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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: アリソン・ジャネイ

『 THE DUFF/ダメ・ガールが最高の彼女になる方法 』 -学校という社会の縮図を舞台に繰り広げられる案外まじめなコメディ-

Posted on 2018年11月8日2020年1月3日 by cool-jupiter

THE DUFF/ダメ・ガールが最高の彼女になる方法 60点
2018年11月5日 レンタルDVD鑑賞
出演:メイ・ホイットマン ベラ・ソーン ロビー・アメル アリソン・ジャネイ
監督:アリ・サンデル

 

f:id:Jovian-Cinephile1002:20181108235651j:plain

近所のTSUTAYAで『 アラサー女子の恋愛事情 』の隣にあったので、カバー裏のあらすじを読むこともなく、タイトルだけで借りてきた。THE DUFFとは何ぞや?なにやらダメ系女子の匂いがするが・・・という好奇心だけでレンタルを決断するに十分なインパクトのタイトルである。

 

あらすじ

ビアンカ(メイ・ホイットマン)とジェスとキャシーは仲良し3人組。しかし、親戚のイケメン・フットボーラーのウェスリー(ロビー・アメル)から「お前はDUFF(=Designated Ugly Fat Friend=)だ」と言われ、大ショック。親友とは一方的に絶交し、さらにはスクール・カースト頂点のマディソン(ベラ・ソーン)に目をつけられてしまう。しかし、ふとしたきっかけからウェスリーに化学を教えるのと交換条件に、どうすればイケてる女子になれるのかコーチングしてもらうことになり・・・

 

ポジティブ・サイド

まず、アラサーにして女子高生役を演じきったメイ・ホイットマンに最大級の敬意を表したい。『 JUNO ジュノ 』にしてもそうだが、アメリカの学園ドラマ、もしくはティーン映画は、必ずしも美少女というものをフィーチャーしない。日本とは対照的だ。アメリカで尊ばれる女子は、チアのキャプテンを務めて、フットボール部のQBと付き合うような典型的なイケてる系の女子と、自らの意思と能力で道を切り拓いてく self-starter に大別されるようだ。前者の典型がマディソンで、後者の典型がビアンカというわけである。ホイットマンの年齢と見た目のギャップがなければ、逆に本作のビアンカという nerdy にして slutty であるというキャラは成立しなかったかもしれない。それほど彼女の演技は光っている。というか、異彩を放っている。

 

異彩と言えば、『 ミッドナイト・サン タイヨウのうた 』の主演を張ったベラ・ソーンの腐れ外道っぷりも見逃せない。フレネミーという言葉では生ぬるい、目があっただけで敵であると認識する/されるような関係を学校のあちこちで築いている。本当に同じ役者かと思うぐらいで、若い似合わず演技力の幅を感じさせる。しかし、演技の幅と言えば、日本にも浜辺美波がいる。

 

逆に、母親役をやらせればこの人の右に出る者なし、というアリソン・ジャネイはその安定した存在感を発揮する。離婚受容プロセスの5段階セミナーには笑うしかない。母と娘の底抜けに明るく、それでいて陰のある会話劇に、日本では失われて久しい親子の対話を見るようだ。

 

本作は cyber bullying =ネットいじめの怖さを面白おかしく描き出す。ストーリー上では、かなりご都合主義的な力技で解決してしまうが、現実ではこうはならない。2015年に全世界的にバズったDover Police DashCam Confessional (Shake it Off)という動画を観て、今も覚えているという人も多いだろう。これはかなり好意的に受け止められた面白動画だが、実際にティーンが同じようなことをしている映像がネット世界にアップされてしまえば、もうどうしようもない。そうした意味では、本作を教育目的に観ることもできるのである。予定調和的な世界であるが、だからこそ安心して楽しめるロマンティック・コメディである。

 

ネガティブ・サイド

人と人との距離感は、人によって異なる。しかし、本作はかなり強烈なDUFF脱却トレーニングを課してくる。自分が同じポジションにいたとして、こんなことができるだろうかと思わされる描写もあった。なにより見知らぬ他人に迷惑をかけることになる。荒療治と言えばそれまでだが、ホラー映画好きのナード女子という設定がもう一つ活かされないのは残念である。

 

また、ウェスリーのキャラクターがあまりにも爽やかで、それでいてかなりの下衆でもある。人によっては、途中で見るのを辞めてしまうかもしれない。特にクライマックスのホームカミングでの行動は、下手をすると一生残るトラウマを与えかねない鬼畜の所業である。もちろん、「それで良い!」という声も上がって然るべきだし、「さすがにやり過ぎだろう」という声も聞こえてきそうだ。ちなみにJovianは後者である。

 

総評

目線をどこに置くかで本作の評価はかなり割れるというか、異なるだろう。学園ドラマとして見るなら凡作になるのかもしれないが、ダイバーシティを重んじ、なおかつ軽んじるアメリカ社会の縮図を本作に見出すのなら、居場所を見出せないマイノリティにも、チャンスはあるというメッセージであるとも解釈できる。日本で鑑賞される際にはそこまで考える必要はないだろうが、ネットいじめの怖さやスクール・カーストの問題点などを抉る物語でもある。中高生を子に持つ親が子どもと一緒に鑑賞してみるのも存外に楽しいかもしれない。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アメリカ, アリソン・ジャネイ, コメディ, ベラ・ソーン, メイ・ホイットマン, ロマンス, 監督:アリ・サンデルLeave a Comment on 『 THE DUFF/ダメ・ガールが最高の彼女になる方法 』 -学校という社会の縮図を舞台に繰り広げられる案外まじめなコメディ-

