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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 発行元:実業之日本社

『 6月31日の同窓会 』 -嫌ミス入門に適す-

Posted on 2024年6月2日 by cool-jupiter

6月31日の同窓会 65点
2024年5月18日読了
著者:真梨幸子
発行元:実業之日本社

 

佐津の温泉に向かう特急「こうのとり」の車内で読了。

あらすじ

蘭聖学園の卒業生に送られてくる6月31日の同窓会への招待状。それを受け取った者が怪死するという事件が発生。学園のOGであり、弁護士の松川凛子は、同じく学園卒業生から依頼されたことで調査を開始するが・・・

 

ポジティブ・サイド

情景描写もあるが、それ以上に各キャラの心の声だらけのため、圧倒的に読みやすい。またそれがねっとりしていて読ませる。はじめて読む作家だが、疑心暗鬼を描かせたら、なかなかの手練れだろう。

 

我々はよく因習村などという言葉を使ったりするが、因習に支配されるのは村でも町でも同じ。むしろ中途半端な中堅都市の中堅学校ほど、そうした因習に支配されているものだろう。たとえば『 ここは退屈迎えに来て 』の舞台の高校を格調高い歴史ある女子高にすれば、そこには悪趣味な世界が構築されていると想像するのは難しくない。

 

怪しいと思った人物が次から次へと現われては消えていくので、先の展開が気になってページを繰る手が速くなった(2時間で読み切ろうと決めていたのもあるが)。特に学園パートは赤川次郎の『 死者の学園祭 』や恩田陸の『 六番目の小夜子 』的なドロドロの面白さがあった。

 

ネガティブ・サイド

途中から犯人というか、真犯人が分かってしまう。作者が引っかけたいのは主人公ではなく読者だという視点で読めるベテラン読者なら、中盤過ぎには色々と見透かせてしまうのでは?

 

とある毒物というか化学物質を執拗に描写しているが、これはミスリーディングを誘いたいにしてもやりすぎ。描写が科学的に正確または不正確だというのではなく、その描写の量から「ああ、ここまで書き込むということはこれは〇〇なんだな」と思わざるを得ない。

 

それにしても蘭聖学園のOGが社会の要所要所に存在しすぎではないか。まるで早稲田や日大のように感じてしまった。

 

総評

ミステリとしてはやや物足りないが、嫌ミスとしては標準的。本作を面白いと感じられたら、次は一気にステップアップして湊かなえの『 告白 』を読もう。少し古いが、嫌ミスの元祖とも言うべき作品で、構成も本作とそっくり、なおかつ面白さは数段上だ。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

class reunion

最も一般的な「同窓会」の訳語。

plan a class reunion = 同窓会を計画する
attend the class reunion = 同窓会に出席する

のように使う。

6月31日の同窓会 (実業之日本社文庫)

6月31日の同窓会 (実業之日本社文庫)

  • 作者:真梨 幸子
  • 実業之日本社
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Posted in 国内, 書籍Tagged 2010年代, C Rank, ミステリ, 日本, 発行元:実業之日本社, 著者:真梨幸子Leave a Comment on 『 6月31日の同窓会 』 -嫌ミス入門に適す-

『 仮面病棟(小説) 』 -映画化に期待が高まる-

Posted on 2020年1月20日 by cool-jupiter

仮面病棟 65点
2020年1月19日に読了
著者:知念実希人
発行元:実業之日本社

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200120131534j:plain
 

『 神のダイスを見上げて 』が結構読みやすかったので、本作(小説)も購入。現役医師が病棟を舞台に描くだけあって、臨場感もプロットの妙も、こちらの方がかなり上であると感じた。

 

あらすじ

外科医・速水秀悟は先輩の代打で当直バイトのため、田所病院に入った。その夜、ピエロの仮面をかぶった男が病院に押し入り、「この女を治せ」と腹部に銃創のある女性を連れてきた。ピエロは自らを金目当ての強盗だと言うが・・・

f:id:Jovian-Cinephile1002:20200120131605j:plain

 

ポジティブ・サイド

グイグイと引き込まれた。330ページ弱と、小説としては標準的な長さだが、2時間ちょうどで一気読みできた。帯の惹句の【 一気読み注意! 】という文言は本当である。

 

