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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 アバター ウェイ・オブ・ウォーター 』 -オリジナリティはどこに?-

Posted on 2022年12月31日2022年12月31日 by cool-jupiter

アバター ウェイ・オブ・ウォーター 50点
2022年12月29日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:サム・ワーシントン ゾーイ・サルダナ スティーブン・ラング シガニー・ウィーバー
監督:ジェームズ・キャメロン

 

妻が3Dで観たいというのでチケットを購入。

あらすじ

ジェイク(サム・ワーシントン)ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)は子宝にも恵まれ、パンドラの森で幸せに暮らしていた。しかし、クオリッチ(スティーブン・ラング)がアバターとして復活し、ふたたびパンドラに武力制圧に乗り出してきたことで、ジェイクは一家を連れて、海の民メトケイナ族のところに身を寄せるが・・・

ポジティブ・サイド

3Dで鑑賞したが、森の木々や葉の重なりの表現には驚かされた。前作『 アバター 』でジェームズ・キャメロンは「観客をパンドラに連れていくのではない。そこに住んでもらうんだ」と語っていたが、その映像世界への没入感はさらに上がったと言える。海のシーンでもそれは同じ。透き通った水の世界への没入感はすごかった。特にサンゴ礁的な場所で次男ロアクが大ピンチに陥るシーンは、呼吸できない水中ならではの緊迫感とも相まって、まさに息もできないほどだった。

 

中盤以降のドンパチ満載のアクションは大迫力の一言。『 エイリアン2 』や『 ターミネーター2 』に勝るとも劣らない大スペクタクルで、この水中、水上、船上、船内のバトルの連続だけでご飯が3杯は食べられるほど。CGを駆使したアクションの迫力だけなら『 スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け 』や『 アベンジャーズ / エンドゲーム 』よりも間違いなく上だろう。製作費が2億ドル超らしいが、その予算を正しく使ったのだと言える。

 

本作は『 ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス 』と同じテーマを追求している。すなわち、父親とは誰かという問いに対する答えを提示しようとしている。GoGでは、産みの親なのか、それとも育ての親なのかという二者択一の問いだったが、本作は父親であろうとしないジェイク、そして父親であることを拒否するクオリッチという対比が非常にユニークだ。これはジェイクとネイティリの子どもたちが直面するアイデンティティ・クライシスにもつながる問題で、This family is our fortress. = 家族こそが砦だ、と言い切るジェイクの弱さにドラマの焦点が当てられている。ナヴィという種族に惹かれたというよりも、ネイティリという個人に惹かれたという印象の強かったジェイクは、ある意味で成長していない。父親であろうとするよりも司令官であろうとする。それがある意味で、すぐに自分の子どもに向かって “Who’s your daddy?!” と説教するアメリカ人的(ジェームズ・キャメロンはカナダ人だが)だ。対するクオリッチは、スパイダーという自分の生物学的な息子をナヴィ後の便利な通訳ぐらいにしか考えていないが、その姿勢が最後に変化する。このコントラストの鮮やかさが本作のドラマ上のハイライトと言える。

 

疑似的な父子の関係を追求は『 トップガン マーヴェリック 』でも見られたが、これはアメリカ人(キャメロンはカナダ人・・・)の好物テーマ。ということは日本人好みのテーマでもあるということ。アクションだけではなくドラマもかなり盛り上がったと感じる。

ネガティブ・サイド

超上空から超大熱量のレーザーで撃ってくる地球人に、「すわ、パンドラに危急存亡の秋か?」と緊張が走るが、元々は鉱物資源の採掘に来たのではないの?貴重な資源にまでダメージを与えそうな超兵器をいきなり使うのはどうなの?と思ったら、今度はパンドラのトゥルカンの脳髄からゲットできる脳漿(?)のようなものが地球人の不老につながる???だからトゥルカンを狩りまくる???アバターを生み出せるほどの科学技術があるなら、その謎の不老物質もラボで生み出せるのでは?このトゥルカン狩りの指揮者がコテコテのブリティッシュ・イングリッシュ・スピーカーで、新天地の富を収奪するのはアメリカ人ではなく英国人という意味不明な印象操作。ジェームズ・キャメロンのアイデンティティーはどうなっているのか。

