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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: アンジェリーナ・ジョリー

『 エターナルズ 』 -スーパーヒーロー映画の限界か-

Posted on 2021年11月12日 by cool-jupiter

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エターナルズ 30点
2021年11月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:ジェンマ・チャン アンジェリーナ・ジョリー マ・ドンソク
監督:クロエ・ジャオ

 

『 アベンジャーズ / エンドゲーム 』以後、はじめて新キャラを本格的に導入する本作。だが、過去のスーパーヒーロー作品のパッチワークにしか見えなかった。個人的には、霧の良いところでMCUから離脱してもいいのかなという気持ちになった。

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あらすじ

宇宙の創世期。セレスティアルは太陽を生み出し、生命を育む星々を育てた。しかし、そこにはデヴィアントという想定外の凶悪な生物も生まれてしまった。セレスティアルのアリシェムは地球に巣食うデヴィアントに対処するため、エイジャックやイカリスらのエターナルズを地球に送り込んだ。以来7000年間、エターナルズはデヴィアントから地球人を守護してきた。そして、サノスとアベンジャーズの戦いが終わった今、再びデヴィアントたちが姿を現わして・・・

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ポジティブ・サイド

『 シャン・チー テン・リングスの伝説 』から、明らかにMCU(というかディズニーか)もアジア系のオーディエンスへの配慮を始めている。『 クレイジー・リッチ! 』の嫌味な元カノが実質的な主役だし、我らが鉄拳オヤジのマ・ドンソク、『 ビッグシック ぼくたちの大いなる目ざめ 』のクメイル・ナンジアニの起用など、明らかに diverstiy と inclusion を意識している。なぜ地球の危機を西洋人だけが解決しようとする、あるいは解決する力を持っているのかは、常々西洋世界以外を困惑させていた。地球の危機には地球規模で対処すべきで、映画界もその方向にシフトしていっているのだということ、MCU新フェースの作品が基軸として打ち出してくれたことは素直に評価したい。

 

『 アイアンマン2 』や『 キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー 』あたりから顕著にヒーローの人間部分にフォーカスし始めたが、本作でもエターナルズの面々の人間的な面を描くことに腐心していた。『 ワンダーウーマン 』が切り開いた女性というヒーローが主役を張るという方向性が成功を収めたことで、マイノリティをヒーローにするのは個人的にはありだと思う。同性愛者や聴覚障がい者がヒーローというのも、バービー人形に車椅子バージョンや義肢装着バージョンがあったり、子供向けアニメ番組の主役が補聴器装用者(Super Rubyなど)だったりすることを知っていれば、このあたりの印象はガラリと変わることだろう。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20211112002016j:plain

ネガティブ・サイド

以下、ネタバレあり

一番の不満はエターナルズの面々の強さがよく分からないところ。というか強そうには見えないのに「俺たちはアベンジャーズより全然強いんだが?」的な言葉をポンポン発するところが意味不明。別にJovianはアベンジャーズを贔屓にしているわけではない。ただ「サノスも俺たちが出張っていればなあ」やら、「アベンジャーズからキャプテン・アメリカもアイアンマンもいなくなったから、お前リーダーやってくれば?」のような会話は、白けるばかりだ。強さのインフレはある意味しゃーないとはいえ、ここまで露骨に言葉で説明する必要があったのかどうかは疑問だ。

 

そもそもデヴィアンツの強さがよく分からない。縄文時代ぐらいの人間を襲っていたのだろうが、これでは強さが分からない。それこそ『 アベンジャーズ 』でハルクが一撃KOしたリヴァイアサンのような巨大な敵、太古の怪獣のような存在であれば、まあ分かる。けれど実際は現代の普通の銃器でそれなりダメージを与えられる相手。これを倒すためにエターナルズが送り込まれてきたとなると、「エターナルズってホンマは弱いんちゃうの?」と感じざるを得ない。

 

