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『予兆 散歩する侵略者 劇場版 』 -黒沢および東出史上二番目の出来か-

Posted on 2019年5月4日 by cool-jupiter

予兆 散歩する侵略者 劇場版 50点
2019年5月3日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:夏帆 染谷将太 東出昌大 岸井ゆきの
監督:黒沢清

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190504101957j:plain
率直に言わせてもらえば、黒沢清監督は駄作メーカーだ。『 CURE 』以外に、標準レベルより上に達している作品は無いと言わせてもらう。東出も、正直なところ大根役者だと思っている。彼が最高の演技を見せたのは、自分自身の色を出そうとせず、ある意味で羽生善治の物まねに徹した『 聖の青春 』だった。本作はそんな二人の久々のヒットだと評したい。

 

あらすじ

悦子(夏帆)は、同僚のみゆき(岸井ゆきの)の「幽霊が見える」という相談を受ける。困惑しつつも、宿を提供する悦子だが、みゆきは悦子の夫、辰雄(染谷将太)に対しても異常な反応を見せる。不安を覚えた悦子は、夫の勤める病院にみゆきを連れていくが、そこにいた新任の外科医、真壁(東出昌大)に悦子はただならぬ何かを感じ取り・・・

 

ポジティブ・サイド

『 散歩する侵略者 』の不可解な点に、長澤まさみを妻に持つような男が浮気をするのか?というものがあった。まあ、男女、夫婦の仲には色々あるが、浮気を疑っていた夫とやりお直すチャンスをそこに見出す妻、というのも個人的にはリアリティを感じなかった。本作にはそうした要素はない。ちょっと歪な夫婦の形がそこにあるだけである。これならば許容できる。

 

夏帆のキャラが良い。マイケル・クライトンの小説『 アンドロメダ病原体 』でも、一部のキャラが感染を免れたように、宇宙人の概念泥棒が通用しない地球人個体というのは、非常にリアリティのある存在である。本編の長澤まさみは、個体として特殊なのか、それとも抱いていた愛の概念が特殊なのか、今一つ判断ができなかった。今回の、特殊な個体の存在を描写するというのは、良い試みであると言えよう。

 

東出も中盤まではいつもの東出なのだが、最終盤に魅せる。『 散歩する侵略者 』の長谷川博己が爆撃を食らった後に文字通り人間離れした動きを見せたのと同じような動きを見せる。また、概念を盗む際にまばたきを一切しなくなるというのも、『 ゴジラ FINAL WARS 』のX星人ネタではあるが、キャラを立たせる要素として機能していた。東出は演じるよりも真似をする方が良い仕事をする。本作では久々に良い東出を見た気がした。

 

本編では宇宙人が動物に乗り移りながら最終的に人間に寄生し、奇妙な装置を作り上げて、本隊と交信していたが、本作ではより直接的な描写を見せる。こちらの方が感覚的に分かりやすい面もあり、これはこれでありだと思えた。

 

宇宙人同士のコミュニケーションの噛み合わなさ加減や、支配-被支配の関係の不気味さ、また実質的に3人しか出てこなかった本編とは異なり、こちらはそこかしこに宇宙人のガイドがいるのではないかと予感させるサスペンスフルな作りになっていて、観る側の想像力をより喚起させてくれる。個人的にはこういう構成も好みである。

 

ネガティブ・サイド

染谷将太の右腕ネタは不要だったかもしれない。どうしたって『 寄生獣 』を連想する。そうしたメタなネタを取り入れるのならば、監督や原作者、他キャストなどに何らかの共通点がある時だけにしてもらいたい。

 

同じく染谷将太演じる辰雄があまりにも人間的すぎる。概念を盗むターゲットを選ぶのに、バックストーリーは必要だったのだろうか。ほんのちょっとした違和感の積み重ねが不安やサスペンスを盛り上げてくれるのだが、観る側が共感してしまうようなエピソードを放り込んできては、「概念」を盗むという非常に奇抜なアイデアの良さが損なわれてしまうではないか。彼我の思考にはどうしようもない違いがある、というところが散歩する侵略者の特徴なのだから、そんな侵略者に共感を覚えるような要素は極力排除すべきだと個人的には考える。

 

また低予算だったためか、全体的な作り込みにしょぼさを感じる。逃げ惑う人々のショットがわずか一つだけ、時間にして2秒程度というのはいかがなものか。また、『 シン・ゴジラ 』とまでは言わないが、都市部でグリッドロック現象が起きているような描写も必要だろう。テレビやラジオ放送の声にも緊迫感が足りず、侵略の予兆を感じ取るのが難しかった。

 

総評

スピンオフというよりもリメイクまたはリブート的なもののように感じられた。スピンオフならば、本編に登場した警察官もしくは医療従事者たちの視点からストーリーを捉え直すようなものであるべきだろう。ただ、『 散歩する侵略者 』と本作の両方を鑑賞することで、物語の理解が深まったり、異なるものが見えてくるのも事実である。本編が気に入ったという人ならば、鑑賞して損をすることは無いだろう。

 

Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, SF, 夏帆, 岸井ゆきの, 日本, 東出昌大, 染谷将太, 監督:黒沢清, 配給会社:ポニーキャニオン

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