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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 監督:原恵一

『 かがみの孤城 』 -中高大学生+教師にお勧め-

Posted on 2022年12月28日2022年12月28日 by cool-jupiter

かがみの孤城 70点
2022年12月24日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:當真あみ 北村匠海
監督:原恵一

『 バースデー・ワンダーランド 』の原恵一監督作品。原作者が辻村深月であること、そしてJovianが教えている大阪と神戸の某私立大学の学生たちが原作小説を激推ししていたのでチケット購入。

あらすじ

安西こころ(當真あみ)はとある出来事から中学校に行けなくなってしまった。ある日、部屋の鏡が妖しく光り、こころはその中へ入っていってしまう。そこには絶海の孤島に聳え立つ城と、狼の仮面をかぶった謎の少女オオカミ様、そして中学生の男女6人がいた。オオカミ様は城のどこかにある秘密の部屋を見つければ、どんな願い事も叶えられると言うが・・・

ポジティブ・サイド

語学教育企業に勤務するJovianは本作を非常に興味深く鑑賞した。教える時は主に大学の正課授業なのだが、高校や中学の課外講座を担当することもある。その中で色々な人間模様が見えてくる。昔も今も変わらないなと感じること、そして昔と今では全然違うなと感じることの両方がある。

昔と今で変わらないのは、学校に居場所がないという子が一定数存在すること。中学や高校だとたまに帰国子女だったり、あるいは未就学児童の頃から英語をかなり勉強していて、発音がとてもいい子がいたりする。そうした子は発音の良さを今でもクラスメイトから冷やかされたりする。それを嫌がる子もいれば、嫌がらない子もいる。ただ嫌がる子は英語の授業に出なくなり、ただし課外の英検対策講座やGTEC対策講座には喜んで出てきたりする。そうした生徒を満足させると、学校や保護者から感謝されることが多い。

Jovianはそうした目で本作を鑑賞していた。学校という場所は、集団からはじき出されるみそっかすが出やすいところだ。そしてその原因は往々にしてはじき出される側ではなくはじき出す側にある。こころをはじめ、本作でかがみの孤城に招かれる子どもたちは、皆それぞれに居場所を持たせてもらえなかった。そうした子たちが、どういうわけか交流し、時に意図せずその仲間内でもヒエラルキーを作り、それを反省し、また交流を深めていく。

願いを叶えてくれる秘密の部屋の存在が、この非常に友好的かつ閉鎖的な人間関係にスパイスを加えている。誰もが叶えたい願いがあるのだが、主人公のこころの願いはかなり強烈だ。思春期には親友=世界の全てのように思えるものだが、だからこそ観る側はこころのダークサイド(心の闇)に激しく共感する。ベタなストーリーとはいえ、高校や大学で授業していると、ペアワークやグループワーク時に明らかに「ああ、この子は浮いてるな」というのが分かる。本人が異彩を放っているからなのか、それとも周りから疎外されているからなのかも分かる。なのでJovianはこころが涙ながらに語る願いに、かつての教え子数名の姿を重ね合わせて見てしまった。

7人の子どもたちが紡ぐ数奇なファンタジーであるが、しっかりと地に足の着いたストーリーである。日本中の中学生、高校生、大学生、教師、親御さんに見てもらいたい作品に仕上がっている。

ネガティブ・サイド

こころの母親の冒頭の冷たさと、中盤で見せた優しさのギャップが大きすぎた。もう少し、家でのこころの寄る辺なさと家族との関係を描くシーンも欲しかった。

某アニメ作品でも感じたことだが、出会うはずのない人間たちが出会ってしまうというプロットにこの手のトリックを仕込むのは、もはや一種の cliche なのでは?原作未読のJovianでもあっさりと分かってしまった。同時に、某女子キャラは某男子キャラが持っているアイテムにびっくり仰天しなければならないはずだが、そんな様子はなかった。これはおかしい。また、そのアイテムで「写真を撮る」という至極当然そうに見える行動を取らなかったことにも納得いく説明はなかった。

総評

不可解なシーンもいくつかあるが、物語の持つ力、物語のもたらす感動がそれを上回る。思春期の少年少女の抱える問題をここまで真正面から描く作品は珍しい。この一点だけでも本作には価値がある。キャラの心理描写を全部セリフでやってしまうあたり稚拙は稚拙だが、それもストーリーの面白さの前には些事。中学生のお子さんを持つ親御さんは、年末年始に家族で劇場へどうぞ。