冒頭のエターナルズの面々のデヴィアンツとのバトルも既視感ありあり。スーパーマンにクイックシルバーまたはフラッシュ、ミスティーク、アイアンマンなどなどで、「いや、これもう散々観ただろ」というシーンのオンパレード。普通のSFアクションものならド迫力のシーンなのかもしれないが、スーパーヒーローものとしては陳腐の一言。マ・ドンソクといえば確かに鉄拳なのだが、それはもうハルクだけで十分。

 

エターナルズの面々の能力全般にポテンシャルが感じられないのが痛い。ドルイグのマインド・コントロールというのは人間だけに効いて、デヴィアンツには効かないのか?だったら、その能力を使って一体セレスティアルは何をしろと言いたいのか。ファストスも科学技術の天才であるならば、核兵器の開発を嘆くのではなく、それよりもっと前の段階で太陽光発電やら地熱発電の sustainable energy といった領域の技術をバックアップしときなさいよ。スプライトも成長したいだとか恋がしたいだとか言うなら、バーで幻影を使って男をひっかけるのではなく、(見た目の上で)同世代の男(女でも可)とデートして、初々しくキスに失敗する、あるいはやたらとキスがうまくて相手がドン引きする、などの描写がないと説得力が生まれない。

 

人間的なヒーロー像の追求は別に結構だが、ゲイのカップルの物語などは、次回作以降にじっくりと掘り下げるべきで、本作のように一人一人のエターナルズの面々の背景にフォーカスしてしまうと、時間がいくらあっても足りない。実際に本作は2時間半の長丁場でありながら、最も求められているはずのアクションがあまりにも中途半端で、エンターテイメントとして大いに不満が残る。かといって個々の背景についても掘り下げは中途半端である。

 

宇宙規模の壮大なスケールの物語ではあるが、これはすでに『 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス 』で使われたネタで、新鮮味はなかった。また、デヴィアンツがあまり強くないことから、エターナルズ同士が争わざるを得なくなるが、これも『 シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ 』で既に使われたネタである。

 

サノスの弟もいらない。次のフェイズに行くなら、前のフェイズのラスボスネタは引っ張らなくていい。または前のフェイズのラスボスを落とすことで、次の敵の格を上げようとしなくていい。もうここまでくると、ストーリーを紡いでいるのではなくマーチャンダイズに使えるキャラを登場させているようにしか見えない。次作のクオリティ次第ではMCUから抜けてもいいような気がしてきた。

 

総評

MCUもネタ切れに近いのだろうか。何もかもが既視感ありありだった。ぶっちゃけ『 ファンタスティック4(1994) 』(ところで何回再映画化されるの?)と同レベルの作品に思える。ここまで来たら、もうデッドプールやゴーストライダーもMCUに放り込んで、『 怪獣総進撃 』みたいなハチャメチャ展開にしてもらいたい。本作はかなり好き嫌いが別れることだろうが、MCUになじみのない人にお勧めできない。これだけは断言できる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

move in 

引っ越しする、の意。たいていの場合、だれか意中の相手のいる街へ引っ越したり、あるいは同居や同棲を開始するための引っ越しのために使う。古い洋楽を好む人なら、イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリーの『 秋風の恋 』(I’d Really Love to See You Tonight)のサビの歌詞、I’m not talking bout moving in, and I don’t wanna change your life. で知っていることだろう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, E Rank, アクション, アメリカ, アンジェリーナ・ジョリー, ジェンマ・チャン, マ・ドンソク, 監督:クロエ・ジャオ, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 エターナルズ 』 -スーパーヒーロー映画の限界か-

『 モンタナの目撃者 』 -山火事と暗殺者から逃れられるか-

Posted on 2021年9月12日 by cool-jupiter

モンタナの目撃者 65点
2021年9月11日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アンジェリーナ・ジョリー フィン・リトル ジョン・バーンサル エイダン・ギレン ニコラス・ホルト
監督:テイラー・シェリダン

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テイラー・シェリダン監督の最新作。アメリカの大自然とアメリカ社会の闇の両面を描くという点で『 ウインド・リバー 』の同工異曲だが、クオリティはそこまで及んではいなかった。だからといってホームランと比べると2塁打は確かに劣るが、凡退やシングルヒットよりも全然良い。

