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英会話講師によるクリティカルな映画・書籍のレビュー

サラリーマン英語講師が辛口・甘口、両方でレビューしていきます

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タグ: 奥田瑛二

『 かくしごと 』 -親子を親子たらしめるもとは-

Posted on 2024年6月12日 by cool-jupiter

かくしごと 60点
2024年6月9日 MOVIXあまがさきにて鑑賞
出演:杏 中須翔真 奥田瑛二
監督:関根光才

 

テアトル梅田の『 あんのこと 』の上映時間が合わず、こちらのチケットを購入。

あらすじ

千紗子(杏)は絶縁していた父・孝蔵(奥田瑛二)が半裸で徘徊していたことから、施設入所までの間だけ介護をするため帰郷した。ある夜、旧友の運転する車が少年をはねてしまう。その少年の身体に虐待を思わせる傷跡を見つけた千紗子は、自分がその子の身柄を引き受けようと決意して・・・

以下、マイナーなネタバレあり

 

ポジティブ・サイド

杏と奥田瑛二の父と娘の距離感が生々しい。警察や記者、さらに医者は結構な確率で過程を壊してしまうとされているが、教師もそうなのか。

 

記憶喪失の少年と認知症(これも一種の記憶喪失)の父親の対比も生々しい。忘れたままでいてほしい、しかし、忘れてはいけないことを忘れないでほしいという、一種の二律背反的な思考や感情が、どんどんとセルフケア能力を喪失していく父の介護の中でないまぜになっていく過程の描写は、正直かなり堪えた。

 

特に父親がとあるシーンで、認知症ゆえの悲しい告白をするが、「今さらそんなことを口にしてどうする」と憤慨させられた。が、これは多くの昭和世代のジジイ連中の多くに共通する隠された本音。それゆえにこのシーンでの杏の涙が光る。

 

『 ミッシング 』の狂乱の母親像は一味違った母親の狂気を堪能できる一作。

 

ネガティブ・サイド

原作の小説のタイトルは『 嘘 』なのに、それを敢えて『 かくしごと 』に変えたのは何故なのだろうか。このタイトル改変だけでオチがすべて露わになってしまっている。まさか絵本を描く/書く仕事とかけたのではあるまいな。

 

飲酒運転して交通事故というのは笑えない。しかもそれを隠蔽しようというのはもっと笑えない。さらに救急車も呼ばないというのにはドン引きした。原作もこうなのか?ご都合主義もここに極まる。

 

言葉は悪いが、あのレベルの家庭の母親が文芸雑誌などを読むのか?またその夫が東京の住所ならまだしも、実家まで突き止めるか?いくらなんでもご都合主義が過ぎる。

 

総評

東出と離婚して、遠くの土地で一人で子育てするという杏のイメージがそのまま投影された作品で杏がはまり役だと見る人もいれば、あざとすぎるキャスティングだと見る向きもあるだろう。Jovianは前者だった。選択的夫婦別姓など、家族の在り方に関する議論がようやく始まりつつある日本だが、選択的な親と子の在り方についても、そのうち考えなければならないのかもしれない。

 

Jovian先生のワンポイント英会話レッスン

adopt 

色々な意味を持つ語だが、その一つに「養子にする」というものがある。たまに adapt と混同する初習者がいるが、adopt の opt は option = 選ぶもの、だと覚えよう。

 

次に劇場鑑賞したい映画

『 バジーノイズ 』
『 あんのこと 』
『 チャレンジャーズ 』

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2020年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 中須翔真, 奥田瑛二, 日本, 杏, 監督:関根光才, 配給会社:ハピネットファントム・スタジオLeave a Comment on 『 かくしごと 』 -親子を親子たらしめるもとは-

『 洗骨 』 -死から目を逸らすことなかれ-

Posted on 2019年2月25日2019年12月23日 by cool-jupiter

洗骨 65点
2019年2月17日 大阪ステーションシネマにて鑑賞
出演:奥田瑛二 筒井道隆 水崎綾女 大島蓉子
監督:照屋年之

f:id:Jovian-Cinephile1002:20190225032942j:plain

風葬にした遺体の骨を数年後に取り出して洗うという、文化人類学的に非常に興味深い風習を映画にしたというからには観ねばなるまい。この映画の意図やテーマは何であるのかを、なるべくまっさらな状態で受け止めてみたいと思い、予告編やパンフレットには極力近寄らずに鑑賞してみた。

 

あらすじ

新城信綱(奥田瑛二)は妻、恵美子を亡くして以来、セルフ・ネグレクト気味に生きてきた。しかし、粟国島の風習である洗骨を行う時になって、東京から長男の剛(筒井道隆)、名古屋から長女の優子(水崎綾女)が帰省してくるも、優子のお腹は大きく、しかしその子の父親であるはずの男の姿はなく・・・

 

ポジティブ・サイド

奥田瑛二、筒井道隆はいぶし銀の役者としてその地位を確立しているが、水崎綾女は恥ずかしながら初見であった。飄々として、それでいて色気もあり、しなやかさもあり、慈しみも感じさせ、なおかつ守ってあげたくなるようなキャラを見事に体現した。これは彼女の演技力なのだろうか、それとも素の姿に近いのだろうか。今後まだまだ上に行けそうな雰囲気もあり、なおかつ桜井ユキ的な活躍にも期待をできそうにも思える。もちろん、大島蓉子のような肝っ玉母ちゃんキャラをもこなす演技派に成長してもらっても結構である。

