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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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『 HELLO WORLD 』 -安心の野崎まどクオリティ-

Posted on 2019年9月25日2020年4月11日 by cool-jupiter

HELLO WORLD 70点
2019年9月22日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:北村匠海 松坂桃李 浜辺美波
監督:伊藤智彦

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Jovianは野崎まどのファンである。メディアワークスが出している作品はすべて読んだ。『 2 』を除けば、一番のお気に入りは『 小説家の作り方 』である。氏のテーマは一貫している。人間の姿をした人間以上の存在である。そのことを念頭に置いておこう。

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あらすじ

2027年の京都。堅書直美(北村匠海)の前に、10年後の未来からやってきた自分、ナオミ(松坂桃李)と共に一行瑠璃(浜辺美波)に迫っている落雷事故を回避することを目指すが・・・

 

ポジティブ・サイド

『 二ノ国 』という超絶駄作の超絶クソ voice acting の後なので、ある程度は評価が上方修正されているかもしれないが、北村も松坂も浜辺も及第以上の声の演技をしていた。特に浜辺美波はJovianの贔屓目も入っているが、渡辺徹のようにナレーション業も頑張れば行けそうだ。頑張って欲しい。

 

トレイラーの段階から「この世界は全部、データだった」という直美の独白があるので、その設定そのものに驚く必要はない。我々が本当に観たいのは、【 この物語(セカイ)は、ラスト1秒でひっくり返る 】ところなのである。そして、これから本作を観ようとする諸賢におかれてはご安心されたい。ちゃんとひっくり返ってくれる。厳密にはラスト1秒というわけではないが、怒涛のコンビネーション・ブローを観る側の脳に叩き込んでくれる。

 

これは言葉の正しい意味でのSFである。アニメ作品としては『 イブの時間 劇場版 』に並ぶクオリティである。SFとは何か。人類と文明の関係性を描くフィクションである。アニメとは何か。手塚治虫に言わせれば、「物語が先に存在して、それを伝えるために絵が動くもの」である。その意味では本作は実に正統派のSFアニメである。我々が生きているこの世界が実はデータだったというのは、『 マトリックス 』以来、手垢のついたテーマではあるが、だからこそドンデン返し = big twist に挑戦してみたくなる分野でもある。繰り返すが、本作にはしっかりとしたドンデン返しが存在する。期待して欲しい。

 

本作に採用されている様々なガジェットやキャラクター造形、ショットの構図などは、優れた先行作品の影響を色濃く受け継ぐものである。まずは敵の量産型キャラクター。これは『 BLAME! 』のセーフガードを思い起こさせてくれた。つまり、非常に不気味で、恐怖を感じさせてくれた。それらが最終的にはミラクル卵の最終形態になり、シシ神のデイダラボッチバージョンになり、エヴァンゲリヲンにもなった。これは大迫力だった。エージェント・スミスがこれをやっていたら、彼の名作は更に名作の誉れ高くなったのか、一気に駄作に堕ちてしまったのか、どちらだろうか。

 

物語世界とキャラクターの真実については、アニメではないが映画化されそうでされなかった(できなかった)小説『 ループ 』が思い浮かんだし、ちょっと古い映画で言えば『 13F 』も下敷きにあったのかな。またこうした一種の入れ子構造の作品としては『 イグジステンズ 』や『 トロン 』、『 主人公は僕だった 』や『 ルビー・スパークス 』なども思い起こされた。それでいて、オリジナリティある作品に仕上がっているという、そのこと自体が最も素晴らしい点であると言えるかもしれない。伊藤智彦監督に拍手!

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ネガティブ・サイド

ストーリーテリングや世界観の構築の面では素晴らしいが、一方ではグラフィック面に大きな課題を残した。特に物語が舞台を文字通り大きく様変わりさせるシーンのグラフィックは、そのまんま『 2001年宇宙の旅 』の劣化バージョンである。というよりも、あからさまに『 LUCY/ルーシー 』(監督:リュック・ベッソン)をパクっているとしか思えないものもあった。オマージュとパクリは似て非なるものである。これらのシーンに関しては、製作者側のリスペクトが感じられなかった。そこが残念である。邦画に似せるとオマージュ、外国産の映画に似せるとパクリという判断をJovianはどうやらしているようである。

 

トレーラーにもあった街が崩壊していくビジョンは、まんま『 インセプション 』と『 ドクター・ストレンジ 』だった。もっと独創性ある映像を作って欲しかった。

 

あとは、男女が恋に落ちるプロセス、あるいは恋愛感情を自覚するプロセスに、もう少しオリジナリティが欲しい。多くのアニメ作品では身体、特に特定部位の接触が契機になることが多いように思われるが、そのようなclichéからはそろそろ卒業すべきではないだろうか。近年でも『 夜は短し歩けよ乙女 』や『 打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか? 』などが、まさにこうした手法を使っていた。もっと『 耳をすませば 』のような、ピュアで、それでいてロマンティックな関係性を、宮崎駿以外のクリエイターも描けるはずだ。もっと受け手を信頼すべきだし、あるいは作り手が受け手を啓蒙してやるぐらいの気概を持ってもいい。

 

総評

アニメ作品としては、個人的には年間ベスト級であると感じる。ただし、かなり人を選ぶ作品だろう。関西人、特に京都にゆかりのある人は、「これはあそこだ」、「ここは、あれだな」という見方を楽しめる。ただし、関西弁原理主義者(若い世代にはいないと思うが)の方にはお勧めできない。京都弁などは微塵も出てこない。また、ある程度のSFの素養も必要だろう。野崎まどファンなら、見逃すべきではない。 

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Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

I did it.

 

「やってやりました」= I did it. である。何かを行って、そのことを誇らしく思うのなら、こう言おう。相手が何か素晴らしいことをやってくれたなら、“You did it.”と言おう。ただ、この do it という表現には落とし穴もある。しばしば、does itという形で、「~~が悪い」、「~が元凶だ」のような意味になる。Wedding is fine. It’s living together that does it. 結婚は問題ない。悪いのは一緒に住むことだ、のようになる。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, B Rank, SF, アニメ, 北村匠海, 日本, 松坂桃李, 浜辺美波, 監督:伊藤智彦, 配給会社:東宝

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