犯罪都市 THE ROUNDUP 65点
2022年12月11日 心斎橋シネマートにて鑑賞
出演:マ・ドンソク ソン・ソック
監督:イ・サンヨン
『 犯罪都市 』の続編。マ・ドンソクが出るだけでマ・ドンソクの映画になってしまうのだから、この役者のスターパワーには相当なものがある。とにかく鉄拳が全てを解決してしまうのだ。
あらすじ
衿川警察の強力班の刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)は、国外逃亡犯の身柄引き受けのためにベトナムに向かう。しかし、領事館に自首してきた容疑者を不審に感じたマは、背後にカン・ヘサン(ソン・ソック)という凶暴な犯罪者の存在を察知。ベトナムで独自に調査を開始する。一方で、カン・ヘサンに息子を殺された韓国の大企業の会長は、独自に殺し屋を雇ってカン・ヘサン抹殺を目論んで・・・
ポジティブ・サイド
冒頭から不穏な空気が流れる。若手社長がいきなり拉致され、ボコボコにされてしまう。この有無を言わせぬバイオレンスが韓国映画らしさ。その一方で、これはマ・ドンソクの主演映画。どんなにドギツイ描写があっても、彼が出てくれば一気にコミカルになる。冒頭で婦女子を人質にした立てこもり犯を前に右往左往する衿川警察の強力班の面々。そこに現れるマ・ソクト。なんだかんだありながらも、ナイフの相手を剛腕でノックアウト。狂暴なカン・ヘサンと剛腕マ・ソクトの対照的な導入で、これだけで二人の対決のショーダウンが楽しみになってくる。
その後の展開もカン・ヘサンのパートは容赦ない犯罪と暴力、マ・ドンソクのパートではコミカルな笑いを提供と、メリハリの利いた構成で物語が進んでいく。ベトナムまでやってきて、しかも領事館の中で「真実の部屋」をやるマ・ドンソクには笑ってしまう。対してカン・ヘサンも、殺害した若手社長の父親が送り込んでくるヒットマン連中を先制攻撃で撃退。狂暴なだけではなく、本物の戦闘力の持ち主であることを見せつける。前作のユン・ゲサンとチン・ソンギュもかなりの狂いっぷりを見せてくれたが、頭のおかしさと言う意味では今作のソン・ソックも全く負けていない。というか、これぐらい狂ったキャラでないと、マ・ドンソクと対峙できない。つくづくスターパワーのある役者である。
カン・ヘサンはベトナムの犯罪者たちのアジトに乗り込んでの大立ち回り。そこに遅れてやって来るマ・ドンソクとの最初の対決が中盤の見どころ。ここであのコミカル班長が大ダメージを負ってしまうが、彼の怪我とその後の病院での対応がストーリーにぴったりハマっている。単に怪我をさせられました、ではなく物語を勧めていく上での必然性のあるイベントになっていた。ここから舞台は韓国へ。
韓国でもカン・ヘサンが大暴れ。これはもう一所轄の一警察署の案件ではない。が、そこもあっさりとクリア。これなら元大阪府警のJovian義父も納得してくれそうな一コマがある。自分を狙う者すべてを殺し、カネを奪っていくカン・ヘサンを追う中で、強力班のメンバーもダメージを負っていく。警察の総力を挙げてカンを追うカー・チェイスのシーンはかなりの迫力。そして最後はカン・ヘサンとマ・ソクトの第2ラウンド。やはり鉄拳はすべてを解決するのである。ラストは『 エクストリーム・ジョブ 』的な大団円。本当のクランクアップのシーンをそのまま映画に使ったのかな?と思うほど。これはもう一本続編が来るかもしれない。
ネガティブ・サイド
刑事は二人で行動するのが基本中の基本。班の一人が単独行動することで、逆にカン・ヘサンに刺されてしまうが、これだとカン・ヘサンが強いというよりは刑事の方が間抜けに見えてしまう。班長とマ・ソクトは二人組で行動していたが、それでも班長はカンに重傷を負わされた。この刑事も二人組で行動していて欲しかった。
おとり捜査は日本でも条件付きで行われ始めているらしいが、韓国では民間人(というか不法滞在者)をこんな風に捜査に駆り出すのはOKなのだろうか?ここで警察署長もしくは班長にもう一回根回しをしておけば印象も違ったのだが。
ヴィランのカン・ヘサンの悪人っぷりに文句はないが、彼のやっている犯罪行為そのものはちんけに思える。この点では前作のユン・ゲサンとチン・ソンギュのペアによる組織犯罪の方がはるかに脅威に思えた。『 ただ悪より救いたまえ 』のように、国外でうごめく巨悪を叩くというプロットを構想できなかったものか。
総評
『 ただ悪より救いたまえ 』のように明らかにアジア市場を意識した作りになっている。というか、やっていることは『 ただ悪より救いたまえ 』にそっくりの韓流ノワールなのだが、マ・ドンソクが暴れるだけでスカッとした爽快アクションになるのだから不思議である。この丸顔中年筋肉オヤジはどこかチャールズ・バークレーやシャキール・オニールといった、子どもがそのままデカくなったような雰囲気がある。どんなにバイオレンス色が強まっても、それを中和してしまうキャラクターというのはなかなか見当たらない。スカッとした気分になりたければ、前作を鑑賞の上、本作を観よう。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
I would like …
・・・が欲しい、というのを丁寧に言う表現。I want some coffee. の代わりに I would like some coffee. と言えば、それだけでかなり丁寧になる。英語圏でも非英語圏でも、海外旅行する際に何かをリクエストする時には I would like ~を使っておけば大怪我をすることはない。
次に劇場鑑賞したい映画
『 グリーン・ナイト 』
『 ホワイト・ノイズ 』
『 夜、鳥たちが啼く 』