8番出口 40点
2025年9月6日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:二宮和也 河内大和 浅沼成
監督:川村元気
鑑賞予定はなかったが、本作のモデル駅がJR大阪天満宮駅だという説に興味を惹かれた。なぜならJovianは毎日同駅の8番出口から会社に向かっているから。というわけでチケット購入。
あらすじ
地下鉄で派遣先へ向かっていた男(二宮和也)は、不思議な空間に迷い込み、出られなくなってしまう。異変がなければ進み、異変があれば引き返し、そして8番出口から出ることという謎のルールに従って、男は前へ進んでいくが・・・
ポジティブ・サイド
なんといっても謎のおじさんを演じた河内大和が抜群の存在感を放っている。あの歩き方、曲がり方、表情の作り方、止まり方、そのすべてがリアル。ここでいうリアルとは、こんなおじさんは絶対に存在しないはずなのに存在してしまっているという意味。
ゲームに忠実で、異変のあるべき場所もだいたい同じ(だった気がする)。通路の雰囲気も確かに大阪天満宮駅の8番出口脇から伸びて左に曲がっていくやや上りのスロープの場所とよく似ていた。9番出口を出てちょっと北に進むと某専門学校がある。KOTAKE CREATEはこの学校出身なのかもしれない。
ネガティブ・サイド
最初の5分でストーリーの展開と着地点が見えてしまった。ある程度映画を見慣れている人の多くがそう感じたのではないだろうか。そうしたキャラクターの背景を一切抜きにして、理不尽かつ意味不明なゲームの世界をまず最初に提示する。そして通路のポスターなどを、たとえば病院主催のパパママ教室にするなどして、主人公の葛藤を言葉ではなく主人公の表情やたたずまいから感じ取らせる。そういう演出は不可能だったか。
主人公のキャラクターがほとんどそのまま『 グーニーズ 』のマイキーだったり、異変とともに出てくるクリーチャーが古今東西でおなじみの姿だったり、異変の一つが『 シャイニング 』のパクリだったり、とにかくオリジナリティがない。
そもそも基のゲームに存在した理不尽なゲームオーバーがない。おじさんがいきなり目の前に迫ってくるという異変に対して背を向けることができずにゲームオーバー、そして → 0番出口 の掲示の前からリスタート・・・のような理不尽さがないと、異変の危険度というか、異変をどれくらい真剣に捉えなければならないかといった真剣度が高まらない。
異変を見逃さないということは、逆に言えば我々はそれだけ世の中の変化を見逃している、あるいは世の中の変化を拒んでいるとも言える。それを一つのテーマに挙げるのは結構だが、そのことを主人公が悟るのではなく、まったく別のキャラクターの口から語らせるのは、凡百の邦画がやってしまう安易な方法で、本作もその陥穽にはまってしまっている。やたらけばけばしい女子高生キャラクターは不要だった。もっと言えばおじさんのパートも不要だった。
本作は二宮やら小松やらの名のある俳優が出てくるが、それがノイズになっているように感じた。『 侍タイムスリッパー 』や『 最後の乗客 』のように、無名だが実力あるキャストをそろえて撮影してほしかった。そうすれば観ている側も感情移入できるし、代り映えのしない駅のコンコースにもより注意を向けられるようになると思うのだが。
総評
Jovianは原作は未プレイ。だが、Jovian妻がHIKAKINの配信動画を観ていたのを時々横から眺めてはいた。映画にするならゲームに忠実に作りつつ、オリジナルなアイデアを盛り込んでほしかった。本作は残念ながら原作の再現度もオリジナル要素もどちらも中途半端。駄作とまでは言わないが、面白いとも言えない。貯まっているポイントを消化して無料鑑賞するのはあり。配信やレンタルを待つのもありだ。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
anomaly
異変や異常を指す単語。はじめて知ったのは小説『 星を継ぐもの 』の原著 “Inherit the Stars”でだった。解剖学的異常など、医学の分野で使うことが多いが、同小説では月のレゴリスの放射性同位元素の不均衡な分布を指してアノマリーという言葉を使っていた。調べてみたところ、『 8番出口 』の異変も anomaly と訳されている。英語学習者はこれを機に本単語も覚えてみよう。
次に劇場鑑賞したい映画
『 蔵のある街 』
『 侵蝕 』
『 ブロークン 復讐者の夜 』

にほんブログ村