少林サッカー 75点
2022年10月20日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:チャウ・シンチー
監督:チャウ・シンチー リー・リクチー
大学で教えている教材のユニットの中に The Changing Face of Kung Fu というものがあった。カンフー映画はたくさんあるが、その中でも本作は群を抜いて異彩を放っている。久しぶりに鑑賞せんと、近所のTSUTAYAで借りてきた。
あらすじ
かつてはスター選手だったが、八百長を飲んだことから落ちぶれたファン。しかし、少林拳の求道者である青年シン(チャウ・シンチー)と出会い、彼はシンにサッカーを教えることに。シンは少林拳の仲間を集めてチームを結成する。しかし、かつてのファンの因縁の相手であるハンも異能のサッカーチームを率いていて・・・
ポジティブ・サイド
拳法それ自体は中国映画、特に香港映画の主要なモチーフ。ブルース・リーにジャッキー・チェン、ドニー・イェンとスターが定期的に生まれてもいる。しかし、本作は拳法とサッカーを混ぜるのだから、言葉の正しい意味でのジャンル・ミックスと言えるだろう。ある意味『 えびボクサー 』や『 ミスターGO! 』に近いのかもしれない。
拳法家としてのシンの純朴さが光る。そのため、少林サッカーの馬鹿馬鹿しさが余計に映える。よくこんな大真面目にアホな構図の数々を構想したなと呆れてしまう。これは誉め言葉である。大空翼のドライブシュートか!と思うほどに脚を大きく後ろに反り返した状態から放つスーパーシュート一発でチンピラをのしていくシンに笑わずにはいられようか。
シンの仲間の拳法家たちも惜しむことなく笑いを提供してくれる。その一方で、彼らも彼らなりに生活は苦しい。この対比が彼らの快進撃が大きなカタルシスを生む要因になっている。太極拳の達人のムイの変化も見逃せない。醜女から始まって、ジュリアナ系に変身し、最後には坊主に変化する。何をどうやったらこんなプロットを思いつけるのか。
チームデビルの面々がアメリカ式のドーピングを使って強化されているのも笑ってしまう。強化されているということにではなく、その強化の見せ方だ。特に長髪ゴールキーパーの守護神ぶりはもはや漫画の領域。ただ、当時はMLBでもど派手なホームラン・ダービーが展開されていて、しかもその多くがステロイド使用者だった。なので、薬を使えば極限までパワーアップできるというアホな設定にも説得力があった時代だった。
ブルース・リーのオマージュあり、漫画『 ドラゴンボール 』かと思えるほどの過剰なCG演出ありと、観る者をまったく飽きさせない。22世紀にもカルト映画として鑑賞されていることだろう。
ネガティブ・サイド
序盤の展開が少々もたつく。いきなり皆が踊り始めるのは愉快だが、そこは別になくてもいい。皆が心の奥底に封じ込めてしまった夢が、シンたちの活躍によって解き放たれるというのは、別に序盤で示唆しなくてもいい。
シンが素でムイの勇気ある告白をスルーするシーンは何度見てもキツイ。ある意味、少林シュートが肉体に与えるダメージ以上に、観る側の精神を削るシーンだ。シンをここまで朴念仁に設定しなくてもよかっただろう。
勧善懲悪ものではあるが、悪役であるハンが懲役5年というのは短すぎではないだろうか。
総評
コメディの傑作。拳法というのはCGを極力排して、可能な限りレトロな手法で現実的に見せるものだという思い込みを軽々と打ち破ってくれた作品。そう、本作は固定概念をぶち壊してくれるのだ。「拳法を流行させたい」というシンの夢をあっさりと否定するファン。年を取ると夢が見られなくなるが、夢は見ないことには絶対に叶わない。そういう意味で、本作は10年に1回は観た方がいい気がする。本作にインスパイアされて、神韻芸術団の西宮公演のチケットを買ってしまった。単純やね、俺も。
Jovian先生のワンポイント中国語レッスン
モウマンタイ
無問題と書いてモウマンタイと読む。ある程度以上の年代なら、ナイナイの岡村の映画『 無問題 』でお馴染みのはず。読んで字のごとく No problem の意味である。タイ語でマイペンライ、韓国語でケンチャナヨーのように、中国旅行をする前に覚えおきたいフレーズ。
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