なかなか意中の女子とお近づきになることができなかった男子大学生的に、あるいは『 アンダー・ユア・ベッド 』的な、触れたくても触れられない、あるいはそもそも触れなくても満たされてしまう。そんな屈折した性癖を、もっと効果的に演出することができたはずだ。もっと言えば、盗撮は必要なかった。やるとすればどちらかだけで良い。

 

誰もかれもがキャラが立っているのは本作のポジティブであるが、キャラが立ちすぎているせいでストーリーがなかなか前進しないところも少々気になった。キャラを映すことが、ストーリーの発展とイコールにならないところはマイナスである。

 

とある血の海のシーンは決定的にダメだ。カメラが映り込んでしまっている。一部の例外的な映画を除いて、カメラの存在を観る側に意識させた時点で負け、失敗作なのである。ましてや、カメラをうっすらレベルではなく、これほどはっきりくっきりと映してしまったというのは、本作の製作・編集上の大失敗である。

 

総評

こういう作品は、だいたいにおいて言葉と言葉のぶつかり合いで男たちは自分の思いの丈、思慕の念の深さを競い合うものだが、韓国映画はそんな生ぬるいやり方は好まない。きわめてフィジカルなやり取りにまで行き着く。クライマックスの、文字通りの意味でのタマの取り合いは非常にエキサイティングだ。そしてそれ以上に、エンディングのシークエンスは、我々善良かつ小心な男性を震わせる。途中の展開がもたつくが、a rainy day DVDとして鑑賞するのが良いだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I think, therefore I am.

中世フランスの哲学者デカルトの思想の根幹、「我思うゆえに我あり」である。ラテン語ではCogito ergo sum. である。I ~, therefore I am. はパロディ化するのに適したテンプレートである。自分で

I eat, therefore I am.

I work, therefore I am.

I study, therefore I am.

などと自分バージョンの格言を作ってみよう。

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, イ・ジェフン, サスペンス, ムン・ソリ, 監督:パク・ミョンラン, 韓国Leave a Comment on 『 悪魔の倫理学 』 -Demons live inside us-

『 建築学概論 』 -初恋は実らない-

Posted on 2020年3月18日 by cool-jupiter

建築学概論 75点
2020年3月17日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:オム・テウン ハン・ガイン イ・ジェフン ペ・スジ
監督:イ・ヨンジュ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200318221726j:plain
 

あらすじ

設計事務所に勤めるスンミン(オム・テウン)のもとに、大学時代の初恋の相手、ソヨン(ハン・ガイン)が訪ねてきた。家を建ててほしいというのだ。スンミンは大学時代のソヨンとの出会い、そして恋に落ちていく過程を徐々に思い出していき・・・

 

ポジティブ・サイド

初恋が実る人というのは、いったいどれくらいいるのだろうか。おそらく数パーセントではないだろうか。それぐらい、初恋というのは実らない。この言葉が一種の格言になるのは、それだけ多くの人の実体験に裏付けられているからに他ならない。本作は、その初恋の甘さ、そして酸っぱさ、さらには苦みも思い起こさせてくれる秀作である。

 

邦画の世界は、右を向いても左を向いても高校生のラブストーリーだらけだが、実際に我々が共感しやすいのは大学生のラブストーリーの方である。アルバイトができるのである程度のカネを持っているし、学年にもよるが酒を飲める。夜のクラブで踊り明かすこともできるし、なんならホテルに泊まる(性交目的ではなく)こともできるというのは『 猟奇的な彼女 』が映し出してくれた。大学生の恋愛の方が realistic なのである。日本の、特に少女コミックを原作とする邦画は、総じてファンタジーであり、おとぎ話である。

 

本作は、というか韓国映画というのは女性を必ずしも神格化=romanticizeしない。本作のヒロインのソヨン(大学生パート)はと言えば、「クロヤロー」、「ちくしょう」、「ムカつく」といった卑罵語を使って我々を戦慄させる。まるでゲーム『 ファイナルファンタジーX-2 』でユウナが「ムカつき」と言った時のような衝撃である。ソユンほどの美少女がこれほど口汚く何かを罵るのも韓国映画のパワーだろう。女性に変な幻想を抱かせない。これも重要な教育的役割と言えるかもしれない。さらに凄いのは、とある夜のバス停のシーンだろう。ごく最近、『 犬鳴村 』の冒頭で似たようなシーンがあったが、とにかく落差の激しさが全然違う。ある意味で『 猟奇的な彼女 』の電車内での嘔吐シーンを超えるインパクトをピュアなハートを持った男性に与えてくる。もちろん、ソヨンはがさつなだけの女性ではない。韓国風の指切りげんまんのシーンは、そんじょそこらの邦画のラブストーリーを一発で吹っ飛ばしてしまうほどの破壊力を秘めている。ペ・スジがとにかく可愛すぎるのである。