あらすじ

森林局のパラシュート隊員であるハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、過去の消防活動からトラウマを抱えていた。そんな中、小川のほとりでコナー(フィン・リトル)と出くわす。コナーの父が恐るべき陰謀に巻き込まれたことを知ったハンナはコナーを助けると決意する。しかし、そこには追手と彼らが放った火によって起きた森林火災が迫って・・・

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ポジティブ・サイド

アメリカの雄大な自然の森や山々が活写されると共に、それが牙を剥いてきた時の恐ろしさも真正面から捉えられている。山火事の炎は言うに及ばず、雷の恐怖もなかなかのもの。序盤に新人たちの入隊セレモニーが行われているそばで飲んだくれながら、F-words連発で下世話なトークを繰り広げるハンナとその仲間たちに「こいつらが消防隊員で本当に大丈夫か?」と思ったが、実際はこれぐらい図太さと豪胆さがなければ大自然の脅威には立ち向かえないということがよく分かった。

かといってハンナは単に口が悪い、頭のねじが外れた消防士ではない。過去のトラウマに今も苛まれている。そんな彼女がコナーと巡り合うことで、過去のトラウマに決着をつけられる機会を図らずも手に入れる。序盤、いきなり住宅が吹っ飛ばされ、それをニュースで知った男性が息子を連れて逃走するシーンは観る側を置いてけぼりにするが、それを追撃してくる暗殺者ふたりの奇妙なバディっぷりが不気味さを倍増させる。

あるサバイバルスクールで文字通りに役者が揃い、ハンナとコナー、ハンナの元恋人で地元の保安官とその妻、そして山火事の猛威の三つ巴の戦いはまさに手に汗握る展開。「殺される」と感じた瞬間からの逆転や、「勝った」と確信した瞬間からの再逆転など、とことんまでサスペンスを追求した作りに100分という上映時間をもっと短く感じた。

エイダン・ギレンとニコラス・ホルトの暗殺者二人組の容赦のない仕事ぶりと、それゆえの倒され方には納得。ジョン・バーンサルの保安官役も板についていた。子役のフィン・リトルの演技力も堂に入っている。涙を流すのではなく、父の遺志を継いで涙を必死にこらえる姿には脱帽。演出家や演技指導者の腕が良いのか、この子の訳とシーンの解釈が素晴らしいのか。最後にアンジェリーナ・ジョリーを称えないわけにはいかない。豪快さと繊細さ、力強さと優しさの両方を備えている。父子家庭で育ったと思しきコナーが父を失くしたからといって、安易に母親的な存在になろうともしない。相手を子どもではなく一人の人間として、まっすぐに目と目を合わせて話をする。ルックスでデビューして、加齢とともに消えていくどこかの国のアイドル卒の女優たちには、アンジェリーナ・ジョリーの出演作品を10回以上見せてやりたいと思う。

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ネガティブ・サイド

コナーが仔馬と交流するシーンが冒頭近くにあるが、これは何だったのだろう。てっきり終盤に森林の中で馬と出会い、動物と心通わせる力でもって、窮地を脱するのかと思ったらさにあらず。

バーンサルの上官が自身の妻からの電話応答を”Absolutely not.”といって断るシーンは必要だったか。これをやってしまうとそそっかしい人は「保安官は職務中は家族からの電話にも出ないのだな」と思ってしまう。ここは逆に電話に出て、保安官同士で使う隠語で妻に言葉をかけるぐらいが望ましかった。

不満を言わせてもらえば、落雷する平原を駆け抜ける際のハンナの指示にプロフェッショナリズムがもっとあれば良かった。いつ落雷するか分からないような超危険地帯では、雷しゃがみが鉄則。「こんな風にしゃがむのよ」的なことを言っていたが、こここそ「手を地面につかない」とか「かかとを浮かせる」といったことを復唱させる場面であると感じた。