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

special needs student

一昔前は disabled people とか disabled students などという表現を使っていたが、今ではもう使わない。その後、people with disabilities や students with disabilities に変わったが、これらも今は使われない。今は special needs people / students または people / students with special needs のように言う。今風の日本語訳をつけるなら「要配慮学生」だろうか。大昔はフィジカル、メンタルどちらか、あるいは両方の問題を抱えた生徒・学生はそれだけで障がい者扱いされて、特別養護学校・特別支援学校に入れられていた。何らかの事情で学校に来られない、あるいは登校するにしても何らかの配慮を要する学生は special needs students と言う。この言い方はかなり一般化してきているので、教育関係者や保育関係者はぜひ知っておこう。

次に劇場鑑賞したい映画

『 夜、鳥たちが啼く 』
『 死を告げる女 』
『 Never Goin’ Back/ネバー・ゴーイン・バック 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, B Rank, アニメ, ファンタジー, 北村匠海, 日本, 當真あみ, 監督:原恵一, 配給会社:松竹Leave a Comment on 『 かがみの孤城 』 -中高大学生+教師にお勧め-

『 バースデー・ワンダーランド 』 -各種ファンタジーのパッチワーク-

Posted on 2019年5月9日 by cool-jupiter

バースデー・ワンダーランド 40点
2019年5月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:松岡茉優 杏 麻生久美子 市村正親
監督:原恵一

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190509165604j:plain

松岡茉優に引かれたのではない。杏と麻生久美子と原恵一に惹かれたのである。あと、市村正親にも。彼が犬の役をしていた舞台『 青い鳥 』のテレビ放映バージョンは、しっかりとVHSで録画されているのである。

 

あらすじ

アカネ(松岡茉優)は学校で憂鬱な出来事があった翌日、仮病で学校を休んだ。母親のミドリ(麻生久美子)は優しく見守ってくれるが、翌日のアカネの誕生日プレゼントをアカネ自身で取りに行けと言う。しぶしぶ叔母のチィ(杏)の営むChii’s ちゅうとはんぱ屋へと向かう。そこでアカネは異世界の錬金術師ヒポクラテス(市村正親)と出会い・・・

 

ポジティブ・サイド

美麗な絵である。『 グリンチ(2018) 』のような暴力的な質感でもなく、スタジオジブリの作品のような一瞬の光と影に命を吹き込むようなハッとさせられるような絵でもない。真っ暗な映画館で大画面で観るには、これぐらいのクオリティがひょっとすると眼と脳に最も優しいのかもしれない。

 

杏の声はよかった。小学生5~6年生ぐらいのアカネに対して、大人の余裕を見せつけつつも子どもらしさを残していて、とても魅力的なキャラに映った。杏が美人だから、という先入観はここではな働いていない・・・はず。Jovianはいつも映画を好き嫌いではなく、メッセージ性で判断している・・・はず・・・

 

母親ミドリの声の演技もよかった。出番はほとんどないのだが、何と言っても麻生久美子なのである。麻生久美子ほど、本人の年齢と演じる役柄がマッチしている役者はなかなかいない。『 ぼくたちと駐在さんの700日戦争 』の若妻役から『 翔んで埼玉 』の母親役まで、見事にキャリアを磨いていっている。Jovianは第二の樹木希林は沢口靖子だと思っているが、第三の樹木希林は麻生久美子になるのではないかとも感じている。

 

市村正親も良い。立派な髭を蓄えたスーツの老紳士が○○になるところが良いのである。貫禄とコメディックさを兼ね備えた年のとり方をしたいと思う。

 

今から書くことは人によってはかなりセンシティブに捉えるかもしれない。しかし、日本は意見表明の自由が保証されているので、思ったままに書いてしまう。本作の裏テーマは日本のロイヤル・ファミリーなのだろうか。明仁天皇が退位され、新元号と共に新天皇が即位あそばされたが、天皇とは日本史においてほとんど常にお飾りであった。ほとんどは言い過ぎか。平安中期以降は天皇はお飾りであった。『 バイス 』の表現を借りるならば、a symbolic job ということである。王権とは元来、魔力、生産力、軍事力の体現者だったのだ。そのことは、三種の神器の八咫鏡=魔力、八尺瓊勾玉=生産力、草那藝之大刀=軍事力の象徴であることからも自明である。現代の日本国民が天皇および皇族に無意識のうちに願いとして投影するのは、生産力の象徴たることだろう。だからこその少子化というのは穿ち過ぎた見方であろうか。本作でも行方不明の王子が姿勢の人たちに期待されているのは、王子個人の存在の在り方ではなく、祭司的儀礼の執行者としての機能だけであることが示唆されている。それが故に王子は歪み、なおかつ異世界の住人=そんな価値観とは無縁の人からの理解を得て、立ち直る。まるでどこかの島国のロイヤル・ファミリーと国民の関係性を描いているようではないか。もしも本作の製作者がこのような意図を劇中に盛り込んだのであれば、その意気やよし。『 検察側の罪人 』も、インパール作戦を通じて政治風刺、政治批評を行った。メッセージは中身が問題なのであるが、作品になんらかのメッセージ性を持たせようとする試みは、その心意気の有無が問題である。原監督にはメッセージがあったようである。そこは評価する。

