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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 屍人荘の殺人(映画) 』 -原作をさらにライトに仕上げた映像作品-

Posted on 2019年12月15日2020年4月20日 by cool-jupiter

屍人荘の殺人 50点
2019年12月14日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:神木隆之介 浜辺美波 中村倫也
監督:木村ひさし

f:id:Jovian-Cinephile1002:20191215035154j:plain
 

『 屍人荘の殺人(小説) 』の映画化である。しかし、原作小説の忠実な映像化ではなく、一応ちょっとした変化を織り交ぜている。なので原作を読んだ人も、興味があれば映画館に足を運んでもよいだろう。それなりに面白い出来に仕上がっている。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20191215035216j:plain
 

あらすじ

大学のミステリ愛好会の明智恭介(中村倫也)と葉村譲(神木隆之介)は、同じ大学の探偵少女・剣崎比留子(浜辺美波)の誘いで、ロックフェス研究会の夏合宿に参加することとなった。宿泊先は紫湛荘。しかし、その別荘が屍人荘に変貌。外部の人間も数人交えて閉じこもるメンバーたち。そこで密室殺人が起きてしまい・・・

 

ポジティブ・サイド

『 センセイ君主 』で強く感じたことだが、浜辺美波の真骨頂はコメディエンヌを演じることかもしれない。本作でも非常に理知的な探偵を演じながらも、本質的には普通のお茶目なところもある女子大生になれていた。

 

中村倫也は顔芸で、神木隆之介も心の声でコメディを盛り上げる。特にサノスばりの指パッチンは明智恭介というキャラの切れ者ぶりと間抜けっぷりの両方を描き出す効果的な演出となった。言わずと知れた明智小五郎の明智の名前を冠しているだけあり、高等遊民の雰囲気を醸し出している。そしてワトソン役の葉村は、心の声がダダ漏れの、ある意味では非常に等身大のミステリ愛好会員であった。ミステリの世界に浸り過ぎたせいで、可愛いあの子との距離の縮め方が分からないという、『 桐島、部活やめるってよ 』で橋本愛にドギマギしていたあの姿が思い起こされた。

 

原作小説からのキャラも、映画オリジナルのキャラも、本作ではとにかくユーモアを前面に押し出している。それはやはりとある「舞台装置」とのバランスの為なのだが、それが効果的に機能している要因に、昨年公開の邦画『 カメラを止めるな! 』が挙げられる。また韓国映画の『新感染 ファイナル・エクスプレス 』や『 ゾンビランド:ダブルタップ 』など、このジャンルは常に新しいアイデアが投入されるものだ。ここでもどういうわけか、とあるプロレスラーが参戦してくる。非常に滑稽であり、恐怖でもある。その比率は9:1で、もちろん滑稽が9で恐怖が1である。そこかしこで笑えるのが本作の大いなる特徴である。

 

グロいはずの描写もレントゲン写真的に処理され、グロ耐性の無い人への配慮がされている。これはありがたい。おかげでデートムービーに使うこともできる。推理を楽しみたいという向きにも、それなりにフェアな材料提示がされている。ライトなミステリ好きにとってもそこそこ楽しめるように作られている。

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ネガティブ・サイド

原作小説もそうであったが、ハードコアなミステリファンを唸らせるような出来にはなっていない。序盤でこれ見よがしに、とある人物の不在をアピールしたり、マスターキーを濫用したりと、少々過剰サービスとも思える描写や演出が気になった。また原作にはない明智の台詞、「事件はまだ起きてはいないが、犯人は分かった」という台詞は、原作を読んだ者にとっては完全なるノイズである。原作未読者でも、すれっからしの人であれば、すぐにピンと来たことだろう。ライトなファンへの配慮かもしれないが、ハードなファンには雑音である。このあたりのバランス感覚にもう少し敏感になることが木村ひさし監督には求められる。

 

また、ギャグの面で滑っているものもあった。「迷宮太郎」はその最たるものだろう。キャラクターにしても、原作ではマニアか学者かというキャラが、映画では『 ショーン・オブ・ザ・デッド 』を鑑賞しながらニヤニヤしているだけ。また、このキャラの分析によって推理が進み、またサスペンスも生まれるのだが、そうした要素をほぼ全カット。ユーモアを前面に押し出してきたのは、サスペンス路線を放棄したからだという見方も成り立つ。事実、本作の「舞台装置」に対してのキャラクター達の対策はお粗末もいいところである。

 

また映画オリジナルの要素に関しては、現実的な感覚が欠けている。一番に思うのは、「スマホの画面ロックをしないのか?」である。この映画の一番の客層あたりは、この点だけで真相はともかくも犯人を当ててしまってもおかしくない。

 

原作にあったちょっとしたお色気どぎまぎ要素をキスに置き換えているにもかかわらず、肝心のキスシーンもなし。そこは比留子に大真面目な顔で『 覚悟はいいかそこの女子。 』の小池徹平と同じで投げキッスさせれば良かったのだ。そういうサービスシーンすら思いつかなかったのか。

 

最終盤に明智と比留子が再対決。そんなアホな。原作のマイナス要素だったシリーズ化への野望が、映画本編ではかなり薄まっていたにもかかわらず、ここでそれをやるか?しかも、自分が葉村ならば、この展開で比留子についていこうとは決して思わないだろう。続編(『魔眼の匣の殺人 』)も映画化するなら、少なくとも監督は変えてもらいたい。

 

総評 

浜辺と神木の掛け合いを楽しむ作品である。推理についてはライトなファン向け、○○○要素についてもライトなファン(このジャンルにそんな層が存在するのか疑問だが)向け。結局のところ、高校生や大学生カップルが一番の客層になるだろうか。悪い作品ではない。しかし手放しで褒められる作品でもない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話

Awesome!

劇中の「すごい!」である。ただし、Awesomeは「すごい」、「素晴らしい」といった意味以外にも、リアクションで使われることも多い。

A: Can you get this job done by the end of the day?

B: Sure. No problem.

A: Awesome.

などのようにも使える。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, コメディ, ミステリ, 中村倫也, 日本, 浜辺美波, 監督:木村ひさし, 神木隆之介, 配給会社:東宝

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