不安の種 40点
2022年10月31日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:石橋杏奈 浅香航大
監督:永江俊和
ハロウィーンのホラー映画鑑賞第2弾。昔ちょろっと観て、そこそこ面白いと感じた記憶があり、今回再鑑賞してみたが・・・
あらすじ
バイク便ライダーの巧(浅香航大)は、怪我をした青年を救助しようとしたが、彼はおぞましい死を遂げてしまった。そのことが原因で新しいバイトを始めた巧は、勤務先で陽子(石橋杏奈)という不思議な女性に出会う。以来、街に潜む怪異が徐々に姿を現し始め・・・
ポジティブ・サイド
時系列をばらばらにして観る者に混乱を、その後に不安や恐怖をもたらそうとする試みは悪くない。様々に現れる怪異の正体のほとんどが不明であるところもいい。特にインパクトが強いのは顔面を藁で覆った女性だろうか。別に危害を加えてくるわけではない。ただ存在するだけ。それが逆に不安を掻き立ててくる。まさに不安の種だ。
ストーリーは巧と陽子を軸に進んでいくが、陽子のメンヘラっぷりがなかなかキツい。また、陽子に仕込まれた一種のトリックはなかなか興味深い。山口雅也とか筒井康隆のような小説家が思いつきそうなプロットである。
グロ描写もそれなりに頑張っている。須賀健太と津田寛治のシーンでは、Jovian妻は悲鳴を上げて目を背けた。普通の映画好きにこれだけの反応をさせれば、ホラーやスリラーとしては及第点だろう。
オチョナンさんの正体を様々に考察するのも面白い。座敷童ならぬ一種の都市童なのだろう。怪異のもたらす不安に負けないためにはどうすればいいのか。自分もその怪異になってしまえばいい。子どもの目から見た社会、世界の理不尽さを強烈に皮肉っているのかなと感じた。さあ、不安の種が生み出すものは何なのか、あなたも考えてみよう。
ネガティブ・サイド
2010年代の作品だとしてもCGが相当にしょぼい。眼球が這いずり回るのはなかなかシュールだが、これがもし眼球についた筋肉が蠕動したり、あるいは眼球を覆うヌメヌメの粘液のようなものの質感までCGで表現できていたら、それだけで掴みの印象はかなり異なっただろう。世界観を一気に伝える establishing shot にカネを惜しんではならない。
怪異のオンパレードだが、原作に登場する怪異を全部出してやろうとするのではなく、いくつかに絞って、そのうえで登場人物たちにじっくり不安の種を仕込む展開の方が良かったように思う。巧に関して言えば、バイト先の謎の客はまだしも、右腕がない金づち女は蛇足に感じた。
アパートのドアに貼られる死のシールも、ちょっと奇異に映った。ここで陽子がアパートの住人の死因を急性心不全ではなく心筋梗塞だと言い切ってしまうのは流石にやりすぎ。そんなことが分かるはずがないし、分かったとすれば犯人だ。本作はスリラーやホラーであってもミステリではない(その要素もあるが)のだから、死因はある意味で二の次でいい。ここは脚本上の大きなマイナス点だ。
全体的に古典的なジャンプ・スケアが多めなのも気になった。本作の肝は不安であって恐怖ではない。じわじわと不安感を盛り上げていく手法を模索すべきところを、安易なクリシェに逃げた点も減点対象にせざるを得ない。踏切の向こうで不穏な形と動きを見せる雲・・・のようなシーンをじっくりと積み上げていくべきだった。
総評
いくつかのシーンを取り出せば結構面白いのだが、つなげて観ると「なんだかなあ・・・」という出来になる。日常の中に怪異が紛れ込み、さらにそこから怪異が日常を飲み込んでいくという流れは面白いのだから、そのあたりの登場人物の不安をもっと丹念に描くべきだった。来年はもっと面白そうなホラーを選びたい。何かお勧めの和製ホラーがあれば、誰かお教えください。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
anxiety
発音はアングザイアティのような感じ。ザイにアクセントを置こう。これは「不安」という意味の名詞。
This movie caused me a lot of anxiety.
この映画は僕を凄く不安な気持ちにさせた
のような使い方をする。
次に劇場鑑賞したい映画
『 窓辺のテーブル 彼女たちの選択 』
『 天間荘の三姉妹 』
『 王立宇宙軍 オネアミスの翼 』