あとは映画そのものの出来とは関係ないが、これまたトレイラーがほとんど全部のプロットを明かしてしまっている。できるだけトレイラーを見ずに臨むのが吉である。

総評

炎の熱がスクリーン越しにこちらに伝わってくるようなヒリヒリ感に満ちた作品である。自然の脅威と人間の追撃者の両方を扱った作品としては『 ローグ 』以上のサスペンスとアクションに満ちている。アンジェリーナ・ジョリーの迫真の演技とテイラー・シェリダンの描く極限的な状況がハイレベルで融合した佳作である。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

read 

「読む」の意。通常は文字を読むのに使われる表現だが、日本語動揺に実は守備範囲が非常に広い動詞である。

lipreading = 読唇術
mind reading = 読心術
palm reading = 手相見
card reading = カードの読み取り(クレジットカードからタロットカードまで)

劇中では read the wind wrong =「風を読み違えた」という表現が出てきたが、ここまでくれば wind reading = 風読みも、ゴルフをたしなむ人なら分かるだろう。もっと一般的なところでは、正月に凧を揚げる時にどこに注目するかを思い浮かべればいい。それが風読みである。

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, C Rank, アメリカ, アンジェリーナ・ジョリー, エイダン・ギレン, ジョン・バーンサル, スリラー, ニコラス・ホルト, フィン・リトル, 監督:テイラー・シェリダン, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画Leave a Comment on 『 モンタナの目撃者 』 -山火事と暗殺者から逃れられるか-

『 マレフィセント2 』 -ご都合主義もほどほどにすべし-

Posted on 2019年10月30日2020年4月11日 by cool-jupiter
『 マレフィセント2 』 -ご都合主義もほどほどにすべし-

マレフィセント2 45点
2019年10月27日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:アンジェリーナ・ジョリー エル・ファニング ミシェル・ファイファー
監督:ヨアヒム・ローニング

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『 マレフィセント 』は非常に時代に即した映画だった。異種の間で愛が育まれるのかという問いは、現代においてその重みを増すばかりだからだ。古いおとぎ話を再解釈する意義は確かにそこにあった。だが、続編たる本作はどうか。現代的なメッセージも盛り込まれてはいるものの、ご都合主義的なストーリーの粗が目立つ。

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あらすじ

ムーアの王女オーロラ(エル・ファニング)は、アルステッドの王子フィリップから求婚され、受諾する。アルステッド王妃のイングリス(ミシェル・ファイファー)はオーロラと彼女の保護者的存在であるマレフィセント(アンジェリーナ・ジョリー)を晩餐会に招待するが・・・

ポジティブ・サイド

CGは美麗の一語に尽きる。もちろんCGっぽさは何をどうやっても隠せないのだが、ムーアの民の活き活きとした暮らしぶりや、終盤のバトルシーンのグラフィックは実にハイレベルである。日本の白組あたりは、予算ではなく別の分野で勝負してほしい。ディズニーと物量勝負をしたら負ける。絶対に。

 

アンジェリーナ・ジョリーの代表作は『 60セカンズ 』と『 トゥームレイダー 』だと思っているが、代名詞的な作品は『 マレフィセント 』と本作『 マレフィセント2 』だろう。特にララ・クロフトはアリシア・ヴァイキャンダーという後継者が出現してしまった。しかし、マレフィセントの後継者はおそらく出ないだろう。ハリソン・フォードが「自分が死ねば、インディアナ・ジョーンズというキャラクターも死ぬ」と公言しているが、それと同じくらいにジョリーはマレフィセントにハマっているし、キマっている。まばたきをせず、抑揚を小さく、しかし腹の底に響いてきそうな迫力を持って話すマレフィセントという魔女は、特殊メイクではなくジョリーの演技力で生み出されているということがよく分かる。

 

エル・ファニングも可憐で、しかし芯の強いオーロラ姫を過不足なく体現しているが、本作で彼女以上の存在感を放ったのはミシェル・ファイファー演じるイングリス王妃である。権謀術数に長け、確かな戦術眼と軍の指揮能力も持ち、そして王妃と母親という仮面をかぶることができるというスーパーウーマンである。40年後のエル・ファニングも、きっとこのような大女優に成長するのだろう。各世代を代表する女優3名の共演は、非常に見応えのあるものだった。

