サイレントヒル 70点
2022年8月12日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ラダ・ミッチェル ショーン・ビーン ローリー・ホールデン デボラ・カーラ・アンガー
監督:クリストフ・ガンズ
『 マインド・ゲーム 』がずっと借りられっぱなし。『 女神の継承 』の恐怖体験から回復するためにも普通のホラーを観ようと本作をセレクト。
あらすじ
娘のシャロンは夢遊病の中でサイレントヒルという地名を口にする。ローズ(ラダ・ミッチェル)はアメリカ・ウエストバージニア州にサイレントヒルという街があることを探り当て、シャロンと共にそこを訪れる。しかし、謎の人影を避けようとしたことで交通事故を起こす。目覚めた時、車内にはシャロンの姿がなかった。ローズはシャロンを探すために、廃墟となったサイレントヒルに立ち入るが・・・
ポジティブ・サイド
Jovianはプレーしなかったが、大学寮の先輩や同級生が本作と『 バイオハザード3 』をプレーしていた。なので本作の世界観やキャラは何となく知っている。映画化されたのは知っていたが、観るのはこれが初めてである。
まず雰囲気が素晴らしい。序盤、暗い夜のシャロンの奇行。明るい日中のサイレントヒル行きの話。そして切りと煙に包まれたサイレントヒルの昼とも夜とも言い難い空気感がゲームの世界観とマッチしていた。もったいつけずにあっという間にシャロンとローズがサイレントヒルに着くのもスピーディーで良い。
シャロンを探すローズと、そのローズとシャロンを探すクリスという二つの視点で物語が進む。内部からサイレントヒルの謎に迫るローズと、外部からシャロンの出自とサイレントヒルの謎に迫るクリス。この二つの軸により、ホラー要素とミステリ要素が程よい塩梅でミックスされている。
ゲームに出てくる異形のクリーチャーの再現度も高い。Jovianは上半身も下半身も脚というクリーチャーに震えあがった記憶があるが、腕がない、目がないクリーチャーたちは普通にキモイし怖い。三角頭の再現度も非常に高く、とあるキャラの内臓を引きずりだして殺すシーンは震えた。無駄にセクシーな看護師軍団も怖い。CG的には粗いのだが、元々がPlayStationのゲームなので気にならない。
徐々に見えてくる教団、そして”アレッサ”の意図。宗教と政治のつながりが云々される現代日本にとって示唆的な内容とも言える。魔女狩りと称して誰かを裁くことで団結するのは古今東西の世の常だが、それによって疎外される側が思想や行動をより先鋭化させるのも歴史的事実。製作から10年以上経て、単なるホラーゲームの実写化という意味以上の意味を帯びるという、何とも数奇な作品である。
ネガティブ・サイド
ベネット巡査とローズの奇妙な関係をもう少し深堀できなかったか。反目し合う二人が、いつしか様々な面で同化するというのはありきたりではあるが、王道でもある。王道ホラーの本作には、そうした王道的人間関係の追求と描写が似合ったはず。またその描写が、石頭のグッチ警部とそれに反発し続けるクリスの関係と鮮やかなコントラストになったのではないかとも思う。
ゲームでは無線に雑音が入るとクリーチャーが近くにいるということを示していたが、その演出が序盤にしか使われていなかったのは残念である。ベネット巡査の無線やローズの携帯を適宜に使えば、サスペンスやスリルをもっと盛り上げられる場面はあっただろうと思う。ただ、本作で本当に怖いのは人間なので、クリーチャーの登場と人間の業のバランスを考えると、致し方のない選択だったのかもしれない。
総評
これは面白い。グロ描写もあるが、なにより霧と灰に覆われた街、そして血と錆に汚された建物内部がホラー映画の真髄を思わせる。超常的な何かが起きるよりも前の雰囲気がたまらなく良い。個人、ひいては地域や集団を忌避し、疎外してしまうことで起こる悲劇の物語が非常に現代的である。ゲームの世界をちょっとだけ知っているJovianは本作を大いに楽しめた。ゲームのハードコアなファンはいざ知らず、予備知識があまり無い状態で鑑賞しても十分に堪能できるホラー映画だろう。特に現代日本の政治と宗教の汚染された関係を下敷きに本作を鑑賞してみるのも一興ではないだろうか。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
sleepwalk
寝ながら歩く、の意。しばしば夢遊病を指す。必ずしも歩く必要はない。Jovianも小学校高学年ぐらいの時に、寝ながらパジャマを脱ぐことが何度もあったらしい。もしも夢遊病があまりにも長く続く、あるいはそのせいで怪我をしたということであれば、早めに受診されたし。