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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ』 -どこかの国の政治家および官僚は絶対に観るべき作品-

Posted on 2018年8月2日2019年4月25日 by cool-jupiter

ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ 65点

2018年7月31日 レンタルDVD観賞
出演:アンソニー・ウィーナー フーマ・アベディン
監督:ジョシュ・クリーグマン エリース・スタインバーク

f:id:Jovian-Cinephile1002:20180802120048p:plain

*ネタバレに類する記述あり

血気盛んに議会で熱弁を振るい、政敵を舌鋒鋭く口撃するウィーナー下院議員。民主党の次代の顔として、国民からの支持と期待を集めていた気鋭の若手政治家はセクスティング・スキャンダルで一挙に失脚。デジタル時代、インターネット時代を象徴するスキャンダルであったと言えよう。しかし、この映画の見どころは、主人公アンソニー・ウィーナーの惨めな落ちっぷりではない。落ちるところまで落ちて、後は上がるだけというところからまた落ちる。しかし、それでも懲りずに上がろうと足掻くウィーナーに、呆れる者もいれば、感心する者もいるはずだ。各々がそれぞれに感じ入ればそれで良いのだが、現代日本に暮らす我々には、非常に示唆に富む内容になっていた。彼のミスとそこからのリカバリーを見てみよう。

まず、もっこりブリーフの下半身写真をTwitterで見られるようにしてしまった、というのが彼の第一のミス。そして初動で、その写真が自分のものかどうかは定かではないと言ってしまったのが第二のミス。さらに、即刻辞任することを拒否(後に撤回し、辞任を正式に表明)したのが第三のミス。そして最大のミスは、妻に「実は他にもまだあるんだ」と打ち明けられなかったことであった。このあたりのミスの連鎖は、まるでどこかの国の名前を冠した大学のアメリカンフットボール部責任者にそっくりである。危機管理がまるでなっていない。いや、もっとダイレクトに日本の政界にウィーナーのcounterpartを求めるなら、それは宮崎謙介となろう。ゲス不倫+クソ&キモLINEでワイドショーを賑わせたあの男、またはもう少し真面目な方面から言えば、国会議員として育児休業を取ろうとしたことで世間に議論を巻き起こした男、と言えばピンとくる諸兄も多いのではなかろうか。それにしてもNew York Postの見出しの数々よ。”HE’S GOT SOME BALLS”、”HARD TIME!”、”WEINER EXPOSED”、”NAKED TRUTH”などなど。日刊ゲンダイあたりも、権力批判をやるのならもう少しウィットに富む方法でやってほしいと思わされる。

ウィーナーはここから劇的なカムバックを見せ、ニューヨーク市長選に立候補する。ゲイパレードを先導するし、自転車や地下鉄でニューヨークを駆け回り、MBWA(Management By Walking Around)を忠実に実行し、着実に市民の支持を取り付けて行く。またアメリカには”Everybody should be given a second chance.”もしくは”Everybody deserves a second chance.”という格言がある。一度はミスしても、誰もが二度目の機会が与えられてしかるべきだという考え方が一般的なのである。これを忠実に体現したウィーナーは一時は支持率トップに躍り出るも、ここで更なる激震が。ある意味では『女神の見えざる手』に匹敵するような激震である。今度は、モロ出し写真を複数女性に送信していたことがばれてしまったのである。Watergate事件ならぬWeinergate事件である。アホとしか言いようがないのだが、ウィーナーが仮にも許されたのは、前述したような、再起を歓迎するアメリカ的な考え方と、それ以上に妻による赦しがあったからだ。この妻こそ、フーマ・アベディンその人で、ヒラリー・クリントンの国務長官時代から大統領選挙運動に至るまでの右腕であった人物である。言うまでもなくヒラリーの夫はビル・クリントン元大統領であり、そのヒラリーも夫がモニカ・ルインスキーとの「不適切な関係」を持ったことを赦した(というか揉み消しに走った)ことで知られている。ただし、二度目は無い。二度目は無いのである。

Jovianは十数年前、衆議院議員の伊藤達也(自民党)とソフトボールをしたことがある。その時に印象的だったのが、めちゃくちゃフレンドリーな人であると印象付けようと頑張っているところと、バックネット裏で地元有力者に説教を喰らってペコペコしていた姿である。普通、政治家は地元の有権者、それも有力者にはへいこらするものだ。しかし、ウィーナーは、失うものの無い強みか、市民にも平気で論戦を吹っかける。妻がアラブ系であることを揶揄した男に詰め寄る様、自分を否定しても構わないが、支持者まで否定するなと一喝する様は圧倒的である。この時からウィーナーはエスニック・マイノリティの支持を集め始めたようだ。

結果としてウィーナーは落選するのだが、彼という存在は我々に様々な問いを突き付けてくる。現在の日本の政治状況に絡めて言うなら、「個人の性的な嗜好と個人の能力には関連があるのか」、「性的な志向と個人の存在意義に関連があるのか」などの問いが即座に思い浮かぶ。杉田水脈なる人格・識見ともに政治家として劣るとしか思えない人物の妄言を放置する政権与党の姿勢に、彼ら彼女らが創り出そうとする『美しい国』の正体が透けて見える。もちろん、そんな大袈裟に考えることなく、「あちらのメディアはたくましいなあ」、「ニューヨークには色んな人種や性的マイノリティがいるなあ」などの感想を持つだけでも良い。この男の姿を一面からだけ捉えようとすれば、それだけで失敗であろう。選挙ドキュメンタリーとしても楽しめるし、人生訓にもなりうる。2013年の選挙のことであるが、古さを全く失っていない。いつ見ても発見がある作品に仕上がっていると言える。特に、スキャンダル続出の自民党や財務省、文科省のお歴々に是非とも観てほしい作品に仕上がっている。本音でそう思っている。なぜならウィーナーは本当に懲りない男だからだ。

Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アメリカ, アンソニー・ウィーナー, ドキュメンタリー, フーマ・アベディン, 監督:エリース・スタインバーク, 監督:ジョシュ・クリーグマン, 配給会社:トランスフォーマー

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