 

沖縄を舞台にした映画で、おそらく最もシリアスなのは『 ハクソー・リッジ 』であろう。そして沖縄を舞台にした映画で最も(意図的に)馬鹿馬鹿しいのは『 ゴジラ対メカゴジラ 』であろう。とにかくキングシーサーを眠りから呼び覚ますために、やたらと長い歌を聴かせなければならないし、そのキングシーサーはというと、メカゴジラよりも格段に弱かった(ようにしか見えない)描写しか印象に残っていない。それでは本作はどうか。監督がゴリであるからなのかは分からないが、シリアスさと馬鹿馬鹿しさを同居させようとしていたのが伺える。シリアスなシーンには必ずと言っていいほど冷静な突っ込みが入れられる。本来であれば誰も知る由のない親子の諍いに対して「よそでやってよ」とボヤくキャラもいる。いや、そうした人物が存在していたとしても、描写はしないのが映画的な文法ではなかったか。しかし、Jovianはこうした描写を評価したい。なぜなら、鑑賞後の劇場内で「いや~、沖縄の海はホンマにあんなんやで」、「島の人はあんなふうによう笑うねん」、「真面目な話をしてる時でも、なんか面白いことを言うてまうねん」と上品な大阪弁で熱弁を振るうおばあちゃんがおられたからだ。そうか、沖縄出身の方にはリアリスティックに見えるのか、と得心したのである。

 

本作はBGMがほとんどない。それが不思議と心地よい。『 君の名前で僕を呼んで 』と共通するような自然そのものの音を味わえる。『 おと・な・り 』で強く感じさせられた基調音が、本作では際立っている。この部分だけに注目すれば、まるで北野武の映画のようだ。

 

本作のもう一つのモチーフに海がある。日本語は海の中に母があり、フランス語では母の中に海があるとよく言われる。それぞれに思うところあり、打ち解けられない男たちが問答無用で母なる海に抱かれるシークエンスは、海の生命力と包容力の観る者に感じさせる。それらの力は母の象徴でもあったろう。海は最も身近な異界であるが、母の胎内こそが故郷で、我々は生まれ出たその瞬間から、この世という異界に生きているのかもしれない。であるならば、粟国島の東がこの世、西があの世という世界観もフィクションなのかもしれない。実際に、子どもたちは元気にあの世とこの世の境界線を走り回っていたし、大人もそれを強く止めることはなかった。愛する者の死を受容する為に骨をこの手に持つ。それは取りも直さず、生の終着点が死であることを思い知らされることである。しかし同時に、自分の骨を洗う誰かがこの世に存在するという安心感のようなもの、自分の骨を洗うまだ見ぬ誰かの存在を想起することにもつながる。加地伸行の言葉を借りるならば、親孝行の孝の本質とは「生命の連続」である。ハイデガーの言葉を借りるならば、我々は頽落している。死を忘れるな。メメント・モリ。死者との向き合い方について、『 おくりびと 』以上に直球の作品が放たれた。映画ファンなら観るべし。

 

ネガティブ・サイド

非常にわざとらしい段ボール箱があったが、ああいうものは要らない。もしくは、もっと存在感を小さくして見せるべきだ。説教臭い要素を入れたい、または観る側に露骨にメッセージを伝えたいのなら、文学でやってくれ。

 

優子のお相手であるはずの店長の空気の読め無さ、ウザさが全体のバランスを壊していると感じた。ともすれば重い空気が流れかねない雰囲気の中でライトな感じを演出したかったのだろうが、逆に空気をぶち壊していた。お笑い芸人が役者をやることを否定はしない。しかし、役どころによるだろう。面白い役を面白い人にやらせて、果たして本当に面白いのか。ゴリではなく、照屋年之に問いたい。

 

またリアリティを追求すべき箇所で、おいおいちょっと待て、監督が気付かないのもおかしいが、他の女性スタッフの誰も気がつかなかったのか?と首をかしげざるを得ない描写がある。これのせいで、非常に良い味を出していた大島蓉子のキャラが一気に皮相的になってしまった。最近もある芸能人が出産後にある行為を行って、一部の人間を驚かせたというニュースがあった。また出産に立ち会ったことのある人間なら、赤ん坊が出て来てハイ、終わりではないということを知っているはずだし、たとえそうした経験が無くとも、ペット、特に犬や猫(これを観察するのはなかなか難しいか)の出産を観察したことがあれば、分かるはずのことだ。クレジットに医療監修はあったかな・・・

 

総評

大きな弱点があるものの、それでも映画作品として観た時に示唆的であったり、感動的であったり、ユーモラスであったり、シリアスであったりする。つまり、観る者の心に訴えかける作品に仕上がっている。小さな子どもに「せっくすうー!」と叫ばせるのはどうかと思うが、敢えて思春期の子どもに見せてやるという選択をする親がいてもよい。

 

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Posted in 国内, 映画Tagged 2010年代, C Rank, ヒューマンドラマ, 大島蓉子, 奥田瑛二, 日本, 水崎綾女, 監督:照屋年之, 筒井道隆, 配給会社:ファントム・フィルムLeave a Comment on 『 洗骨 』 -死から目を逸らすことなかれ-

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