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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱 』 -伝記映画の佳作-

Posted on 2022年11月3日 by cool-jupiter

キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱 70点 
2022年10月30日 シネ・リーブル梅田にて鑑賞
出演:ロザムンド・パイク サム・ライリー アニャ・テイラー=ジョイ
監督:マルジャン・サトラピ

 

怪作『 ハッピーボイス・キラー 』の監督が、マダム・キュリーを料理するという。そして演じるは円熟味を増したロザムンド・パイクということでチケット購入。

あらすじ

マリ・スクウォドフスカ(ロザムンド・パイク)は、大学で満足なラボを与えられずにいた。そんな中、マリはピエール・キュリー(サム・ライリー)と出会い、交際し、結婚してキュリー夫人となる。二人は共同で研究を積み重ね、ついにマリは大発見を行うが・・・

 

ポジティブ・サイド

キュリー夫人というとラジウム発見のイメージが強い。というか、それしか知らなかった。本作を鑑賞して、かなり脚色されている点はあるのだろうが、単なる科学者ではない人間マリ・キュリーが分かった気がする。

 

本作は非常にユニークな構成だ。いきなりキュリー夫人の死亡直前から始まる。そして、彼女が自身の人生を走馬灯のように振り返る形で、物語が提示されていく。不遇の研究者時代に出会った夫ピエール、結婚、出産、放射能の発見、ノーベル賞受賞などがドラマチックに描かれていく。印象的なのは、明らかにキュリー夫人の死後のイベントも回想されるところ。たとえばヒロシマへの原爆投下や、チョルノービリ(チェルノブイリ)の原発事故などがある。自身の発見が、世界を良い方向にも悪い方向にも変えうるということは作中でも言及されていたが、それを具体的なビジョンとして見せることで、キュリー夫人の卓越した想像力を見事に表していた。

 

ロイ・フラーとピエール・キュリーの交流も個人的に興味深かった。フラーが当時の最先端科学と踊りを融合させようとしたことはよく知られている。その後、スピリチャルな方面に傾倒していったのも史実。観ているうちは「自分には興味深いが、このパート要るかな?」と感じてしまったが、これは浅慮だった。このフラーとの交流が、中盤以降に思いがけない形で人間マリ・キュリーをクローズアップすることにつながる。マルジャン・サトラピ監督はかなりの手練れである。ロイ・フラーについて知りたいという人は『 ザ・ダンサー 』を鑑賞されたし。

 

悲惨極まる戦争に対しても、殺傷のためではなく人命救助のために物理学の知識と技術を応用したことを不勉強にして知らなかった。フローレンス・ナイチンゲールより2世代ほど下のマリ・キュリーであるが、ほぼ同時代人と言ってよいだろう。ナイチンゲールも知識と技術をクリミア戦争の野戦病院で発揮したが、マリ・キュリーもそうだったのか。女性として、妻として、母として、そして科学者として生きるマリ・キュリーの生涯と、過去・現在・未来をすべて俯瞰するかのような構成がよくよくマッチしている。『 ドリーム 』よりもシリアスさは上だが、そちらを楽しめた向きは、きっと本作も堪能できるはず。

ネガティブ・サイド

マリ・キュリーの苦闘を描くことに多大な時間を費やしているが、厳しさや険しさが前面に出すぎていたと感じる。彼女にもほのぼのとした家族の団らんや、夫婦としての睦まじい関係性はあったはず。そうした面に光を当てることがなかったのは残念である。当時の世相や、彼女自身の在フランスのユダヤ系ポーランド人というバックグラウンドがあったのは事実だろうが、もう少し想像力を発揮して、人間味のあるマリ・キュリーを描き出してほしかった。

 

娘夫婦もノーベル賞を受賞したことに触れられなかったのは何故なのだろう。

 

邦題が今一つ。キュリー夫人というのは馴染みのある名前であるが、敢えて「マリ・キュリー 天才科学者の愛と情熱」のような邦題にしても良かったのではないか。映画が描いたのは夫人としての面だけではなく、母親や科学者としての面も多かったのだから。

 

総評

猿橋勝子も苦労したが、それよりもっと苦労したのがキュリー夫人なのだなと、しみじみ思う。こうした作品を観ると、人類は進歩しているのか、それとも進歩していないのか分からなくなってくる。一つ言えるのは、作り手はそんな短絡的な結論は求めていないということ。放射能の放つ妖しい光を、美しいものにできるのか、それとも破滅的なものにしてしまうのか。それはマリ・キュリーの後半生の生き方を参考にしてください、というのがマルジャン・サトラピ監督のメッセージなのだろうと思う。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

speak for oneself

「自らのために語る」が直訳だが、これはしばしば無生物を主語に取る。

His achievement speaks for itself.
彼の業績は(誰かが語るまでもなく)素晴らしいものである。

These facts speak for themselves.
これらの事実を見れば(誰かが説明しなくても)分かる。

The results spoke for themselves.
結果がすべてを物語っていた(誰かが説明せずともすぐに分かった)。

のように使う。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 天間荘の三姉妹 』
『 王立宇宙軍 オネアミスの翼 』

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, アニャ・テイラー=ジョイ, イギリス, サム・ライリー, ヒューマンドラマ, ロザムンド・パイク, 伝記, 歴史, 監督:マルジャン・サトラピ, 配給会社:キノフィルムズ

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