ムーンインパクト 20点
2022年11月26日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:マイケル・ブロデリック クリス・ブドゥー
監督:ブライアン・ノワック
『 ザ・メニュー 』鑑賞後に口直しが必要と感じ、チーズバーガーをほうばりながら観られそうなB級作品をTSUTAYAでピックアウト。決して『 ムーンフォール 』と間違えてレンタルしたわけではない。
あらすじ
月に巨大小惑星が激突。その衝撃で月は軌道を離れ、徐々に地球に落下してきた。月の地球落下まで残された時間は3時間。ペンタゴンは反物質エンジンで月の裏側にブラックホールを発生させ、その重力で月を引き戻す作戦を実行するため、かつての宇宙飛行士ジム・ローソン(マイケル・ブロデリック)を宇宙に送り込もうとするが・・・
ポジティブ・サイド
序盤のジムとポールの兄弟のある行動を見て「おいおい、アホかこいつらは」と思ってしまったシーンが、まさかの終盤の展開につながっている。これには腰を抜かした。その伏線の張り方もさることながら、その馬鹿馬鹿しさと、それゆえのスケールの大きさには驚かされた。監督はブラックホールだとか、月の落下よりも、このビジョンを映画にしたかったんだろうな。
映画が始まった瞬間から月の落下まで3時間、それがすぐに1時間40分ぐらいになる。その間、ジムとポールの行く手にはトラブルだらけ。とにかく常に彼らがせわしなく動き回るので飽きは来ない。
ネガティブ・サイド
科学的に間違っている描写を逐一挙げれば、おそらく数千に届くのではないか。それぐらい何もかも間違えている。物理や天文学をまともに学校で習ったことはなく、そうした知識は小説、映画、テレビ番組、書籍などから得ているJovianでも「なんじゃこりゃ?」と感じるシーンやセリフがてんこ盛りである。
まずもって反物質エンジン?反物質の採取は月軌道どころか木星あたりに行かないと無理。さらに反物質エンジンでブラックホール生成?意味が分からない。さらにそのブラックホールの重力で月を元の軌道に引き戻すと言うが、生み出してしまったブラックホールはどう片付けるのか?
さらに中国とロシアがアメリカの作戦を無視して核ミサイルを射出しようとする。その理由は「ブラックホールは地球まで飲み込んで破壊してしまう恐れがある」という至極もっともな懸念。それに対するジムとポールの答えが「重力は距離の逆二乗で弱まるから大丈夫、地球にブラックホールの重力は届かない」という説明・・・って、ちょっと待った。それ、某出版社が小学校の理科の参考書でやらかしてた間違いそのまんま。「人工衛星は無重力空間にあります。地球の重力が届きません」と書いた次のページで「月は地球の重力に惹きつけられる形で回っています」というのと理解のレベルが同じやんけ。大体、地球の重力に引っ張られる月を、さらに引っ張り戻せるだけの重力を持つブラックホールなら、地球も同時に引っ張るに決まってるやん。AとBが綱引きしてて、BがAを引っ張ってる最中に、CがAをさらに強い力で引っ張ったら、CがBとAの両方を引っ張るでしょ・・・
その他にも宇宙船の速度が時速3億6千万キロ、つまり光速の約3分の1という反則級のスピードに達したのには笑った。最初は字幕のミスか?と思ったが、何度聞いても two hundred and nine million miles per hour = 時速209,000,000マイルと言っているので、字幕ミスではなかった。他にも宇宙船が遠心力を使わずに人工重力を発生させていて、なんでその技術をスケールアップさせて月を別方向に引っ張らないの?と思わせてくれる。他にも宇宙服に穴が開いているのに、軽く空気が漏れるだけの描写など、随所で頭を抱えざるを得ない描写のオンパレード。
極めつけは、この手の天体落下型ディザスター・ムービーでおなじみのロシュ限界が思いっきり無視されているのには呆れた。というのも、脚本家の名前が Joe Roche =ジョー・ロシュなのだ。脚本を書く時に科学的考証を一切しないと決めてたんかな?
カメラワークも皆無。その他のキャラもほとんどすべて同じアングルでひたすらしゃべり続けるだけ。その半数は、ほとんど無意味に死んでいく。彼ら彼女らの演技はまさに学芸会レベル。映画大国アメリカでも、ゾンビやらサメやら天体落下やらのクソ映画を大量生産することで、ごくまれに傑作が生まれるという構図は健在なのだ。
総評
これぞ愛すべき大馬鹿B級映画である。いや、クオリティを考えればC級もしくはD級と言ってもいいのだが、観る側が「ああ、アンタらはこのシーンをやりたかったのね」と作り手側に少しでも共感できれば、それだけでB級である。レンタルもしくは配信で観る場合、楽しもうなどと思ってはいけない。雨の週末にスナックでも食べて、スマホ片手に鑑賞するのが吉である。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
one of a kind
「唯一無二」、「他に並ぶものがない」の意。人にも物にも使える。普通は良い意味で使われるが、
This film is one of a kind … in a bad way.
この映画は唯一無二だよ・・・悪い意味でね。
のように言うこともできる。
次に劇場鑑賞したい映画
『 サイレント・ナイト 』
『 母性 』
『 グリーン・ナイト 』