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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

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タグ: 監督:堀江貴

『 最後の乗客 』 -追憶と忘却-

Posted on 2024年12月2日 by cool-jupiter

最後の乗客 70点
2024年11月30日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:冨家ノリマサ 岩田華怜
監督:堀江貴

 

評判の良さにつられてチケット購入。

あらすじ

タクシードライバーの遠藤(冨家ノリマサ)は、深夜の街道で謎めいた女性客を拾う。その直後、路上に小さな女の子と母親の2人が飛び出してきた。事故にはならなかったものの、車が動かなくなってしまい・・・

ポジティブ・サイド

東日本大震災から10年後の設定。55分と短く、登場人物もわずか数人。劇中でもわずか一晩(回想シーン除く)しか経過しない。その限られた時間と空間で濃密なドラマが展開された。ストーリー自体はよくあるもので、Jovianは割と早い段階で「ああ、アン・ハサウェイ出演のあれと同じか」と感じ取れた。

 

ただ本作の価値はストーリーの秀逸さではなく、その陳腐さにある。親子のミスコミュニケーション、親子のすれ違い。そんなものはたいていの人間が経験する。問題は、そんな陳腐な日常が大災害で突然に崩されてしまった時、どうなるのかということ。

 

『 侍タイムスリッパ- 』の冨家ノリマサがタクシー運転手にして頑固一徹の中年オヤジを好演。謎の乗客の女性は岩田華怜は陰のある演技で印象を残した。東日本大震災は「忘れない」、「風化させない」という言葉と共に語られてきたが、阪神淡路大震災(Jovianは幸いにも直接の被災者ではないが)では、あまりそのような言葉は用いられなかったと記憶している。その違いの要因の一つに前者には津波があり、後者には津波がなかったということが挙げられる。言い換えれば、前者は行方不明者多数、後者は死体の確認がしっかりできた、ということである。『 あまろっく 』で阪神大震災の描写があったが、あれはJovianがその後に尼崎や神戸の親戚や友人知人から聞いた反応と同じ。すなわち「生き残ってしまった」、「あの人は死んでしまった」という後悔の念。それが転じて「もう忘れたい」と吐露する友人にJovianは当時かける言葉を持たなかった。

 

死んだかどうか不明だが死亡したものと見做すという世界では『 風の電話 』のような伝説が生まれる。それはそれで美しい。その一方で「忘れたい」という想いを吐き出すことが許されなかった空気も当時は存在したのではないか。そうした想いに寄り添う作品が発災後十年以上を経て作られたことには大きな意味がある。作られた大きな枠組みのドラマではなく、どこのだれか分からない、しかし確実に存在する個人のドラマは平凡で陳腐であるがゆえに荒唐無稽を超えたところでリアリティを有する。

 

ネガティブ・サイド

照明や音響は残念ながら低レベルだったと言わざるを得ない。映画の画的には仕方ないが、タクシー車内だったり、大通りから外れた深夜の小さな街道だったりの不自然な明るさはもう少し何とかならなかったか。『 ちょっと思い出しただけ 』のように、そこらへんをリアルに描出できた作品もあるだけに照明担当と監督にもう少し頑張ってほしかった。まあ、自主映画に求めすぎだとは思うが。

 

舞台というか世界というか、それが何であるかを間接的に説明する台詞が発せられるが、その台詞がかなり直接的。もう少し抽象的にできたのではなかったか。

 

総評

エンタメとして面白いではなく、ドラマとして面白い。商業映画が時たま見せるカッコつけたシーンや台詞が一切ない。大震災という悲劇を感動劇の材料にせず、しかし海は常世の国にもつながっているのだと実感させるエンディングにはえも言われぬ重みを感じた。エンドロールもある意味で衝撃的。Every picture tells a story, don’t it?

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

move on

いくつかの意味がある句動詞だが、ここでは Cambridge の to accept that a situation has changed and be ready to deal with new experiences = 状況が変わったことを受け入れ、新しい経験をすることに備える、という意味を紹介したい。She’s married now. It’s time to move on. = 彼女はもう結婚してるんだ。そのことを受け止めて次へ進むんだ、のように使う。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, ヒューマンドラマ, ファンタジー, 冨家ノリマサ, 岩田華怜, 日本, 監督:堀江貴, 配給会社:ギャガLeave a Comment on 『 最後の乗客 』 -追憶と忘却-

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