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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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月: 2019年10月

『 アンダー・ユア・ベッド 』 -もっとキモメンをキャスティングせよ-

Posted on 2019年10月3日2020年4月11日 by cool-jupiter

アンダー・ユア・ベッド 65点
2019年9月29日 シネ・リーブル神戸にて鑑賞
出演:高良健吾 西川可奈子
監督:安里麻里

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ストーカーという人種、ストーキングという行為が認知されたのは、日本では比較的最近ではないだろうか。一方的に思慕の念を募らせるのは、ある意味では美しいが、それが犯罪を構成するところまで行ってしまっては、止まるに止まれなくなる。『 君が君で君だ 』はそうした止まれない、しかし思慕の対象には近づかない男たちの物語だった。それでは本作はどうか。ベッドの下にまで潜り込む男の物語である。

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あらすじ

彼は誰からも存在を忘れられた男だった。しかし、19歳の大学生の頃、ただ一人自分のことを名前で、「三井くん」(高良健吾)と呼んでくれた千尋(西川可奈子)とマンデリンを飲むことができた。その思い出に浸ること11年、30歳になった三井はもう一度だけ千尋に会いたいと願い、彼女を探し出す。しかし、見つけたのはボロボロに変わり果てた千尋だった・・・

 

ポジティブ・サイド

まずは西川可奈子を称賛しようではないか。『 火口のふたり 』の瀧内公美に優るとも劣らない脱ぎっぷりと濡れ場(というよりレイプか)、そして暴力的・被虐的シーンを演じ切った。19歳の大学生からボロボロに疲れ切った30歳の一児の母までを、わずか1時間30分という間で自在に行き来した(ように編集で見せているわけだが)のは、メイクアップ・アーティストや衣装、照明の力を借りてこそではあるが、やはり本人の繊細な演技によるところが大きい。大学生の頃のくるくると変わる表情とはじける笑顔には、三井ならずともコロッといってしまうであろう。

 

原作の小説もそうであるが、千尋に生まれたばかりの子どもがいるという設定の妙が生きている。その子が話せるようになったら、一巻の終わりだからである。だからこそ、『 君が君で君だ 』の三人組にはなかったタイムリミットが三井にはあり、それゆえに三井のストーキングはエスカレートしていく。この見せ方は実に巧みである。

 

原作小説には結構細かく描写されていた千尋の夫の職場での良い人っぷりをばっさりとカットしたところもグッドジョブだ。物語に不必要なぜい肉はいらない。

 

オムツを吐いて、ベッドの下に息を殺して潜む。それはおぞましい行為である。憧れの女性が乱暴に犯される声を聞き、ベッドの振動をその掌で感じ取る。そのことにえもいわれぬ興奮を覚える三井に、どうやって共感せよというのか。それが、物語が加速していくにつれ、できるようになるのである。この絶妙な見せ方に興味がある人は、ぜひ劇場へ足を運ばれたい。

 

ネガティブ・サイド

0歳の乳児がいるにしては、千尋が貧乳である。もちろん、そういう女性もいるにはいるだろうが、極度のストレスのせいで母乳も出せないという描写が欲しかったところである。ストーカーの怖いところは、現実離れした妄執にある。ならば、それ以外の部分は出来うる限り現実に即しているべきである。それが出来ないのなら、それを納得させるだけの描写や演出を挿入するべきである。

 

高良健吾は素晴らしい役者であるが、今作に限ってはミスキャストだと思われる。何故なら、いくら暗い、存在感の薄い男を演出しても、高良自身の面構えの良さが、三井というストーカーの負の面を中和してしまう。もちろん、外見が人間の中身を表すわけではないは、妄執という面では、変則的ストーカー(?)ものの小説および映画にもなった『 モンスター 』(主演:高岡早紀)という優れた先行作品がある。例えば、高良の顔の良さをほんの少しでも隠せるようなメイクおよび照明の使い方があったのではないだろうか。江戸川乱歩の『 人間椅子 』ではないが、こうした物語には醜男を配置すべきである。

 

