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『 アンダー・ザ・シルバーレイク 』 -ハリウッドへの痛烈な皮肉映画-

Posted on 2018年10月21日2019年11月3日 by cool-jupiter

アンダー・ザ・シルバーレイク 65点
2018年10月21日 梅田ブルク7にて鑑賞
出演:アンドリュー・ガーフィールド
監督:デビッド・ロバート・ミッチェル

 

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『 イット・フォローズ 』の監督の最新作。前作は、正体不明の何者か、というか何者かは分かっている=姿は完全に見えている者が、ゆっくりと歩いてついてくるという異色ホラー。特にイットがドアをノックするシーンは、笑いながらも怖気を奮ってしまった。あのシュールさをもう一度味わためなら1800円は惜しくない。だが、しかし、本作を真に鑑賞したと言えるようになるには1800円では足りないようだ。

 

あらすじ

サム(アンドリュー・ガーフィールド)は30歳過ぎても働かず、LAの街で自堕落に過ごしていた。上半身裸で過ごす同じコンドミニアムに住む中年女性を覗いたり、女優を夢見てオーディションを受けまくっているセックスフレンドがいたり、レトロゲーム機で共に遊ぶナーディな男友達がいたりと、家賃は滞納しながらも、それなりに何とかやっていた。ある日、ミステリアスな美女サラと良い雰囲気になりながらもベッドインできず、翌日にもう一度来てと言われたので尋ねてみたら、部屋はもぬけの殻。しかし、怪しい女がサラの部屋から何かを回収していった。その女を尾行するうち、サムはLAの街のアンダーグラウンドな領域に徐々に近づいていく・・・

 

ポジティブ・サイド

数多くの映画を想起させる作品である。『 マルホランド・ドライブ 』のように、ある意味で脳髄に損傷を与えかねない映画である。普通のサスペンスやスリラー、またはミステリだと思って劇場に行くと、予想や期待を裏切られることは必定である。しかし、それが良い。何もかもを説明してほしいと思うのは、あまりにもおこがましいのではないか。本作には、LAの街やハリウッドで功成り名遂げた人物は隠されたメッセージを発していて、それを受け取ることができるのはスーパーリッチな一部の人だけであるという、サムの妄想的な考えを通じて、観客に訴えかけてくる。すなわち、「この映画には秘密のメッセージが仕込まれているのですよ」ということだ。

 

我々はとんでもない量の小ネタを見せつけられる。とても書き切れるものではないが、おそらく誰もが初見でピンと来るのは、サムの手がネチャネチャと糸を引くシーンであろう。何をどうしたってスパイダーマンを思い出す。ニヤリとすべきなのだろう。小ネタというか直接ネタというか、ある映画を語るに際して別の映画にも言及しなくてはならなくなるという点では『 レディ・プレーヤー1 』的であると言える。劇中ではアルフレッド・ヒッチコックがfeature されるシーンがある。さらにサムの部屋には『 サイコ 』のポスターが貼ってあるのだ。彼の頭の中には一体何が詰まっているのだ、と思わされても仕方がない言動がどんどんと繰り出され、もはや彼の妄想なのか、全ては現実世界の偶然なのか、虚実が定かならぬ領域にまでストーリーが進んだところで、臨界点を迎え・・・ないのである!まるでジョニー・デップの『 ナインスゲート 』のエンディングを思わせる城に入っていくシーンには鳥肌が立った。

 

まだ本作を観ていないという人は、サムが自室でセックスしているシーンをしっかりと見ておくべし。見るのは彼の尻ではなく、壁に貼ってあるポスターである。万が一、それが何であるのか、もしくは誰であるのか分からないということであれば、このYouTube動画を見てみよう。それでも知らないというのなら、とにかく自分の中でカリスマと思える人物をしっかり思い描いて鑑賞に臨むようにしてほしい。

 

物語はここから一挙に漫画的領域にまで到達する。それは『 ゲット・アウト 』的な領域に到達するという意味でもあり、ノストラダムス予言のトンデモ研究者・川尻徹的な手法で暗号解読をする現代版geekであるとも言える(ちなみにnerdとは、『 X-ファイル 』のスピンオフ『ローン・ガンメン』3人組のような連中を指す)。普通に考えればサムはクレイジーであるとしか言いようがないのだが、途中では実際に人が死ぬ。しかし、それすらもサムの妄想であるかもしれないと思わせる仕掛けが施されている。サムのマスターベーションにも注目だ。

 

お前の言っていることはサッパリ意味が分からんし、何故こんな卑猥なレビューを読まされねばならんのだと思われる向きもあるだろう。しかし、冒頭で述べたように本作は一回こっきりの鑑賞では意味不明な箇所が多すぎる。それが魅力にも磁力にもなっている。吸い寄せられるように映画館に向かってしまう自分が想像できて怖いのだ。不思議な魅力が詰まった映画なのだ。

 

ネガティブ・サイド

LAが舞台だと聞いて胸を躍らせるような人、特に『 ラ・ラ・ランド 』に感動した人などは、本作には辟易させられることは間違いない。『 ノクターナル・アニマルズ 』や『 ドニー・ダーコ 』、あるいは『 ブレードランナー 』のように複数回見てようやく意味が分かる、もしくは見れば見るほどに発見があるというタイプは、DVDやブルーレイが手に入るようになるまで、非常に悶々とした気持ちにさせられる。おそらくカジュアルな映画ファンが10人いれば、そのうちの9人が一回鑑賞で満腹になるのではないだろうか。また、ハードコアな映画ファンが10人いても、そのうちの6人は一回で満腹になってしまうのではなかろうか。自分としては日本語と英語の両方でリサーチの上、何度でも観てみたいが、そうするとチケット代と時間が問題になる。そこを減点して良いものかどうか迷うが、『 ラ・ラ・ランド 』と同点になる程度には楽しめた。これは褒めているのだろうか・・・

 

総評

主人公サムの『 アイム・ノット・シリアルキラー 』的な行動が許容できる人、もしくはとんでもないシネフィルなら、本作を絶賛できるだろう。あるいは糞味噌に酷評できるかもしれない。案外、純愛ジャンルが好きだ、という人が最も本作を堪能できるのかもしれない。一人で鑑賞して、帰り道にリサーチをしたりレビューを渉猟するも良し、連れを誘って鑑賞し、帰りに喫茶店であーだこーだと解釈をぶつけ合うのも良いだろう。面白さは人によって異なるだろうが、手応えの重さがずっしりとあることだけは請け合える。

 

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Posted in 映画, 海外Tagged 2010年代, C Rank, アメリカ, アンドリュー・ガーフィールド, スリラー, 監督:デビッド・ロバート・ミッチェル, 配給会社:ギャガ

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