 

ネガティブ・サイド

松岡茉優は良い役者である。そこに異論を挟む人は少ないだろう。しかし、voice actressとしては、まだまだ勉強しなければならないことが山ほどある。まず、小学生を演じようとしているようには聞こえない。舌滑も決してよくない。菅田将暉も『 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 』ではイマイチだった。俳優と声優の間の垣根は低くなりつつあるが、それでもアニメ作品の主役級には本職を使って欲しいし、海外の実写作品でも同様に思う。

 

本作の問題は、対象を大人にしているのか子どもにしているのか分からないところである。多分、子ども向けなのだろうが、ところどころにチィのサービスショットが挿入されるのはどういうわけなのだ。

 

いや、そんなことは瑣末なことで、ストーリーとキャラクターと映像がつながっていないシーンに溢れているのが最大の欠点か。こちら側の世界には色が無い、とアカネは異世界で言うが、チィの店に自転車で向かうアカネの目に入る世界は十分にカラフルだ。また、そもそも学校を休むきっかけになった女子間の小さな抗争劇が、アカネのビルドゥングスロマンの背景として全く機能していない。冒頭のシーンはノイズとしてバッサリとカットしても良かった。

 

肝心のあちら側の世界も独創性を欠いている。今さら、魔法使いやら錬金術師はないだろう。底浅いオタク連中に媚び諂うのが、原恵一監督の意向なのか、それとも製作側の意向なのか。また世界観の面でも、おもいっきり陰陽五行思想を採用している。木火土金水をユニークな家や溶鉱炉、アメリカのナショナル・パークのThe Waveを丸パクリしたとしか思えない土地、見映えのしない錬金術、それに巨大錦鯉などで、それぞれカラフルに表現している。その映像美は認める。しかしオリジナリティの欠如が甚だしい。キャラクターにおいてもそうだ。猫が重要なモチーフになる作品は数限りなく存在するが、本作は漫画およびアニメ映画『 じゃりン子チエ 』にも、アニメ映画『 銀河鉄道の夜 』や『 グスコーブドリの伝記 』(世界裁判長へのオマージュのつもりだったのだろうか?)にも、山本弘の小説『 サイバーナイト―漂流・銀河中心星域〈上〉 』にも、全く及ばない。猫の魅力を再発見できないのであれば、猫キャラを使うべきではない。ここまで独創性を欠く作りになっていると、もはや犯罪的であるとすら言える。

 

ヨロイネズミはネーミングはともかく、造形は良かった。惜しむらくは、ザン・グの正体があまりにも簡単に推測できてしまうところである。これはザン・グが悠仁内親王をモデルにしたキャラクターだからだろうか。また、アカネがクライマックスで言い放つ「あなたなら出来るよ」という言葉は完全に逆効果だと思うのだが・・・

 

エンドクレジットで流れる歌まで“The Show”の日本語版替え歌である。『 マネーボール 』の挿入歌として効果的に用いられており、歌詞の意味も本作にマッチしている。だが、前出したようにオリジナリティの欠如が甚だしい本作のエンディングを飾るには相応しくなかった。それとも製作者側も、最後の最後まで何かの二番煎じで良いのだと開き直ったのだろうか。

 

総評

はっきり言って駄作である。映像美だけは認められるが、ストーリーも破綻しているし、キャラ同士の掛け合いも全くもって普通である。色んなガジェットを詰め込もう詰め込もうとし過ぎて、メッセージだけがグロテスクに浮き上がったきた。そんな印象を受けた。ただ、そのメッセージも受け取る人間と受け取らない/受け取れない人間に二分されていることだろう。原恵一監督には『 レディ・プレイヤー1 』や『 ヴァレリアン 千の惑星の救世主 』のような、純粋なエンタメ路線をもう一度追求してほしいと切に願う。

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190509165714j:plain

Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, D Rank, アニメ, ファンタジー, 市村正親, 日本, 杏, 松岡茉優, 監督:原恵一, 配給会社:ワーナー・ブラザース映画, 麻生久美子Leave a Comment on 『 バースデー・ワンダーランド 』 -各種ファンタジーのパッチワーク-

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