原作とやや異なるラストも個人的には気に入らない。三井のレーゾンデートルでもある「喫茶店で一緒にコーヒーを飲んだ」という思い出が砕かれる瞬間が描かれるべきだった。もしくは編集でカットしたのだろうか。ラストシーンの三井の実存の回復のためにも、敢えて奈落の底に突き落とすような物語展開が直前に欲しかったと思う。

 

総評

ストーキングという行為にはある意味での普遍性がありそうだ。そうした営為が犯罪として認知されるようになったのは法律の整備やプライバシー意識の醸成などが背景にあるだろうが、なによりもテクノロジーの力により、録音、録画、動画撮影に盗聴までもが容易になったことが大きい。三井のような行為は、やろうと思えば誰でも出来るのだ。中島梓は『 コミュニケーション不全症候群 』で、我々が最終的に求めてやまず、それでも手に入らないものとして「他者」を挙げた。他者からの承認である。企業研修では存在承認や行動承認がアホの一つ覚えのように繰り返し叫ばれている。2001年刊の原作小説が現代に映画化される意味は確かに見出せる。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I want to be beside her permanently.

「ずっと隣にいたい」 そんな三井の純愛とも狂気とも知れない気持ちが切なさと共に迫ってくる。ずっと=forever と暗記している人が多いが、ちょっと違う。Permanentlyも押さえておきたい語彙。パーマをかけるのパーマである。

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, C Rank, スリラー, 日本, 監督:安里麻里, 西川可奈子, 配給会社:KADOKAWA, 高良健吾Leave a Comment on 『 アンダー・ユア・ベッド 』 -もっとキモメンをキャスティングせよ-

『 記憶にございません! 』 -毒は少なめの政治コメディ-

Posted on 2019年10月2日2020年8月29日 by cool-jupiter

記憶にございません! 70点
2019年9月28日 大阪ステーションシティシネマにて鑑賞
出演:中井貴一 ディーン・フジオカ 吉田羊 石田ゆり子
監督:三谷幸喜

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「そのようなことは、えー、わたくしの記憶にはですね、えー、全くございません」 小学校高学年ぐらいだったJovianは徐々にテレビのニュースを見るようになったが、このような答弁をするオッサン連中を見て、記憶力が悪くても政治家になれるのか、と無邪気に感じたことを今でも覚えている。そんないたいけな少年だったJovianも今ではすれっからしになってしまった。だからこそ、本作を楽しめるのだとも言える。

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あらすじ

2.3%という史上最低の支持率を叩き出してしまった黒田啓介(中井貴一)は、演説中に一般人に投げられた石が頭に命中してしまい、小さな頃の記憶以外を失ってしまった。人望も人徳もなく、記憶までなくしてしまった黒田は、秘書官らのサポートの元、記憶喪失を隠しながら公務を行うのだが・・・

 

ポジティブ・サイド

この撮影の仕方は通常の映画撮影のそれではない。舞台演劇を映画化するような際に用いられる撮影技法がふんだんに使用されている。たとえば『 オペラ座の怪人 』の舞台の映画化などが好例である。光と影のコントラストを鮮やかに映し出したり、遠景と近影を使い分けたりといったことは、ほとんどしない。その代わり、ロングのショットで忠実にキャラクターの仕草や表情を映し出す。物語の冒頭や締めにドラマ『 ER 』的なキャラクターの入れ替わり立ち替わりショットを入れることはよくある。『 恋は雨上がりのように 』で、あきらのバイト先でそのようなショットが使われたし、ドラマ(および映画)の『 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 』のエンドクレジットのシーンはまんまERのパクリである。しかし、全編これ、ロングのショットでキャラクターの近影を映し続けるというのは、邦画ではかなり斬新なアプローチである。それゆえに中井貴一の表情の演技が抜群の輝きを放っている。I take my hat off to撮影担当の山本秀夫氏。

 