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ネガティブ・サイド

晩餐会でジョン王が倒れるシーンのオーロラ姫に喝!!!何故にそこでマレフィセントを疑うのか。前作の感動的な展開は一体何だったのか。今作の冒頭で、屈託なくムーアの民と語らい、触れ合うオーロラ姫の姿を見て、我々は彼女がマレフィセントをはじめ、異形の者たちとも全く問題なく心を通い合わせることができる人間に成長したことを確認した。それが、婚約者に招かれた晩餐会でこのように豹変してしまうとは・・・ 言葉を失ってしまう。

 

マレフィセントにも喝!!!なぜ陰謀に倒れたジョン王に何でもいいから魔法で手を尽くさなかったのか。人間の話が字面通りにしか通じない、レトリックを解さないマレフィセントならば、自分に疑惑がかかっているという空気を読まずに、何らかの措置を講ずるのではないか。前作からのキャラが、強引なストーリー展開のためにぶれまくってしまっているのが残念でならない。

 

マレフィセントの種族が登場するのもご都合主義でしかない。終盤のバトルシーンをよりspectacularなものにすることが第一の目的にしか見えない。前作で種を超えた愛の成就を語っただから、今さら同種を持ち出す必要はない。語るとすれば、それは我が子の愛を成就させるために、我が子を手放すという愛の形だろう。

 

終盤のバトルシーンも迫力はあるが、説得力はない。闇の妖精たちには、斥候を放つという概念は無いのか。いや、「よろしい、ならば戦争だ」「戦争だ!」と意気込むからには、戦いの概念を有していることは間違いない。というよりも、人間に地下世界に追いやられたのも、戦闘に敗れたからだろう。なぜ自分よりも強い相手と戦おうという時に、正面突破を図ろうとするのか。それも、高射砲的な兵器で画面を彩りたかった脚本家や監督のご都合主義である。

 

マレフィセントの大変身も既視感ありありである。『 ゴジラ キング・オブ・モンスターズ 』のラドンを既に観た映画ファンには物足りないと感じられたはずである。そして、その後の戦闘の終結シーンもご都合主義の極みである。戦争や抑圧がどのような負の感情を生み出すのかは、韓国が日本に、ベトナムが中国に、イラクがアメリカに抱いている感情を慮れば理解できる。異形のマイノリティとも手を取り合うことができる、というアメリカの新しいイデオロギーをスクリーンに映し出したいのであれば、もっと説得力のある脚本が必要である。ヒューマンドラマだった前作に対して、本作はアクション作品になってしまっている。

 

総評

非常に評価の難しい作品である。エル・ファニングが出演しているだけで5~15点は加点してしまうJovianをもってしても、45点が限界である。とにかく物語にリアリティがない。おとぎ話には普遍的な真実の一端が含まれていなければならないが、それも無し。製作者側としては現代的な寓話にしたいのだろうが、それならば前作を子供向けに、本作を大人向けに作るべきだった。これではあべこべである。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

One can never be too careful.

 

アルステッド女王の台詞で、確か字幕は「油断大敵よ」だった。直訳すれば、「人はどれほど注意しても注意しすぎることはできない」だが、そんな冗長な日本語よりも油断大敵という四字熟語の切れ味を買おうではないか。英語の学習者であるという方は、是非以下の英文を訳されたい。それによって貴方の勤務先がホワイト企業か、それともブラック企業かが判別できるだろう。

You can never work too hard.

You can’t work too hard.

前者は「どれだけ一生懸命に働いても、一生懸命すぎることはない」=「もっともっと一生懸命に働け」ということで、このように訳した貴方はずばりブラック企業勤めだろう。後者は前者と同じ意味だが、文脈によっては「あまりにも一生懸命に働いてはいけない」という禁止命令になる。このあたりの意味の判別が瞬時にできれば、英語学習の中級者である。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, D Rank, アクション, アメリカ, アンジェリーナ・ジョリー, エル・ファニング, ファンタジー, ミシェル・ファイファー, 監督:ヨアヒム・ローニング, 配給会社:ディズニーLeave a Comment on 『 マレフィセント2 』 -ご都合主義もほどほどにすべし-

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