 

トルーク・マクトという伝説の英雄的なポジションに就きながらも、ジェイクがあっさりとその立場を放棄して、森の民を捨てて、森から離れてしまうのかがよく分からない。いや、それはあんな超兵器を見せられたら逃げるしかないのは分かるが、普通に考えればその宇宙船もサリー一家が逃げる先に移動できるわけで、なぜ海にまで追ってこないのか。単に舞台を海に移したいがためだけに出てきた超兵器なのか。

 

水の映像は文句なしに美麗だが、海という環境、そこに住まう生物に関してはオリジナリティが全く感じられなかった。前作のトルークはまあまあ独特な生物だと感じられたが、今作ではクオリッチもあっさりと乗りこなしてしまったことでプレミア感がダウン。また、代わりに登場する絆を結ぶ相手が思いっきりトビウオ。もっと異星感を出せなかったのか。トゥルカンもまんまクジラで、人とクジラは絆を結べ=クジラを食べるな、とでも主張しているのか。前作の、ヨーロッパ人が新大陸アメリカを発見した的な世界観はまだ許せるが、その新世界にもアメリカ的なルールを持ち込みますというのは頂けない。というか、ジェームズ・キャメロンは何がしたいんや。自分の息子やキリなどの、いわゆる混血児が疎外されてしまう問題を「家族の絆」で乗り越えようというのは理解できないこともないが、動物との関係をどう考えてるの?

 

生物学の専門家ではないJovianの目から見ても、スキムウイング(パンドラのトビウオ)が海面を飛び出て飛ぶようになったには、捕食者から逃れるか、または海面上にエサがあるからだろう。後者の描写はなく、おそらくトゥルカンがスキムウィングの捕食者なのだろうが、だとすれば片方でスキムウィングに乗りつつ、トゥルカンと絆を結ぶメトケイナ族とはいったいどんな二枚舌部族なのか。というか、トゥルカンは魚類なのか哺乳類なのか。というのも体を左右に振る魚式の泳ぎ方と上下に振るクジラ式の泳ぎの両方を見せていたから。クジラと同じく頭のてっぺんから潮を吹く生物が魚だとは考えにくいが、スタッフの誰もこの泳法の違いには気付かなかったのだろうか。

 

総評

3時間超の作品だが、映像体験としては文句なし。アクションに次ぐアクションで尿意を感じる暇もなかった。その一方で、ストーリーとしてはツッコミどころ満載かつオリジナリティに欠ける。『 ポカホンタス 』のアナザーストーリーをあと何回観ればよいのだろうか。次は地下か?それとも雲の上?クオリッチがある意味、不死者になってしまったため、エイワの力によって色々なキャラを復活させないと、今後のドラマは作りにくそう。まあ、そういったあれこれを考察するだけのドラマはしっかりと用意されている。生物学だの文化人類学だのの観点から考えなければ、スリリングな3時間を過ごすことはできる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

fortress

「砦」の意。音楽をやっていた人ならフォルテ=強く弾くという用語を知っているだろう。これはラテン語の fortis = strong から来ている。英検準1級レベルであれば、stronghold ≒ fortress というのも知っているはず。戦争映画や戦争ゲームでよく出てくる語なので、そのジャンルのファンなら知っておいて損はない。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 夜、鳥たちが啼く 』
『 死を告げる女 』
『 ホイットニー・ヒューストン  I WANNA DANCE WITH SOMEBODY 』

 

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Posted in 映画, 未分類, 海外Tagged 2020年代, D Rank, SFアクション, アメリカ, サム・ワーシントン, シガニー・ウィーバー, スティーブン・ラング, ゾーイ・サルダナ, 監督:ジェームズ・キャメロン, 配給会社:ディズニー

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