キャラクター同士の掛け合いも適度な笑いを喚起する。特に黒田総理が自身の家に帰ってきたシーンや家族との団らんになっていない団らんシーンは、プッと吹き出さずにはいられないおかしさがある。小池栄子のコミック・リリーフも効果的に各シーンを和ませ、吉田洋と中井貴一の“現場”から放たれる期待感と失望感は、漫画的な面白さだけではなく「本当にこういう現実があるのかも?」というリアリティを有していた。実際に山尾志桜里議員を思い起こした観客も多いだろう。ちなみに不倫はある種の普遍性を有した文化であることは『 ウィーナー 懲りない男の選挙ウォーズ 』からも分かる。

 

永田町や官邸内の権力闘争、ジャーナリズムと権力の関係、政治と庶民の関係など、かつてないほどに政治に対する期待が高まっている中で、肝心の政治がそれにほとんど答えられていない。そんな中で、一種の清涼剤的な役割を本作が果たしていることが現在の快調な興行収入につながっているのかもしれない。事実、法人税を少し上げれば消費税を下げられるのではないかという黒田の無邪気な疑問は、まさにれいわ新撰組の主張そのものである。こうした現実へのうっ憤を、本作はある程度晴らしてくれるのである。

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ネガティブ・サイド

英語で ”all persons fictitious” disclaimer と呼ばれる注意事項がある。日本語では「この物語はフィクションで登場する人物・団体・出来事等は架空であり実在のものとは関係ありません」というアレである。本作は開始早々に「この物語はフィクションで登場する人物・団体・出来事等は架空ですが、類似のものがあるとすれば、それはたまたまです」と宣言する。こちらは期待に胸を躍らせて『 新聞記者 』のパロディもしくはコメディのような現政権批判が見られるのかと期待したが、不発だった。念のために言っておくが、Jovianは自民党が嫌いなわけではなく、権力全般が嫌いなのである。特に権力を正しく使わない人間が嫌いである。

 

Back on track. 「総理の奥さんになれば、何でもできるんですねえ」という黒田の台詞は、当然のことながらアッキード事件を指しているわけだが、三谷幸喜はもっともっと現実の政治を面白おかしくパロディにできるはずだし、そうすべきだった。K2プロジェクトというのも、正直なところ期待外れ。もっと国立競技場だとか、五輪絡みのアホな建設プロジェクトをパロって、現実を鋭く抉りながらも、笑いに昇華できたはずだ。

 

全体的に役者は良い芝居をしているが、一部、ディーン・フジオカの台詞はアフレコになっていた?唇の動きと発せられる言葉が一致しないように見えるシーンが序盤にあった。確かにロングのショットを多用していて、ひとつNGがあれば最初から全てやり直しという、非常に難しい撮影現場であったと思うが、もしもアフレコするのであれば、もっとリップシンクに厳密になってもらいたいと思う。『 空飛ぶタイヤ 』でフジオカを指して、スーツ以外の衣装はまだ着こなせないと評したが、逆に言えばスーツは着こなせているのだ。

 

総評

中学生にはちょっとアレな描写もあるが、高校生ぐらいからならOKだろう。政治とは何か。誰のために政治が行われるのか。もちろん、気に入らない政治家に石を投げつけるのは論外であるが、大して毒でも刃でもない言葉を浴びせるだけで警察に排除されてしまうのが昨今の日本なのである。政治ネタを笑うと共に、政治に対する意識をもう一度高めるためにも、本作を見て大いに笑い、そして政治に対する目を厳しく持とうではないか。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I don’t recall.

 

ドナルド・トランプ米大統領の選挙戦でロシア側と接触したとされる人物が、この台詞を連発したことは記憶に新しい。rememberという動詞を使いたくなってしまうが、覚えているものをそのまま思い出せるならremember、頑張って頭の中をあれこれ探って思い起こす時にはrecallを使うべし。車に欠陥が見つかればリコールされる、というアナロジーで理解しよう。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, コメディ, ディーン・フジオカ, 中井貴一, 吉田羊, 日本, 監督:三谷幸喜, 石田ゆり子, 配給会社:東宝Leave a Comment on 『 記憶にございません! 』 -毒は少なめの政治コメディ-

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