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『 国家が破産する日 』 -韓流社会派サスペンスの秀作-

Posted on 2019年11月28日2020年4月20日 by cool-jupiter

国家が破産する日 75点
2019年11月24日 シネマート心斎橋にて鑑賞
出演:キム・ヘス ユ・アイン ホ・ジュノ チョ・ウジン ヴァンサン・カッセル
監督:チェ・グクヒ

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国家が破産するとは過激なタイトルである。しかし、現実に国家が破産することはありうる。記憶に新しいところではギリシャだろうか。では、その前は?それはお隣の韓国だった。1997年当時、Jovianは高校生だったためか、韓国のデフォルトに関するニュースは記憶にない。だが、そのために余計なことを考えることなく素直に物語に入って行くことができた。

 

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あらすじ

1997年、韓国銀行の通貨政策チーム長ハン・シヒョン(キム・ヘス)は、国家破産の危機が迫っていることに気付いた。政府は国民に周知せず、極秘裏に対策を進めようとする。一方、金融コンサルタントのユン・ジョンハク(ユ・アイン)は独自にデフォルトの危機を察知、大儲けを企む。町工場の経営者ガプス(ホ・ジュノ)は大手百貨店から大口の注文を受けるも、現金決済ではなく手形決済を受け入れていた・・・

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ポジティブ・サイド

キム・ヘス演じるチーム長がひたすらにクールである。どこか『 シン・ゴジラ 』で尾頭ヒロミを演じた市川実日子を思わせる。相手が上司であろうと上級官僚であろうとIMFの専務理事であろうと、自分の信念に基づいて、言わなければならないことは言う。女性であっても男性であっても、これができる人間は多くない。こうした人物の下で、あるいはこうした人物と共に働ければ、それは果報である。

 

通貨危機を利用して一攫千金を目論むユン・ジョンハクというキャラも面白い。安定した職を文字通りに捨ててしまい、一発逆転の大勝負に出て、見事に大金を手に入れる。しかし、彼がカネと引き換えに失ったものは・・・ 経済の破滅に乗じてひと財産築く話は古今東西によくある話である。近年では『 マネー・ショート 華麗なる大逆転 』がまさにそうだった。『 ゴールド/金塊の行方 』も、ある意味では危機に乗じて大きく儲ける話だと言えるかもしれない。ジョンハクの生き方を見習おうとは思わないが、彼のような野望には憧れるという向きには、上の二作品を勧めたい。

 

町工場のガプスが個人的には最も刺さった。好景気に沸く国、大手の百貨店との大口取引、これで従業員にさらに仕事を提供できるし、妻も働きに出ずに済む。娘の学費の工面もできる。庶民の望みうる幸せに手が届こうかという時に、危機が襲い来る。現金決済。日本のバブル全盛時を経験した世代は、銀行からの借入金を現金で受け取り、商売上の大きな取引においても札束を詰めたスーツケースを持参していたと言う。韓国の事情は分からないが、日本ではようやくキャッシュレスが浸透しつつある。しかし、そこにはユン・ジョンハクの言う“与信”の問題が常につきまとう。日本でもキャッシュレス決済ではなく現金決済の方が安全安心だという声が大きな災害のたびに聞かれる。本作は日本にとって他山の石となるだろうか。

 

本作は『 シン・ゴジラ 』と同じく、超高速会話劇でもある。山場は二つ。パク・デヨン演じる財務次官とハン・シヒョンの丁々発止のやり取り。政府は事態を公表し、国民への被害を最小限に抑えるべしと主張するシヒョン。それをせせら笑うかのように反論を述べる次官の対立では、特にパク・デヨンの憎たらしいまでの演技が冴え渡る。もう一つの山場はIMF専務理事とのホテルの密室でのやり取り。ヴァンサン・カッセルは『 トランス 』に出ていたのを覚えている。IMFからの金融支援の条件として外資による韓国上場企業の株の保有率の上限アップや正規労働者の解雇の容易化と非正規労働者の増加などを淡々と条件として突き付けてくる理事に対し、シヒョンは理路整然と反論する。やはり『 シン・ゴジラ 』の矢口蘭堂の如く、政府上層部や国際機関に対しても毅然とした態度を崩さない。日韓ともに、このようなヒーローを生み出すということは、現実の政治や経済が上手く言っていないことの証明でもある。会話劇でスリルとサスペンスが生み出されるのは、往々にして法廷闘争ものだが、政治・経済系のドラマでもこれができるというのは新鮮な体験だった。

 

最後の最後に映し出される並木通りの摩天楼の何と寒々しいことか。まるで大阪の淀屋橋か本町のオフィス街を観るようだが、そこにあるのはバベルの塔か、それとも砂上の楼閣か。

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ネガティブ・サイド

パク・シヒョンという魅力的なキャラクターの肩書がチーム長であるが、チームとしての強さや見せ場に乏しかったように思う。序盤で各種資料を言われるよりも前に揃え、チーム長に恭しくコートを着せるメンバーたちは確かに頼もしく映ったが、彼ら彼女らの協力や水面下での働きにフォーカスするシーンがあれば尚よかった。

 

ジョンハクの豹変っぷりも理解できなことはないが、元々金融屋として働いていた男である。Jovianも昔々信販会社で働いていたので分かる。血も涙もない人間が出世するのがあの業界である。さらなる儲けの為にそこを飛び出した男に、良心の呵責などを求めるのは無い物ねだりである。ジョンハクという超絶ポジティブキャラクターは、それこそ徹頭徹尾ハゲタカとして描写した方がスカッとしたことだろう。

 

総評

日本でもこのような話を作ってもらいたい。心からそう思える良作である。ぜひ市川実香子を起用して日本版の政治経済サスペンスものを作ろう。二番煎じが何だ。山一証券の破綻を2時間で映画にすべし。監督は『 空飛ぶタイヤ 』の本木克英か、『 七つの会議 』の福澤克雄で。

 

Jovian先生のワンポイント韓国語会話レッスン

ミアネ

 

韓国語で「ごめん」の意である。『 猟奇的な彼女 』で“彼女”が山に登ったキョヌに向かって大声で名前を呼んだ後、涙声で「ミアネ」と呟くシーンのインパクトはあまりにも強烈だ。韓国語は英語よりも日本語話者の耳に馴染みやすいので学びやすい。韓国旅行に行く時は、「~~~チュセヨ」、「ケンチャナ」、「コマウォ」そして「ミアネ」だけ覚えていれば、後は度胸で何とかなる。Jovianが保証する。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, B Rank, キム・ヘス, サスペンス, 監督:チェ・グクヒ, 配給会社:ツイン, 韓国

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