12モンキーズ 80点
2020年8月20日 レンタルDVDにて鑑賞
出演:ブルース・ウィリス マデリーン・ストウ ブラッド・ピット クリストファー・プラマー
監督:テリー・ギリアム
アホな政治家は「コロナは高温多湿に弱い」と言っていたが、日本は完全に第二波のただ中のようである。こういう時こそ過去のウィルス系の映画を観返すべきだと思う。手洗いは完全に市民に定着したようだが、我々は今こそ本作中でもブラピによって言及されるセンメルワイス医師の功績を再認識しようではないか。
あらすじ
2035年、人類はウィルスにより大多数が死滅。生き残った者も地下深くで生活し、地上には動物たちが闊歩している。
ポジティブ・サイド
ブルース・ウィリスが良い感じ。『 オールド・ボーイ 』のチェ・ミンシクが生きたタコを貪り食ったが、ブルース・ウィリスも蜘蛛をむしゃむちゃ。シャワーでは尻の割れ目を披露。そして第一次大戦のフランス軍の塹壕では一瞬だが逸物も披露。シリアスな話のはずが、どこかユーモラスだ。そこにクスリ漬けにされたウィリスと、正気ではあるが現代人の目からは狂人に見えるウィリスという二面性。序盤の時間軸とストーリーの虚実が定まらないこの感じが、いかにもテリー・ギリアムのテイスト。
ブラピの狂いっぷりもなかなかの見どころ。科学の進歩をテロで食い止めようとする輩は『 トランセンデンス 』などに見られるようにスマートに狂った輩が多い。そうした意味では本作のブラピのストレートな狂いっぷり(こちらも負けじと尻の割れ目を披露)は、文字通りの意味で世紀末的である。ブラピが最も面白いのは、最後の最後に実行する社会擾乱罪だろうか。なるほど、これはなかなか愉快なテロ行為で、なおかつ2020年代の現在でもリアリティがある。ブラピが最も不気味なのは、精神病棟でテレビの録画について滔々と解説するシーンだろうか。大昔に観た時には何も感じなかったが、20年以上ぶりに観返して、背筋がゾッとした。デイヴィッド・ピープルズとジャネット・ピープルズの二人の脚本家は天才ではあるまいか。ウィリスが目にする数々の動物のビジョンや他のデジャヴにも感心させられたが、このテレビ録画のシーンの気味の悪さと意味の深さには唸らされた。
ストーリーは軽妙にして重厚、単純にして複雑である。ウィリスもブラピも、人類を救うべく行動しているという点では同じである。重い使命である。そして、地下生活に順応してしまったウィリスの地上生活への憧憬と音楽などの世俗的な娯楽の享受が、とても大きな意味を持っている。人類のため、ではなく、自分のためにと行動するウィリスが次第次第に正気を失っていく様は痛々しい。12モンキーズという謎の軍団の探求のミステリーとサスペンスでぐいぐいと観る者を引き込んでいく。普通に鑑賞してもあっという間の2時間10分であり、再鑑賞すればさらに引き込まれる2時間10分である。
ネガティブ・サイド
ウィリスを途中から甲斐甲斐しく支えることになるキャサリンが、割と安易にロマンチックな関係に陥ってしまうのは何故なのか。この手のプロフェッショナルが、患者やクライアントに恋愛感情を抱くのはご法度であり、自身の気持ちをコントロールする術もある程度は体得しているはずだ。そうした人物が、相手が未来人とはいえ、いや未来人だからこそ、適切な距離を保てないというのは腑に落ちなかった。
ウィリスのキャラクターが最後まで混乱しっぱなしというのも気にかかった。並外れた記憶力の良さを買われた割には、肝心なところを思い出せないというのはご都合主義的だと感じた。
総評
幾重にも張り巡らされた伏線を見返すのも楽しいし、現今のコロナ禍と重ね合わせて人間考察してみるのもよいだろう。まだ観たことがないという若い映画ファンは、配信やレンタルで要チェックである。『 マトリックス 』や『 マイノリティ・リポート 』のようなテイストの作品を好む向きであれば、ぜひ鑑賞されたい。
Jovian先生のワンポイント英会話レッスン
ventilation
「換気」の意。今やいかに rooms with good ventilation / well-ventilated= 風通しの良い部屋を確保するかが、どこのオフィスや学校でも喫緊の課題になっている。知っておくべき語と言えるだろう。ちなみに緊張状態やストレスから起こるとされる「過呼吸」は hyper ventilation と言う。