『JUNO ジュノ』 -妊娠することと母親になることは同義ではないし、妊娠は属性であって人格ではない-

Posted on 2018年8月9日2019年4月30日 by cool-jupiter

JUNO ジュノ 75点

2018年8月2日 レンタルDVD観賞
出演:エレン・ペイジ マイケル・セラ ジェニファー・ガーナー ジェイソン・ベイトマン アリソン・ジャネイ J・K・シモンズ オリビア・サールビー
監督:ジェイソン・ライトマン

f:id:Jovian-Cinephile1002:20180809174818j:plain

『センセイ君主』に我々は『3年B組金八先生』へのオマージュを見出したが、やはりかの伝説的テレビドラマで最も印象に残るエピソードの一つは「十五歳の母」であろう。日米の文化の差や時代の違いもあるが、10代の妊娠が軽い事柄でないことだけは確かだ。そうした時、妊婦はどうするのか、妊娠させた相手の男は何をすべきなのか、友人は?教師は?家族は?地域社会は?金八先生を用いての比較文化論は、実際にどこかの日本の中学か高校に任せたいが、本作のような映画こそ夏休みに入る前の中高生たちに観てほしいと願うし、学校関係者も訳の分からん長広舌を振るったり、やっつけ仕事の冊子を渡すぐらいなら、真剣に映像授業というものを考えるべきだ。特に日本の現場(の先生方はまあまあ頑張っているが)を監督する側の石頭連中に対して、切に願う。

16歳のジュノ(エレン・ペイジ)は親友のポーリー(マイケル・セラ)と成り行きでベッドイン、一度のセックスで妊娠してしまった。産むべきか、産まざるべきか。それが問題である。産むとなると、父親(J・K・シモンズ)や継母(アリソン・ジャネイ)の手を借りるのか、借りないのか。自分には小さな妹がいるが、両親は自分の妊娠と出産を喜んでくれるのか、歓迎してくれないのか。変わらないのは親友リア(オリビア・サールビー)だけなのか。ジュノは冷静に考え、中絶を選択することを決断する。しかし、クラスメイトのスー・チンが中絶クリニック前で一人シュプレヒコールをしているところに出くわし、わずかに心が揺れる。妊娠何週目かを知ったスー・チンの言う「もう胎児には爪が生えている」という言葉に、自分を重ね合わせるジュノ。彼女が命に人格を見出した、非常に印象的なシーンである。

ジュノはならばと、里親を探す選択をする。そして理想的な夫婦をローカル・コミュニティ誌で見つけ出す。ヴァネッサ(ジェニファー・ガーナー)とマーク(ジェイソン・ベイトマン)である。実際に出会ってみると、確かに理想的な夫婦で、ジュノは里親に彼らを選択するのだが・・・

本作を名作たらしめているのは、何と言っても主人公ジュノの型破りなキャラクターである。70年代のパンクロック好きで、B級ホラー映画好きで、ギターはGibsonかFenderかに一家言あり、しかし、テイストの異なるスプラッターも受け入れるだけの柔軟さも持ち合わせている。物語のある時点からマークが乱心するのだが、男はなかなか父親になれないのだ。一方で、女性は母親になっていなくても、母親になれる。想像妊娠という現象は動物にも人間にも現実に見られる生理学的反応なのである。『スプリット』で心理カウンセラーが「多重人格者は脳内物質の力で人体そのものも変化させてしまう可能性がある」と言うシーンがあるが、想像妊娠というのは確かに上の言を裏付けている。男の狼狽というか、頼りなさ、情けなさについては漫画『美味しんぼ』で山岡およびその友人一味が、マークとよく似た(しかし、それほど深刻ではない)症状を呈するというエピソードがどこかにあったが、何巻のどこかを探す気にならない。

もちろん、出てくるキャラクターは全て魅力的な味付けがなされており、特に強面のJ・K・シモンズがジュノに父親としての愛の深さを淡々と語る場面は観る者の胸を打つし、妊娠の相手がポーリーであると知った時に「次に会った時にはアソコをぶん殴ってやる(punch the kid in the weiner)」と言ったのは極めて正常な父親としての反応だ。そして継母のブレンは、アリソン・ジャネイそのままの迫力で、超音波検査技師に凄む。このシーンは圧倒的な迫力で我々に迫って来る。10代で妊娠、出産する家庭は劣悪な環境であるというバイアスを我々はいとも簡単に形成してしまうが、それこそが男がなかなか父親になれないマインドセットの裏返しである。人は変われるし、変わるべきである。そして妊娠というのは、決して女性が母親になるための儀式や生理現象であるとも本作は言っていない。Jovianは実際にとある産婦人科の女医先生に教えてもらったことがある。先生曰く、「妊娠は通常ではないが、正常であって、決して異常ではない」と。10代の妊娠、そして出産を考える時、変わるべきものは何なのか、変わる必要の無いものは何なのか。これらの問いに一定の答えを提示する本作は、若い中高生たちのみならず、結婚を考えているカップル、子作りを計画している夫婦、孫の世話を焼きたいと気を揉む高齢者など、見る人によって様々に異なるヒントを得られるはずだ。時代や地域を越えて観られるべき傑作である。

ちなみに本作と全く裏腹の、妊娠していないのに(実際は妊娠したのを中絶した)妊娠している振りをする15歳のミランダを主人公とする傑作ミステリ・サスペンスの『泣き声は聞こえない』(シーリア・フレムリン著)も余裕があれば手に取ってみてはいかがだろうか。

Posted in 映画, 海外Tagged 2000年代, B Rank, J・K・シモンズ, アメリカ, アリソン・ジャネイ, エレン・ペイジ, ヒューマンドラマ, 監督:ジェイソン・ライトマン, 配給会社:20世紀フォックス映画Leave a Comment on 『JUNO ジュノ』 -妊娠することと母親になることは同義ではないし、妊娠は属性であって人格ではない-

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