 

それにしても韓国の俳優の表現力の豊かさよ。「俺はソヨンの幸せだけを祈るよ」と本心とは異なるセリフを吐くときのイ・ジェフンの遠くを見る目の虚ろさ、さらに「僕の目の前から-」という言葉を絞り出したときの目の力は、ジャ〇ーズ事務所のアイドルには出せない表現力だ。街中で怒鳴り合うおばちゃんたちを背景に、ひたすら静の演技を貫く若手俳優。奥が深い。唐田えりかも日本に居場所がないのなら、韓国でオーディションを受けまくればいいのだ。

 

ネガティブ・サイド

ぺ・スジとハン・ガインが似ていない。オム・テウンとイ・ジェフンも顔かたちは全く似ていないが、動いている時、しゃべっている時、表情がある時はびっくりするぐらいに似ている。おそらく『 君の膵臓をたべたい 』の小栗旬と北村匠海のように表情や歩き方などを合わせたのだろう。同じような努力がぺ・スジとハン・ガインの間でなされなかった、あるいはなされてはいたが不十分だったというのは減点材料である。過去と現在を行き来する見せ方においては、キャラクターの同一性・一貫性というものが重要なのである。

 

ある事象を目撃し、聞き耳も立ててしまったスンミンがソヨンに別れを告げるシーンは素晴らしかった。であるならば、スンミンがその事象を起こした人物に一発お見舞いする、あるいは軽蔑の眼差しを向けるでも無視するでもなんでもいい。なんらかのアクションを起こしてほしかった。自分が恋焦がれる女性が、自分以外の男と談笑しているのを見るだけで胸が張り裂けそうになったという男性は、現代日本にも一千万人単位で存在するはずである。そして男、特に童貞は『 君が君で君だ 』の尾崎豊のごとく、きわめてたくましい妄想力の持ち主である。スンミンが現実に行動を起こせないまでも、メガネの先輩に対してなんらかの“恨”の情を抱いてくれれば、観る側はもっとスンミンに感情移入ができたのだが。

 

総評

これこそ日本でリメイクすべきである。過去と現在を行き来する展開といえば『 君の膵臓をたべたい 』が思い起こされる。月川翔監督および月川組のスタッフで是非ともリメイクをしてほしい。『 見えない目撃者 』という成功事例もある。今こそ、韓国映画を解剖し、再構築し、そのエッセンスを吸収する時である。やろうぜ、日本映画界!

 

Jovian先生のワンポイント韓国語レッスン

ガンベイ

カタカナで見ると何のことか分からないが、映像を字幕つきで見るとすぐにわかる。すなわち「乾杯」である。それに対して「(ガ)ッチャン」と返すのも、なかなか洒落ていて面白いではないか。

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ
にほんブログ村  

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, イ・ジェフン, オム・テウン, ハン・ガイン, ぺ・スジ, ロマンス, 監督:イ・ヨンジュ, 配給会社:アットエンタテインメント, 韓国Leave a Comment on 『 建築学概論 』 -初恋は実らない-

最近の投稿

  • 『 28日後… 』 -復習再鑑賞-
  • 『 異端者の家 』 -異色の宗教問答スリラー-
  • 『 うぉっしゅ 』 -認知症との向き合い方-
  • 『 RRR 』 -劇場再鑑賞-
  • 『 RRR:ビハインド&ビヨンド 』 -すべてはビジョンを持てるかどうか-

最近のコメント

  • 『 i 』 -この世界にアイは存在するのか- に 岡潔数学体験館見守りタイ(ヒフミヨ巡礼道) より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に cool-jupiter より
  • 『 貞子 』 -2019年クソ映画オブ・ザ・イヤーの対抗馬- に 匿名 より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に cool-jupiter より
  • 『 キングダム2 遥かなる大地へ 』 -もう少しストーリーに一貫性を- に イワイリツコ より

アーカイブ

  • 2025年5月
  • 2025年4月
  • 2025年3月
  • 2025年2月
  • 2025年1月
  • 2024年12月
  • 2024年11月
  • 2024年10月
  • 2024年9月
  • 2024年8月
  • 2024年7月
  • 2024年6月
  • 2024年5月
  • 2024年4月
  • 2024年3月
  • 2024年2月
  • 2024年1月
  • 2023年12月
  • 2023年11月
  • 2023年10月
  • 2023年9月
  • 2023年8月
  • 2023年7月
  • 2023年6月
  • 2023年5月
  • 2023年4月
  • 2023年3月
  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月

カテゴリー

  • テレビ
  • 国内
  • 国内
  • 映画
  • 書籍
  • 未分類
  • 海外
  • 英語

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
Powered by Headline WordPress Theme