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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 コンテイジョン 』 -コロナ”後”への警鐘-

Posted on 2021年10月31日 by cool-jupiter

コンテイジョン 75点
2021年10月28日 レンタルBlu rayにて鑑賞
出演:マリオン・コティヤール ローレンス・フィッシュバーン マット・デイモン ジュード・ロウ
監督:スティーブン・ソダーバーグ

f:id:Jovian-Cinephile1002:20211031223409j:plain

コロナは収まりつつあるとはいえ、第六波の到来も予測されている。実際に、世界では全然収まっていない。そんな時は『 アウトブレイク 』の時と同様に、ウィルス感染テーマの作品を鑑賞して、少し未来を想像してみる。

 

あらすじ

ミッチ・エムホフ(マット・デイモン)は、出張帰りの妻ベスが急激な体調不良になったことから病院に急行。しかし、ベスは死亡した。未知のウィルスによるものだった。そのウィルスは世界各地に拡散、パンデミックとなる。アメリカCDCのチーヴァー(ローレンス・フィッシュバーン)はウィルスの正体を突き止め、感染拡大を防止しようと奮闘するが・・・

 

ポジティブ・サイド

始まりから終わりまで、全てが淡々とした空気で進んでいく。突出したヒーロー然とした人物がおらず、それがリアルさを増している。世界各地で静かに、しかし確実にウィルスが勢力を拡大していく様も淡々と映し出される一方で、現場の右往左往、そしてその奥のWHOやCDC内部の人間の奮闘が描かれている。このCDCやWHOが現実世界でいまいち働いているように見えないのがポイント。実際は悩み苦しむ人間が多くいることが描かれている。本作のウィルスは虚構だが、そこに現実の豚インフルエンザを絡めてくることでリアリティが増している。2009年、日本でも薬局やコンビニからマスクが消えたことを覚えている人は多いだろうし、それこそ2020年春のマスク争奪戦の記憶は誰しもの脳裏に焼き付いていることだろう。そうした記憶を下敷きに本作を見れば、人間はなかなか教訓を学ばないものなのだなと思わされる。

 

ウィルスの起源をリサーチする役割のケイト・ウィンスレットがさっそくウィルス感染し、死亡する。この無情さがいい。日本でもコロナの深刻さ(それを疑問視する向きも多数いるが)が認識されたのは、志村けん死亡のニュースからであったと思う。ウィルスは相手に忖度などしない。一方で、最初から抗体を持っている、あるいは免疫の強さによって影響を受けない者もいるという設定も、SFではお馴染み(『 アンドロメダ病原体 』など)ながら説得力がある。

 

マット・デイモンやローレンス・フィッシュバーン、ケイト・ウィンスレット、グウィネス・パルトロウなどの名のあるスターを起用しながら、誰かが飛び抜けた活躍をするわけでもなく、誰かがとんでもない事件を起こすわけでもない。人間のちょっとした弱さがその人間を悪事に走らせる展開があるが、それもまた自然な展開に思える。

 

パンデミックが進行し、人々が自主的にロックダウンを実施した時に何が起こるのかを、まるでドキュメンタリー作品のようなタッチで映し出していく。ミッチの娘がボーイフレンドとテクストする中で、ステイホーム生活を jail = 牢屋 と表現していたが、これは若者には本当にそのように感じられるのだ。たまたまJovianは大学の教壇に立たせていただいているが、20歳前後の若者にとっての青春の時期というのは、空虚で低生産な時間を過ごすことに定評のある日本のオッサンの日常とは大いに異なるのである。 

 

ジュード・ロウ演じるブロガーが怪しげな情報をふりまいて支持を得るというのも、コロナ、およびコロナに対するワクチンに対するネガキャンでしこたま儲けたという医療従事者や評論家連中の登場を正確に予見していたものとして評価できる。というか、どんな苦難の状況にあっても、それを鉄火場にできる人間は必ず出てくるということか。

 

最後の終幕も苦い余韻がある。結局は人類が自然破壊を推し進めてしまったことがパンデミックをもたらした。現実の新型コロナの起源についても、「突き止めた!」、「発表する!」とトランプ政権時代のアメリカはやたらとかまびすかしかったが、全て大山鳴動ねずみ一匹。真相は案外本作の示す通りなのかもしれない。

 

ネガティブ・サイド

映画なので、ある程度ご都合主義にならざるを得ないのだろうが、現在の我々の目から見てかなり不自然に映る描写がある。最も気になったのはケイト・ウィンスレットのキャラクター。Jovianは看護学校中退の経歴があるので言わせてもらうが、マキシマム・プリコーションどころかスタンダード・プリコーションすら施さずに調査にあたるのは杜撰を通り越して無能ではないだろうか。もちろん、感染してもらわないといけないキャラが防御が万全では話が進まないが、もうちょっとここに説得力が必要だった。

 

また、ジュード・ロウのキャラにR-0、いわゆる基本再生産数について議論を吹っ掛けられたチーヴァーが言葉に詰まってしまうのも不自然だった。SARSや2009年の新型インフル騒動でも、いわゆるスーパー・スプレッダーの存在は報じられていた。R-0が2というのは、単純に2のべき乗で感染者数が増えていくわけではない、クラスター(これについても言及されていた)を潰していくことが最善の対処である、というような旨の反論ができたはずなのだが・

 

総評

コロナ・パンデミックの始まりから猖獗までを見てきた現代人にとって、非常に示唆に富む内容になっている。映画製作者たちの取材力と考察力に裏打ちされた想像力と創造力は大したものだなと心から感心する。第6波、さらにその先(コロナは相撲で言うと関脇とされており、大関や横綱は今後100年でやって来るとされる)に、我々がどう振る舞うべきで、またどう振る舞うべきではないのかについてのヒントが満載である。パンデミックなど社会の擾乱を奇貨とする輩をフォローしないという教訓だけでも学ぶべきだろう。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

be immune to ~

~に免疫がある、の意。普通は医学的な文脈で使われるが、卓球の水谷のように、”I’m immune to criticisim.”のように言ってもいい。「批判の言葉をいくら投げつけてきても、俺には全く効かないぜ」ということである。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, SF, アメリカ, サスペンス, マット・デイモン, マリオン・コティヤール, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画

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