また医師が書いているだけあって、病棟の構造や患者の設定にリアリティがある。それも海堂尊の作品に共通して見られる、医師や医療従事者、官僚などが専門用語を使ったり、倫理観を戦わせたり、徹底した手洗いやオペの手技に悦に入っているような描写ではない。一般人にも十分に理解できるような語彙を使ったり、情景描写を行ったりしている。一方で、治療の場面などはスピード重視。専門的な語彙を存分に駆使しながらも、やはり海堂作品にやたらと見られる、ルー大柴的(日本語とカタカナ語のちゃんぽん)な言葉の使い方をしていないので、専門用語(数は多くない)も漢字から意味がスッと理解できたり、その後に続く動詞が平易であるので、何を行っているのかというイメージを脳内に描きやすい。なかなかの書き手である。

 

ジャンル分けすれば、ミステリ、サスペンス、シチュエーション・スリラーだろうか。この田所病院には「館」的な趣がある。そして、それは全く荒唐無稽ではない。おそらく本職の医師や看護師らコ・メディカルであれば、田所病院各階フロア図を見て何かに気づくことであろう。天狗になるわけではないが、Jovianも本文を読み始める前にピンときた。これは漫画『 おたんこナース 』のとあるエピソードから病院独特のシステムがあることを学んでいたからである。また同じく漫画『 スーパードクターK 』を読んだことがある人なら、とある闇のビジネスについてもピンとくるかもしれない。日本の社会構造が目に見える形で変わってきている今、こうした問題はいつか本当に起こるかもしれない。

 

数少ない登場人物、病院という閉鎖空間、時間にして一日足らず(実際は数日だが、事件そのものは一日足らず)という極めて短い時間でありながら、ミステリ要素も社会派要素も込められていた。小説の映画化ではないが、韓国映画『 ブラインド 』を日本式に換骨奪胎して成功させた『 見えない目撃者 』のような、ミステリとサスペンスの両方を貪欲に追求するような作品である。また、映画化に際して、永野芽郁の下着姿が拝めるかもしれない。これは知念実希人先生の隠れたグッジョブかもしれない。読むならば、次の日が休日の夜にすべきである。

 

ネガティブ・サイド

このピエロの犯人像には感心しない。詳しくは言及できないが、普通に考えれば速水よりも先に病院の構造上のある秘密に気がつくはずである(映画のトレイラーは盛大にネタバレを含んでいるので注意!)。また、ある程度大きな病院には地下に発電施設などがあることが多いが、この病院には地下室はない。うーむ。ストーリーが十分にアングラだからだろうか。

 

ひとつ不自然に感じたのは、あるキャラクターのある言動である。怪しいのはセリフそのものではなく、そのセリフを言う相手である。ヒントとしてあからさま過ぎる。

 

「もしかしたら・・・、いえ、先に確かめてきます」 

↓ 

死体として発見される 

 

のような現実世界では不自然極まりないがミステリ世界では全う至極な展開は構築できなかっただろうか。また、順番が前後するが、犯行の構造が『 神のダイスを見上げて 』とそっくりである。こちらを読んだ人なら、真相に一気に迫れるかもしれない。これは知念実希人の癖なのだろうか。

 

総評

あわよくばシリーズ化も狙えたかもしれないが、それをあっさりと放棄するエンディングは個人的に好感触であった。ダークヒーローというのは、マイノリティだからかっこいいのである。誰もかれもがダークヒーローになる必要はない。映画化に際しての不安材料は、トレイラーにある「国家の陰謀」なるナレーションである。そこまで話を大きくする必要はない。その点、小説版はコンパクトにまとまっている。映画はさらにもう一捻りを加えてくるのは間違いないと思われる。それが吉と出るか凶と出るかは分からない。吉3:凶7ぐらいの確率だろうか。非常にリーダビリティの高い作品なので、3月の映画公開前に一読をお勧めする。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

clown

ピエロというのはフランス語で、英語では clown と言う。『 ジョーカー 』を思い浮かべてもらうのがちょうどいい。日本ではあまり見ない存在であるが、clown aroundという熟語は覚えておいて損はないかもしれない。「道化師のごとく、ふざけた真似をする」の意である。ただし、必ずしも顔をペイントしたり派手な衣装を身にまとったりする必要はない。飲み会などで同僚たちのバカ騒ぎが過ぎるときに、心の中でつぶやくとよいだろう。

 

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Posted in 国内, 書籍Tagged 2010年代, C Rank, サスペンス, シチュエーション・スリラー, ミステリ, 日本, 発行元:実業之日本社, 著者:知念実希人Leave a Comment on 『 仮面病棟(小説) 』 -映画化に期待が高まる-

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